9 / 386
第一部:「士官候補生コリングウッド」
第七話
しおりを挟む
艦長室には戦闘指揮所に残るフィラーナ・クイン中尉と軍医を除く六人の士官と、クリフォードら二人の士官候補生が集まった。
士官たちは狭い艦長室の中で窮屈そうに椅子に座り、候補生二人は士官たちの後ろに立っている。
エルマー・マイヤーズ艦長はいつもより力のない声で話し始めた。
「デイジー27がやられた。これからの方針について話をしたい」
そして、コンソールを操作し、星系図と情報を映し出す。
「まず、敵の戦力だが、分かっている範囲で言えば、我が軍の五等級艦並の攻撃力を持つ神戸丸が一隻いる。恐らく支援部隊もどこかに隠れているだろう」
ここで一旦話を区切り、一呼吸おいてから話を続ける。
「こちらは等級外のスループ艦一隻。まともにやり合えば勝機はほとんどない」
そして、全員の表情を確認していく。
明確な意思を示す者はいなかったが、誰もが悲観的な状況に緊張していることが窺えた。
「そこで我々の方針だが、二つの道があると思う。一つは敵の撃滅を狙うこと。もう一つはこの情報をキャメロットの司令部に持ち帰ることだ」
そこで再び全員を見回した。
「時間はあまりないが、みんなの意見を聞きたい」
そう言って、椅子に深々ともたれ掛かる。
慣例通り、副長のアナベラ・グレシャム大尉が口火を切った。
「敵を撃滅すると言ってもブルーベルでは無理でしょう。ここは直ちにキャメロットに向かうべきです」
それに対し、戦術士のオルガ・ロートン大尉が反論する。
「やりようによっては倒せないわけじゃないわよ。神戸丸は攻撃力と防御力はあっても加速性能は商船並。うまく立ち回れば勝機は見えるはず」
“鉄砲屋”と呼ばれる彼女らしい積極論をぶち上げた。
「うまく立ち回ると言って、何か策があるわけ? あの主砲なら一発で戦闘不能、二発でデイジーの二の舞よ」
グレシャムがロートンに具体策があるのかと問い詰める。
ロートンが更に口を開こうとした時、航法長のブランドン・デンゼル大尉が発言した。
「私も副長の意見に賛成だな。小惑星帯の中から出てこなければ、機動力を生かすも何もない」
その後、デリック・トンプソン機関長と最年少のナディア・ニコール中尉の意見が出されるが、二人の意見はどちらも艦長の命令に従うと言うものだった。
マイヤーズ艦長は立っている士官候補生に視線を向けた。
「君たちに何か意見はあるか?」
「自分は艦長の命令に従います。ですが、デイジーの仇は取りたいと思っています」
先任のサミュエル・ラングフォード候補生はそう答え、具体的な案は提示しなかった。
クリフォードは全員の視線が自分に向けられていることに緊張したが、直立不動の姿勢で発言する。
「じ、自分は闘うべきだと思います」
「コリングウッド候補生、それは決意表明か。それとも根拠があることなのか?」
マイヤーズはそう言って先を促す。
クリフォードは緊張しながらも、ゆっくりと根拠を述べていく。
「神戸丸を放置することは危険です。理由は二つあります」
そこでマイヤーズが目で先を促した。クリフォードはそれに小さく頷くと、自らの意見をはっきりとした口調で話し始める。
「一つは直接的な危険です。我々が撤退すれば、神戸丸に一ヶ月近い期間、行動の自由を与えてしまいます。現状では商船も出航を見合わせていますが、あくまで自主的な措置です。特にヤシマ側ではこちらの状況が分かりませんから、いつ商船がこの星系に入ってもおかしくありません。つまり、この一ヶ月間に更に商船に被害が出る可能性が高いということが第一の理由です」
ここで一度、深呼吸をするように息を吸い込み、更に続けていく。
「二つ目の理由は、敵は既に長期間活動している可能性が高いということです。これは敵が補給拠点を保有している可能性を示唆しています。もし、ベースが存在するなら、これを放置することで既成事実化し、このトリビューン星系の実効支配に繋がる可能性があります」
マイヤーズは小さく頷くと、質問する。
「君はあの神戸丸が海賊や私掠船ではなく、通商破壊艦だと思っているわけだな」
「はい、艦長。海賊か私掠船であるなら、我々がここに来たと分かった瞬間に隠れるはずです。アルビオン軍に喧嘩を売っても儲けになりませんから」
マイヤーズは「なるほどな」と呟き、小さく頷いてクリフォードに先に進むよう促す。
「ですから、ゾンファの可能性が一番高いと思います。スヴァローグがここで活動するには理由が希薄ですし、第一、補給が困難すぎます。ゾンファならジュンツェン星系から長距離輸送艦を派遣すれば、補給自体はそれほど難しくないですから、可能性としてはゾンファが一番高いと思っています」
クリフォードは話し始めより、緊張が解れたようで口調が滑らかになっていった。
「言いたいことは分かったわ。でも、どうやってあのデカブツとやりあうわけ? こちらの武器は多分効かないわよ」
グレシャムがいつもより砕けた口調、士官同士のような口調で話しかける。
それに対しクリフォードは真剣な表情で答えた。
「はい、副長。直接は難しいですが、やりようはあると思います。例えば、我々が撤退する姿勢を見せれば、一旦ベースに戻るでしょう。ベースに入ったところを内部から破壊する方法が一番いいのではないかと……」
そこでロートンがニヤリと笑いながら口を挟む。
「坊やにしては大胆なことを言うわね。基地への潜入作戦なんて何年もやったことがないし、宙兵隊もいないから成功率は低いわよ」
クリフォードはその問いを予想していたのか、全く慌てなかった。
「はい、大尉。ですが、基地への潜入作戦が失敗してもブルーベルは残ります。それからキャメロットに向かっても祖国の安全の面では何のリスクもありません」
そう答えるものの、「リスクは潜入部隊の命になりますが……」と自分が大胆な発言をしていると声が小さくなっていった。
「こちらが撤退したと思わせるとしても、すぐにばれるのではないか?」
デンゼルが疑問点を口にする。
「通商破壊艦のセンサーがどの程度かは分かりませんが、幸いスパルタン星系へのジャンプポイントは第二惑星の陰に入れることができたと思います。そこでステルス機能を最大限に効かせてから、小惑星帯に入れば、早期警戒艦並のセンサー類を装備していない限り見つけられないのではないでしょうか」
マイヤーズ艦長は他に意見がないか確認した後、全員に礼を伝える。
「参考になった。感謝する」
そして、立ち上がると、解散を命じた。
「十分後に全艦放送で決定を通知する。解散」
艦長室を出たクリフォードは、士官連中を相手に演説をぶち上げてしまったと、耳まで真っ赤になっていた。
(ああ、調子に乗りすぎた……考えが間違っているとは思わないけど、未熟者が言うべき内容を超えていたな……)
彼はラングフォードの如才ない対応こそが、自分に必要なことだと真剣に考えている。
(彼のようにほとんど任官しているような候補生でも、ああいう態度を取るのに、どうして僕にはできないんだろう……)
艦長室から緊急対策所のあるDデッキに向かう途中、ラングフォード候補生が声を掛けてきた。
「よう、ミスター・コリングウッド参謀長殿。さっきのは凄い演説だったな」
嫌みたらしく言った後、慇懃無礼な口調で付け加える。
「さすがにお偉い貴族様で、親父殿が偉大だと何でもご存知だ。出世しても私のことは忘れないで下さいよ。上官殿」
それだけ言うと、自分の持ち場であるCICに向かうため、Bデッキに上がっていった。
クリフォードは、彼との関係がこのまま続くと思うと気が重くなった。
しかし、デイジー27が沈められた事実を思い出し、軍人でいる限りは死と隣り合わせであり、細かいことは気にしないようにしようと気持ちを切り替える。
ERCに着いて五分ほど経った頃、艦内放送から艦長の声が聞こえてきた。
「総員に告ぐ。艦長のマイヤーズだ。そのまま聞いて欲しい」
少し間があってから、マイヤーズの話が始まった。
「我々は先ほど僚艦のデイジー27号を失った。そして、敵の正体、規模は分からず、我々に手を貸してくれる僚艦もいない……」
その言葉に艦内は静まり返る。
「だが、我々はアルビオンの軍人だ。この星系、ひいては祖国を守るため、敵の企図するところを挫かなくてはならない!」
声を強めてそう言った後、再び声のトーンを戻した。
「私はこの星系に残り、奴らと雌雄を決することに決めた。確かに強敵かもしれない。だが、我々にはアルビオン軍のすばらしい伝統がある。敵を挫き、祖国を、家族を守るため、力をあわせて欲しい。諸君らの健闘に期待する。以上!」
艦長の演説が終わると、各所で歓声が上がっていた。
ここERCでも副長を始め、掌帆長やベテランの兵曹たちまで拳を振り上げている。
(凄い。みんな死ぬかもしれないのに、こんなに興奮して。艦長はやっぱり別格なんだな)
そう考えている自分も皆と混じり、同じように歓声をあげ、拳を振り上げていたが、それがおかしいとは全く思わなかった。
興奮が冷めてきた頃、艦長からの放送が入る。
「戦闘配置を解き、通常シフトに戻す。副長、航法長、戦術士は手が空き次第、艦長室に来て欲しい。以上」
グレシャムは「候補生。掌帆長と後始末を頼むよ」と言って艦長室に上がろうとしたが、突然振り返った。
「作戦案を提出するよう言われるかもしれないから考えておくのよ」
それだけ言うと、再び走り出した。
グレシャムは艦長室に向かいながら、クリフォードのことを考えていた。
(しかし、ビックリだったわ。あの坊やがあそこまで考えているなんて。航法計算で四苦八苦していた姿からは想像できないわ)
そして、指導官のデンゼル大尉が言っていたことを思い出していた。
(そう言えば、ブランドンが“彼の洞察力は凄いよ。このまま行けば偉大な指揮官になるんじゃないかな”って言っていたわね。さっきの彼の考察も言われてしまえば当たり前のことだと思う。そう、ヒントさえ貰えれば私でも考えられるわ……でも、そこが違う。指揮官は孤独。一人で考えて、答えを出さなければいけない。今回の突然の方針転換も、もしかしたら……考えすぎかしら?)
彼女は艦長室の前で呼吸を整えてから、入室の申請を行った。
士官たちは狭い艦長室の中で窮屈そうに椅子に座り、候補生二人は士官たちの後ろに立っている。
エルマー・マイヤーズ艦長はいつもより力のない声で話し始めた。
「デイジー27がやられた。これからの方針について話をしたい」
そして、コンソールを操作し、星系図と情報を映し出す。
「まず、敵の戦力だが、分かっている範囲で言えば、我が軍の五等級艦並の攻撃力を持つ神戸丸が一隻いる。恐らく支援部隊もどこかに隠れているだろう」
ここで一旦話を区切り、一呼吸おいてから話を続ける。
「こちらは等級外のスループ艦一隻。まともにやり合えば勝機はほとんどない」
そして、全員の表情を確認していく。
明確な意思を示す者はいなかったが、誰もが悲観的な状況に緊張していることが窺えた。
「そこで我々の方針だが、二つの道があると思う。一つは敵の撃滅を狙うこと。もう一つはこの情報をキャメロットの司令部に持ち帰ることだ」
そこで再び全員を見回した。
「時間はあまりないが、みんなの意見を聞きたい」
そう言って、椅子に深々ともたれ掛かる。
慣例通り、副長のアナベラ・グレシャム大尉が口火を切った。
「敵を撃滅すると言ってもブルーベルでは無理でしょう。ここは直ちにキャメロットに向かうべきです」
それに対し、戦術士のオルガ・ロートン大尉が反論する。
「やりようによっては倒せないわけじゃないわよ。神戸丸は攻撃力と防御力はあっても加速性能は商船並。うまく立ち回れば勝機は見えるはず」
“鉄砲屋”と呼ばれる彼女らしい積極論をぶち上げた。
「うまく立ち回ると言って、何か策があるわけ? あの主砲なら一発で戦闘不能、二発でデイジーの二の舞よ」
グレシャムがロートンに具体策があるのかと問い詰める。
ロートンが更に口を開こうとした時、航法長のブランドン・デンゼル大尉が発言した。
「私も副長の意見に賛成だな。小惑星帯の中から出てこなければ、機動力を生かすも何もない」
その後、デリック・トンプソン機関長と最年少のナディア・ニコール中尉の意見が出されるが、二人の意見はどちらも艦長の命令に従うと言うものだった。
マイヤーズ艦長は立っている士官候補生に視線を向けた。
「君たちに何か意見はあるか?」
「自分は艦長の命令に従います。ですが、デイジーの仇は取りたいと思っています」
先任のサミュエル・ラングフォード候補生はそう答え、具体的な案は提示しなかった。
クリフォードは全員の視線が自分に向けられていることに緊張したが、直立不動の姿勢で発言する。
「じ、自分は闘うべきだと思います」
「コリングウッド候補生、それは決意表明か。それとも根拠があることなのか?」
マイヤーズはそう言って先を促す。
クリフォードは緊張しながらも、ゆっくりと根拠を述べていく。
「神戸丸を放置することは危険です。理由は二つあります」
そこでマイヤーズが目で先を促した。クリフォードはそれに小さく頷くと、自らの意見をはっきりとした口調で話し始める。
「一つは直接的な危険です。我々が撤退すれば、神戸丸に一ヶ月近い期間、行動の自由を与えてしまいます。現状では商船も出航を見合わせていますが、あくまで自主的な措置です。特にヤシマ側ではこちらの状況が分かりませんから、いつ商船がこの星系に入ってもおかしくありません。つまり、この一ヶ月間に更に商船に被害が出る可能性が高いということが第一の理由です」
ここで一度、深呼吸をするように息を吸い込み、更に続けていく。
「二つ目の理由は、敵は既に長期間活動している可能性が高いということです。これは敵が補給拠点を保有している可能性を示唆しています。もし、ベースが存在するなら、これを放置することで既成事実化し、このトリビューン星系の実効支配に繋がる可能性があります」
マイヤーズは小さく頷くと、質問する。
「君はあの神戸丸が海賊や私掠船ではなく、通商破壊艦だと思っているわけだな」
「はい、艦長。海賊か私掠船であるなら、我々がここに来たと分かった瞬間に隠れるはずです。アルビオン軍に喧嘩を売っても儲けになりませんから」
マイヤーズは「なるほどな」と呟き、小さく頷いてクリフォードに先に進むよう促す。
「ですから、ゾンファの可能性が一番高いと思います。スヴァローグがここで活動するには理由が希薄ですし、第一、補給が困難すぎます。ゾンファならジュンツェン星系から長距離輸送艦を派遣すれば、補給自体はそれほど難しくないですから、可能性としてはゾンファが一番高いと思っています」
クリフォードは話し始めより、緊張が解れたようで口調が滑らかになっていった。
「言いたいことは分かったわ。でも、どうやってあのデカブツとやりあうわけ? こちらの武器は多分効かないわよ」
グレシャムがいつもより砕けた口調、士官同士のような口調で話しかける。
それに対しクリフォードは真剣な表情で答えた。
「はい、副長。直接は難しいですが、やりようはあると思います。例えば、我々が撤退する姿勢を見せれば、一旦ベースに戻るでしょう。ベースに入ったところを内部から破壊する方法が一番いいのではないかと……」
そこでロートンがニヤリと笑いながら口を挟む。
「坊やにしては大胆なことを言うわね。基地への潜入作戦なんて何年もやったことがないし、宙兵隊もいないから成功率は低いわよ」
クリフォードはその問いを予想していたのか、全く慌てなかった。
「はい、大尉。ですが、基地への潜入作戦が失敗してもブルーベルは残ります。それからキャメロットに向かっても祖国の安全の面では何のリスクもありません」
そう答えるものの、「リスクは潜入部隊の命になりますが……」と自分が大胆な発言をしていると声が小さくなっていった。
「こちらが撤退したと思わせるとしても、すぐにばれるのではないか?」
デンゼルが疑問点を口にする。
「通商破壊艦のセンサーがどの程度かは分かりませんが、幸いスパルタン星系へのジャンプポイントは第二惑星の陰に入れることができたと思います。そこでステルス機能を最大限に効かせてから、小惑星帯に入れば、早期警戒艦並のセンサー類を装備していない限り見つけられないのではないでしょうか」
マイヤーズ艦長は他に意見がないか確認した後、全員に礼を伝える。
「参考になった。感謝する」
そして、立ち上がると、解散を命じた。
「十分後に全艦放送で決定を通知する。解散」
艦長室を出たクリフォードは、士官連中を相手に演説をぶち上げてしまったと、耳まで真っ赤になっていた。
(ああ、調子に乗りすぎた……考えが間違っているとは思わないけど、未熟者が言うべき内容を超えていたな……)
彼はラングフォードの如才ない対応こそが、自分に必要なことだと真剣に考えている。
(彼のようにほとんど任官しているような候補生でも、ああいう態度を取るのに、どうして僕にはできないんだろう……)
艦長室から緊急対策所のあるDデッキに向かう途中、ラングフォード候補生が声を掛けてきた。
「よう、ミスター・コリングウッド参謀長殿。さっきのは凄い演説だったな」
嫌みたらしく言った後、慇懃無礼な口調で付け加える。
「さすがにお偉い貴族様で、親父殿が偉大だと何でもご存知だ。出世しても私のことは忘れないで下さいよ。上官殿」
それだけ言うと、自分の持ち場であるCICに向かうため、Bデッキに上がっていった。
クリフォードは、彼との関係がこのまま続くと思うと気が重くなった。
しかし、デイジー27が沈められた事実を思い出し、軍人でいる限りは死と隣り合わせであり、細かいことは気にしないようにしようと気持ちを切り替える。
ERCに着いて五分ほど経った頃、艦内放送から艦長の声が聞こえてきた。
「総員に告ぐ。艦長のマイヤーズだ。そのまま聞いて欲しい」
少し間があってから、マイヤーズの話が始まった。
「我々は先ほど僚艦のデイジー27号を失った。そして、敵の正体、規模は分からず、我々に手を貸してくれる僚艦もいない……」
その言葉に艦内は静まり返る。
「だが、我々はアルビオンの軍人だ。この星系、ひいては祖国を守るため、敵の企図するところを挫かなくてはならない!」
声を強めてそう言った後、再び声のトーンを戻した。
「私はこの星系に残り、奴らと雌雄を決することに決めた。確かに強敵かもしれない。だが、我々にはアルビオン軍のすばらしい伝統がある。敵を挫き、祖国を、家族を守るため、力をあわせて欲しい。諸君らの健闘に期待する。以上!」
艦長の演説が終わると、各所で歓声が上がっていた。
ここERCでも副長を始め、掌帆長やベテランの兵曹たちまで拳を振り上げている。
(凄い。みんな死ぬかもしれないのに、こんなに興奮して。艦長はやっぱり別格なんだな)
そう考えている自分も皆と混じり、同じように歓声をあげ、拳を振り上げていたが、それがおかしいとは全く思わなかった。
興奮が冷めてきた頃、艦長からの放送が入る。
「戦闘配置を解き、通常シフトに戻す。副長、航法長、戦術士は手が空き次第、艦長室に来て欲しい。以上」
グレシャムは「候補生。掌帆長と後始末を頼むよ」と言って艦長室に上がろうとしたが、突然振り返った。
「作戦案を提出するよう言われるかもしれないから考えておくのよ」
それだけ言うと、再び走り出した。
グレシャムは艦長室に向かいながら、クリフォードのことを考えていた。
(しかし、ビックリだったわ。あの坊やがあそこまで考えているなんて。航法計算で四苦八苦していた姿からは想像できないわ)
そして、指導官のデンゼル大尉が言っていたことを思い出していた。
(そう言えば、ブランドンが“彼の洞察力は凄いよ。このまま行けば偉大な指揮官になるんじゃないかな”って言っていたわね。さっきの彼の考察も言われてしまえば当たり前のことだと思う。そう、ヒントさえ貰えれば私でも考えられるわ……でも、そこが違う。指揮官は孤独。一人で考えて、答えを出さなければいけない。今回の突然の方針転換も、もしかしたら……考えすぎかしら?)
彼女は艦長室の前で呼吸を整えてから、入室の申請を行った。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
関白の息子!
アイム
SF
天下一の出世人、豊臣秀吉の子―豊臣秀頼。
それが俺だ。
産まれて直ぐに父上(豊臣秀吉)が母上(茶々)に覆いかぶさり、アンアンしているのを見たショックで、なんと前世の記憶(平成の日本)を取り戻してしまった!
関白の息子である俺は、なんでもかんでもやりたい放題。
絶世の美少女・千姫とのラブラブイチャイチャや、大阪城ハーレム化計画など、全ては思い通り!
でも、忘れてはいけない。
その日は確実に近づいているのだから。
※こちらはR18作品になります。18歳未満の方は「小説家になろう」投稿中の全年齢対応版「だって天下人だもん! ー豊臣秀頼の世界征服ー」をご覧ください。
大分歴史改変が進んでおります。
苦手な方は読まれないことをお勧めします。
特に中国・韓国に思い入れのある方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる