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第五十五話「拠点」
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4月23日の正午頃。
僕とローザは転移魔術を駆使して悪魔を狩っていた。
他にもオーガの上位種であるオーガウォーリアやオーガロード、トロールの上位種であるトロールバーサーカーやトロールキングがいたが、デーモンの方が圧倒的に危険なため、そちらを優先する。
デーモンたちだが、上位種であるサキュバスやインキュバス、ナイトメアが現れるようになっている。しかし、互いに仲が悪いのか、それとも単体での戦いに自信があるのかは分からないが、ミノタウロスほど連携を取ってくることはなく、各個撃破が可能だった。
ただ、上位種は多重に障壁を張り、精神攻撃を仕掛けてくるので油断はしていない。
障壁を破るには僕のM4カービンの通常弾が4発必要で、更に同じ個所に集中させないと突破できない。
また、精神攻撃は瞬時に発動し、魅了や混乱を引き起こすため、一連射で倒す必要があった。
そのため、奇襲が失敗した場合も深追いはせず、相手の隙を慎重に見極めて再攻撃を掛けるようにしていた。
更に3時間ほどデーモンたちを狩り続けた。僕の銃だけでなく、ローザも刀で攻撃しており、二人のレベルは結構上がっている。
僕がレベル435、ローザが422で、デーモンとほぼ同じレベルになっている。
午後3時頃、アメリアさんと合流するため、モーゼスさんの工房に向かった。
アメリアさんと別れたのは早朝の午前7時頃で、既に8時間近く経っている。無事にいてくれたらいいと思っているが、そのことを口に出すことができずにいた。
それは町で戦っているミスリルランクのシーカーたちの多くが殺されていたからだ。
アメリアさんは彼らより遥かに隠密性に長けているし、モーゼスさんの工房は他の家の地下室より深い場所にあるから、簡単には見つからないと思うが、それでも心配だ。
探知魔術で敵の位置を確認しながら、転移魔術で慎重に移動する。
ローザの手が僅かに震えている気がしたので、アメリアさんが無事か不安に思っているのだろう。その手をしっかりと握り返し、モーゼスさんの工房が見える場所にまで転移する。
そこから工房の中をパッシブ型の探知魔術で確認するが、人の気配がない。
「気配は感じない。まあ、アメリアさんが本気を出したら見つけられる気はしないけどね」
そう言いながらもアクティブ系の探知魔術を使えば発見自体は可能だと思っている。ただし、この状況で魔術を発動すると、敵に発見される可能性があるので使うつもりはなかった。
「とりあえず工房の中に飛ぶよ」
「承知」と短く答える。
彼女の表情は全く変わっていないように見えるが、その瞳には不安が見えるような気がした。
工房の中に飛ぶが、最後に見た時とほとんど変わっていなかった。地下室に向けてゆっくりと歩いていく。
扉の前で予め決めてあった叩き方でノックする。
そして1分ほど待っていると、ゆっくりと扉が開かれた。
そこにはいつも通り埃一つ付いていないメイド服に身を包んだアメリアさんが立っていた。
しかし、表情はいつもの柔らかな笑みではなく、目に涙を浮かべている。
「よくご無事で……」
そう言いながらも周囲を警戒しながら僕たちを招き入れた。僕たちも時間を掛けることが危険だと分かっているので、すぐに中に入っていく。
地下室は試射場が主だが、魔銃の調整用の工房もあり、狭いながらも椅子と机がある。また、モーゼスさんがここで寝てしまうこともあったため、仮眠に使えるソファもあった。
「ライル様、お嬢様をお守りいただき、ありがとうございました」
そう言って大きく頭を下げる。
「いえ、僕が一方的に守っていたんじゃないです。2人で協力して戦っていましたから」
「いや、某はライル殿に世話になりっぱなしだ。ライル殿の探知魔術と転移魔術がなければ、この場にはいなかったはずだ」
そんな僕たちを見て、アメリアさんがクスリと笑う。
「相変わらず仲がよろしいですわね」
その言葉に僕とローザは同時に顔を赤くした。
「アメリアはここにずっと潜んでいたのか?」と話題を変えるためにローザが質問する。
「はい。何度か近くに強い魔物の気配を感じましたが、この中に入ってくることはありませんでした」
この地下室に通じる階段は3階建ての建物の階段と同じほどの段数がある。正確な深さは聞いていないが、8メートルほどあるはずだ。つまり、天井の上には5メートルほどの厚みの土があるということだ。
これほど深いのは試射場という性格から音や振動が漏れないようにモーゼスさんが配慮したためだ。この配慮だが、鍛冶工房は普通に地上にあり、ハンマーの音が結構響いていることから、あまり意味がなかったとモーゼスさんは笑っていた。
これだけ深い地下室は他にはなく、階段の入口も工房の一番奥にあり、一見すると倉庫にしか見えないことも見つからなかった理由だろう。
「これからどうなさるおつもりですか?」とアメリアさんが聞いてきた。
「とりあえず少し休みます。昨夜から戦い続きで、一度仮眠を摂っただけですから」
昨夜の午後九時頃から戦い続けており、1回だけ1時間くらいの仮眠を摂ったが、それ以外はほぼ戦い続けている。
レベルアップの効果なのか、緊張感で感じなかっただけかは分からないが、思ったより疲労感はない。ただ、これから更に強敵と戦うことになるため、少しでも休んでおきたいと思っている。
「では、私が見張っておきますので、お二人はお休みください」
「うむ。2時間ほど休むことにする」とローザが答えるが、これはその頃に大悪魔が現れると予想しているためだ。
グレーターデーモンは450階の門番で、レベル500を超える強敵だ。ブラックランクのラングレーさんたちでも苦戦したと教えてもらっている。
戦闘力は何となく分かるが、ゲートキーパーという性質上、どの程度の探知能力を持っているかなどの情報がない。
そのため、ここも安全とは言い難いのだ。
そのまま、床に寝転がる。
防具も外していないため、寝心地がいいとは決して言えないが、思った以上に疲れていたようで、すぐに意識を手放した。
「……ライル様……ライル様……」という声で目を覚ます。
アメリアさんが起こしてくれたのだが、どんよりと頭が重い。
横には同じように眠そうな顔をしているローザの姿があった。
「さすがに疲れは取れぬな」と言いながら首を軽く振っている。
「敵は?」と聞くと、
「ここに近づいてきた者はおりません。簡単ですが、食事も用意しました」
パンとスープ、ベーコンエッグが用意されていた。
ここには魔導コンロもあり、お湯を沸かすくらいはできるのだが、それで作ってくれたのだろう。
「ありがとうございます」と言って食事を摂る。
「お二人はここを出て戦われるのですね」
「そのつもりです」
「私はどうしたらよいのでしょうか? ご一緒すればお邪魔になりそうですが、ここに隠れているだけというのも……」
アメリアさんとしては隠れていることに忸怩たる思いがあるようだ。
アメリアさんも昨夜からの戦いでレベルを上げ、レベル420になっているそうだが、それでもデーモンと互角に戦えるかどうかという感じだ。そのため、戦い慣れた僕とローザが戦い、アメリアさんにここを守ってもらった方がいい。
「できればここにいてほしいと思います。さっきのように休憩するにしても気配を探れるアメリアさんにいてもらえる方が助かりますから」
アメリアさんは斥候であり、気配を感知する能力が高い。
ローザも気配察知や魔力感知のスキルは持っているが、アメリアさんほど正確ではないため、二人だけの時は僕の探知魔術を主に使っていた。
これから先、さっきまでのように戦い続けることは現実的ではなく、ここを拠点とすることを考えると、探知が得意な人がいてくれる方が助かるのだ。
「分かりました。ですが、私のことはあまり気になさらないでください。何かあれば、私を置いて町から脱出することを選んでいただきますようお願いします。私ならどのような相手でも隠れていられる自信がございますので」
最後の言葉は僕たちが決断しやすいように言った言葉だろう。グレーターデーモンの後に出てくる上位のアンデッドは生命を探知できるという話もある。僕が知っていることだから、当然アメリアさんも知っていることだ。
「分かりました。では、僕たちは行きます」
そう言って地下室の扉を開けた。
僕とローザは転移魔術を駆使して悪魔を狩っていた。
他にもオーガの上位種であるオーガウォーリアやオーガロード、トロールの上位種であるトロールバーサーカーやトロールキングがいたが、デーモンの方が圧倒的に危険なため、そちらを優先する。
デーモンたちだが、上位種であるサキュバスやインキュバス、ナイトメアが現れるようになっている。しかし、互いに仲が悪いのか、それとも単体での戦いに自信があるのかは分からないが、ミノタウロスほど連携を取ってくることはなく、各個撃破が可能だった。
ただ、上位種は多重に障壁を張り、精神攻撃を仕掛けてくるので油断はしていない。
障壁を破るには僕のM4カービンの通常弾が4発必要で、更に同じ個所に集中させないと突破できない。
また、精神攻撃は瞬時に発動し、魅了や混乱を引き起こすため、一連射で倒す必要があった。
そのため、奇襲が失敗した場合も深追いはせず、相手の隙を慎重に見極めて再攻撃を掛けるようにしていた。
更に3時間ほどデーモンたちを狩り続けた。僕の銃だけでなく、ローザも刀で攻撃しており、二人のレベルは結構上がっている。
僕がレベル435、ローザが422で、デーモンとほぼ同じレベルになっている。
午後3時頃、アメリアさんと合流するため、モーゼスさんの工房に向かった。
アメリアさんと別れたのは早朝の午前7時頃で、既に8時間近く経っている。無事にいてくれたらいいと思っているが、そのことを口に出すことができずにいた。
それは町で戦っているミスリルランクのシーカーたちの多くが殺されていたからだ。
アメリアさんは彼らより遥かに隠密性に長けているし、モーゼスさんの工房は他の家の地下室より深い場所にあるから、簡単には見つからないと思うが、それでも心配だ。
探知魔術で敵の位置を確認しながら、転移魔術で慎重に移動する。
ローザの手が僅かに震えている気がしたので、アメリアさんが無事か不安に思っているのだろう。その手をしっかりと握り返し、モーゼスさんの工房が見える場所にまで転移する。
そこから工房の中をパッシブ型の探知魔術で確認するが、人の気配がない。
「気配は感じない。まあ、アメリアさんが本気を出したら見つけられる気はしないけどね」
そう言いながらもアクティブ系の探知魔術を使えば発見自体は可能だと思っている。ただし、この状況で魔術を発動すると、敵に発見される可能性があるので使うつもりはなかった。
「とりあえず工房の中に飛ぶよ」
「承知」と短く答える。
彼女の表情は全く変わっていないように見えるが、その瞳には不安が見えるような気がした。
工房の中に飛ぶが、最後に見た時とほとんど変わっていなかった。地下室に向けてゆっくりと歩いていく。
扉の前で予め決めてあった叩き方でノックする。
そして1分ほど待っていると、ゆっくりと扉が開かれた。
そこにはいつも通り埃一つ付いていないメイド服に身を包んだアメリアさんが立っていた。
しかし、表情はいつもの柔らかな笑みではなく、目に涙を浮かべている。
「よくご無事で……」
そう言いながらも周囲を警戒しながら僕たちを招き入れた。僕たちも時間を掛けることが危険だと分かっているので、すぐに中に入っていく。
地下室は試射場が主だが、魔銃の調整用の工房もあり、狭いながらも椅子と机がある。また、モーゼスさんがここで寝てしまうこともあったため、仮眠に使えるソファもあった。
「ライル様、お嬢様をお守りいただき、ありがとうございました」
そう言って大きく頭を下げる。
「いえ、僕が一方的に守っていたんじゃないです。2人で協力して戦っていましたから」
「いや、某はライル殿に世話になりっぱなしだ。ライル殿の探知魔術と転移魔術がなければ、この場にはいなかったはずだ」
そんな僕たちを見て、アメリアさんがクスリと笑う。
「相変わらず仲がよろしいですわね」
その言葉に僕とローザは同時に顔を赤くした。
「アメリアはここにずっと潜んでいたのか?」と話題を変えるためにローザが質問する。
「はい。何度か近くに強い魔物の気配を感じましたが、この中に入ってくることはありませんでした」
この地下室に通じる階段は3階建ての建物の階段と同じほどの段数がある。正確な深さは聞いていないが、8メートルほどあるはずだ。つまり、天井の上には5メートルほどの厚みの土があるということだ。
これほど深いのは試射場という性格から音や振動が漏れないようにモーゼスさんが配慮したためだ。この配慮だが、鍛冶工房は普通に地上にあり、ハンマーの音が結構響いていることから、あまり意味がなかったとモーゼスさんは笑っていた。
これだけ深い地下室は他にはなく、階段の入口も工房の一番奥にあり、一見すると倉庫にしか見えないことも見つからなかった理由だろう。
「これからどうなさるおつもりですか?」とアメリアさんが聞いてきた。
「とりあえず少し休みます。昨夜から戦い続きで、一度仮眠を摂っただけですから」
昨夜の午後九時頃から戦い続けており、1回だけ1時間くらいの仮眠を摂ったが、それ以外はほぼ戦い続けている。
レベルアップの効果なのか、緊張感で感じなかっただけかは分からないが、思ったより疲労感はない。ただ、これから更に強敵と戦うことになるため、少しでも休んでおきたいと思っている。
「では、私が見張っておきますので、お二人はお休みください」
「うむ。2時間ほど休むことにする」とローザが答えるが、これはその頃に大悪魔が現れると予想しているためだ。
グレーターデーモンは450階の門番で、レベル500を超える強敵だ。ブラックランクのラングレーさんたちでも苦戦したと教えてもらっている。
戦闘力は何となく分かるが、ゲートキーパーという性質上、どの程度の探知能力を持っているかなどの情報がない。
そのため、ここも安全とは言い難いのだ。
そのまま、床に寝転がる。
防具も外していないため、寝心地がいいとは決して言えないが、思った以上に疲れていたようで、すぐに意識を手放した。
「……ライル様……ライル様……」という声で目を覚ます。
アメリアさんが起こしてくれたのだが、どんよりと頭が重い。
横には同じように眠そうな顔をしているローザの姿があった。
「さすがに疲れは取れぬな」と言いながら首を軽く振っている。
「敵は?」と聞くと、
「ここに近づいてきた者はおりません。簡単ですが、食事も用意しました」
パンとスープ、ベーコンエッグが用意されていた。
ここには魔導コンロもあり、お湯を沸かすくらいはできるのだが、それで作ってくれたのだろう。
「ありがとうございます」と言って食事を摂る。
「お二人はここを出て戦われるのですね」
「そのつもりです」
「私はどうしたらよいのでしょうか? ご一緒すればお邪魔になりそうですが、ここに隠れているだけというのも……」
アメリアさんとしては隠れていることに忸怩たる思いがあるようだ。
アメリアさんも昨夜からの戦いでレベルを上げ、レベル420になっているそうだが、それでもデーモンと互角に戦えるかどうかという感じだ。そのため、戦い慣れた僕とローザが戦い、アメリアさんにここを守ってもらった方がいい。
「できればここにいてほしいと思います。さっきのように休憩するにしても気配を探れるアメリアさんにいてもらえる方が助かりますから」
アメリアさんは斥候であり、気配を感知する能力が高い。
ローザも気配察知や魔力感知のスキルは持っているが、アメリアさんほど正確ではないため、二人だけの時は僕の探知魔術を主に使っていた。
これから先、さっきまでのように戦い続けることは現実的ではなく、ここを拠点とすることを考えると、探知が得意な人がいてくれる方が助かるのだ。
「分かりました。ですが、私のことはあまり気になさらないでください。何かあれば、私を置いて町から脱出することを選んでいただきますようお願いします。私ならどのような相手でも隠れていられる自信がございますので」
最後の言葉は僕たちが決断しやすいように言った言葉だろう。グレーターデーモンの後に出てくる上位のアンデッドは生命を探知できるという話もある。僕が知っていることだから、当然アメリアさんも知っていることだ。
「分かりました。では、僕たちは行きます」
そう言って地下室の扉を開けた。
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