上 下
31 / 132

めがみちゃんの気持ち

しおりを挟む
 わたしの真摯なまなざしを受け止めためがみちゃんは、少し居住いを正し、やや顔を上気させながら口を開いた。
 

「子どもっぽくって恥ずかしいんだけど……」

 
 めがみちゃんは、家族を敬遠していた。
 積極的に嫌うというほどではない。でも、一緒に居たいと思えなかった。
 家族に、家庭に、自分の居場所はないと思っていた。

 納得のいかない名前を付けた母親。
 子どもを思い通り扱おうとし、子どもの意思を尊重してくれない母親。

 子どもに関心がなさそうに見える父親。
 仕事優先で、子どもの気持ちに寄り添ってくれることなど内容に思えた父親。

 そんな両親でも、愛情を、信頼を、関心を向ける対象となっていた優秀な姉。
 凡庸なわたしと常に比較の対象となり、得るべきものを望むがままに獲得していた姉。

 
「わたしはわたしを、わたしとして扱ってくれる場所で生きていきたいって思ってたんだ」

 
 母の所有物ではなく。
 姉のおまけではなく。
 わたしがわたしとして生きていくためには、家族から離れた方が良い。と、そう思っていたと、めがみちゃんは語った。

 
 正直、「は?」である。

 
 家族は、どんなに距離を取ったって家族だ。
 関係性に不満があるなら、それそのものを解消しない限り消えるものではない。
 距離さえとればこれまでのわだかまりのみが払拭されると思っているなら安易に過ぎる。

 もちろん、本気で縁を切って、双方の人生に於いて二度と干渉しない状態にするなら、不満の基となっている関係性自体が消滅するのだから、無理に解消しなくても消えて失せるのだろうけど、そこまでの覚悟を持っての考えとは思えなかった。

 
 やっぱり、根っこのところが世間知らずのお嬢さんというか、甘いんだろうなと思った。

 
 まあ本人も「子どもっぽくって」と言っていたから、自覚はあるのだろうし、過去形で話しているから、イタくて恥ずかしい思春期特有の拗らせ方をした過去を、バイト先の後輩というよりは久しぶりに再開しただけの幼馴染に話してくれているのだと思う。だとしたら申し訳ない気持ちだ。

 でも、話せるということは、乗り越えたということでもあるのだろう。

 
「今はどう思っているの?」

 
 わたしの問いに、めがみちゃんは少し照れながら(でも少し嬉しそうに)、「今はそういう思いはあまり持たなくなった」と言った。
 
 母は相変わらず独特だし、自分の気持ちを汲んでいるようには思えない。

 父は相変わらず仕事ばかりだし、自分に興味があるようには思えない。

 だけど、母には母なりの、父には父なりの、わたしへの愛情を持っていることを知れたから。

 
 それで充分なのではないかと思うようになったのだと言う。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

処理中です...