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第三話「宇宙(そら)では華麗なダンスを」
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マイヤーズ宇宙港に到着した俺たちはすぐにドランカード号にエアカーごと乗り込む。
「ドリー、出港準備は終わっているか」
個人用情報端末を介して完了していることは知っていたが、念のため確認したのだ。
『終わっています、船長』というメゾソプラノの心地良い人口知能の声が格納庫に響く。
「シェリーは二人を客室に案内してくれ。簡易宇宙服へ着替えさせることも忘れずにな」
「了解。じゃあ、私についてきて」と言って軽快に歩き始める。
今回の客であるブレンダ・ブキャナンとローズ・ブキャナンは速い展開についていけないながらも、シェリーに従ってハンガーを出ていった。
「俺たちも行くぞ」とジョニーに声を掛け、速足で操縦室に向かう。
本来なら戦闘指揮所というところだが、改造に改造を重ねたドランカード号のCICは四人が座るスペースしかないほど狭い。そのため、小型艇と同じ呼び方のコクピットと呼んでいるのだ。
操縦室に入ると機関操作用コンソールを見つめるヘネシーの姿があった。
俺たちが入ったことに気づき、
「全部問題なしだよ。管制塔の許可ももらっているし」
童顔のヘネシーがドヤ顔で言ってきた。
「ご苦労さん。シェリーの方が終わったらすぐに出港するぞ」
そう言って俺の席、船長席に座る。
コンソールを操作し船の状態を確認していく。
機関士のヘネシーとAIのドリーの確認が終わっているから問題はないのだが、いくらいい加減な俺でも船長が確認を終えずに発進するほど狂っちゃいない。
「操縦系問題なし……機関問題なし……兵装系問題なし……すべて問題なし」
三分ほどですべての項目の確認を終えた。
シェリーに回線を繋ぎ、「あとはお前だけだぞ」と伝える。
「もうちょっと待って……OKよ! すぐにそっちに行くわ」
「いや、お前はそのままそこにいろ。宇宙に上がってからこっちに来てくれればいい」
一方的にそう通告して通信を切り、管制塔を呼び出す。
「こちらドランカード号のジャック・トレード船長だ。出港するぞ」
目の前のスクリーンに疲れた感じの管制官が姿を見せる。
「了解した。ドランカード号の出港を認める」
真面目な表情でそこまで言った後、呆れた表情になる。
「嫌に急いでいると思ったら、何だその格好は? 仮装パーティの帰りか何かか? お前さんがビジネススーツとはね。いや、ジョニーの方が笑えるな。ククク……」
着替えることなくビジネススーツを着たままの俺たちに笑いが堪えられないようだ。
「ちょっとしたショーがあったのさ。面白すぎて予定の時間より延びちまったんだよ」
肩を竦めながら軽口で返す。こういうちょっとした会話が仕事を円滑に進めるコツだ。
「なるほど。そういや、出港許可を取り消せと言ってくる奴がいたな」
「観客のアンコールがしつこかったんだ。それじゃ、またな」
そう言った後、真面目な表情に変え、「ドランカード号出港する」と宣言する。
「了解。気をつけろよ、大根役者。それじゃ、幸運を」
「誰がハムだよ。それに足を折る気なんかないぞ!……だが、心遣いには感謝する」
その直後、ドランカード号の主機関を吹かせて一気に上昇させる。
慣性制御が働いているため、加速感は全くないが、大気を切り裂く僅かな振動と、メインスクリーンに映し出される薄い雲を突き抜けていく映像によって、順調に上昇していることが分かる。
ふぅと息を吐こうとした時、ドリーが警告を発した。
『前方二百キロメートルの位置に正体不明の船がいます』
そして、メインスクリーンの表示が索敵画面に切り替わる。
「大気圏を抜けた辺りか? 大きさは四百メートル級。見た感じは商船だが……」
