スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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憧れの人と、一緒に

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(姫田姉妹)


 いのりちゃんと会えた。話せた。
 それどころか、一緒に同じ趣味に取り組むことになった!

 楽しみすぎる!!

 具体的な動きはまだ始まっていないが、連絡先を交換したことを良いことに、その日以降ちょくちょく連絡を取り合っていた。
 めがみちゃんとも個別のやりとりが増えたが、いのりちゃんとはよく通話でも話をしていた。



 ずっと、いのりちゃんのようなお姉さんがいてくれたら良いなと思っていた。



 同じ取り組みを一緒にやるからと言って、姉妹のようになれる、扱ってもらえる、とは限らないけど。
 相談を持ち掛ければ、アドバイスを訊けば、そして、悩みや愚痴なんかを吐いたら、きっといのりちゃんは親身に応対してくれるような気がした。よくできた姉のように。

 
 理想の姉なんてものは幻想だ。


 たまたま自分のあとに弟妹が生まれ、結果そうなっただけのひとりの人間なのだから。誰も姉として生まれたわけでもその宿命を全うしようと生きているわけでもない。
 であるのに、いのりちゃんにはそこはかとない「姉感」がある。高い能力を持ち行動的ないのりちゃんはたくさんの属性を持っているのにもかかわらず。


 
 何の話題だったのか。わたしはどんな訊ね方をしたのか。
 ある時、いのりちゃんがそっと語ってくれたことがあった。

 
 姉というフレームを与えられたとき、焦点が定まったような気がしたのだと。
 明確な役割を与えられたとき、行動指針は具体的になった。具体的になったのなら、それに邁進すれば良い。
 その行為には夢中になれた。全うすることで得られる称賛も誇らしかった。
 幼心に得た興奮と快感が、自分の軸にはあるのだという。
 
「姉、とはちょっと違うけど、母性も誰にでもあると思うの。子どもにも、男の人にもね。三歳だった私にもきっとあって、生まれたばかりのがんちゃんがかわいくてかわいくてしょうがなくて、かわいがりたいという思いと、守りたいという庇護欲と責任感が自然に芽生えたのも事実。そこに、事実そうである『姉』という立場を与えられた私は、我が意を得たりの気持ちだったんじゃないかな」
 
 
 幼い頃のいのりちゃんを想った。

 
 微笑ましく可愛らしく。

 そんな姉を欲しいと思っていたわたしからすればめがみちゃんが羨ましく。

 だけど、なんだか、すこしだけ、泣きそうになった。

 何故だろうか。寂しくも、悲しくもない話だったはずなのに。

 
 
 一緒に同じ分野に取り組むのだ。

 特権を活かしかわいがってもらおうという野心はあるし、仕掛ける気は満々だ。

 だけど、どこかのなにかで。

 めがみちゃんとは違う立ち位置で、いのりちゃんの心を満たせたら良いなと思う。


 よし、色んな意味でなんだかやる気が出てきた!


 
 スマホの画面を見る。

 先ほど届いたメッセージには既読をつけていたが返信はしていなかった。

 いのりちゃんから、打楽器の練習の見学に来ないかというお誘いだ。

 もうやると決めている。
 説明や手続きがあるなら、その機に進めてしまいたかった。そのためには、練習日やバイトのシフトなど事前に調整しておきたかった。

 めがみちゃんとシフトをかぶせておけばほぼサンバと干渉することは無いはずだ。
 店長への相談を終え、ほぼほぼ希望通りにしてもらえることになった。
 曜日がある程度固定化されていくので、曜日でシフトを組んでいる乃木さんとも一緒になりやすくなったのは副次的な幸運だ。

 
 入会後の目処をすでに立てていたわたしは、お誘いに《行きます!!!!》と元気に回答した。全力肯定のスタンプを添えて。
 
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