スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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渡会 類わたらい るい

 多分年上だが、この子と思わせてしまうるいぷるは、アキちゃんの言葉には一応納得したようで、「女の子と飲みたいならわたしがダブルワインやってあげるのに」と言いながらも、話題のその部分に関しては一旦閉じた。尚、ダブルワインというのは白と赤のデカンタを両手に持ち、グラスが空になる度に次々に注ぐシステムなのだそうだ。


「ところでほまち。わたしのこと下に見ようとしてるでしょ? おねーさんにはなんでもわかってしまうのよ?」


 え、なんでそんなことわかるの? こわい!


「あれ、なんか前にもこんなこと言った気がするなー」


 不思議そうにしている素振りすら、なんだか底知れぬもののように思えてきた。
 とんでもなく察しが良いのに私の戦慄には気づかないのか、気づいていて泳がしているのか、るいぷるは先ほどまでのやりとりなどなかったように場を仕切っていた。

 
「まー、偶然ってあるよねー。あーっ! のんてぃもこっちおいで! 新人ちゃんに教えよう! いろいろと!」

 
 がんちゃんと話していたのんちゃんが呼ばれ、何事だろうという顔でこちらに来た。がんちゃんもるいぷるの教えに興味を惹かれたのかついてきた。

 
「でね、偶然ってあるーって話なんだけど」

 るいぷるは、職場の先輩であるジアンの紹介で『ソルエス』に入った。同僚のアイジも一緒だ。

 ジアンはエスコーラの『パビリャオン(象徴旗)』という大事な『バンデイラ(旗)』を司る『ポルタ・バンデイラ』というダンサーだ。エスコート役のダンサー『メストリ・サラ』とペアの『カザウ』というダンサーである。
 アイジはバテリアで最小の太鼓をバチで高速で叩き高音を担う『タンボリン』という楽器の奏者だ。

「でぇ、メストリのミカちゃんはじあぱいせんの彼氏で、ミカちゃんのおにーちゃんがあきにいってわけよ! わたしはあれじゃん? じあさんの究極妹体じゃない? そんなじあさんもミカちゃんとハッピーウェディングであきにいの義妹! ぎまい……なんかエロくない? って思ったけど、あんましエロくないね。むしろなんかこわ……ぎまい! こわっ……まあそれよ! それになるじゃない? ってことはさー、みーんなあきにいのあれになるわけよ。なのであきにいなんですわ」
 
 全体的な意味というか、言いたいことは何となくわかったけど、言っていることが一個もわからない。

 そんなアキちゃんの幼馴染で親友で仕事仲間でもあったウリや、ジアンの両親であるジャックとチカもメンバー(しかも創立の)だし、同じように親子で入っているメンバーも多い。
 そういうつながりで入っているメンバーが多いチームということだ。言い方を変えれば、縁が強い。

 いのりと知り合えて、入ったらかつて別の競技を一緒に取り組んでいたマレの双子の妹がいて、しかもその子にスルドを教える係になって、仕事を通して知り合った人もメンバーに居て……と、なかなかの偶然を得ていた私も、このチームとの縁があったということだろう。

 にこにこと私とのんちゃんを見ているるいぷる。
 そんな縁の強い私は(がんちゃんやいのりと幼馴染で、しばらく離れてたのにまた会えて今は同じチームにいるのんちゃんも)、新人でももう強い結びつきのある仲間なんだよってことが言いたいのかもしれない。なんてのは深読みのしすぎだろうか。

 見た目は全然違うが、どことなくしょーちゃんを思わせるるいぷるの個性には、人物眼が備わっているように感じた。
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