スルドの声(共鳴) terceira esperança

桜のはなびら

文字の大きさ
上 下
13 / 218

バイト

しおりを挟む
 バイトはファミリーレストランにした。飲食店は大変だと言われているが、そういうところで鍛えられれば、うちの蕎麦屋の手伝いもできるようになる。

 大抵の飲食店は賄がある。どうせなら好きなメニューのあるファミレスにしようと思った。
 ファミレスはチェーン店ごとに特徴があって、わたしが好きな店舗は期間限定スイーツに力を入れている。毎シーズン食べたいと思っていた。
 そのチェーン店は最寄り駅付近には無く近隣のターミナル駅前にあった。幸いバイトは常時募集中だ。
 電車に乗ることになるが、大きい駅で買い物とかもできるので、デメリットよりもメリットが上回ると思い応募した。
 
 賄目当てで仕事を選ぶなんて、おばあちゃんに宣言した『格好良い』にならない気もしたが、どんな動機でも、一生懸命やっていれば良いとも思うのであまり気にしないことにする。


 早速お店に電話して面接の予約をとった。

 面接してくれたのは店長さん。少し淡々とした感じだったけど感触は悪くなかったと思う。


 面接の帰りに駅周辺の商店街やファッションビルに寄った。
 少しだけ人が並んでいたたい焼き屋さんでたい焼きを買った。ひとつひとつ焼くやり方のお店だ。天然物というらしい。
 ファッションビルではロフトで付箋とリップバーム、UNIQLOでヒートテックとエアリズムを買った。
 もしバイトに受かったらユニフォーム着用だ。
 まだたまに寒い日があるし、梅雨の時期まで油断できない。店内は暖かいだろうけど、念のためヒートテックを用意しておこうと思った。
 逆に、ずっと動くしキッチンは暑いかもしれないから、暖かい日に備えてエアリズムも買っておいた。
 もうお金を使うつもりはなかったが、本屋やコスメショップ、雑貨屋なんかを眺めて帰路についた。スタバも寄りたかったけど今日はがまんする。

 バイト先が面接したお店に決まったら、この街も拠点のひとつになる。楽しみだ。



 翌日の夕方、履歴書に記載した携帯電話の連絡先に合否を伝える連絡があった。
 連絡は電話ですると言われていたので、お店の電話番号は予め登録してあった。それがそのまま、バイト先の連絡先として登録された状態にしておけたら良いのだけど。


 早めに連絡すると言われていたが、まさかもう来るとは。
 さすがに少し緊張しながら電話に出る。


「......はい、ありがとうございます!」


 採用を知らせる店長さんにお礼を言って電話を切った。
(よしゃっ!)
 思わず拳を握り、心の中で小さく叫んだ。
 どんなことでも、合格するというのはやっぱり嬉しい。


 バイトは翌週の月曜日から。とりあえず週三日のシフトにしてもらった。
 テスト期間中などは減らせるし、稼ぎたいと思えば増やすこともできる、比較的融通が効く働き方ができそうだった。
 

 おばあちゃんに報告したら、「おめでとう。しっかりやんなよ」と、お祝いとして夜ごはんにロールキャベツとピーマンの肉詰めを作ってくれた。

 まじかよ! ダブルセンターじゃん‼︎

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら
現代文学
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。 長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。 客観的な評価は充分。 しかし彼女自身がまだ満足していなかった。 周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。 理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。 姉として、見過ごすことなどできようもなかった。 ※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。 各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。 表紙はaiで作成しています

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

スルドの声(嚶鳴2) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
何かを諦めて。 代わりに得たもの。 色部誉にとってそれは、『サンバ』という音楽で使用する打楽器、『スルド』だった。 大学進学を機に入ったサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』で、入会早々に大きな企画を成功させた誉。 かつて、心血を注ぎ、寝食を忘れて取り組んでいたバレエの世界では、一度たりとも届くことのなかった栄光。 どれだけの人に支えられていても。 コンクールの舞台上ではひとり。 ひとりで戦い、他者を押し退け、限られた席に座る。 そのような世界には適性のなかった誉は、サンバの世界で知ることになる。 誉は多くの人に支えられていることを。 多くの人が、誉のやろうとしている企画を助けに来てくれた。 成功を収めた企画の発起人という栄誉を手に入れた誉。 誉の周りには、新たに人が集まってくる。 それは、誉の世界を広げるはずだ。 広がる世界が、良いか悪いかはともかくとして。

バレー部入部物語〜それぞれの断髪

S.H.L
青春
バレーボール強豪校に入学した女の子たちの断髪物語

スルドの声(交響) primeira desejo

桜のはなびら
現代文学
小柄な体型に地味な見た目。趣味もない。そんな目立たない少女は、心に少しだけ鬱屈した思いを抱えて生きてきた。 高校生になっても始めたのはバイトだけで、それ以外は変わり映えのない日々。 ある日の出会いが、彼女のそんな生活を一変させた。 出会ったのは、スルド。 サンバのパレードで打楽器隊が使用する打楽器の中でも特に大きな音を轟かせる大太鼓。 姉のこと。 両親のこと。 自分の名前。 生まれた時から自分と共にあったそれらへの想いを、少女はスルドの音に乗せて解き放つ。 ※表紙はaiで作成しました。イメージです。実際のスルドはもっと高さのある大太鼓です。

処理中です...