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第五十一話「鐘楼内での戦い:前篇」
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4月23日午前7時頃。
迷宮管理事務所の屋上にある鐘楼から、溢れてくる魔物を狙撃し続けている。
モーゼスさんが用意してくれた指向性地雷を使い、多くのオーガやミノタウロスを倒したが、焼け石に水ですぐに50体近くに膨れ上がった。
町への唯一の出口、城門を破壊し始めたため、門にたどり着いた魔物を優先的に狙っている。
「守備隊は無事に町に散ったようだ。アメリアは西に向かった。恐らく、モーゼス殿の工房に行ったのだろう」
ローザには周囲の警戒を頼んでいるので、その時に見えたのだろう。
「それなら心強いね」と言いながら、セミオートマチックにしているM4カービンの引き金を引く。
城門に戦斧を振り下ろそうとしていたミノタウロスの頭に直撃し、光となって消えている。
迷宮から出た魔物だが、出た直後は迷宮内と同じように倒せば光の粒子になって消えてしまう。
しかし、時間が経つと山にいる魔物のように実体を持つようになるが、どの程度の時間が掛かるかは分かっていないらしい。
消えた魔物の後にすぐに別の魔物が入り、城門に取り付いていく。この状況では実体がある方が、死体が邪魔になって助かるのだが、上手くいかない。
唯一の救いは門の前の穴が魔物で埋まっているが、重みで押しつぶされて死に、死体が消えることによって、その都度、足場が下がって不安定になることだ。そのお陰で門を破壊しようと斧を振るうミノタウロスがよろけている。
そんなミノタウロスを5体ほど倒したところで、最上位種であるミノタウロスチャンピオンが僕たちのいる鐘楼を指さした。
その個体の頭に銃弾を撃ち込むが、当たり所が悪かったのか、一撃では倒せず、2発目で倒すことができた。
その間に他の魔物たちも僕たちの場所に気づき、騒ぎ始める。
「見つかったみたいだ」
「仕方なかろう。見つかることは想定済みなのだから」
ローザはそう言いながら、愛刀“黒紅”を抜くが、
「しかし、この場所では某の出番がない」とぼやく。
「そのうちここにも来るだろうし、ここを放棄した後にもいっぱい戦ってもらうから。あと悪いけど、マガジンに弾丸の装填をお願いしたいんだけど」
そう言いながら、空になったマガジンと予備の弾丸が入った箱を収納魔術から取り出して渡す。
「了解だ」と言ってローザは座り、装填を始めた。
30分ほどで200体くらいのオーガ、トロール、ミノタウロスを倒した。しかし、まだ途切れることなく溢れ出てくる。
更に僕がいることも分かっているためか、こちらに向かって雄叫びを上げている。特に何も支障はないのだが、城門を破られたら、ここに殺到してくることだけは間違いない。
「これほど撃っていたとは……銃の方は大丈夫なのだろうか? モーゼス殿は耐久性がどうとか言っていたと思うが?」
弾丸を装填しながら、聞いてきた。既に1000発近く撃っており、以前の銃身なら限界が近づいているところだ。
「アダマンタイトの銃身にしたから、倍はいけるという話だし、恐らく持っている弾丸が尽きるまでは大丈夫だと思う」
そう言うものの、モーゼスさんもこの世界の銃をそこまで使ったことがないので、どこまでもつか自信がないと言っていた。
この先、M4がなくなると厳しくなるが、今の状況ではそうも言っていられない。
更に30分ほど経った午前8時過ぎ。
遂に城門が破られた。城門を破壊したのはミノタウロスの上位種であるミノタウロスナイトだ。
ナイトはミノタウロスにしては珍しく盾を持ち、それを翳して銃弾を防ぎながら、ハルバードで城門を破壊したのだ。
「こちらに向かってくるようだな」とローザが言うが、その口調には余裕があった。
この鐘楼の入口は僕たちでも屈まないと入れないほど小さい。また、鐘を下ろすことができるよう吹き抜けになっているため、階段の幅が1メートル弱しかなく、普人族でもすれ違うのがやっとだ。
そこにヒュームの倍近い体格のオーガやミノタウロスが入ってきたとしても、1体ずつしか戦えないし、足場も悪いから倒すことは容易だ。
そのことが分かっているから、余裕があるのだ。
「問題があるとすれば、我らを無視して町に散ることだろう。ライル殿はどうするつもりだ?」
「相手を怒らせるようにチクチクと攻撃するしかないと思う。それよりもこの後に出てくる悪魔たちの方が厄介だ。何といっても奴らは飛べるし、魔術も使ってくるからね」
「そうだな。だとすれば、少しでもレベルを上げておいた方がよいだろう」
オーガたちの後に出てくるのは悪魔たちだ。
デーモンは身長2メートルほどの強靭な肉体を持ち、魔術と剣術を使う強敵だ。その他にも女淫魔や男淫魔、夢魔などの精神攻撃を得意とする悪魔も出てくるらしい。
悪魔の中で最も危険なのは門番である大悪魔だ。身長2.5メートルほどの屈強な肉体に巨大な剣を持ち、火属性や暗黒属性の上級魔術を使ってくる。
ラングレーさんたちでも1体を相手にするのが精一杯だと言っていた。
悪魔の次はヴァンパイアやワーウルフなどの上位アンデッドだ。その上位種であり、ゲートキーパーであるヴァンパイアロードが現れることまでは分かっている。
ヴァンパイアロードは通常の武器が効かないだけでなく、上級魔術を使い、更に魅了や麻痺、石化などの特殊攻撃も行ってくるらしい。
アンデッドの後に出てくる魔物は分かっていない。他の迷宮の情報から魔法金属系のゴーレムや上位悪魔、キメラやマンティコアなどの魔獣などが出てくるのではないかと言われているが、誰もその階層に行っていないので分からないのだ。
ヴァンパイアロードより先のことは正直あまり考えていない。
グレーターデーモンやヴァンパイアロードでもレベル500を超えており、その後に出てくるゲートキーパーや守護者ならレベル600を超えている可能性がある。
そんな敵を相手に僕の魔銃が通用するのか、通用したとしてもどう戦っていいのか想像すらできない。
そんなことを話しながらも確実に敵を倒していく。
しかし、溢れ出てくる数が多すぎ、破られた城門から次々とオーガたちが町に溢れ出る。そのほとんどが僕たちの方に向かっているが、それでも別の方向に向かうものも少なからずいた。
既に迷宮入口の防衛線に参加していたシーカーたちが脱出してから2時間近くたっており、十分な時間は稼げたと思う。ただ、この先、僕にできることは少しでも引き付けることだけだ。
「城壁に上がってきた。そろそろ、ここの入口に気づくぞ」とローザがいい、僕も城壁に視線を向ける。
上がってきているのは動きが速く体術の心得のあるミノタウロスが中心だ。真下には撃ちにくいので、近づいてくるミノタウロスを集中的に狙うことにした。
城壁の幅は5メートルほどあり、ミノタウロスでも2体並んで走ることができる。そのため、狙撃を開始したものの、すぐに入口に取り付かれてしまった。
「某は階段の踊り場で待ち受ける。ライル殿は最も効率が良い方法で戦ってくれ」
「了解。外の警戒も必要だけど、中で倒した方がレベルアップの効率はいいから、僕も鐘楼の中の敵を狙うことにするよ」
「承知。某もその方が助かる」
そう言って板を跳ね上げ、階段を降りていった。
僕は鐘を鳴らすためのロープを通す穴から狙撃を行う。その穴は一辺1メートルほどあり、板張りの床に腹ばいになれば、階段を上がってくる敵を狙える。
鐘楼の入口の扉が破壊され、ミノタウロスが入ってきた。四つん這いで窮屈そうに入ってきたため、その後頭部を狙う。
命中の衝撃でミノタウロスは頭を床に叩きつけられ、そのまま光の粒子となって消えていく。
その後、数体のミノタウロスを同じ要領で倒したが、敵も少し頭を使ってきた。城門を破壊した時と同じようにミノタウロスナイトが盾を翳して防御しながら入ってきたのだ。
その鋼鉄製の盾は人族が使うものより分厚く、この距離でもM4では貫通させるのがやっとだ。無駄弾を撃つより、確実にダメージを与えた方がいいと考え、ナイトを狙うことを諦める。
「中に入られたぞ!」とローザに叫ぶと、「承知!」という短い気合の篭った声が返ってくる。
ナイトが中に入り、盾を構えて入口を守る。その隙に武器を持たないミノタウロスが素早い身のこなしで入ってきた。
「グラップラーだ! 思ったより速いぞ!」と警告を発しながら、頭に照準を合わせる。
グラップラーは腕も使い、四つ脚の獣のように階段を駆け上がってくる。その速度は人が走るほどで、放っておけばあっという間に上にたどり着くだろう。
それでも僕には余裕があった。
グラップラーの体術をもってしても、狭い階段では曲がる時に速度を緩めざるを得ず、そこで狙い撃てるためだ。
速度が緩んだところで無防備な頭部を狙撃する。グラップラーは一度大きく跳ねると光に変わっていった。
その後、3体連続でグラップラーが侵入してきたが、同じような要領で倒していく。
しかし、水際で食い止めるには限界があった。
ナイトが再び盾を使って僕の射線を防ぐようにしながら、ゆっくりと階段を上がってきたのだ。
迷宮管理事務所の屋上にある鐘楼から、溢れてくる魔物を狙撃し続けている。
モーゼスさんが用意してくれた指向性地雷を使い、多くのオーガやミノタウロスを倒したが、焼け石に水ですぐに50体近くに膨れ上がった。
町への唯一の出口、城門を破壊し始めたため、門にたどり着いた魔物を優先的に狙っている。
「守備隊は無事に町に散ったようだ。アメリアは西に向かった。恐らく、モーゼス殿の工房に行ったのだろう」
ローザには周囲の警戒を頼んでいるので、その時に見えたのだろう。
「それなら心強いね」と言いながら、セミオートマチックにしているM4カービンの引き金を引く。
城門に戦斧を振り下ろそうとしていたミノタウロスの頭に直撃し、光となって消えている。
迷宮から出た魔物だが、出た直後は迷宮内と同じように倒せば光の粒子になって消えてしまう。
しかし、時間が経つと山にいる魔物のように実体を持つようになるが、どの程度の時間が掛かるかは分かっていないらしい。
消えた魔物の後にすぐに別の魔物が入り、城門に取り付いていく。この状況では実体がある方が、死体が邪魔になって助かるのだが、上手くいかない。
唯一の救いは門の前の穴が魔物で埋まっているが、重みで押しつぶされて死に、死体が消えることによって、その都度、足場が下がって不安定になることだ。そのお陰で門を破壊しようと斧を振るうミノタウロスがよろけている。
そんなミノタウロスを5体ほど倒したところで、最上位種であるミノタウロスチャンピオンが僕たちのいる鐘楼を指さした。
その個体の頭に銃弾を撃ち込むが、当たり所が悪かったのか、一撃では倒せず、2発目で倒すことができた。
その間に他の魔物たちも僕たちの場所に気づき、騒ぎ始める。
「見つかったみたいだ」
「仕方なかろう。見つかることは想定済みなのだから」
ローザはそう言いながら、愛刀“黒紅”を抜くが、
「しかし、この場所では某の出番がない」とぼやく。
「そのうちここにも来るだろうし、ここを放棄した後にもいっぱい戦ってもらうから。あと悪いけど、マガジンに弾丸の装填をお願いしたいんだけど」
そう言いながら、空になったマガジンと予備の弾丸が入った箱を収納魔術から取り出して渡す。
「了解だ」と言ってローザは座り、装填を始めた。
30分ほどで200体くらいのオーガ、トロール、ミノタウロスを倒した。しかし、まだ途切れることなく溢れ出てくる。
更に僕がいることも分かっているためか、こちらに向かって雄叫びを上げている。特に何も支障はないのだが、城門を破られたら、ここに殺到してくることだけは間違いない。
「これほど撃っていたとは……銃の方は大丈夫なのだろうか? モーゼス殿は耐久性がどうとか言っていたと思うが?」
弾丸を装填しながら、聞いてきた。既に1000発近く撃っており、以前の銃身なら限界が近づいているところだ。
「アダマンタイトの銃身にしたから、倍はいけるという話だし、恐らく持っている弾丸が尽きるまでは大丈夫だと思う」
そう言うものの、モーゼスさんもこの世界の銃をそこまで使ったことがないので、どこまでもつか自信がないと言っていた。
この先、M4がなくなると厳しくなるが、今の状況ではそうも言っていられない。
更に30分ほど経った午前8時過ぎ。
遂に城門が破られた。城門を破壊したのはミノタウロスの上位種であるミノタウロスナイトだ。
ナイトはミノタウロスにしては珍しく盾を持ち、それを翳して銃弾を防ぎながら、ハルバードで城門を破壊したのだ。
「こちらに向かってくるようだな」とローザが言うが、その口調には余裕があった。
この鐘楼の入口は僕たちでも屈まないと入れないほど小さい。また、鐘を下ろすことができるよう吹き抜けになっているため、階段の幅が1メートル弱しかなく、普人族でもすれ違うのがやっとだ。
そこにヒュームの倍近い体格のオーガやミノタウロスが入ってきたとしても、1体ずつしか戦えないし、足場も悪いから倒すことは容易だ。
そのことが分かっているから、余裕があるのだ。
「問題があるとすれば、我らを無視して町に散ることだろう。ライル殿はどうするつもりだ?」
「相手を怒らせるようにチクチクと攻撃するしかないと思う。それよりもこの後に出てくる悪魔たちの方が厄介だ。何といっても奴らは飛べるし、魔術も使ってくるからね」
「そうだな。だとすれば、少しでもレベルを上げておいた方がよいだろう」
オーガたちの後に出てくるのは悪魔たちだ。
デーモンは身長2メートルほどの強靭な肉体を持ち、魔術と剣術を使う強敵だ。その他にも女淫魔や男淫魔、夢魔などの精神攻撃を得意とする悪魔も出てくるらしい。
悪魔の中で最も危険なのは門番である大悪魔だ。身長2.5メートルほどの屈強な肉体に巨大な剣を持ち、火属性や暗黒属性の上級魔術を使ってくる。
ラングレーさんたちでも1体を相手にするのが精一杯だと言っていた。
悪魔の次はヴァンパイアやワーウルフなどの上位アンデッドだ。その上位種であり、ゲートキーパーであるヴァンパイアロードが現れることまでは分かっている。
ヴァンパイアロードは通常の武器が効かないだけでなく、上級魔術を使い、更に魅了や麻痺、石化などの特殊攻撃も行ってくるらしい。
アンデッドの後に出てくる魔物は分かっていない。他の迷宮の情報から魔法金属系のゴーレムや上位悪魔、キメラやマンティコアなどの魔獣などが出てくるのではないかと言われているが、誰もその階層に行っていないので分からないのだ。
ヴァンパイアロードより先のことは正直あまり考えていない。
グレーターデーモンやヴァンパイアロードでもレベル500を超えており、その後に出てくるゲートキーパーや守護者ならレベル600を超えている可能性がある。
そんな敵を相手に僕の魔銃が通用するのか、通用したとしてもどう戦っていいのか想像すらできない。
そんなことを話しながらも確実に敵を倒していく。
しかし、溢れ出てくる数が多すぎ、破られた城門から次々とオーガたちが町に溢れ出る。そのほとんどが僕たちの方に向かっているが、それでも別の方向に向かうものも少なからずいた。
既に迷宮入口の防衛線に参加していたシーカーたちが脱出してから2時間近くたっており、十分な時間は稼げたと思う。ただ、この先、僕にできることは少しでも引き付けることだけだ。
「城壁に上がってきた。そろそろ、ここの入口に気づくぞ」とローザがいい、僕も城壁に視線を向ける。
上がってきているのは動きが速く体術の心得のあるミノタウロスが中心だ。真下には撃ちにくいので、近づいてくるミノタウロスを集中的に狙うことにした。
城壁の幅は5メートルほどあり、ミノタウロスでも2体並んで走ることができる。そのため、狙撃を開始したものの、すぐに入口に取り付かれてしまった。
「某は階段の踊り場で待ち受ける。ライル殿は最も効率が良い方法で戦ってくれ」
「了解。外の警戒も必要だけど、中で倒した方がレベルアップの効率はいいから、僕も鐘楼の中の敵を狙うことにするよ」
「承知。某もその方が助かる」
そう言って板を跳ね上げ、階段を降りていった。
僕は鐘を鳴らすためのロープを通す穴から狙撃を行う。その穴は一辺1メートルほどあり、板張りの床に腹ばいになれば、階段を上がってくる敵を狙える。
鐘楼の入口の扉が破壊され、ミノタウロスが入ってきた。四つん這いで窮屈そうに入ってきたため、その後頭部を狙う。
命中の衝撃でミノタウロスは頭を床に叩きつけられ、そのまま光の粒子となって消えていく。
その後、数体のミノタウロスを同じ要領で倒したが、敵も少し頭を使ってきた。城門を破壊した時と同じようにミノタウロスナイトが盾を翳して防御しながら入ってきたのだ。
その鋼鉄製の盾は人族が使うものより分厚く、この距離でもM4では貫通させるのがやっとだ。無駄弾を撃つより、確実にダメージを与えた方がいいと考え、ナイトを狙うことを諦める。
「中に入られたぞ!」とローザに叫ぶと、「承知!」という短い気合の篭った声が返ってくる。
ナイトが中に入り、盾を構えて入口を守る。その隙に武器を持たないミノタウロスが素早い身のこなしで入ってきた。
「グラップラーだ! 思ったより速いぞ!」と警告を発しながら、頭に照準を合わせる。
グラップラーは腕も使い、四つ脚の獣のように階段を駆け上がってくる。その速度は人が走るほどで、放っておけばあっという間に上にたどり着くだろう。
それでも僕には余裕があった。
グラップラーの体術をもってしても、狭い階段では曲がる時に速度を緩めざるを得ず、そこで狙い撃てるためだ。
速度が緩んだところで無防備な頭部を狙撃する。グラップラーは一度大きく跳ねると光に変わっていった。
その後、3体連続でグラップラーが侵入してきたが、同じような要領で倒していく。
しかし、水際で食い止めるには限界があった。
ナイトが再び盾を使って僕の射線を防ぐようにしながら、ゆっくりと階段を上がってきたのだ。
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