69 / 144
【幕間】 マレ 〜手放したもの〜
しおりを挟む
わたしにはバレエしかない。それだけを追求し、突き詰めてきた。
ダンスの技術を追求するだけではない。
バレエは異国の文化だ。
その歴史や背景を学ぶことで、演目で表現されているストーリー、登場人物の価値観や考え方、想い思惑、感情を理解し、身体を使って表す。
ヴァリエーションは決まっているから、大きくはみ出した表現はできないしする必要もない。正しく理解すれば、自ずとそのヴァリエーションの意図を追求することになる。
ただ、その範疇にあって、ダンサーの表現者たる意図や解釈を載せることで、そのダンサーのダンスに昇華されるのだ。
異国の文化を理解するには、言葉を識らなくてはならない。
異国の文化を学ぶなら指導者や資料なども本場やその文化の先進国の言語に依存しているだろう。
本気で学ぶなら現地で、ということになるなら語学の取得は尚必須だ。その場合加えてコミュニケーション能力や適応力も求められる。
それを、例えば学生なら、学生の本分を全うしながら追求しなくてはならない。
挙げればきりがないが、身体づくりとダンス技術の習得、維持だけでも空き時間のほとんどを費やす必要がある。
その他必須のスキルを身に着けようと思えば、生活の、大げさに言えば人生に於ける取捨選択をせざるを得ない。
わたしは、「それ以外」のほとんどを削った。
学力は進級進学さえできれば足りる程度あれば良い。
但し、物事を理解し、追求するなら論理的な思考力、人の営みや感情を汲み取り読み取る想像力が求められる。
表現されている物語は在る時代、在る国でのことを切り取ったもの。
全体的な流れを理解しておくに越したことが無い。世界の歴史や政治、経済の流れを知らなくて良いわけがない。
物理の影響下の中で身体を作り、使うなら、物理学や数学、栄養学の能力や知識も要るだろう。
要は、総合力が要るのだから、結局まずは勉強で基礎を身に着けていくしかない。
時間を割けない中でそれを果たすなら、自ずと授業を集中して受け、バレエに充てられないような休み時間や通学時間などを使って予習復習をするしかない。
家族の時間は、一緒に住んでいることで得られる日常的な関りがあるから皆無になったわけではない。
普段の練習や単発のワークショップ、コンテストなど、父や母には送り迎えをしてもらえることもある。そこでも会話はあるし、コンテスト結果や先生からの提案、わたしの希望などを常に更新しながら、「この後どうしていくのか」を相談させてもらってもいる。
この後というのは、進学のタイミングなど近い将来における進路についてだ。
バレエはとてもお金がかかるが、本気で学ぶならバレエが隆盛しているいくつかの国のいずれかに留学できた方が良い。学費の免除や奨学金が得られるかどうかなど、条件によって何ができるかも変わってくる。
お金を出してくれるのは親なのだから、常に相談はさせてもらっていた。
ダンスの技術を追求するだけではない。
バレエは異国の文化だ。
その歴史や背景を学ぶことで、演目で表現されているストーリー、登場人物の価値観や考え方、想い思惑、感情を理解し、身体を使って表す。
ヴァリエーションは決まっているから、大きくはみ出した表現はできないしする必要もない。正しく理解すれば、自ずとそのヴァリエーションの意図を追求することになる。
ただ、その範疇にあって、ダンサーの表現者たる意図や解釈を載せることで、そのダンサーのダンスに昇華されるのだ。
異国の文化を理解するには、言葉を識らなくてはならない。
異国の文化を学ぶなら指導者や資料なども本場やその文化の先進国の言語に依存しているだろう。
本気で学ぶなら現地で、ということになるなら語学の取得は尚必須だ。その場合加えてコミュニケーション能力や適応力も求められる。
それを、例えば学生なら、学生の本分を全うしながら追求しなくてはならない。
挙げればきりがないが、身体づくりとダンス技術の習得、維持だけでも空き時間のほとんどを費やす必要がある。
その他必須のスキルを身に着けようと思えば、生活の、大げさに言えば人生に於ける取捨選択をせざるを得ない。
わたしは、「それ以外」のほとんどを削った。
学力は進級進学さえできれば足りる程度あれば良い。
但し、物事を理解し、追求するなら論理的な思考力、人の営みや感情を汲み取り読み取る想像力が求められる。
表現されている物語は在る時代、在る国でのことを切り取ったもの。
全体的な流れを理解しておくに越したことが無い。世界の歴史や政治、経済の流れを知らなくて良いわけがない。
物理の影響下の中で身体を作り、使うなら、物理学や数学、栄養学の能力や知識も要るだろう。
要は、総合力が要るのだから、結局まずは勉強で基礎を身に着けていくしかない。
時間を割けない中でそれを果たすなら、自ずと授業を集中して受け、バレエに充てられないような休み時間や通学時間などを使って予習復習をするしかない。
家族の時間は、一緒に住んでいることで得られる日常的な関りがあるから皆無になったわけではない。
普段の練習や単発のワークショップ、コンテストなど、父や母には送り迎えをしてもらえることもある。そこでも会話はあるし、コンテスト結果や先生からの提案、わたしの希望などを常に更新しながら、「この後どうしていくのか」を相談させてもらってもいる。
この後というのは、進学のタイミングなど近い将来における進路についてだ。
バレエはとてもお金がかかるが、本気で学ぶならバレエが隆盛しているいくつかの国のいずれかに留学できた方が良い。学費の免除や奨学金が得られるかどうかなど、条件によって何ができるかも変わってくる。
お金を出してくれるのは親なのだから、常に相談はさせてもらっていた。
1
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
スルドの声(反響) segunda rezar
桜のはなびら
現代文学
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。
長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。
客観的な評価は充分。
しかし彼女自身がまだ満足していなかった。
周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。
理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。
姉として、見過ごすことなどできようもなかった。
※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。
各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。
表紙はaiで作成しています
サンバ大辞典
桜のはなびら
エッセイ・ノンフィクション
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の案内係、ジルによるサンバの解説。
サンバ。なんとなくのイメージはあるけど実態はよく知られていないサンバ。
誤解や誤って伝わっている色々なイメージは、実際のサンバとは程遠いものも多い。
本当のサンバや、サンバの奥深さなど、用語の解説を中心にお伝えします!
ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火
桜のはなびら
現代文学
マランドロはジェントルマンである!
サンバといえば、華やかな羽飾りのついたビキニのような露出度の高い衣装の女性ダンサーのイメージが一般的だろう。
サンバには男性のダンサーもいる。
男性ダンサーの中でも、パナマハットを粋に被り、白いスーツとシューズでキメた伊達男スタイルのダンサーを『マランドロ』と言う。
サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』には、三人のマランドロがいた。
マランドロのフィロソフィーを体現すべく、ダンスだけでなく、マランドロのイズムをその身に宿して日常を送る三人は、一人の少年と出会う。
少年が抱えているもの。
放課後子供教室を運営する女性の過去。
暗躍する裏社会の住人。
マランドロたちは、マランドラージェンを駆使して艱難辛苦に立ち向かう。
その時、彼らは何を得て何を失うのか。
※表紙はaiで作成しました。
千紫万紅のパシスタ 累なる色編
桜のはなびら
現代文学
文樹瑠衣(あやきるい)は、サンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』の立ち上げメンバーのひとりを祖父に持ち、母の茉瑠(マル、サンバネームは「マルガ」)とともに、ダンサーとして幼い頃から活躍していた。
周囲からもてはやされていたこともあり、レベルの高いダンサーとしての自覚と自負と自信を持っていた瑠衣。
しかし成長するに従い、「子どもなのに上手」と言うその付加価値が薄れていくことを自覚し始め、大人になってしまえば単なる歴の長いダンサーのひとりとなってしまいそうな未来予想に焦りを覚えていた。
そこで、名実ともに特別な存在である、各チームに一人しか存在が許されていないトップダンサーの称号、「ハイーニャ・ダ・バテリア」を目指す。
二十歳になるまで残り六年を、ハイーニャになるための六年とし、ロードマップを計画した瑠衣。
いざ、その道を進み始めた瑠衣だったが......。
※表紙はaiで作成しています
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる