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第三部:「砲艦戦隊出撃せよ」
第三十一話
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宇宙暦四五一八年七月二日。
ヤシマ星系に進攻した自由星系国家連合軍とゾンファ共和国のヤシマ解放艦隊の戦いはゾンファ軍に脅されたヤシマ残存艦隊の無謀な突撃という形で始まった。
自由星系国家連合軍はロンバルディア連合とラメリク・ラティーヌ共和国がそれぞれ三個艦隊、ヒンド共和国とシャーリア法国のそれぞれ二個艦隊により構成されている。
戦闘教義が大きく異なるため、戦闘艦の構成、指揮命令系統に著しい相違があり、総司令部はあるものの、指揮命令系統の統一は全く図れておらず、全体方針を各司令官の合議により決め、戦術レベルの判断は各国単位で個別に行うことになっていた。
これが如実に現れているのが艦隊の隊形だった。
主力となるロンバルディア連合国軍とラメリク・ラティーヌ共和国軍が中央に、ヒンド共和国軍が左翼、シャーリア法国軍が右翼に配置されているが、各艦隊の間に微妙に距離があった。
これは接近しすぎていると、艦隊同士が接触し混乱することを懸念したためと言われているが、実際には自軍の損害を可能な限り減らすためゾンファが自国以外の艦隊に向かうことを期待したためと言われている。
ゾンファ艦隊の指揮艦、ホアン・ゴングゥル上将はこの“微妙な隙間”を的確に突く。
彼は捨て駒のヤシマ艦隊を最左翼のヒンド共和国軍にぶつけた。ヒンド共和国軍は自軍の半分にも満たないヤシマ艦隊を葬るべく、猛烈な砲撃で迎え撃つ。
ヤシマ艦隊はなすすべもなく撃ち減らされていくが、突進を止めることなく前進する。
それを見た右隣にいるラメリク・ラティーヌ共和国軍が動いた。
ヤシマ艦隊が与しやすいと考え、自らの戦果とすべく前進する。
そこで中央部に間隙が生じた。ゾンファ軍はヒンド共和国軍を攻撃するかのようにヤシマ艦隊の後方に移動した。
ラメリク・ラティーヌ共和国軍はヒンド共和国軍がゾンファ軍を食い止める間に側面に出ようと、ヒンド艦隊の後方を横切る形で移動を開始した。
更に、ロンバルディア連合国軍も同じように考えた。ヒンド艦隊とラメリク艦隊を合わせれば、ゾンファ艦隊とほぼ同じ二万五千隻となる。
ロンバルディア艦隊司令官は両艦隊が敵艦隊を抑えている間に最も美味しいところを持っていこうと、ラメリク艦隊の更に後方を通って、左翼側に出ようと機動を開始した。
こうして、ロンバルディア艦隊とラメリク艦隊は狭い宙域に向かって艦列を伸ばしていくが、最右翼のシャーリア法国軍はゾンファ軍側に向きを変えるだけで積極的に前進しようとしなかった。
ホアンは敵の隊形が崩れた機会を逃さなかった。
ヒンド艦隊がヤシマ艦隊を殲滅することに夢中になる中、猛然と前進を開始したのだ。この時、ゾンファ艦隊とヒンド艦隊の距離は五十光秒を割っていたが、相対速度が〇・〇一Cであり、射程内に入るには三十分以上掛かるはずだった。
しかし、ホアンはここで常識を無視し、〇・〇五Cまで増速した。そして、僅か六分でヒンド艦隊を射程に捉えることに成功する。更にゾンファ艦隊の前方で戦うヤシマ艦隊を無視して砲撃を開始した。
ヒンド艦隊はゾンファ艦隊参戦後、すぐに後退を開始した。だが、その後方にはラメリク艦隊が移動しており、退路を絶たれる形になっていた。
ヒンド艦隊司令官は他の三国の司令に救援を要請するが、主力であるラメリク艦隊、ロンバルディア艦隊は自分たちの後ろにおり、容易には救援に向かえない。
その間にヒンド艦隊は二倍以上の戦力差により徐々にすり潰されていく。唯一、救援が可能だったシャーリア艦隊はジリジリと接近するだけで、積極的に救援に向かおうとしなかった。
彼らは数に劣る自分たちが、ヒンドの次の標的になることを恐れたのだ。
もっとも悲惨だったのはヤシマ艦隊だった。
前後から攻撃を受け、次々と破壊されていくだけでなく、離脱しようとすると艦内にいる政治将校により指揮官が射殺され、前進することしか許されなかったのだ。僅か三十分の戦闘でヤシマ艦隊は文字通り壊滅した。
ホアンはヤシマ艦隊の残骸を横目に更に前進を命じた。
「敵は混乱しておる。この機を逃すな! ヒンド艦隊を殲滅後、ラメリク艦隊の側面を突く!」
この時、ラメリク艦隊司令官も手を拱いていたわけではなかった。ヒンド艦隊が撃ち減らされていく間にヒンド艦隊の左翼側に展開を終えていたのだ。ラメリク艦隊はゾンファ艦隊の右舷側から攻撃を加えようとした。
しかし、ゾンファ艦隊の動きは予想以上に早かった。損害をものともせず、ヒンド艦隊の艦列に突入する。ラメリク艦隊は友軍であるヒンド艦隊に損害を与えることを躊躇った。
この時の各艦隊の位置関係だが、ゾンファ艦隊とヒンド艦隊が中央に、ゾンファ艦隊の進行方向に移動中のロンバルディア艦隊、右舷側にラメリク艦隊、左舷側にシャーリア艦隊があった。ゾンファ艦隊は三ヶ国の艦隊に半包囲される形でヒンド艦隊と戦っていたのだ。
ホアン・ゴングゥル上将に対する評価は人によって分かれることが多いが、この時の戦術に対しては誰もが賞賛の言葉を贈っている。
元々猛将として名を馳せていたが、二倍の敵に対して三方から包囲される危険を冒しながらも前進を命じる豪胆さと、敵の弱点を的確に把握する判断能力に対し、否定的な意見はほとんどなかった。
ホアンはヒンド艦隊の艦列を食い破ると、正面にいるロンバルディア艦隊に襲い掛かった。この時、ロンバルディア艦隊は側面からの攻撃を嫌い、長く伸びた艦列のまま、艦首の向きを変えていた。
しかし、それが仇になった。
長蛇のような薄い艦列は猛将ホアン率いるゾンファ艦隊にとって、好餌でしかなかった。ホアンはヒンド艦隊の残存兵力を無視するよう命じ、そのままの勢いでロンバルディア艦隊に突撃する。
この時、ラメリク艦隊、シャーリア艦隊が側面から攻撃を加え、少なからぬ損害を被ったが、それをものともせずにロンバルディア艦隊の艦列に突入したのだ。
薄く延びた艦列はあっという間に突破され、ゾンファ艦隊は連合艦隊の後方に出ることに成功する。
後方に出たホアンは艦隊を時計回りに旋回させ、再びロンバルディア艦隊の前方に襲い掛かった。
これによって、シャーリア艦隊とラメリク艦隊は戦意を失い、戦場から離脱を開始する。
それを見たホアンは勝利を確信した。
「これで勝ったぞ! 敵を追い込むのだ!」
ホアンは老練な指揮を見せた。
ヒンド艦隊を突破した時のような強引な突撃をやめ、整然とした隊列を組み、ロンバルディア艦隊に圧力をかけていく。
ロンバルディア艦隊はゾンファ艦隊の圧力に押され、徐々にタカマガハラ方向に押し込まれていった。
ロンバルディア艦隊は突然、後方から攻撃を受けた。タカマガハラ公転軌道上に展開されていた浮き砲台からの攻撃だった。
気づいていなかったわけではないが、浮き砲台にまで戦力を回す余裕がなかったのだ。完全な挟み撃ちとなり、ロンバルディア艦は次々と破壊されていく。
決死の覚悟で脱出を試み、半数が離脱に成功した。
ホアンは敵の残存兵力が未だに自軍の戦力以上であることから、窮鼠と化すことを警戒し追撃を行わなかった。
この戦闘は後にタカマガハラ会戦と呼ばれ、ゾンファ共和国にとって久しぶりの大勝利だった。
タカマガハラ会戦の結果は自由星系国家連合軍参加艦艇五万隻のうち、降伏を含む喪失約一万隻、損傷を受けた艦二万隻以上、特にヒンド共和国艦隊は参加一万隻のうち、自国にたどり着けたのは半数以下の四千隻余りであった。
一方のゾンファ側の損害はゾンファ艦隊の戦闘艦二万三千隻のうち、喪失約千隻、中破以上約二千隻、小破約三千隻であり、二倍近い戦力差であったにもかかわらず、損害は五分の一程度という大勝利だった。ただし、ゾンファ側として戦ったヤシマ艦隊は喪失三千隻以上で無傷の艦は皆無であった。
このタカマガハラ会戦におけるホアン・ゴングゥル上将の戦術は、いわゆる“中央突破・背面展開”であり、後に戦術の教本に必ず登場することになる。
ホアンは連合軍艦隊がジャンプポイントに到達する前に、大々的に勝利宣言を行った。
「自由星系国家連合軍将兵に告ぐ! 我がゾンファ共和国及びヤシマに対する敵対行動は完全に失敗に終わった。我が国は平和を愛する国家である。今回のような暴挙に出ないと約束するのであれば、貴君らに対し、追撃は行わない……」
FSU軍艦隊は敗北に打ちひしがれながら、超空間に消えていった。
ヤシマ国民たちも今回の会戦の結果に呆然とするしかなかった。二倍の戦力で勝利し得なかったという事実が重く圧し掛かり、自分たちはゾンファの属国、すなわち奴隷となるしかないと涙する。
意気揚々と勝利の報告を本国に送ったホアンだったが、勝利の余韻に浸れたのは僅か一日だった。
七月四日に情報通報艦がジュンツェン方面のイーグン星系ジャンプポイントに現れ、暗号通信を送ってきたのだ。
その暗号通信の内容は、ジュンツェン星系がアルビオンの大艦隊に急襲されたというものだった。その後、第二報が届き、ジュンツェン防衛艦隊が敗北し、更に兵站基地が破壊されたという情報も付け加えられた。
ヤシマ星系に進攻した自由星系国家連合軍とゾンファ共和国のヤシマ解放艦隊の戦いはゾンファ軍に脅されたヤシマ残存艦隊の無謀な突撃という形で始まった。
自由星系国家連合軍はロンバルディア連合とラメリク・ラティーヌ共和国がそれぞれ三個艦隊、ヒンド共和国とシャーリア法国のそれぞれ二個艦隊により構成されている。
戦闘教義が大きく異なるため、戦闘艦の構成、指揮命令系統に著しい相違があり、総司令部はあるものの、指揮命令系統の統一は全く図れておらず、全体方針を各司令官の合議により決め、戦術レベルの判断は各国単位で個別に行うことになっていた。
これが如実に現れているのが艦隊の隊形だった。
主力となるロンバルディア連合国軍とラメリク・ラティーヌ共和国軍が中央に、ヒンド共和国軍が左翼、シャーリア法国軍が右翼に配置されているが、各艦隊の間に微妙に距離があった。
これは接近しすぎていると、艦隊同士が接触し混乱することを懸念したためと言われているが、実際には自軍の損害を可能な限り減らすためゾンファが自国以外の艦隊に向かうことを期待したためと言われている。
ゾンファ艦隊の指揮艦、ホアン・ゴングゥル上将はこの“微妙な隙間”を的確に突く。
彼は捨て駒のヤシマ艦隊を最左翼のヒンド共和国軍にぶつけた。ヒンド共和国軍は自軍の半分にも満たないヤシマ艦隊を葬るべく、猛烈な砲撃で迎え撃つ。
ヤシマ艦隊はなすすべもなく撃ち減らされていくが、突進を止めることなく前進する。
それを見た右隣にいるラメリク・ラティーヌ共和国軍が動いた。
ヤシマ艦隊が与しやすいと考え、自らの戦果とすべく前進する。
そこで中央部に間隙が生じた。ゾンファ軍はヒンド共和国軍を攻撃するかのようにヤシマ艦隊の後方に移動した。
ラメリク・ラティーヌ共和国軍はヒンド共和国軍がゾンファ軍を食い止める間に側面に出ようと、ヒンド艦隊の後方を横切る形で移動を開始した。
更に、ロンバルディア連合国軍も同じように考えた。ヒンド艦隊とラメリク艦隊を合わせれば、ゾンファ艦隊とほぼ同じ二万五千隻となる。
ロンバルディア艦隊司令官は両艦隊が敵艦隊を抑えている間に最も美味しいところを持っていこうと、ラメリク艦隊の更に後方を通って、左翼側に出ようと機動を開始した。
こうして、ロンバルディア艦隊とラメリク艦隊は狭い宙域に向かって艦列を伸ばしていくが、最右翼のシャーリア法国軍はゾンファ軍側に向きを変えるだけで積極的に前進しようとしなかった。
ホアンは敵の隊形が崩れた機会を逃さなかった。
ヒンド艦隊がヤシマ艦隊を殲滅することに夢中になる中、猛然と前進を開始したのだ。この時、ゾンファ艦隊とヒンド艦隊の距離は五十光秒を割っていたが、相対速度が〇・〇一Cであり、射程内に入るには三十分以上掛かるはずだった。
しかし、ホアンはここで常識を無視し、〇・〇五Cまで増速した。そして、僅か六分でヒンド艦隊を射程に捉えることに成功する。更にゾンファ艦隊の前方で戦うヤシマ艦隊を無視して砲撃を開始した。
ヒンド艦隊はゾンファ艦隊参戦後、すぐに後退を開始した。だが、その後方にはラメリク艦隊が移動しており、退路を絶たれる形になっていた。
ヒンド艦隊司令官は他の三国の司令に救援を要請するが、主力であるラメリク艦隊、ロンバルディア艦隊は自分たちの後ろにおり、容易には救援に向かえない。
その間にヒンド艦隊は二倍以上の戦力差により徐々にすり潰されていく。唯一、救援が可能だったシャーリア艦隊はジリジリと接近するだけで、積極的に救援に向かおうとしなかった。
彼らは数に劣る自分たちが、ヒンドの次の標的になることを恐れたのだ。
もっとも悲惨だったのはヤシマ艦隊だった。
前後から攻撃を受け、次々と破壊されていくだけでなく、離脱しようとすると艦内にいる政治将校により指揮官が射殺され、前進することしか許されなかったのだ。僅か三十分の戦闘でヤシマ艦隊は文字通り壊滅した。
ホアンはヤシマ艦隊の残骸を横目に更に前進を命じた。
「敵は混乱しておる。この機を逃すな! ヒンド艦隊を殲滅後、ラメリク艦隊の側面を突く!」
この時、ラメリク艦隊司令官も手を拱いていたわけではなかった。ヒンド艦隊が撃ち減らされていく間にヒンド艦隊の左翼側に展開を終えていたのだ。ラメリク艦隊はゾンファ艦隊の右舷側から攻撃を加えようとした。
しかし、ゾンファ艦隊の動きは予想以上に早かった。損害をものともせず、ヒンド艦隊の艦列に突入する。ラメリク艦隊は友軍であるヒンド艦隊に損害を与えることを躊躇った。
この時の各艦隊の位置関係だが、ゾンファ艦隊とヒンド艦隊が中央に、ゾンファ艦隊の進行方向に移動中のロンバルディア艦隊、右舷側にラメリク艦隊、左舷側にシャーリア艦隊があった。ゾンファ艦隊は三ヶ国の艦隊に半包囲される形でヒンド艦隊と戦っていたのだ。
ホアン・ゴングゥル上将に対する評価は人によって分かれることが多いが、この時の戦術に対しては誰もが賞賛の言葉を贈っている。
元々猛将として名を馳せていたが、二倍の敵に対して三方から包囲される危険を冒しながらも前進を命じる豪胆さと、敵の弱点を的確に把握する判断能力に対し、否定的な意見はほとんどなかった。
ホアンはヒンド艦隊の艦列を食い破ると、正面にいるロンバルディア艦隊に襲い掛かった。この時、ロンバルディア艦隊は側面からの攻撃を嫌い、長く伸びた艦列のまま、艦首の向きを変えていた。
しかし、それが仇になった。
長蛇のような薄い艦列は猛将ホアン率いるゾンファ艦隊にとって、好餌でしかなかった。ホアンはヒンド艦隊の残存兵力を無視するよう命じ、そのままの勢いでロンバルディア艦隊に突撃する。
この時、ラメリク艦隊、シャーリア艦隊が側面から攻撃を加え、少なからぬ損害を被ったが、それをものともせずにロンバルディア艦隊の艦列に突入したのだ。
薄く延びた艦列はあっという間に突破され、ゾンファ艦隊は連合艦隊の後方に出ることに成功する。
後方に出たホアンは艦隊を時計回りに旋回させ、再びロンバルディア艦隊の前方に襲い掛かった。
これによって、シャーリア艦隊とラメリク艦隊は戦意を失い、戦場から離脱を開始する。
それを見たホアンは勝利を確信した。
「これで勝ったぞ! 敵を追い込むのだ!」
ホアンは老練な指揮を見せた。
ヒンド艦隊を突破した時のような強引な突撃をやめ、整然とした隊列を組み、ロンバルディア艦隊に圧力をかけていく。
ロンバルディア艦隊はゾンファ艦隊の圧力に押され、徐々にタカマガハラ方向に押し込まれていった。
ロンバルディア艦隊は突然、後方から攻撃を受けた。タカマガハラ公転軌道上に展開されていた浮き砲台からの攻撃だった。
気づいていなかったわけではないが、浮き砲台にまで戦力を回す余裕がなかったのだ。完全な挟み撃ちとなり、ロンバルディア艦は次々と破壊されていく。
決死の覚悟で脱出を試み、半数が離脱に成功した。
ホアンは敵の残存兵力が未だに自軍の戦力以上であることから、窮鼠と化すことを警戒し追撃を行わなかった。
この戦闘は後にタカマガハラ会戦と呼ばれ、ゾンファ共和国にとって久しぶりの大勝利だった。
タカマガハラ会戦の結果は自由星系国家連合軍参加艦艇五万隻のうち、降伏を含む喪失約一万隻、損傷を受けた艦二万隻以上、特にヒンド共和国艦隊は参加一万隻のうち、自国にたどり着けたのは半数以下の四千隻余りであった。
一方のゾンファ側の損害はゾンファ艦隊の戦闘艦二万三千隻のうち、喪失約千隻、中破以上約二千隻、小破約三千隻であり、二倍近い戦力差であったにもかかわらず、損害は五分の一程度という大勝利だった。ただし、ゾンファ側として戦ったヤシマ艦隊は喪失三千隻以上で無傷の艦は皆無であった。
このタカマガハラ会戦におけるホアン・ゴングゥル上将の戦術は、いわゆる“中央突破・背面展開”であり、後に戦術の教本に必ず登場することになる。
ホアンは連合軍艦隊がジャンプポイントに到達する前に、大々的に勝利宣言を行った。
「自由星系国家連合軍将兵に告ぐ! 我がゾンファ共和国及びヤシマに対する敵対行動は完全に失敗に終わった。我が国は平和を愛する国家である。今回のような暴挙に出ないと約束するのであれば、貴君らに対し、追撃は行わない……」
FSU軍艦隊は敗北に打ちひしがれながら、超空間に消えていった。
ヤシマ国民たちも今回の会戦の結果に呆然とするしかなかった。二倍の戦力で勝利し得なかったという事実が重く圧し掛かり、自分たちはゾンファの属国、すなわち奴隷となるしかないと涙する。
意気揚々と勝利の報告を本国に送ったホアンだったが、勝利の余韻に浸れたのは僅か一日だった。
七月四日に情報通報艦がジュンツェン方面のイーグン星系ジャンプポイントに現れ、暗号通信を送ってきたのだ。
その暗号通信の内容は、ジュンツェン星系がアルビオンの大艦隊に急襲されたというものだった。その後、第二報が届き、ジュンツェン防衛艦隊が敗北し、更に兵站基地が破壊されたという情報も付け加えられた。
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