27 / 28
第二十七話「キメラとの最終決戦です。出せる武器は全部出しました」
しおりを挟む
ラウラが拉致され、俺が連れて来られたゼクスシュタイン村は真理の探究者の魔導師、ジクストゥスの魔導、炎の巨人によって焼かれている。
魔導の炎は引火性が高いのか、すべての民家が焼けているかと思うほど、炎は燃え上がり、村人たちはその炎に焼かれていた。
阿鼻叫喚という様相だが、俺たちにできることはなかった。
ことの元凶、ジクストゥスこそ倒せたが、彼が召喚した災害級の魔獣、合成獣キメラが俺たちに迫っている。
このキメラは召喚されたためか明確な知性を持ち、俺の力に興味を示している。だが、それは自らの力とするためで絶体絶命の状態が続いていた。
『観念したか異邦人』と黒ヤギが問い掛けてくるが、それに答える余裕がない。
この状況で俺たちが助かる方法を未だに思いつけず、必死に打開策を考えていたのだ。
『観念したようだ。では、苦しまぬように一思いに命を絶ってやろう』
『それでは詰まらん。少しは愉しませてくれよ』
獅子の言葉に大蛇が反論する。黒いヤギは黙って俺たちを見下ろしているが、獅子と大蛇は言い争っていた。
『一つだけ思いついた作戦があるニャ』とベルが伝えてきた。念話が盗聴されないか心配だったが、キメラは自分たちの会話に夢中で特にこちらに気にしていない。
どんな手だと聞くが、
『盗聴されると厄介だから言えないニャ。成功するかは分からないけど、やるしかないニャ』
ラウラも自分にできることがあれば言ってほしいと目で必死に訴えてくる。しかし、ベルはその視線を無視する。
『おいらと旦那でキメラを倒すニャ。ラウラは遠距離から石礫を投げて牽制するだけでいいニャ。近づいても足手纏いにしかならないからニャ』
ベルはきつい言い方でラウラを安全な場所に配置しようとしていた。ラウラは自分が足手纏いになるという言葉に肩を落とし、悔し涙を浮かべながら頷いた。
「分かりました。あたしは邪魔にならないところで牽制します」
『ところで宇宙世紀の金平糖要塞で大型の機動兵器を倒した方法は覚えているニャ』
ベルはこの緊迫した状況でそんなことを聞いてきた。
「なんだよ、唐突に」
『奴を倒す方法ニャ。おいらと旦那しか知らないから、この話が聞こえても奴には何を言っているのか分からないニャ』
ベルの意図は理解できるが、悠長に話をしている暇はない。しかし、今はベルが思い付いた方法に縋るしかないと話に乗る。
「ビグ○ムのことだな。あの有名なシーンを忘れるわけがない」
ベルはにやりと笑う。
『そうニャ。あの時、ビ○ザムをどうやって倒したニャ?』
俺が何をする気だと聞こうとした時、『いい加減にせぬか』と黒ヤギが言い争う獅子と大蛇を一喝し、キメラが俺たちに向き直った。
『小賢しく何やら相談しておったようだが、貴様らに我らを倒す方法などない。大人しく喰われるがいい』
黒ヤギがそう言うと獅子が一歩踏み出してくる。
『おいらのトリヒターはあれだけじゃないニャ』とベルが不敵に言い放ち、背中から大きな板状の物体が二枚現れ、それぞれがコの字型に折れ曲がっていく。
『何をする気だ? 先ほどで無駄なことは分かったはずだが』を獅子が嘲笑する。
ベルはその嘲笑に対し、小馬鹿にしたような口調で言い返す。
『おいらのトリヒターは進化しているニャ。板状遠隔砲ニャ!』
ベルの言葉が終わった時、そこには全長一メートルほどのトリヒターが浮かんでいた。
その姿にキメラも呆気に取られたのか、攻撃してこない。俺はその間に、俺が持つ最強の攻撃手段、ロケット弾発射器を召喚した。
『こいつはさっきのとはちょっと違うニャ。フィン型なのに漏斗型遠隔砲っていう名前に突っ込みはなしで頼むニャ』というと、二機のフロッセ・トリヒターを合体させてボード型の乗り物を作り上げ、その上に器用に乗った。
俺はその行動に危惧を抱いた。
「乗る必要はないんじゃないか」
『遠隔兵器は動きを読まれて撃破され易いニャ。これは宇宙世紀の常識ニャ。おいらが乗れば、さっきみたいに簡単に撃ち落されることはないニャ』と言って、一気に飛び出していく。
『面白いぜ! 本当に飽きさせないな、お前たちは!』と大蛇が笑うが、黒ヤギは『その程度では大して変わらぬ』と言い、獅子が炎をベルに放つ。ベルはその炎をギリギリで回避する。
念話の通話距離から離れて聞こえないが、『おいらは新型ニャ。この程度の攻撃は予測できるニャ!』とでも言っていそうだ。
回避した直後に急反転し、フロッセ・トリヒターをキメラに向ける。そして、ビームを放った。
その光条は旧型のトリヒターの数倍の太さがあり、キメラの背中に直撃した。しかし、キメラの背には焦げ一つ付いていなかった。
『効かぬわ。その程度の魔導では我に傷を付けることなど叶わぬ』
獅子が嘲笑する。
俺はその隙を突いてロケット弾発射器を発射する。
十メートルほどの至近距離から撃ち込んだロケット弾は見事にキメラの腹部に直撃した。爆発音と共に爆煙が広がるが、煙が消え現れたキメラには傷一つなかった。
このパンツァーシュレックは貫通力の高い成型炸薬弾頭をイメージしており、防御力の高い格上の敵にダメージを与える目的で作っている。少なくとも対戦車ライフルの魔導の三倍の威力を持っており、俺が持つ遠距離攻撃では最強の手段だ。
それが全く効かなかった。
『小賢しいねぇ。折角連携してもお前たちの魔導は効かないんだ。残念だったね。ククク……』
大蛇の笑い声が頭に響く。
(駄目なのか……)
最強の遠距離攻撃手段を封じられ、絶望が心を侵食していく。その絶望が僅かに身体の動きを鈍らせたのか、キメラの突撃に僅かに反応が遅れる。
獅子の人間の胴ほどの前脚が右側から迫ってきた。転移の魔導も発動できず、最大まで上げた反応速度でもこの位置では逃れられない。
「レオさん!」というラウラの叫びがすぐ横から聞こえた。
ドンという衝撃が背中を襲うが、それ以上の力で前に吹き飛ばされていく。
十メートルほど無様に吹き飛ばされたが、獅子の巨大で鋭利な爪の一撃は襲ってこなかった。
キメラの追撃を恐れ、慌てて立ち上がる。
次の瞬間、血の気が失せていく。少し離れた場所に血塗れになったラウラの姿があったからだ。
ラウラは俺の背中を庇いながら、キメラの攻撃が致命的にならないよう、攻撃と同じ方向に飛び、衝撃を軽減させたのだ。しかし、彼女の無防備な背中はキメラの鋭い爪を受けて切り裂かれていた。
俺は「ラウラ!」と叫び、彼女のもとに向かおうとした。
『駄目ニャ! 敵から目を離しては駄目ニャ!』というベルの必死の叫びが俺の足を止めた。
キメラは俺とラウラを吹き飛ばした後、そのまま追撃してきていたのだ。
再び獅子の前脚が振り出される。残像が残るほどのスピードで振り下ろされるが、ギリギリで回避する。
ベルは俺のすぐ上に浮かんでいた。
『ラウラはまだ生きているニャ。早くこのデカ物を倒して治療してやらないといけないニャ』
「でも、どうやって倒すんだ。手がないんだぞ……」
『さっきの話の続きニャ。あのシーンを思い出すニャ……』
しかし、それ以上会話を続けられなかった。キメラが獅子の前脚に加え、大蛇による攻撃が加えてきたからだ。
ベルは俺の近くで器用に敵の攻撃を回避していく。俺も必死にキメラの猛攻を回避する。
『イメージニャ。この世界の魔導はすべてイメージで何とかなるニャ。旦那にもできるはずニャ。目で見るから反応が遅れるニャ。“力”を感じるニャ』
ベルは宇宙世紀の新型だけではなく、遠い銀河の騎士でもあった。
「そんなことで避けられるのか?」と言うものの、炎の巨人の攻撃を回避したときのことを思い浮かべる。
(確かにあの時、時間が間延びした感じがあった。もしかしたら、イメージで何とかなるかもしれない。理屈じゃない。イメージだ……)
剣を静かに構え、呼吸を整える。薄く目を瞑り、力を感じる。
俺の左側から強い憎悪が向かってきた。それは俺の上半身を抉り取ろうとする軌道を取ろうとしていた。俺は身体を右に回転させながらその軌道を避ける。
その直後、更に真上からも襲い掛かってきた。それは俺の頭を狙っているが、その軌跡が白く見えている。その軌跡から身体を外すように動くと、目の前を何かが通過する強い空気を感じた。
「確かに強力だが、当たらなければどうということはない」
『さすがは旦那ニャ! 身体の性能の違いが、戦力の決定的な差でないことを教えてやるニャ!』というベルの声が聞こえる。
俺は“第六感”の強化を施したのだ。今までの身体強化では筋力だけでなく、反射神経を向上させるため、その入力となる視角や聴覚なども強化していた。しかし、今回は五感以外の感覚、第六感を強化するイメージを加えたのだ。
イメージはもちろん宇宙世紀の新型と遠い銀河の光の剣を操る騎士だ。明確な理論などなく、単にイメージしやすいものを素直に自分に投影してみた。それがうまくいったのだ。
『何をしたのだ? 別人のようになったが』
『魔導ではないな。魔素の流れが変わったわけではない』
『本当に飽きさせないね、こいつら。だが、避けているだけじゃ、勝てないんだぜ?』
キメラの攻撃が一旦止んだ。
キメラの頭たちが俺の動きに戸惑っている。しかし、大蛇が言うように避けているだけでは勝機は見出せない。
ベルの言葉で攻撃方法も思いついていた。
