スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

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幼馴染

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(バイト先の先輩 姫田さん)

「うん、良いね。じゃ、キッチンにいこう」

 ユニフォームの着用の仕方や髪のまとめ方など、姫田さんに確認してもらう。姫田さんは笑顔でオーケーを出してくれた。

 キッチンに向かう姫田さんについていく。

 すれ違う人やキッチンで作業していた人たちから、「がんちゃん、おつかれー」「お、新人さん?」「がんちゃんもトレーナーかぁ」なんて声がかかる。



 かわいがられてるんだなーと、前を歩くせんぱいを見て思った。


 ちいさくて無邪気そうで素直そうだ。そして、ちいさい。そりゃあかわいいわ。
 ちいさいといっても、たぶん150㎝は超えている。140㎝台の成人女性もいるのだから、ことさらフォーカスするほど低身長というわけではない。それでも「ちいさく」見えるのは、なんとなく動きが細かい? というか、小動物みたいだからか?
 その動きを加味した全体的な雰囲気に、素直な反応と無邪気そうな表情が相俟ったなら、大人からしたらかわいいのだろうな。



 などと思いつつ、わたしも会釈しながら「はい。柳沢さんです。後程紹介しますね」と笑顔で返している姫田ぱいせんを追った。


 キッチンに入り、姫田さんに注がれていた声掛けもひと段落するのを見計らって訊ねた。


「がんちゃん? 姫田さんのこと? ですか?」
 
「あ、うん。この職場、結構フレンドリーだから。店長以外は愛称で呼んでくるんだ」
 

 なるほど。お互い親しみを込めて呼び合うのは良いね。

 ルールというわけではなくても、愛称を登録名にして、愛称で呼び合うことを仕組みにしているところもあるらしい。
 なんとなくだけど、新聞の折込チラシの求人にありがちな「アットホームな職場です」ってキャッチコピーに似た、実態を伴わない造られた「印象」みたいで、そういう「家族的」とか「仲間」みたいなのを売りにしているところは少しイヤだなと思っていた。先入観による決めつけかもしれないけれど。

 でもこのお店の場合は、先ほどのやりとりを見た限りでは、無理をしているような違和感はなく、ここでは自然とそのような雰囲気が出来上がっているのだと思った。

 
「わたしの名前、願う子っていう字を書くから。そのまま読むと『がんこ』ってことで、がんことかがんちゃんって呼ばれてるんだよね」

 
 ふーん。じゃあわたしはのんとかのんちゃんかなー。

 
「実際の読み方は『めがみ』なんだけどね。当て字でもないから誰も読めないんだよー。変だよねぇ」


 え......?

 
 一生背負う自らの名前を変だと称しながらも、特に何でもないことのようにころころ笑っているがんちゃんぱいせん。


 いや、そんなことより!
 
 思い、出した!

 
「めがみ、ちゃん?」
 
「え?」
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