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わたしの気持ち
しおりを挟む(子どもの頃のいのりちゃんとめがみちゃん)
幼い頃、わたしはきっと、めがみちゃんに嫉妬していた。
そして今もまた、その想いを抱えてしまっていることを、自覚した。
めがみちゃんのことを、「なんだか気に入らない」、と思ってしまっていた。
そんな自覚している欠点すら改善できない、律しようと思っているなんて言っても律しきれていない、自分自身に一番腹が立った。
めがみちゃんは、きっといい子なんだと思う。
バイト先のみんなからもかわいがられている。
あざとい立い居振る舞いでそういう立ち位置を手に入れる人もいるだろうけど、めがみちゃんの場合は、自然とそうなっているのだと思えた。
素直で、一生懸命で、穏やかで、うるさくない程度に明るい。
年下で後輩でもあるわたしに対しては親切で丁寧だ。
余程の偏屈な人でない限り、好ましい人物として捉えられるはずだ。まして嫌われることなんてほとんどないと思えた。
だからわたしが気に入らないなんて思ったってことは、わたしが偏屈側なんだと思う。
めがみちゃんは油淋鶏をおいしそうに食べている。
めがみちゃんを見ていたわたしと目が合うと、軽く微笑んで「これも食べよ?」と、大皿のエビチリを小皿に移し、わたしの分も取ってくれた。
めがみちゃんは何の他意もなくわたしの誘いに応えてくれて、この場にいる。そして、この場を純粋に楽しんでくれている。その気持ちに対しては誠実でありたいと思った。
良い人に嫌な思いをさせるのはわたしとて不本意だ。
取り分けてくれた小皿を「ありがとう」と受け取り、さっそく大きめのエビをひとつ、口に入れる。
身の引き締まったエビが口の中で弾けた。
エビは大きくなると大味になると言われるが、この大ぶりの赤エビには当てはまらない。程よい辛さとほのかな甘さのチリソースが、エビ自体の甘みと重なって、複雑ながら一体感のある味わいが口の中に広がってゆく。
「えびちりおいしいね!」
わたしが笑顔で言うと、めがみちゃんは嬉しそうにしてくれた。
決して嘘などつかなくても、感情をとりつくろわなくても、楽しく過ごすことだってできる。
良い人に対して負の感情を持つのは、相手への理解不足と、自らの側に問題がある場合だと思う。それはきっと、コミュニケーションを重ねることで解消できるはずだ。
涌き立つ素振りを見せ始めた心の奥底の醜い感情には蓋をして、わたしはめがみちゃんに尋ねた。
それは、訊きたかったこと。今日この場の目的でもある。
「いのりちゃんは今、どうしてるの?」
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