奴の攻撃は獅子の口、前脚、大蛇になっている尾だ。つまり、真下はほとんど攻撃手段がないということだ。そこに攻撃を加えるには奴の腹の下に入り込むしかない。
懸念がないわけではなかった。
第六感によって攻撃を回避できるようになったとはいえ、相手は敏捷な魔獣だ。その腹の下に入るというのは至難の技だろう。
それに攻撃を受けにくいだけで、こちらの攻撃が通るとは決まっていない。確かに背中に比べれば腹部の方が皮は薄いのだろうが、魔素を纏って防御しているから、その強力な防御を突破することは容易なことではないだろう。
ベルが俺の前に滑るようにやってきた。
『これからやることは分かっているニャ?』
「ああ、多分お前と同じことを考えている。だが、それで勝てるのか?」
『おいらのフロッセ・トリヒター、旦那のパンツァーシュレック、そして、ミスリルの剣で攻撃すれば何とかなるはずニャ』
これからやろうとしていることは至近距離からの波状攻撃だ。いかに強力な防御力を持っていても、ゼロ距離からの攻撃を何度も食らえばダメージは通るはずだ。そこに活路を見出す。
『おいらが先陣を切るニャ』
「しかし、それじゃ、お前が……」というが、ベルはニヤリと笑って小さく首を横に振る。
『これ以上、犠牲を出すわけにはいかないニャ。悲しいけど、これ戦争なのニャ』
その軽口に俺は怒りを爆発させる。
「そんなフラグを立てるな! みんなで生き残るんだ!」
『冗談ニャ。宇宙空間じゃないから飛び降りればいいだけニャ』と言ってトリヒターを前に進めていく。
業を煮やしたのか、キメラが動き出した。
『これ以上何かさせると面倒だ。一気に叩き潰す』
『確かにこの異邦人は危険だ。我らの知らぬ概念を使ってくる』
『そうだな。遊んでケガしても馬鹿らしい。今度は本気で行くわ』
三者の言葉が終わった瞬間、嵐のような攻撃が始まった。
獅子の口から吐き出される炎、獅子の爪、大蛇の牙、更には今まで攻撃に加わっていなかった黒ヤギまでもが、口から火炎弾を吐き出し始めた。
俺とベルは木の葉のようにその怒涛の攻撃を回避していく。更に倒れているラウラに影響が及ばないように少しずつ場所を変える余裕すらあった。
俺とベルはタイミングを計っていた。
いかに強靭な体力を持つ災害級の魔獣とはいえ、永久に攻撃を続けることはできない。必ずどこかで止まるはずだ。そのタイミングで腹部に入り込み、一気に決着をつける。
『なぜ当たらぬ!』と獅子が吼える。
『どのような理論なのだ』と黒ヤギが冷静に疑問を口にする。
『いい加減にしてくれよ』とそれまで飄々としていた大蛇が苛立つ。
キメラに焦りが生まれ始めている。それでも激しい攻撃は止むことはない。
俺の体力も徐々に限界に近づいている。いかに最小限の動きで回避しているとはいえ、掠めるだけでもこちらはやられてしまうのだ。その緊張感も疲労に拍車をかけている。
(ここは我慢だ。俺も苦しいが、向こうの方が攻撃している分、スタミナを消耗しているはずだ。いくら災害級とはいえ、通常の狩人でも倒すことができる魔獣なんだ。耐え続ければ勝機は来る。必ず……)
その勝機は比較的早い段階でやってきた。
五分ほど猛攻が続いたが、炎を吐き続けていた獅子と黒ヤギが攻撃を控え始め、更に獅子の前脚の攻撃も鋭さを失っている。
大蛇も獅子の身体の動きが悪くなったことで攻撃レンジに入ることが少なくなった。
キメラは僅かに距離を取り唐突に止まった。巨大な獅子の口から荒い息が吐き出されている。
『今ニャ!』と言ってベルがトリヒターごと突っ込んでいく。
俺も右手にパンツァーシュレック、左手にミスリルの剣を持ち、姿勢を低くして突っ込んでいった。
『無駄だ』と獅子が吼えるが、向きを変えるだけで炎による攻撃はない。正面を向き、前脚で迎撃するつもりのようだ。
ベルはその動きに全く反応することなく、地面すれすれを飛んでいく。
あと三メートルほどというところで、一瞬振り返りニヤリと笑った気がした。
フロッセ・トリヒターは僅かに上昇する。
獅子の右前脚が振り下ろされていく。しかし、ベルはそれを避けようとしなかった。
俺は思わず「ベル!」と叫んでいた。しかしキメラへの突撃はやめない。
俺は間延びする時間の中でベルのトリヒターが破壊されていく姿を見つめていた。
時間の流れが元に戻った。そう思った瞬間、フロッセ・トリヒターが大きく爆発する。その爆発によってキメラの右前脚は大きく弾かれる。
巨大なキメラが僅かに揺らいだ。
その時、俺は何も考えずにキメラの下に飛び込む。キメラは爆風によって俺の姿を一瞬見失った。
『どこに行った!』
獅子の念話が響き、頭を必死に動かしている。
『真下だ! 何かするつもりだ!』と大蛇が叫ぶ。
俺は仰向けになりながらロケット弾発射器をキメラの腹に付きつける。そして、「食らえ!」と叫びながら、トリガーを引いた。
発射による爆風が砂塵を巻き上げる。真っ白な砂埃が視界を奪うが、それに構わず三発の砲弾を叩き込む。
砂塵が巻く中、すぐにキメラの腹の下から転がり出る。
『うっ!』という獅子の呻きと『何が起きた』という黒ヤギの言葉が聞こえる。
まだ致命傷を与えていないと確信していた。俺はすぐに立ち上がり、剣を振り上げて高く跳んだ。
『上だ!』という大蛇の言葉に黒ヤギが火炎を放つ。
その火炎を剣で両断すると、痛みに苦しむ獅子の頭に向けて、ミスリルの両手剣を逆手に持って突き入れる。剣は獅子の頭に突き刺さり、更に体重を加えて根元まで押し込んでいく。
「グウォォォ!」という念話ではない獅子の咆哮が空に放たれる。それでも黒ヤギは火炎を放つことをやめず、俺はその火炎に火達磨になって地面に叩きつけられた。
武器を失い、大きなダメージを負った。気力も尽き、立ち上がることすらできない。
俺は死を覚悟した。
既に魔素を纏うこともできず、まともに動くこともできない。キメラが前脚を軽く振るえば俺の命は簡単に消えるだろう。
(ここで死ぬのか……せめて相打ちだったら報われるんだがな……ラウラは大丈夫だろうか。ベルはどうなったんだろう……)
俺はその瞬間をぼんやりと待っていた。
しかし、その瞬間はなかなかやってこない。ゆっくりと目を開けると、ゆっくりと消えゆくキメラの姿があった。
『何者だ、お前は……』という黒ヤギの念話が頭に響く。
十秒ほどでキメラは完全に消え、ミスリルの剣がカランと音を立てて地面に落ちた。
「勝ったのか……」
信じられなかった。
あれほどの強敵と戦い生き残れたことが信じられなかったのだ。
次の瞬間、特攻を掛けた相棒のことを思い出す。
「ベル!」と叫び、立ち上がろうとしたが、ダメージが大きく無様に倒れてしまう。
まずは自分の治療をしなければ動くこともできないと、魔素を循環させて火傷と打ち身を治癒していく。
一、二分で動けるようになり、ゆっくりと死闘の場を見渡していく。
しかし、そこに黒い子猫の姿はなかった。
「ベル!」と叫んでみるが、現れない。
周囲を探し回りたい衝動に駆られるが、俺を庇い重傷を負ったラウラの治療を優先する。慌てて駆け寄ると、背中の大きな傷から大量の血が流れていたが、まだ微かに息をしていた。
だが、その息遣いは弱く、顔も土色に変わっている。
急いで治癒の魔導を掛け、十分ほど続けたところで、傷は消え血色も良くなった。更に五分ほど魔素を巡らせていくと、ゆっくりと目を開く。
「レオさん?」
まだ意識がはっきりしていないのか、ぼんやりとした表情で俺の名を呼んだ。
「ああ。ここにいる。もう大丈夫だ。全部終わった」
そういうと安心したように眠りに就いた。
魔導の炎は引火性が高いのか、すべての民家が焼けているかと思うほど、炎は燃え上がり、村人たちはその炎に焼かれていた。
阿鼻叫喚という様相だが、俺たちにできることはなかった。
ことの元凶、ジクストゥスこそ倒せたが、彼が召喚した災害級の魔獣、合成獣キメラが俺たちに迫っている。
このキメラは召喚されたためか明確な知性を持ち、俺の力に興味を示している。だが、それは自らの力とするためで絶体絶命の状態が続いていた。
『観念したか異邦人』と黒ヤギが問い掛けてくるが、それに答える余裕がない。
この状況で俺たちが助かる方法を未だに思いつけず、必死に打開策を考えていたのだ。
『観念したようだ。では、苦しまぬように一思いに命を絶ってやろう』
『それでは詰まらん。少しは愉しませてくれよ』
獅子の言葉に大蛇が反論する。黒いヤギは黙って俺たちを見下ろしているが、獅子と大蛇は言い争っていた。
『一つだけ思いついた作戦があるニャ』とベルが伝えてきた。念話が盗聴されないか心配だったが、キメラは自分たちの会話に夢中で特にこちらに気にしていない。
どんな手だと聞くが、
『盗聴されると厄介だから言えないニャ。成功するかは分からないけど、やるしかないニャ』
ラウラも自分にできることがあれば言ってほしいと目で必死に訴えてくる。しかし、ベルはその視線を無視する。
『おいらと旦那でキメラを倒すニャ。ラウラは遠距離から石礫を投げて牽制するだけでいいニャ。近づいても足手纏いにしかならないからニャ』
ベルはきつい言い方でラウラを安全な場所に配置しようとしていた。ラウラは自分が足手纏いになるという言葉に肩を落とし、悔し涙を浮かべながら頷いた。
「分かりました。あたしは邪魔にならないところで牽制します」
