あんぶれら

鈴木 ぷちぷち

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1章 雨

雷雨

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「最悪……」

外に出るとものすごい雨だった。いわゆるゲリラ豪雨


昔と比べれば随分便利になったであろう世の中でも、完璧なんてことはない。

「今日は全国的に晴れるでしょう。お洗濯物もよく乾きそうです!……」

さわやかな朝のテレビのアナウンサーの声が思い出す。
嘘つき。もう2度とあの番組は見ないからな

見上げると、相変わらずの黒い雲。しばらく止みそうにない。

学校から家は歩いて20分。
どんなに走ってもずふ濡れはまぬがれられないだろう。

なんで折りたたみの傘を持ってこなかったんだろう。自分に毒づいた。




少し、雨が弱まった瞬間をみて走ろ……。
肩掛けのカバンをリュックみたいに背負う。

雨の打ち付けるコンクリート。バチバチと鳴っている。

はぁ……家まで屋根があったらなぁ(笑) 
そうそう、こういう高い屋根…… 屋根!?



「傘。よかったらこれ使ってよ」
目の前には俺に影がかかるほどの長身の男が立っていた。
「あ、え。でも、あなたが濡れてしま……」
「僕、もう一つ傘あるから大丈夫。2つも傘使わないし」

ヘラっと笑うその男は、豪雨の中で輝いて見えた
「僕は2年の普通科A組だから」
「あわ、わかりました。明日の朝返しに行きますっっ!!!」
「なんで敬語なの?」
「あ、いや、なんとなく……」

笑うと目の横にもしわができて、とても優しそうな印象
同い年だとは思わなかったなぁ

「じゃあ。また」
ひらひらっと手を振ってその男は、白い小さな折りたたみの傘をさして
雨の中に消えていった。



俺は深緑のジャンプ傘をさして走って帰った。
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