『商船に見えますが、質量バランスと放出エネルギーが異常です。恐らく武装商船ですね。作りは連邦時代の仮装巡航艦に似ています』
「武装商船ね……で、こちらに向かっているのか?」
『今は静止していますが、本船に武器を向けているようです』
「何か言ってきているか?」
『いいえ。レーダーでこちらを捕捉していることは間違いないのですが、相手の意図は不明です』
ヤバイ感じがビンビン来る。ドリーの言う通り、旧連邦の仮装巡航艦だとするとドランカード号に勝ち目は欠片もない。
銀河連邦の仮装巡航艦は帝国との戦いで通商破壊活動に従事した“軍艦”だ。
ごく初期には商船を改造したものもあったらしいが、大戦末期には通商破壊活動専用に設計されており、加速性能三kGと劣るものの同じ四百メートル級の軽巡航艦に匹敵する戦闘力を持っている。
それに引き換えドランカード号は元が偵察と哨戒を任務としているスループ艦だ。
更に軍から払い下げられた時に主砲も外されていたから、今じゃ二百ギガワット級の粒子加速砲しか積んでいない。こんな豆鉄砲じゃ、オンボロ貨物船か小型艇くらいにしか勝ち目はない。
「回避するコースの計算を頼む。恐らくないと思うがな」
既に計算してあったのか、即座に答えが返ってくる。
『おっしゃる通りです、船長。どこに向かっても攻撃範囲から逃れられません』
ドランカード号はセンテナリオの重力圏を離脱しているところだ。さまざまな制限によって加速性能を十全に生かすことができない状況だ。
相手は鈍重な武装商船だが、この状況なら射程内を抜ける前に沈められる。
ただ、攻撃されるかは微妙だ。
いくら辺境の星系とはいえ、帝国政府の統治下にある。当然、治安組織もあり、度を超えた行為を許すことはない。
問題はその治安組織だ。
帝国軍は駐留しているものの、補給基地と連絡事務所しかなく、常駐の武装艦は超光速航行機関を持たない二百メートル級のコルベットが二隻のみだ。他にも星系警備隊の巡視艇があるが、攻撃能力はほとんどなく救命艇に近い。
このコルベットは密輸の取り締まりに使うくらいで、俺たちの前に立ち塞がる仮装巡航艦に対抗する術はない。つまり、見て見ぬ振りをする可能性が高いということだ。
もちろん、船籍番号などは控えられ、帝国辺境艦隊で共有されるのだろうが、そもそも船籍番号は偽装されているから意味はない。
『船長、正体不明船から通信です。メインスクリーンに投影します』
ドリーの言葉が終わると同時にメインスクリーンに顔に大きな傷がある髭面の男が現れる。
どう見ても堅気じゃない。
腕が鉤爪の義手で三角帽を被っていたら大昔の海賊船の船長役をやれる。
案の定、相手は帝国軍の存在を無視してきた。
「リコ商会の商船シンハーだ。三十秒だけ待ってやる。機関を停止して降伏しろ」
商船だと言う意味があるのかと思うほどストレートな降伏要求だった。
「こちらはトレード興業のジャック・トレードだ。何で降伏しなきゃいけないんだ? こっちは堅気の輸送屋だぜ」
「寝言は寝てから言え。堅気がいきなりハンドキャノンをぶっ放すかよ」
ジョニーのハンドガンのことを勘違いしているらしいが、いきなり撃ったことは事実なので、あえて反論しない。
「で、そのリコ商会様が何のようなんだ? こっちは零細企業なんだ。経済軌道を外すわけにはいかんのだが」
「つべこべ言わずに加速をやめろ! あと五秒だ。四、三……」
時間稼ぎをしようと思ったが、そこまで馬鹿じゃないようだ。
「分かった! すぐに止めるから撃つなよ。機関士、対消滅炉を停止しろ! すぐにだ!」
そう言うものの止める気はさらさらない。
こっちには向こうが手に入れたい乗客がいるんだ。海賊ごときに通常空間航行機関だけを撃ち抜くなんて器用なまねはできないはずだ。つまり、撃つわけにはいかないってことだ。
通常の操縦系を手放し、神経による操縦系へのアクセスに切り替える。
既に大気圏を抜けるところまで来ている。この場所なら最大加速でも惑星に影響は出ないはずだ。
操縦系にアクセスを終えた瞬間、NSDを一気に吹かし、最大加速まで引き上げる。
「止まれ!」とシンハーの船長は叫ぶが、素直に従う義理はない。
敵から十ギガワット級対宙レーザーが何本も撃ち込まれるが、ドランカード号の防御スクリーンは二百メートル級フリゲートの主砲すら防ぐことができる。もちろん、軽巡航艦並みの武装商船の主砲が直撃すれば一発で大破するが、そのせいで敵は躊躇している。
危険なのは敵の横を通過した後だ。
加速を開始したばかりの低速状態で後ろから撃たれたら、技量が低い海賊でもNSDやパワープラントを破壊することは可能だからだ。
「一曲流してくれ」とドリーに命じ、俺の体の一部になった船を操っていく。
すぐに俺の好きなジャズが頭の中に流れていく。そんなことをしているうちに敵船の横を通り過ぎた。
『シンハーの船長が怒っていますよ』と涼しい声でドリーが知らせてくれるが、それに構うことなく、回避機動を始める。
「今日は“クレオパトラ・ドリーム”か。いい選曲だ」
ドランカードのスラスターは通常の三倍以上の能力を持つ。
その能力を生かし、ドランカードはハイテンポな曲に合わせて回避機動を行う。
単艦同士の戦いで、俺に命中させることは至難の業だ。軍にいた頃も、俺の操縦する戦闘艦は一対一で命中弾をもらったことは一度もない。
『相変わらず非常識な機動ですね』と笑い堪えるようなドリーの声が耳に入る。
「あとどれくらいで敵の射程から出ることができる?」
『あと二百四十秒です』
「なるほど、いい選曲だ」
クレオパトラ・ドリームは四分半ほど曲だから、ちょうど脱出の時間と同じということだ。
『敵が主砲にエネルギーを注入しています!』
「ランダムパターンは任せるよ。ところで、敵のAIに予測ができると思うか?」
航宙船の戦闘においてはAIによるランダムパターン回避と操縦士による手動回避の組み合わせが一般的だ。
AIの能力が高ければ標的の回避パターンを即座に解析して予測砲撃を行ってくる。しかし、うちのドリーは帝国軍の最新鋭戦艦に搭載されているAIより優秀だ。
『私があの程度の船のAIに劣るとでも?』
僅かに怒りに似た感情を滲ませてきた。
「いや、一応聞いてみただけだ。勘弁してくれ」と苦笑する。
『では、無事に超空間に逃げ込めたら、一時間おしゃべりに付き合ってください。それで許してあげますから』
「了解」
ドリーは大学の研究用AIだった。
ある依頼の際に帝国の最高学府アスタロト大学の研究チームから分捕ったのだが、そのため、画一的な軍のAIとは異なり、閃きに似たアルゴリズムを持っている。
ドリーとの会話中にも敵からの砲撃は続いている。
予想通り七テラワット級の陽電子加速砲だ。仮装巡航艦が搭載していたものと同型で、当たり所がよければ重巡航艦すら行動不能に陥らせることができる。
『集束率を落としています。相手も馬鹿じゃなさそうですね』
ドリーの声に僅かに嘲笑の響きがある。
粒子加速砲は加速器によって光速近くまで粒子を加速する兵器だが、宇宙空間のような遠距離では集束コイルによってビームを集束し完全に直進させないと円錐状に広がり、エネルギー密度が下がってしまう。
敵は威力が充分と判断し、集束コイルを調整してビームの範囲を広げているのだ。言うなれば、ライフルからショットガンに換えたようなものだ。
ドリーの嘲笑の理由は、集束率を下げた程度では全く効果がないためだ。
大気圏を抜けたばかりで充分な加速とはいえないが、それでもこれだけの近距離でAIの予測を超える回避機動を行われたら、少々攻撃範囲が大きくなっても意味はない。
離れていけば相対的な射角の修正範囲は小さくなるが、こっちの速度も充分に上がるため機動の幅が大きくなるから相殺できる。
既に敵の射程の半分を越え、一分ちょっとで抜けられる。速度は〇・〇四光速と不十分だが、加速性能の差で充分に逃げ切れる。
集中力を切らさないように回避を続けていく。何度か近くに撃ち込まれたが、無傷でシンハーの射程内から逃れた。
射程を抜け、敵からの砲撃が途切れたところでドリーが行き先を聞いてきた。
『どこに向かいますか? この針路ですと、選択肢としてはゴルダ星系、ヴァンダイク星系、マルティニーク星系の三つになりますが』
ここセンテナリオ星系は七つの星系と繋がっている。
ドリーが言った三つに加え、レサント、グレナダ、トリニテ、レポスになる。
現在の針路から効率的に向かえるジャンプポイントはドリーの言った三つだが、武装商船であるシンハーだけが相手なら加速性能にものを言わせれば、どのJPに向かうことも可能だ。
そして目的地であるHGSのある星系に最も距離的に短いのが、ヴァンダイクを経由してバルバドスに向かう航路だ。
ゴルダ星系も距離的にはそれほど増えるわけではないので候補となりうる。
しかし、俺には懸念があった。
リコ・ファミリーが思った以上に用意周到だったことだ。
衛星軌道上に虎の子の武装商船を配置して待ち構えていた。
地上で捕らえることが失敗するという前提で動いているのだが、マフィアにしては慎重すぎる対応だ。
リコ・ファミリーが何隻の船を持っているかは分かっていないが、恐らく三、四隻は持っているはずだ。奴らは海賊行為だけでなく、密輸なども行っており、鈍足の武装商船だけというのは考えにくい。
JPから超空間に入る場合、基本的には減速してから超空間航行に入る。これはJP出口の状況が分からないためで、可能な限りリスクを減らすために空間との相対速度を落としておくのだ。
だとするならば、JP付近にも待ち構えている可能性は高い。
そして、狙うとすればゴルダとヴァンダイクになるだろう。
ここセンテナリオは辺境の中の辺境だが、それでも一日に何十隻もの船が訪れる。当然、その安全を守る帝国軍の辺境艦隊が定期的に哨戒を行っている。
もう一つの選択肢であるマルティニークは有人惑星を有する星系であるため、航行する船の数は多い。そのため、JP付近には帝国軍の哨戒艦隊が現れる可能性が高く、非合法の海賊船や密輸船が長期間待機する可能性は低い。
マルティニークが更に有利な点は接続している星系の数が多いことだ。七つの星系に接続しているため、追いかけられても逃げる先には困らない。
カノーアン、リーワードと経由してバルバドス星系以外のHGSに向かってもいい。
「マルティニークに向かう。待ち伏せがいるかもしれないから充分に注意しておいてくれ」
ここで操縦系から神経を切り離す。視界が通常に戻り、ようやく操縦室にいるジョニーやヘネシーと会話ができる。
「相変わらず肝を冷やす操艦だな」とジョニーがいい、ヘネシーも大きく頷いている。
「ドリーとの会話は見ていたよ。で、目的地はマルティニークでいいんだね」
「ああ、あそこなら船の数はここの百倍以上だ。追いかけてきても迂闊には手が出せないはずだ」
「そうだな。マルティニークには帝国軍の基地もある。運が良ければ哨戒艦隊がいるかもしれん」
通常ならマルティニークには巡航艦を旗艦とする五隻程度の哨戒艦隊が二から三個が常駐している。
しかし、俺は首を横に振る。
「可能性はないわけじゃないが、タイミング的にはいない可能性の方が高い。そうだな、ドリー?」
『はい。船長のおっしゃる通りです。噂に過ぎませんが、マルキス星系で大規模な海賊行為が行われたという話があります。今頃はマルキスに飛んでいることでしょう』
マルキスはマルティニークの先にある星系で、有人惑星がないながらも有人星系を結ぶ航路が交差する重要な星系だ。
このマルキスの安全が脅かされることはカリブ宙域全体の交易に影響する可能性がある。既に海賊たちは逃げ去っているだろうから、海賊たちを追うため、すべてを出動させている可能性は高い。
しかし、この良すぎるタイミングに疑問がないわけではない。
「もしかしたら思ったより敵はデカイかもしれんな」
嫌な予感がどんどん大きくなっていた。
「ドリー、出港準備は終わっているか」
個人用情報端末を介して完了していることは知っていたが、念のため確認したのだ。
『終わっています、船長』というメゾソプラノの心地良い人口知能の声が格納庫に響く。
「シェリーは二人を客室に案内してくれ。簡易宇宙服へ着替えさせることも忘れずにな」
「了解。じゃあ、私についてきて」と言って軽快に歩き始める。
今回の客であるブレンダ・ブキャナンとローズ・ブキャナンは速い展開についていけないながらも、シェリーに従ってハンガーを出ていった。
「俺たちも行くぞ」とジョニーに声を掛け、速足で操縦室に向かう。
本来なら戦闘指揮所というところだが、改造に改造を重ねたドランカード号のCICは四人が座るスペースしかないほど狭い。そのため、小型艇と同じ呼び方のコクピットと呼んでいるのだ。
操縦室に入ると機関操作用コンソールを見つめるヘネシーの姿があった。
俺たちが入ったことに気づき、
「全部問題なしだよ。管制塔の許可ももらっているし」
童顔のヘネシーがドヤ顔で言ってきた。
「ご苦労さん。シェリーの方が終わったらすぐに出港するぞ」
そう言って俺の席、船長席に座る。
コンソールを操作し船の状態を確認していく。
機関士のヘネシーとAIのドリーの確認が終わっているから問題はないのだが、いくらいい加減な俺でも船長が確認を終えずに発進するほど狂っちゃいない。
「操縦系問題なし……機関問題なし……兵装系問題なし……すべて問題なし」
三分ほどですべての項目の確認を終えた。
シェリーに回線を繋ぎ、「あとはお前だけだぞ」と伝える。
「もうちょっと待って……OKよ! すぐにそっちに行くわ」
「いや、お前はそのままそこにいろ。宇宙に上がってからこっちに来てくれればいい」
一方的にそう通告して通信を切り、管制塔を呼び出す。
「こちらドランカード号のジャック・トレード船長だ。出港するぞ」
目の前のスクリーンに疲れた感じの管制官が姿を見せる。
「了解した。ドランカード号の出港を認める」
真面目な表情でそこまで言った後、呆れた表情になる。
「嫌に急いでいると思ったら、何だその格好は? 仮装パーティの帰りか何かか? お前さんがビジネススーツとはね。いや、ジョニーの方が笑えるな。ククク……」
着替えることなくビジネススーツを着たままの俺たちに笑いが堪えられないようだ。
「ちょっとしたショーがあったのさ。面白すぎて予定の時間より延びちまったんだよ」
肩を竦めながら軽口で返す。こういうちょっとした会話が仕事を円滑に進めるコツだ。
「なるほど。そういや、出港許可を取り消せと言ってくる奴がいたな」
「観客のアンコールがしつこかったんだ。それじゃ、またな」
そう言った後、真面目な表情に変え、「ドランカード号出港する」と宣言する。
「了解。気をつけろよ、大根役者。それじゃ、幸運を」
「誰がハムだよ。それに足を折る気なんかないぞ!……だが、心遣いには感謝する」
その直後、ドランカード号の主機関を吹かせて一気に上昇させる。
慣性制御が働いているため、加速感は全くないが、大気を切り裂く僅かな振動と、メインスクリーンに映し出される薄い雲を突き抜けていく映像によって、順調に上昇していることが分かる。
ふぅと息を吐こうとした時、ドリーが警告を発した。
『前方二百キロメートルの位置に正体不明の船がいます』
そして、メインスクリーンの表示が索敵画面に切り替わる。
「大気圏を抜けた辺りか? 大きさは四百メートル級。見た感じは商船だが……」
『商船に見えますが、質量バランスと放出エネルギーが異常です。恐らく武装商船ですね。作りは連邦時代の仮装巡航艦に似ています』
「武装商船ね……で、こちらに向かっているのか?」
『今は静止していますが、本船に武器を向けているようです』
「何か言ってきているか?」
『いいえ。レーダーでこちらを捕捉していることは間違いないのですが、相手の意図は不明です』
ヤバイ感じがビンビン来る。ドリーの言う通り、旧連邦の仮装巡航艦だとするとドランカード号に勝ち目は欠片もない。
銀河連邦の仮装巡航艦は帝国との戦いで通商破壊活動に従事した“軍艦”だ。
ごく初期には商船を改造したものもあったらしいが、大戦末期には通商破壊活動専用に設計されており、加速性能三kGと劣るものの同じ四百メートル級の軽巡航艦に匹敵する戦闘力を持っている。
それに引き換えドランカード号は元が偵察と哨戒を任務としているスループ艦だ。
更に軍から払い下げられた時に主砲も外されていたから、今じゃ二百ギガワット級の粒子加速砲しか積んでいない。こんな豆鉄砲じゃ、オンボロ貨物船か小型艇くらいにしか勝ち目はない。
「回避するコースの計算を頼む。恐らくないと思うがな」
既に計算してあったのか、即座に答えが返ってくる。
『おっしゃる通りです、船長。どこに向かっても攻撃範囲から逃れられません』
ドランカード号はセンテナリオの重力圏を離脱しているところだ。さまざまな制限によって加速性能を十全に生かすことができない状況だ。
相手は鈍重な武装商船だが、この状況なら射程内を抜ける前に沈められる。
ただ、攻撃されるかは微妙だ。
いくら辺境の星系とはいえ、帝国政府の統治下にある。当然、治安組織もあり、度を超えた行為を許すことはない。
問題はその治安組織だ。
帝国軍は駐留しているものの、補給基地と連絡事務所しかなく、常駐の武装艦は超光速航行機関を持たない二百メートル級のコルベットが二隻のみだ。他にも星系警備隊の巡視艇があるが、攻撃能力はほとんどなく救命艇に近い。
このコルベットは密輸の取り締まりに使うくらいで、俺たちの前に立ち塞がる仮装巡航艦に対抗する術はない。つまり、見て見ぬ振りをする可能性が高いということだ。
もちろん、船籍番号などは控えられ、帝国辺境艦隊で共有されるのだろうが、そもそも船籍番号は偽装されているから意味はない。
『船長、正体不明船から通信です。メインスクリーンに投影します』
ドリーの言葉が終わると同時にメインスクリーンに顔に大きな傷がある髭面の男が現れる。
どう見ても堅気じゃない。
腕が鉤爪の義手で三角帽を被っていたら大昔の海賊船の船長役をやれる。
案の定、相手は帝国軍の存在を無視してきた。
「リコ商会の商船シンハーだ。三十秒だけ待ってやる。機関を停止して降伏しろ」
商船だと言う意味があるのかと思うほどストレートな降伏要求だった。
「こちらはトレード興業のジャック・トレードだ。何で降伏しなきゃいけないんだ? こっちは堅気の輸送屋だぜ」
「寝言は寝てから言え。堅気がいきなりハンドキャノンをぶっ放すかよ」
ジョニーのハンドガンのことを勘違いしているらしいが、いきなり撃ったことは事実なので、あえて反論しない。
「で、そのリコ商会様が何のようなんだ? こっちは零細企業なんだ。経済軌道を外すわけにはいかんのだが」
「つべこべ言わずに加速をやめろ! あと五秒だ。四、三……」
時間稼ぎをしようと思ったが、そこまで馬鹿じゃないようだ。
「分かった! すぐに止めるから撃つなよ。機関士、対消滅炉を停止しろ! すぐにだ!」
そう言うものの止める気はさらさらない。
こっちには向こうが手に入れたい乗客がいるんだ。海賊ごときに通常空間航行機関だけを撃ち抜くなんて器用なまねはできないはずだ。つまり、撃つわけにはいかないってことだ。
通常の操縦系を手放し、神経による操縦系へのアクセスに切り替える。
既に大気圏を抜けるところまで来ている。この場所なら最大加速でも惑星に影響は出ないはずだ。
操縦系にアクセスを終えた瞬間、NSDを一気に吹かし、最大加速まで引き上げる。
「止まれ!」とシンハーの船長は叫ぶが、素直に従う義理はない。
敵から十ギガワット級対宙レーザーが何本も撃ち込まれるが、ドランカード号の防御スクリーンは二百メートル級フリゲートの主砲すら防ぐことができる。もちろん、軽巡航艦並みの武装商船の主砲が直撃すれば一発で大破するが、そのせいで敵は躊躇している。
危険なのは敵の横を通過した後だ。
加速を開始したばかりの低速状態で後ろから撃たれたら、技量が低い海賊でもNSDやパワープラントを破壊することは可能だからだ。
「一曲流してくれ」とドリーに命じ、俺の体の一部になった船を操っていく。
すぐに俺の好きなジャズが頭の中に流れていく。そんなことをしているうちに敵船の横を通り過ぎた。
『シンハーの船長が怒っていますよ』と涼しい声でドリーが知らせてくれるが、それに構うことなく、回避機動を始める。
「今日は“クレオパトラ・ドリーム”か。いい選曲だ」
ドランカードのスラスターは通常の三倍以上の能力を持つ。
その能力を生かし、ドランカードはハイテンポな曲に合わせて回避機動を行う。
単艦同士の戦いで、俺に命中させることは至難の業だ。軍にいた頃も、俺の操縦する戦闘艦は一対一で命中弾をもらったことは一度もない。
『相変わらず非常識な機動ですね』と笑い堪えるようなドリーの声が耳に入る。
「あとどれくらいで敵の射程から出ることができる?」
『あと二百四十秒です』
「なるほど、いい選曲だ」
クレオパトラ・ドリームは四分半ほど曲だから、ちょうど脱出の時間と同じということだ。
『敵が主砲にエネルギーを注入しています!』
「ランダムパターンは任せるよ。ところで、敵のAIに予測ができると思うか?」
航宙船の戦闘においてはAIによるランダムパターン回避と操縦士による手動回避の組み合わせが一般的だ。
AIの能力が高ければ標的の回避パターンを即座に解析して予測砲撃を行ってくる。しかし、うちのドリーは帝国軍の最新鋭戦艦に搭載されているAIより優秀だ。
『私があの程度の船のAIに劣るとでも?』
僅かに怒りに似た感情を滲ませてきた。
「いや、一応聞いてみただけだ。勘弁してくれ」と苦笑する。
『では、無事に超空間に逃げ込めたら、一時間おしゃべりに付き合ってください。それで許してあげますから』
「了解」
ドリーは大学の研究用AIだった。
ある依頼の際に帝国の最高学府アスタロト大学の研究チームから分捕ったのだが、そのため、画一的な軍のAIとは異なり、閃きに似たアルゴリズムを持っている。
ドリーとの会話中にも敵からの砲撃は続いている。
予想通り七テラワット級の陽電子加速砲だ。仮装巡航艦が搭載していたものと同型で、当たり所がよければ重巡航艦すら行動不能に陥らせることができる。
『集束率を落としています。相手も馬鹿じゃなさそうですね』
ドリーの声に僅かに嘲笑の響きがある。
粒子加速砲は加速器によって光速近くまで粒子を加速する兵器だが、宇宙空間のような遠距離では集束コイルによってビームを集束し完全に直進させないと円錐状に広がり、エネルギー密度が下がってしまう。
敵は威力が充分と判断し、集束コイルを調整してビームの範囲を広げているのだ。言うなれば、ライフルからショットガンに換えたようなものだ。
ドリーの嘲笑の理由は、集束率を下げた程度では全く効果がないためだ。
大気圏を抜けたばかりで充分な加速とはいえないが、それでもこれだけの近距離でAIの予測を超える回避機動を行われたら、少々攻撃範囲が大きくなっても意味はない。
離れていけば相対的な射角の修正範囲は小さくなるが、こっちの速度も充分に上がるため機動の幅が大きくなるから相殺できる。
既に敵の射程の半分を越え、一分ちょっとで抜けられる。速度は〇・〇四光速と不十分だが、加速性能の差で充分に逃げ切れる。
集中力を切らさないように回避を続けていく。何度か近くに撃ち込まれたが、無傷でシンハーの射程内から逃れた。
射程を抜け、敵からの砲撃が途切れたところでドリーが行き先を聞いてきた。
『どこに向かいますか? この針路ですと、選択肢としてはゴルダ星系、ヴァンダイク星系、マルティニーク星系の三つになりますが』
ここセンテナリオ星系は七つの星系と繋がっている。
ドリーが言った三つに加え、レサント、グレナダ、トリニテ、レポスになる。
現在の針路から効率的に向かえるジャンプポイントはドリーの言った三つだが、武装商船であるシンハーだけが相手なら加速性能にものを言わせれば、どのJPに向かうことも可能だ。
そして目的地であるHGSのある星系に最も距離的に短いのが、ヴァンダイクを経由してバルバドスに向かう航路だ。
ゴルダ星系も距離的にはそれほど増えるわけではないので候補となりうる。
しかし、俺には懸念があった。
リコ・ファミリーが思った以上に用意周到だったことだ。
衛星軌道上に虎の子の武装商船を配置して待ち構えていた。
地上で捕らえることが失敗するという前提で動いているのだが、マフィアにしては慎重すぎる対応だ。
リコ・ファミリーが何隻の船を持っているかは分かっていないが、恐らく三、四隻は持っているはずだ。奴らは海賊行為だけでなく、密輸なども行っており、鈍足の武装商船だけというのは考えにくい。
JPから超空間に入る場合、基本的には減速してから超空間航行に入る。これはJP出口の状況が分からないためで、可能な限りリスクを減らすために空間との相対速度を落としておくのだ。
だとするならば、JP付近にも待ち構えている可能性は高い。
そして、狙うとすればゴルダとヴァンダイクになるだろう。
ここセンテナリオは辺境の中の辺境だが、それでも一日に何十隻もの船が訪れる。当然、その安全を守る帝国軍の辺境艦隊が定期的に哨戒を行っている。
もう一つの選択肢であるマルティニークは有人惑星を有する星系であるため、航行する船の数は多い。そのため、JP付近には帝国軍の哨戒艦隊が現れる可能性が高く、非合法の海賊船や密輸船が長期間待機する可能性は低い。
マルティニークが更に有利な点は接続している星系の数が多いことだ。七つの星系に接続しているため、追いかけられても逃げる先には困らない。
カノーアン、リーワードと経由してバルバドス星系以外のHGSに向かってもいい。
「マルティニークに向かう。待ち伏せがいるかもしれないから充分に注意しておいてくれ」
ここで操縦系から神経を切り離す。視界が通常に戻り、ようやく操縦室にいるジョニーやヘネシーと会話ができる。
「相変わらず肝を冷やす操艦だな」とジョニーがいい、ヘネシーも大きく頷いている。
「ドリーとの会話は見ていたよ。で、目的地はマルティニークでいいんだね」
「ああ、あそこなら船の数はここの百倍以上だ。追いかけてきても迂闊には手が出せないはずだ」
「そうだな。マルティニークには帝国軍の基地もある。運が良ければ哨戒艦隊がいるかもしれん」
通常ならマルティニークには巡航艦を旗艦とする五隻程度の哨戒艦隊が二から三個が常駐している。
しかし、俺は首を横に振る。
「可能性はないわけじゃないが、タイミング的にはいない可能性の方が高い。そうだな、ドリー?」
『はい。船長のおっしゃる通りです。噂に過ぎませんが、マルキス星系で大規模な海賊行為が行われたという話があります。今頃はマルキスに飛んでいることでしょう』
マルキスはマルティニークの先にある星系で、有人惑星がないながらも有人星系を結ぶ航路が交差する重要な星系だ。
このマルキスの安全が脅かされることはカリブ宙域全体の交易に影響する可能性がある。既に海賊たちは逃げ去っているだろうから、海賊たちを追うため、すべてを出動させている可能性は高い。
しかし、この良すぎるタイミングに疑問がないわけではない。
「もしかしたら思ったより敵はデカイかもしれんな」
嫌な予感がどんどん大きくなっていた。
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