『ところで宇宙世紀の金平糖要塞で大型の機動兵器を倒した方法は覚えているニャ』
ベルはこの緊迫した状況でそんなことを聞いてきた。
「なんだよ、唐突に」
『奴を倒す方法ニャ。おいらと旦那しか知らないから、この話が聞こえても奴には何を言っているのか分からないニャ』
ベルの意図は理解できるが、悠長に話をしている暇はない。しかし、今はベルが思い付いた方法に縋るしかないと話に乗る。
「ビグ○ムのことだな。あの有名なシーンを忘れるわけがない」
ベルはにやりと笑う。
『そうニャ。あの時、ビ○ザムをどうやって倒したニャ?』
俺が何をする気だと聞こうとした時、『いい加減にせぬか』と黒ヤギが言い争う獅子と大蛇を一喝し、キメラが俺たちに向き直った。
『小賢しく何やら相談しておったようだが、貴様らに我らを倒す方法などない。大人しく喰われるがいい』
黒ヤギがそう言うと獅子が一歩踏み出してくる。
『おいらのトリヒターはあれだけじゃないニャ』とベルが不敵に言い放ち、背中から大きな板状の物体が二枚現れ、それぞれがコの字型に折れ曲がっていく。
『何をする気だ? 先ほどで無駄なことは分かったはずだが』を獅子が嘲笑する。
ベルはその嘲笑に対し、小馬鹿にしたような口調で言い返す。
『おいらのトリヒターは進化しているニャ。板状遠隔砲ニャ!』
ベルの言葉が終わった時、そこには全長一メートルほどのトリヒターが浮かんでいた。
その姿にキメラも呆気に取られたのか、攻撃してこない。俺はその間に、俺が持つ最強の攻撃手段、ロケット弾発射器を召喚した。
『こいつはさっきのとはちょっと違うニャ。フィン型なのに漏斗型遠隔砲っていう名前に突っ込みはなしで頼むニャ』というと、二機のフロッセ・トリヒターを合体させてボード型の乗り物を作り上げ、その上に器用に乗った。
俺はその行動に危惧を抱いた。
「乗る必要はないんじゃないか」
『遠隔兵器は動きを読まれて撃破され易いニャ。これは宇宙世紀の常識ニャ。おいらが乗れば、さっきみたいに簡単に撃ち落されることはないニャ』と言って、一気に飛び出していく。
『面白いぜ! 本当に飽きさせないな、お前たちは!』と大蛇が笑うが、黒ヤギは『その程度では大して変わらぬ』と言い、獅子が炎をベルに放つ。ベルはその炎をギリギリで回避する。
念話の通話距離から離れて聞こえないが、『おいらは新型ニャ。この程度の攻撃は予測できるニャ!』とでも言っていそうだ。
回避した直後に急反転し、フロッセ・トリヒターをキメラに向ける。そして、ビームを放った。
その光条は旧型のトリヒターの数倍の太さがあり、キメラの背中に直撃した。しかし、キメラの背には焦げ一つ付いていなかった。
『効かぬわ。その程度の魔導では我に傷を付けることなど叶わぬ』
獅子が嘲笑する。
俺はその隙を突いてロケット弾発射器を発射する。
十メートルほどの至近距離から撃ち込んだロケット弾は見事にキメラの腹部に直撃した。爆発音と共に爆煙が広がるが、煙が消え現れたキメラには傷一つなかった。
このパンツァーシュレックは貫通力の高い成型炸薬弾頭をイメージしており、防御力の高い格上の敵にダメージを与える目的で作っている。少なくとも対戦車ライフルの魔導の三倍の威力を持っており、俺が持つ遠距離攻撃では最強の手段だ。
それが全く効かなかった。
『小賢しいねぇ。折角連携してもお前たちの魔導は効かないんだ。残念だったね。ククク……』
大蛇の笑い声が頭に響く。
(駄目なのか……)
最強の遠距離攻撃手段を封じられ、絶望が心を侵食していく。その絶望が僅かに身体の動きを鈍らせたのか、キメラの突撃に僅かに反応が遅れる。
獅子の人間の胴ほどの前脚が右側から迫ってきた。転移の魔導も発動できず、最大まで上げた反応速度でもこの位置では逃れられない。
「レオさん!」というラウラの叫びがすぐ横から聞こえた。
ドンという衝撃が背中を襲うが、それ以上の力で前に吹き飛ばされていく。
十メートルほど無様に吹き飛ばされたが、獅子の巨大で鋭利な爪の一撃は襲ってこなかった。
キメラの追撃を恐れ、慌てて立ち上がる。
次の瞬間、血の気が失せていく。少し離れた場所に血塗れになったラウラの姿があったからだ。
ラウラは俺の背中を庇いながら、キメラの攻撃が致命的にならないよう、攻撃と同じ方向に飛び、衝撃を軽減させたのだ。しかし、彼女の無防備な背中はキメラの鋭い爪を受けて切り裂かれていた。
俺は「ラウラ!」と叫び、彼女のもとに向かおうとした。
『駄目ニャ! 敵から目を離しては駄目ニャ!』というベルの必死の叫びが俺の足を止めた。
キメラは俺とラウラを吹き飛ばした後、そのまま追撃してきていたのだ。
