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自己紹介(のぞみ)
しおりを挟む(柳沢 望)
「えーっ、無理だよー」
言いながらのんちゃんが立つ。
「さあ! オオトリのんてぃ!」
「こいこいこいこいっ! ここここいこいこいっっ‼︎ なんでのんちゃんに最後を任せたか! のんちゃんならわかってるっしょ?」
無理な振り方をしたにーながさらに煽る。
「わかんないよっ! っていうか、できることない! ラップできないしダンスも歌も別に……」
「同じことする必要なし! 出して! のんちゃんを! のんちゃんの、すべてを!」
「えぇ……だから、出すものがないんだってぇ……」
「そんなときこそ、このわたし! ハイパーカイザースーパーメディアクリスタルクリエイティブマスターオブセレモニーにしてデスクジョッキー! HKSMCCMCDJるいぷるが! 伝説の司会者並みの回しでのんちの魅力、はらわたまでも引きずり出しちゃうぞっ」
自信満々の顔でるいぷるが立ち上がり、のんちゃんの隣に行く。
「えっ? ええ?」
「さあ! 薄暑のみぎりお過ごしされてる皆様に於かれてはいかがお過ごしでお過ごしでしょうか。当御殿当主るいぷるでございます」
「いぇー!」
にーなが嬌声をあげて拍手をする。周りも一応合わせてパラパラと手を叩いた。
「ほんでね、今日はのんてぃに来てもらってるわけでね……なんか無いん?」
伝説の司会者がうまく場を回してのんちゃんの魅力を引き出すんじゃないの? いきなりすごく雑な質問投げちゃってる。
「なんかって言われても……」
「あー、じゃー、みんな好きな食べ物言ってたから、まずそれ言おっか? あ、簡単なプロフ添えてねー」
「普通の自己紹介に戻ったってこと? のぞみです。サンバネームはのんにしました。マレの双子の妹で、わたしも偶然によってこの場所にいます。がんちゃんといのりちゃんが同じ地元で幼馴染で、引っ越しでしばらく町から離れてたのですけど、高校入学の時にこっちに戻って、学校とおうちの中間くらいのところでバイトはじめたら、そこでがんちゃんに再開して、がんちゃんといのりちゃんの話をきいてスルドをやってみようと思って入会しました。好きな食べ物はうちの蕎麦はもちろんで、それ以外だとピスタチオのアイスです。あ、ポッピングシャワーも好き」
「ええねぇ、ピスタチオ。緑でね。じゃあ今日のテーマ! 『生き物大好き』のんてぃはどんな生き物なん?」
「え? 好きな生き物じゃなくて? どんな生き物かを答えるの? え……っと……人間?」
「人間ね! 人間はええよねー。ええなええな、人間てええな言うてね。人と人との間を生きるのが、人間。やねんで?」
「哲学的なこと……?」
「そんな『人間』のんてぃよ! 人にはいろんな側面がありまんな?」
「え、うん、そうだね……?」
「自分を語る、表す。ならば、好きなものを語って表現したいもの。それが前向きでよろしい。でも、嫌いなものから目を背けず、露にすることだって必要だと思うの。そんなある意味弱いところも見せて、初めて自分をきちんと理解してもらえると思うの」
「なるほど……?」
るいぷるって多分、実は結構思慮が深いのかもしれない。
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