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要さんとしょーちゃんの出会い
しおりを挟む要さんは水商売が似合う雰囲気の女性ではなかったし、男性不振ではないけど少々男性に厳しい印象があったので、男性上位的な世界に身を置いてると知ったときは少し驚いたものだが、高校時代からドライで合理的な考え方をしていたから、職業と割り切ったときに業務内容として嫌悪するようなものでないと評価したと考えると、それはそれで要さんらしいとも思った。
要さんにとって、きっかけはあくまでも条件のみで選んだ職場に過ぎなかった『Three ducks』で、長く続けられているのも高給を得られるほどの成果を上げているのも、しょーちゃんとの出会いが影響していた。
ホステスの業務と言うものを理解し、正しく全うすべく努力した要さん。
要さんは何をやらせても完成度が高い。
要さんのホステスは完璧だった。要さんが理解したホステスと言う定型に於いて。
「かめちゃんさー」
ある日しょーちゃんに話しかけられた要さん。
要を略して「かめ」プラスちゃんの呼び名に、要さんは露骨に嫌な顔をしたそうだ。
お店ではキャバクラやクラブほどしっかりとした指名制の接客ではなかったので、望む者以外は源氏名は使わず本名を名乗っていた。
従業員同士の呼び名も、基本は店内で呼ばれる名前を呼び合う。
「私のこと? 小学生みたいなあだ名やめてもらえます?」
「硬いなぁ。でも、その感じ良いよね。それが要の素でしょ? それ、接客でも出せないかなぁ?」
要さんは戸惑った。
要さんは自覚があった。自分の性格は、いわゆる「かわいくない女」と言われそうなタイプのものであると。それで良いと思っていたし、むしろ望んでもいた。
一方、給料の支払いを受ける身としては、その場に相応しく在るべきとの考え方も持っていた。
お客様に求められる「ホステス」と言う存在がお客様とお店に対して果たすべき役割を、完璧にこなしていたつもりだった。
成果は悪くなく、方向性は誤ってはいないと自己評価していた。
そこに、「かわいくない」と言われかねない素を出せと?
「要は頭良いんだろうね。必要な情報を取り入れ、それを自分を使って表現している。感情に振り回されたり左右されたりしないのも、理性でコントロールしているから」
それを動きを見ているだけで掌握し、言語化して相手に伝えられるしょーちゃんも大したものだと要さんは聞きながら思ったのだそうだ。
だから、しょーちゃんの言葉に興味を持った。
「要はさ、正直男の人、ちょっと馬鹿にしてるでしょ? 嫌悪とか苦手とかじゃなくて」
接客時は完璧に理想のホステスを演じている。
しかしそれ以外の場では取り繕うことはしていない。
しょーちゃんが言うような傾向を持っていることを自覚していた要さんは、隠していないのだから傍目からそう見えてしまうことは理解できた。だから図星を突かれたとしてもたいして動揺はない。が、この話がどう転がるのかが見えてこず、要さんは黙っていた。
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