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実りのない平行線
しおりを挟む(色部 誉 高校時代)
言いたいことは次々頭に浮かぶが、思うように言葉にできない。
そんな私にふたり組は嵩にかかって攻め立てる。
論破しつつあるとでも思っているのだろうか。
穴だらけの論法の癖に。
言い返せないのは、男性の先輩ふたりに怖い表情で詰め寄られて喉からうまく言葉が出てこないだけだ。それはそれで情けないことは認めるけど。
「じゃあ訊くけど、書道部の部費上がってんのはなんで? 確かになんかの大会出て表彰されてたっぽいけど、一昨年も出てたよな? 同じやつが毎年大会出てるだけじゃん」
それもさっきの説明に内包されている。
入賞は評価値が上がるのだ。一昨年は大会出場を果たした生徒が、去年は準優勝を手にしている。男子硬式テニス部とは状況が同じではない。
「ちょっと待ってくれよ。書道部の大会と俺らの県大会が、そもそも同じ土俵だっての? だったら競技人口が少ない部活有利じゃん」
そんなことはない。
競技人口が少なければ自ずと部員は集まりにくい。部員数も部費獲得に影響あるのだから。
一方、大会は大会の格やクラスのみにて判断され、規模や知名度、難易度は評価されない。そこは数値化しにくいのでキリが無いためだ。
例えば、地区大会、県大会、全国大会、世界大会などの階層によって同等と見做す。
全国大会規模扱いの甲子園よりも、例えば園芸部に世界大会があったとすれば、園芸部世界大会の方が評価値は高くなる。
経済効果や学校に対する貢献度という観点で見れば、確かに大会そのものの価値を加味するという考え方もわからなくはないが、先述した評価の仕方の難しさに加え、どんな競技・取り組みであれ等しく尊いものとして位置付けている部活動に於いて、選んだ種目による差が出るのは望ましくないとの考え方で、この手法を獲っている。
競技や大会自体が持っている価値の高さに関しては、後援会や志願スポンサーの差に現れるので、生徒会費としてはあくまでも「競技に依らない平等」を旨としている。
「なんかいろいろ言ってるけど、結局決定した配分率を出すための具体的な数式でてこないじゃん。お前らんとこの三年と書道部の部長って同クラだったよな? そういう忖度だか癒着だかあんじゃねーの?」
話聞いてた? 具体的な数式はともかく、配分の考え方は明快じゃないか。
忖度みたいなことがおこらないように、評価ポイント制による純然な掛け算で割り振っている。
さらに、額の算出と決定には複数の立場を経る必要がある。
値の算出は会計委員でやるが、予算の配分は会計からの報告に基づいて学校がおこなう。
会計の報告には会計担当の教員がチェックするし、承認と決定は学校がおこなうが、学校側は報告内容の審査はするも、計上方法と計算方法に誤りが無ければ承認を出し、オートで計算し割当額を決めて配分する。学校側は係数に影響を与えることはできない。
部活の顧問も、生徒も、会計も、会計担当教員も、学校長であっても、個で額を決め、配分することのできる者はひとりもいない。
こと生徒会費の部活動に於ける使い道に関しては、特定の生徒や教師同士、特定の業者及び店舗などと、結び付くことができないようになっている。
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