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【幕間】 祷 cor primária do céu 11

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 ルーブル・アブタビはその外観だけでも美術にさほど関心を持っていなかった啓介を感動させていたし、世界最速と名高いフェラーリ型のジェットコースター『FORMULA ROSSA』の時速240kに及ぶスピードは普段は安全運転の祷の血を騒がせた。
 一同は国に残っている車やモータースポーツが好きなソルエス代表の東風治樹こちはるき(サンバネーム「ハル」)やスルド奏者の菅原響也すがわらきょうや(サンバネーム「キョウさん」)に一瞬想いを馳せたが、圧倒的な速度は物理的に存在している身体を一瞬で彼方へと持って行ってしまい、器の中にある魂は身体を追いかけるのに精いっぱいで、思考などしている余裕は無かった。

 
 出国前に各々で好き勝手に立てていた計画の中では、F1のサーキットやワーナーブラザーズのテーマパークも行きたいなどと言っていたが、長旅の疲れにアクティビティの疲れが乗っかり、更に規格外のスピードに身体を預けた結果穂積がダウンしてしまい、フェラーリ・ワールド園内をしばらく巡り、その後は隣接しているショッピングモール『ヤス・モール』でショッピングやティータイムなどを楽しんだ。

 安定のスタバで糖分を摂って回復に努めている穂積に付き合っている祷と慈杏の元へ、何やら戦利品を獲得した啓介と茉瑠が合流した。
 ナイキ製の中東のサッカーチームのユニフォームを嬉しそうに広げている啓介。啓介は国内外を問わないサッカーファンで、日本では手に入らない品を手に入れられたようで、そのようなことをジアンに説明していた。慈杏の恋人で同じ『カザウ』で『メストリ・サラ』を務める高天美嘉たかまよしひろ(サンバネーム「ミカ」)もまた、海外のサッカーファンだ。彼への土産にすべきだとの啓介の力説に、慈杏は少し気持ちが動いたようで、お茶の後ショップに寄ることにしたらしい。


 モール内は広く、啓介の偏った店舗情報以外にも、ラグジュアリーからファストファッションまで多数のブランドが入っていて、茉瑠と慈杏はそれなりに興奮していたようだが、日本でも見かけるショップが殆どで、特別な割引があるわけではなく、さすがに冷静になったのかブランド品の買い物は控えたようだ。
 それでも、UAE土産を扱うショップで、ブラジルで着まわすつもりだとTシャツなどを購入していたようだ。
 祷ははしゃぐ大人たちを横目に、まだ目的地についてすらいないのに荷物を増やすのはどうなんだろうと思いながらも、アラビア語をあしらったスカーフは可愛くて、自分と妹の分を色違いで買おうなどと思っていた。
 祷はその店舗で、スカーフの他にもデフォルメされたラクダのイラストがあしらわれた雑貨も購入していた。

「結局買うんだね」

 合理性よりも情を優先したように見えた祷に、穂積は微笑んだ。
 穂積も妹の柊には先行してお土産を買うことにしたようだった。
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