再び獅子の前脚が振り出される。残像が残るほどのスピードで振り下ろされるが、ギリギリで回避する。
ベルは俺のすぐ上に浮かんでいた。
『ラウラはまだ生きているニャ。早くこのデカ物を倒して治療してやらないといけないニャ』
「でも、どうやって倒すんだ。手がないんだぞ……」
『さっきの話の続きニャ。あのシーンを思い出すニャ……』
しかし、それ以上会話を続けられなかった。キメラが獅子の前脚に加え、大蛇による攻撃が加えてきたからだ。
ベルは俺の近くで器用に敵の攻撃を回避していく。俺も必死にキメラの猛攻を回避する。
『イメージニャ。この世界の魔導はすべてイメージで何とかなるニャ。旦那にもできるはずニャ。目で見るから反応が遅れるニャ。“力”を感じるニャ』
ベルは宇宙世紀の新型だけではなく、遠い銀河の騎士でもあった。
「そんなことで避けられるのか?」と言うものの、炎の巨人の攻撃を回避したときのことを思い浮かべる。
(確かにあの時、時間が間延びした感じがあった。もしかしたら、イメージで何とかなるかもしれない。理屈じゃない。イメージだ……)
剣を静かに構え、呼吸を整える。薄く目を瞑り、力を感じる。
俺の左側から強い憎悪が向かってきた。それは俺の上半身を抉り取ろうとする軌道を取ろうとしていた。俺は身体を右に回転させながらその軌道を避ける。
その直後、更に真上からも襲い掛かってきた。それは俺の頭を狙っているが、その軌跡が白く見えている。その軌跡から身体を外すように動くと、目の前を何かが通過する強い空気を感じた。
「確かに強力だが、当たらなければどうということはない」
『さすがは旦那ニャ! 身体の性能の違いが、戦力の決定的な差でないことを教えてやるニャ!』というベルの声が聞こえる。
俺は“第六感”の強化を施したのだ。今までの身体強化では筋力だけでなく、反射神経を向上させるため、その入力となる視角や聴覚なども強化していた。しかし、今回は五感以外の感覚、第六感を強化するイメージを加えたのだ。
イメージはもちろん宇宙世紀の新型と遠い銀河の光の剣を操る騎士だ。明確な理論などなく、単にイメージしやすいものを素直に自分に投影してみた。それがうまくいったのだ。
『何をしたのだ? 別人のようになったが』
『魔導ではないな。魔素の流れが変わったわけではない』
『本当に飽きさせないね、こいつら。だが、避けているだけじゃ、勝てないんだぜ?』
キメラの攻撃が一旦止んだ。
キメラの頭たちが俺の動きに戸惑っている。しかし、大蛇が言うように避けているだけでは勝機は見出せない。
ベルの言葉で攻撃方法も思いついていた。
奴の攻撃は獅子の口、前脚、大蛇になっている尾だ。つまり、真下はほとんど攻撃手段がないということだ。そこに攻撃を加えるには奴の腹の下に入り込むしかない。
懸念がないわけではなかった。
第六感によって攻撃を回避できるようになったとはいえ、相手は敏捷な魔獣だ。その腹の下に入るというのは至難の技だろう。
それに攻撃を受けにくいだけで、こちらの攻撃が通るとは決まっていない。確かに背中に比べれば腹部の方が皮は薄いのだろうが、魔素を纏って防御しているから、その強力な防御を突破することは容易なことではないだろう。
ベルが俺の前に滑るようにやってきた。
『これからやることは分かっているニャ?』
「ああ、多分お前と同じことを考えている。だが、それで勝てるのか?」
『おいらのフロッセ・トリヒター、旦那のパンツァーシュレック、そして、ミスリルの剣で攻撃すれば何とかなるはずニャ』
これからやろうとしていることは至近距離からの波状攻撃だ。いかに強力な防御力を持っていても、ゼロ距離からの攻撃を何度も食らえばダメージは通るはずだ。そこに活路を見出す。
『おいらが先陣を切るニャ』
「しかし、それじゃ、お前が……」というが、ベルはニヤリと笑って小さく首を横に振る。
『これ以上、犠牲を出すわけにはいかないニャ。悲しいけど、これ戦争なのニャ』
その軽口に俺は怒りを爆発させる。
「そんなフラグを立てるな! みんなで生き残るんだ!」
『冗談ニャ。宇宙空間じゃないから飛び降りればいいだけニャ』と言ってトリヒターを前に進めていく。
業を煮やしたのか、キメラが動き出した。
『これ以上何かさせると面倒だ。一気に叩き潰す』
『確かにこの異邦人は危険だ。我らの知らぬ概念を使ってくる』
『そうだな。遊んでケガしても馬鹿らしい。今度は本気で行くわ』
三者の言葉が終わった瞬間、嵐のような攻撃が始まった。
獅子の口から吐き出される炎、獅子の爪、大蛇の牙、更には今まで攻撃に加わっていなかった黒ヤギまでもが、口から火炎弾を吐き出し始めた。
俺とベルは木の葉のようにその怒涛の攻撃を回避していく。更に倒れているラウラに影響が及ばないように少しずつ場所を変える余裕すらあった。
俺とベルはタイミングを計っていた。
いかに強靭な体力を持つ災害級の魔獣とはいえ、永久に攻撃を続けることはできない。必ずどこかで止まるはずだ。そのタイミングで腹部に入り込み、一気に決着をつける。
『なぜ当たらぬ!』と獅子が吼える。
『どのような理論なのだ』と黒ヤギが冷静に疑問を口にする。
『いい加減にしてくれよ』とそれまで飄々としていた大蛇が苛立つ。
キメラに焦りが生まれ始めている。それでも激しい攻撃は止むことはない。
俺の体力も徐々に限界に近づいている。いかに最小限の動きで回避しているとはいえ、掠めるだけでもこちらはやられてしまうのだ。その緊張感も疲労に拍車をかけている。
(ここは我慢だ。俺も苦しいが、向こうの方が攻撃している分、スタミナを消耗しているはずだ。いくら災害級とはいえ、通常の狩人でも倒すことができる魔獣なんだ。耐え続ければ勝機は来る。必ず……)
その勝機は比較的早い段階でやってきた。
五分ほど猛攻が続いたが、炎を吐き続けていた獅子と黒ヤギが攻撃を控え始め、更に獅子の前脚の攻撃も鋭さを失っている。
大蛇も獅子の身体の動きが悪くなったことで攻撃レンジに入ることが少なくなった。
キメラは僅かに距離を取り唐突に止まった。巨大な獅子の口から荒い息が吐き出されている。
『今ニャ!』と言ってベルがトリヒターごと突っ込んでいく。
俺も右手にパンツァーシュレック、左手にミスリルの剣を持ち、姿勢を低くして突っ込んでいった。
『無駄だ』と獅子が吼えるが、向きを変えるだけで炎による攻撃はない。正面を向き、前脚で迎撃するつもりのようだ。
ベルはその動きに全く反応することなく、地面すれすれを飛んでいく。
あと三メートルほどというところで、一瞬振り返りニヤリと笑った気がした。
フロッセ・トリヒターは僅かに上昇する。
獅子の右前脚が振り下ろされていく。しかし、ベルはそれを避けようとしなかった。
俺は思わず「ベル!」と叫んでいた。しかしキメラへの突撃はやめない。
俺は間延びする時間の中でベルのトリヒターが破壊されていく姿を見つめていた。
時間の流れが元に戻った。そう思った瞬間、フロッセ・トリヒターが大きく爆発する。その爆発によってキメラの右前脚は大きく弾かれる。
巨大なキメラが僅かに揺らいだ。
その時、俺は何も考えずにキメラの下に飛び込む。キメラは爆風によって俺の姿を一瞬見失った。
『どこに行った!』
獅子の念話が響き、頭を必死に動かしている。
『真下だ! 何かするつもりだ!』と大蛇が叫ぶ。
俺は仰向けになりながらロケット弾発射器をキメラの腹に付きつける。そして、「食らえ!」と叫びながら、トリガーを引いた。
発射による爆風が砂塵を巻き上げる。真っ白な砂埃が視界を奪うが、それに構わず三発の砲弾を叩き込む。
砂塵が巻く中、すぐにキメラの腹の下から転がり出る。
『うっ!』という獅子の呻きと『何が起きた』という黒ヤギの言葉が聞こえる。
まだ致命傷を与えていないと確信していた。俺はすぐに立ち上がり、剣を振り上げて高く跳んだ。
『上だ!』という大蛇の言葉に黒ヤギが火炎を放つ。
その火炎を剣で両断すると、痛みに苦しむ獅子の頭に向けて、ミスリルの両手剣を逆手に持って突き入れる。剣は獅子の頭に突き刺さり、更に体重を加えて根元まで押し込んでいく。
「グウォォォ!」という念話ではない獅子の咆哮が空に放たれる。それでも黒ヤギは火炎を放つことをやめず、俺はその火炎に火達磨になって地面に叩きつけられた。
武器を失い、大きなダメージを負った。気力も尽き、立ち上がることすらできない。
俺は死を覚悟した。
既に魔素を纏うこともできず、まともに動くこともできない。キメラが前脚を軽く振るえば俺の命は簡単に消えるだろう。
(ここで死ぬのか……せめて相打ちだったら報われるんだがな……ラウラは大丈夫だろうか。ベルはどうなったんだろう……)
俺はその瞬間をぼんやりと待っていた。
しかし、その瞬間はなかなかやってこない。ゆっくりと目を開けると、ゆっくりと消えゆくキメラの姿があった。
『何者だ、お前は……』という黒ヤギの念話が頭に響く。
十秒ほどでキメラは完全に消え、ミスリルの剣がカランと音を立てて地面に落ちた。
「勝ったのか……」
信じられなかった。
あれほどの強敵と戦い生き残れたことが信じられなかったのだ。
次の瞬間、特攻を掛けた相棒のことを思い出す。
「ベル!」と叫び、立ち上がろうとしたが、ダメージが大きく無様に倒れてしまう。
まずは自分の治療をしなければ動くこともできないと、魔素を循環させて火傷と打ち身を治癒していく。
一、二分で動けるようになり、ゆっくりと死闘の場を見渡していく。
しかし、そこに黒い子猫の姿はなかった。
「ベル!」と叫んでみるが、現れない。
周囲を探し回りたい衝動に駆られるが、俺を庇い重傷を負ったラウラの治療を優先する。慌てて駆け寄ると、背中の大きな傷から大量の血が流れていたが、まだ微かに息をしていた。
だが、その息遣いは弱く、顔も土色に変わっている。
急いで治癒の魔導を掛け、十分ほど続けたところで、傷は消え血色も良くなった。更に五分ほど魔素を巡らせていくと、ゆっくりと目を開く。
「レオさん?」
まだ意識がはっきりしていないのか、ぼんやりとした表情で俺の名を呼んだ。
「ああ。ここにいる。もう大丈夫だ。全部終わった」
そういうと安心したように眠りに就いた。
1
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
織田信長の妹姫お市は、異世界でも姫になる
猫パンダ
恋愛
戦国一の美女と言われた、織田信長の妹姫、お市。歴史通りであれば、浅井長政の元へ嫁ぎ、乱世の渦に巻き込まれていく運命であるはずだったーー。しかし、ある日突然、異世界に召喚されてしまう。同じく召喚されてしまった、女子高生と若返ったらしいオバサン。三人揃って、王子達の花嫁候補だなんて、冗談じゃない!
「君は、まるで白百合のように美しい」
「気色の悪い世辞などいりませぬ!」
お市は、元の世界へ帰ることが出来るのだろうか!?
◆完結◆修学旅行……からの異世界転移!不易流行少年少女長編ファンタジー『3年2組 ボクらのクエスト』《全7章》
カワカツ
ファンタジー
修学旅行中のバスが異世界に転落!?
単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが……
構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー!
※1話5分程度。
※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。
〜以下、あらすじ〜
市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。
しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。
車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。
助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。
特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。
『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。
外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。
中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……
不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!
筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい!
※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。
※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
幽霊屋敷の掃除婦
羽鳥紘
ファンタジー
右も左もわからない異世界で、部屋付き食事付き、仕事はマイペースに掃除するだけでOKの超ホワイト職場を見つけたミオ。しかしいざ掃除を始めてみれば、この屋敷、桶は逃げるし箒は消える。この屋敷には何かある? そんなある夜、大勢の人の話声で目覚めたミオが見たものは……■掃除婦は見た! 掃除大好きミオ&お化け嫌いの若き当主ミハイル、何か裏のありそうな執事リエーフ他屋敷の住人が織り成す、古き伯爵家の謎を巡る物語。
続編 https://www.alphapolis.co.jp/novel/452083416/6290232
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる