アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)

愛山雄町

文字の大きさ
上 下
197 / 386
第五部:「巡航戦艦インヴィンシブル」

第二十三話

しおりを挟む
あれから無意識にD組へと足が向くようになっていた。
しぐれにアピールしていた頃より頻繁にだ。

もうしぐれにアピールする必要がなくなったのに気が付くとD組に行ってしまっていて、こっそりと花井の姿を見て帰る。そんな事を繰り返していた。

花井の事が気になってしょうがない。
顔を真っ赤にさせてもじもじとする姿や遠慮がちに話す姿。
全てが可愛くて、もっと一緒にいたいし笑顔が見たいと思ってしまう。
番になれるわけでもないのに何でこんなに気になってしまうのか…。
花井の事を想うだけで何でこんなに胸がドキドキと騒ぐのか。

もうこうなれば認めるしかなかった。
俺のこの気持ちは『恋』で、俺は花井に恋してる―――――。


俺は「よし」と頷くと花井に会う為にD組を訪れた。

が、教室を見回してみても花井の姿はなかった。
今日こそは花井に自分の気持ちを伝えようと思ったのに……。
しょんぼりと肩を落としていると後ろから声をかけられた。

「芦崎くん、どうしたの?まさか僕にアピール…?」

しぐれだった。

「あーちがうちがう。俺相手いるやつにしつこくするつもりないから」

怪訝そうな顔で俺を見るしぐれ。
まぁそりゃそうだよな。じゃあ何でここにいるんだって話だよ。

「―――花井…に……」

「菫くん?菫くんならE組の人に呼ばれて今いないよ?」

「―――え?何で呼ばれて…?」

「何でってアピールじゃない」

「アピール???何の?」

「は?何言ってるの?αがΩを呼び出す理由なんて一つでしょ?菫くんの番にして欲しいってアピールじゃない」

Ω……?番……?
だって―――

「花井はβ……」

「何言ってるのさ。菫くんは立派なΩだよ?フェロモンが薄いからってあんまりふざけた事言ってると僕が赦さないよ?ご機嫌なαだからって何でも赦されるなんて思わないでね?」

怖い顔でギロリと俺の事を睨むがまったく怖くないし気にならない。
そんな事より――――。
花井がΩ………。嘘だ……。だって薄いって言ったってフェロモンに気づかないわけが……。
―――あ、もしかしてシャンプーの匂いだって思ったあれはフェロモンだった?

「―――ごめ…。しぐれ、花井どこに呼び出されたか知ってるか?」

「え?えーと校舎裏だったと思うけど…。え?行くの?それって野暮じゃない?邪魔とか、ルール違反でしょ?」

それでも俺は行かなくちゃ。
しぐれにロクに返事をする事もせず校舎裏に向って走り出していた。

βだって思ってた時から気になっていた。
本当はしぐれにアピールする為に通っていた時も花井の事が可愛いって思っていた。
αとβじゃ番えないからブレーキかけてたけど、もういいかなって思えた。
今日こそ自分の正直な気持ちを伝えて花井が頷いてくれるなら俺は花井の手を取りたいって、この先の未来を一緒に歩いて行きたいって思ってた。
俺はご機嫌なαだからβを愛してもいいんじゃないかって思ったのに。

なのに花井はΩで別のαからアピールされてるとか―――そんなの我慢できるわけがない!

初めてなんだ。
何を失ってでも笑ってた俺が……全く笑えないなんて!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

シーフードミックス

黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。 以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。 ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。 内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...