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ノアと慎太郎
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「はあ。今日もまた終電だった」
駅の改札を出て自宅のマンションに着くまでに溜息を何回ついたかわからない。すでにあたりは夜の静寂に包まれていて街路樹に点在する街頭ぐらいしか灯りもない。
「社長って本当に容赦がないよなあ。今月休めたのっていつだっけな。ヤバい。俺って働きづめじゃん」
口に出すだけで重い気持ちになってくる。突然の辞令で秘書兼ボディガードに任命されてからというものほとんど休みがないのだ。別に恋人がいるわけでもないし、趣味は体を鍛えることなので自宅でも出来るのだが、たまには息抜きが欲しい。癒しが足らないのだろうか?
「犬でも飼おうかな」
だが終電過ぎのこんな時間にペットショップもあいていないだろう。それに世話出来る飼い主が傍に居ないと寂しい思いをさせるだけかもしれない。
俺は柊望空二十五歳。自分で言うのもなんだが入社三年目の若手ホープと呼ばれている。いい仕事をするにはやはり健康的な身体が必要だと暇があれば鍛えていた。なんて本当は格闘技が好きなだけなのだが。ある日ベンチプレスをあげていたら社長に声をかけられたのが運のつき。通っていたジムがたまたま社長と一緒だったのだ。
「お前、なかなか鍛え上げてるじゃないか」
その翌日に辞令が降りて、俺は秘書兼ボディガードに抜擢にされてしまった。ワンマン経営の社長は仕事はできるが物言いがキツイ人で逆恨みをされやすいらしい。周りからは出世コースと言われたが社長の人使いの荒さには慣れるまで大変だった。
まあ秘書は俺の他にもう一人柳本やなぎもとさんがいてくれてるからなんとかなってはいる。柳本さんは入社二十五年のベテラン秘書で社長の信頼の厚い人だった。それに最近は補佐として佐々木と竹内という総務の子が手伝ってくれるようになった。
社長の桐生慎太郎は彫の深い顔立ちの美丈夫で勢力的に活動するタイプだった。ただ辛辣な口調で相手をえぐるところがあり、秘書や側近がすぐにやめてしまうらしい。俺は社長の容姿が好きだ。物心ついた時から女性よりも男性に惹かれた。恋愛対象は同性である。
社長は仕事に情熱をかける姿勢も好ましく今も俺の隣で仕事の電話をしている。移動中の車の中でも社長が休んでるところはみたことがない。書類に目をとおしてるか電話対応に追われている。まさに24時間働き魔だ。だが真摯に仕事に向かう姿勢は悪くない。案件によっては即回答が必要な時も多い。そこに迷いや対応が悪ければ、辛辣になるのは仕方がないと思う。
「おい! 昼の予定にもう一件ねじ込め!」
「またですか? ちょっと待ってください。夜の予定を確認します!」
すぐにノートパソコンを開ける。スケジュールの変更など日常茶飯事なので俺もそろそろ慣れてきた。
「昼食を一緒にとるということで調整ができそうです。場所はいつもの和食の店でいいですよね?」
「うむ。先方に場所を知らせておけ」
「はい!」
すぐさま俺は予約をとり先方にメールを飛ばす。
「よし。今期はこの調子で行けば前年度を50%は超えるぞ」
確かにこのままの勢いで契約を取り続けると軽く超えるだろう。だが、そのかわり無茶なやり方をしてるのもわかってきた。
「はい。しかし、少しは休みを取っていただかないと社長のお身体が心配です」
「大丈夫だ。身体を鍛えるためにジムにも通ってるんだ」
「では定期の健康診断だけは欠かさないで下さいね」
ジム通いで筋肉をつけることはできても疲労を回復できるわけではない。
「……あいつらに負けるわけにはいかないんだよ」
社長が小声でぼそっと呟いた。おそらくは独り言だろう。俺は気づかないそぶりで会議資料を確認するふりをした。
社長の生家の桐生家は代々引継がれてきた資産家だ。そのせいか親族同士の確執や財産争いも絶えないようだ。気を抜くと実績が伴わない企業を親族企業が合併という名で吸収して乗っ取りも企ててくるらしい。身内程恐ろしいものはないらしい。俺の知らない水面下でいろいろとあるのだろう。
その日はスムーズに取引を終えることが出来、久しぶりに早めに帰れそうな雰囲気だった。帰りにペットショップに寄れるかもしれない。俺はいそいそと飲んでいたコーヒーカップを給湯室に片付けに行った。
しかしその直後に社長室から何かが割れる音がして、柳本さんの声が聞こえた。
「柊くん! 社長が……」
「どうしたんですか!」
俺が駆け付けると社長がうつ伏せに倒れていた。頭部に陶器の破片がついており、部屋の入り口に飾ってあった花瓶がなくなっていた。
「いきなり社長が倒れて傍にあった花瓶にぶつかったんだ」
柳本さんが青い顔をしてオロオロする。どうやら頭を直撃したようだ。社長は苦しそうに眉間にしわを寄せ唸っていた。
「救急車を呼ばないと……」
「だ……ダメだ! 呼ぶな! 俺が倒れたと知ったら……あいつらに弱みを見せるわけには……いか……ないんだ……頼む」
必死に俺に訴えかける社長に思わず頷く。だって俺に頼むなんてこの人らしくない。いつもふんぞり返って偉そうにしているのに。
「……わかりました。急ぎ主治医の先生を呼びましょう」
俺はすぐにかかりつけの医師に連絡をし長椅子に社長を寝かせた。
柳本さんがギクシャクした動きになり顔面が青を通り越して白くなっている。
「……社長は頭を打ってもまだお元気なんだな」
何かひっかるような言い方だが今はそれより社長の体調が心配だ。
「柳本さん。社長はきっと日頃の過労が元で倒れられたんでしょう。数日休養を取れるように調整しましょうよ!」
俺の言葉にはっとした柳本さんは明日からのスケジュールの穴埋め調整をしだした。
「そ、そうだね。仕事を回すことを考えなければ」
ほどなくして医師が駆けつけ、別室で社長の診察を始める。
「どうですか? 社長の容体は?」
「それが。どうやら困ったことになって。お二人ともこちらへ来てください」
かなりの重症かと思いきや、社長は長椅子に座り込んで戸惑いながらこちらを見ていた。
「社長? お加減はいかがですか?」
柳本さんが震える声で問いかける。すると社長が不思議そうに尋ねてきた。
「えっと。あなたは誰ですか? ここはどこなんでしょう?」
―――― 社長は記憶をなくしていた。
◇◆◇
「柊さん。本当に僕は社長なんてやってたんでしょうか?」
トレーナー姿の社長は実年齢よりも若く見える。普段スーツ姿しか見たことがないので新鮮だ。ソファーとクッションにうずもれるように座っていると学生っぽい。
「ええ。いつも威厳があって仕事人間な方でしたよ」
「本当に僕のことですか? 威厳とか社長とかっていまだに信じられないです」
あれから柳本さんと相談し社長は急な海外との取引で海外出張ということにした。普段から過密スケジュールや予定変更には皆、慣れていたので誰も驚かない。それよりも社長がいない間の仕事の割り振りをどうするかのほうが問題だった。
医師の話によると社長は頭に衝撃を受けた反動で記憶が後退してしまったようだ。
「外傷のショックだけではないようです。解離性健忘も考えられます。解離性健忘とは精神的なストレスなどの積み重ねで引き起こされる記憶障害です。記憶に空白期間がみられ、その長さは数分から数十年にも及ぶ場合があります。ストレスを軽減、または取り除くことができれば改善することも可能かと。一過性のものでしたら数日で記憶は元に戻るかもしれません。今は様子を観察して一人にしない様にした方が良いでしょう」
医師の助言もあり、俺はひとまず社長の傍につくこととなった。会社では俺は社長に同行して海外に行ったことになっている。社内の事は柳本さんと連携をとりながら仕事はリモートワークでこなしている。
俺と社長は海外出張という名目で休みを取っているため、自宅には戻らず懇意にしているホテルに部屋を取った。コンドミニアム形式でキッチンとリビングが付いているファミリールームという部屋だ。ここならゆっくりできるだろう。
「社長は今どのあたりの記憶をお持ちなのですか?」
「ん~。僕からしたら目が覚めたら別の世界に転移されたって感じなのでどのあたりの記憶と言われても返事に困ります。覚えているのは誕生日パーティーをディスコでしてもらってたってことぐらいでしょうかね?」
「ディスコですか?」
「ええ。ワンレン、ボディコンの女の子と悪友たちと飲んで騒いで目が覚めたらこの世界に転移されちゃったって感覚。電話も僕の家はまだダイヤル式でしたし、その四角いゲームウォッチみたいなのがスマホっていう携帯式電話っていうのも信じられません」
「はぁ……。すみません。一応俺は経済学科だったので経済の歴史は習ったんですが、恐らくそれはバブル時代の話しだと思います」
「バブルですか? バブル。なんか聞いたことがあるような」
「何か思い出せそうですか? たぶん三十年程前の昭和後半だと思うんですが」
「ええ? 三十年前? そんなに時間がたってるんですか? うそだ……」
「嘘ではないです。社長は今混乱されてるだけですよ」
「いやだ! うそだと言ってください。僕はまだ数日前まで十代だったんです。社長なんて呼ばないで!」
突然泣き出した社長に俺はどうしていいかわからなかった。見た目と違って中身はまだ二十歳になったばかりの大学生相手にどう接したらいいものか。
「ごめんっ。俺、自分勝手だったかもしれない。そうだよな。外見はどうであれ中身はまだ学生なんだよな? だったら俺と年齢も近いし俺のことは望空のあって呼んでくれていいよ」
「ノア? 柊さんノアって言うの? だったら僕のことも慎太郎って呼んでよ」
「いや、それは……。わかった。記憶が戻るまで慎太郎って呼ぶよ」
「ありがとう」
慎太郎は可愛かった。外見はイケおじなのに言う事やる事が十代前半っぽい。俺のために朝ご飯を作ろうとして焦がしてしまったり、ちょっとした反応にすぐに真っ赤になる。そして何より俺を見つめる瞳がキラキラとしていた。まるで飼い主を待つ子犬のようじゃないか。
「ヤバい。これは想定外だ」
社長のルックスで中身は純粋なBOYなんてドストライクしかないじゃないか。いや待て。相手は今の記憶がないんだぞ。手を出していいはずがない。
「ノアどうしたの? 百面相なんかして。せっかくのしょうゆ顔が台無しだよ」
俺は釣り目の一重だ。慎太郎はそんな俺を見て切れ長の瞳のしょうゆ顔だと言う。自分の顔はこってりしたソース顔で嫌いらしい。すっきりした顔が好みだという。ん? 好みってどういう意味だ?
「ねえ。もう今日の仕事は終わり?」
「あと少し。このメールを本社に送ったら急ぎの仕事は終わるよ。ちょっと気になる案件があってね」
慎太郎はキーボードを打つ俺の手を物珍しそうに見ると手品みたいだと笑う。デジタル機器に触れるのが当たり前の令和の時代にしたら打てないほうが不思議だ。情報は新聞や紙媒体よりもSNSやネットが主流である。
「本当? じゃあちょっと遊んでよ」
「ははは。わかったよ。ちょっと待っときな」
数日たつと少しずつ慎太郎は俺に懐いてきた。一緒に生活を始めたせいかリラックスをした表情を見せてくれるようになったのだ。それは俺が初めて見る社長の笑顔だった。
「……それでね。ランバダって踊りが流行っててさ」
「ランバダ? なんだそれ?」
「知らないの? じゃあ教えてあげるよ。スマホで曲を検索してみて」
慎太郎が俺の手を取り、曲に合わせて踊り始める。なんて官能的な踊りなんだ! 腰をくねらせ体にまとわりつくようなダンスに俺の体温が一気に上昇した。ヤバいヤバいぞ! 相手は社長だ。落ち着け俺! いや、でも今は慎太郎だし……。
「わっ!」
「危ないっ」
動揺した俺の足が慎太郎の足を引っかけてしまった。倒れかけた慎太郎を抱き寄せるとギュッとしがみつかれ心拍数が上がる。程よく引き締まった筋肉質な身体。息がかかる程の至近距離で熱く見つめられてめまいがした。
「ノア……」
「しぃっ。俺を誘ったな。悪い子だ」
唇が重なると同時に慎太郎の腕に力が入る。必死にしがみついてきて俺の口づけにこたえようとする。そのつたない舌使いに初々しさを感じてしまう。まいったな。深みに嵌りそうだ。社長の顔は元からタイプだ。しかも今は俺だけを求めてくれている。
「……ノア。嬉しい。僕、誰にも言えなかったけど男の人が好きなんだ」
切羽詰まったような声に切なくなる。きっとそれは社長が隠してきた言葉なのだろう。同性愛者に対していまだに差別的な視線でみられることもある。企業のリーダー的な存在の社長が声を大にして言えなかったことなのだろう。きっとそれはストレス要因のひとつだ。
「俺もだよ」
「本当に? 信じてもいいの? 僕はおかしくはないの?」
「おかしい? 人を好きになる事におかしいなんてないよ」
「ノア。ありがとう! 僕はきっと誰かにそう言って欲しかったんだよ」
慎太郎は何度もありがとうと俺の胸で泣く。俺は堪らずその唇を奪う様に口づけた。
翌朝、慎太郎を起こしに行くと昨日と様子が違っていた。
「どうした? 悪い夢でも見たのか?」
「あ? ああ。ちょっと思い出したんだ」
「え? どんなことだい? 聞いてもいいか?」
「そうだな。いいよ。ノアには聞いて欲しいかも。バブルが弾けて俺の実家が倒産したんだ」
「ええ? 倒産? でも今会社はあるじゃないか」
「それは俺が必死になって立て直したからなんだ。保有していた株や土地が一気に暴落してたった三日で借金まみれになった。気落ちした両親は心労がたたって亡くなったのさ。そのあと俺は祖父に引き取られワンマン精神を叩き込まれたんだ。何があっても這い上がれ。まわりは皆敵だと思えってね」
いつの間にか慎太郎の口調が変わっていた。僕と言っていたのが俺に変わっている。
「俺が祖父の遺産を引き継ぐと親戚中が目の色を変えたようになった。あいつらは昭和の景気が良かった時代を忘れられないんだ。金は湧いてくるものだと思っているところがある。今もこの会社を狙ってやがる」
慎太郎は祖父の言葉によって強迫観念にしばられている気もする。だが確かに社長が莫大な遺産で親類と揉めたと言う話は以前に聞いたことはあった。このまま慎太郎の言葉を全部信じていいのか。それよりもこれこそが最大のストレス要因なのではないのか。
「そうだったのか。だからいつもあんなに一生懸命仕事をしてたんだな」
「ふふ。そうか。ノアの目には俺がそんな風に映ってるのか」
「いつだって慎太郎はパワフルで仕事に情熱を注いでいて俺はそれを隣で見てワクワクしてたんだ」
「ワクワク? 俺は嫌われてなかったのか?」
「どうして? 嫌う要素がどこにもないじゃないか。もっと社員にも頼って欲しい。それに俺のことを信じてよ。自分ひとりで抱え込まないでいて欲しい」
「信じる?」
「そうだよ。俺はもっと慎太郎の役に立ちたい。この会社でやっていきたい。だから苦しい時は言って欲しいし嬉しい時は共に笑いたいんだ」
俺の言葉に慎太郎の顔が真っ赤に染まる。耳まで赤く染まったのを見て可愛いと思ってしまう。ああ。ヤバい。これってかなりハマってるよな。
「ノアは俺の事を……いや、いい」
「好きだよ」
「え! ほ……本気か? 俺が社長だって気を使ってないか?」
「元から社長の顔はタイプだったんだ。でも仕事は仕事。公私混同はしないよ」
「ノア。お前ってやつは……」
慎太郎の目が潤んでる。参ったな。そんな顔するなんて俺に食ってくれと言ってるのと同じだ。慎太郎が触れようとした手を俺は避けた。
「俺は今理性と戦ってる。近づいたらヤバいって」
「ヤバいってどういう意味なんだ?」
「今公私混同はしないって言い切ったのに肉欲に負けて抱きたくなるってこと」
「……理性と戦わなくてもいい。し……シたいよ」
「いいのか? もっとよく考えろよ!」
「いい。それに俺の元の記憶が戻ったら、今のこの記憶がなくなってしまうかもしれないじゃないか」
それは医者に言われていたことだ。元の記憶が戻れば今こうして過ごしてる方の記憶がなくなる可能性も高いと。
「だったら余計に……」
「違う。記憶がなくなっても体で覚えていたいんだ」
目の前で社長の顔が妖艶にほほ笑む。なけなしの理性なんて崩れ飛んだ。
「ああ。なんて事を言うんだ。慎太郎は俺のガードを全部砕いてしまうんだな」
「ノアが欲しい」
「もうっ。どうなっても知らないぞ!」
俺はなんて弱い人間なんだ。目の前にいる慎太郎が欲しくて仕方がない。
「これが夢じゃなく現実なんだって俺の体に刻み込んでくれ」
慎太郎が上着を脱いで俺に抱きついてくる。
「慎太郎っ!」
呆気なく俺は陥落した。そのまま押し倒すと割れた腹筋に手のひらを這わせ、下半身を弄ると慎太郎の口から熱い吐息がこぼれる。気をよくした俺はどんどんエスカレートした行動に移してしまう。頭の隅ではダメだとわかっているのに止めることが出来ない。
「俺の手で感じてくれてるんだな」
「ぁ……ノア……っ……はっ」
吐息混じりに名前を呼ばれると下半身に熱がこもる。俺の手と舌がこの人を喜ばしているんだと思うと更に興奮した。
「やっ……まって……ぁあ、そんなとこ……」
前を口で刺激しながら後蕾の周辺をゆっくりと指で刺激してやるとビクンっと腰が跳ねる。ゆっくりと指を一本突き進めるとその狭さにここを使ったことがないのではという確信に至る。これはやはり、この状態の慎太郎に無理強いするのは本意ではない。
「慎太郎。顔が見たい」
俺は慎太郎を抱き起こし対面座位の体位にする。
「やっ……ノアとシたいっ」
「うん。わかってるよ。挿れる以外にこういう方法もあるんだ」
慎太郎の雄のデカさに躊躇するも俺のと一緒に握り込んで擦りあげていく。
「んあ……何これ……自分でするのと違う……」
「慎太郎。舌をだして」
俺は口づけをしながら擦り上げるスピードを速めて行った。
「んっ……んふっ……んんんっ……ぷはっ。ノアっノアっ!」
「くっ……うっ……」
息を整えながらもヤッてしまった少しの罪悪感と慎太郎への愛しさと可愛さで俺の心の中はぐちゃぐちゃだった。だが慎太郎の嬉しそうな顔を見るともうどうでも良くなってしまう。その夜は二人で抱き合って眠った。
朝目覚めると俺は慎太郎に抱き込まれていた。ちょっと苦しいけど充足感で満たされる。まだ早いしもう少し寝かせておこうと先に着替えてキッチンに立つ。少し濃いめのコーヒーとトーストを用意する。慎太郎の好きな朝食だ。
「おい! 誰かいないのか!」
慎太郎の声にあわてて寝室に行くと苦しそうに頭をかかえていた。
「大丈夫か!」
「その声は柊か?」
―――― この口調。これは社長だ ――――
「はい。柊です。頭が傷みますか?」
「あ、ああ。少し。何があったんだ?」
「はい。実は……」
俺はできるだけ冷静に順序を追って説明した。社長は俺と過ごした時間の記憶をなくしてるようだった。話せば話すほどもう昨日までの二人の関係じゃないんだと実感する。俺はもう社長の事を慎太郎と呼ぶことは出来ないのだろう。虚しさが募るが必死に顔に出さない様にした。。
「そうか。ははっ。おまえの言うとおりきちんと定期検診に行くべきだったか」
「社長。とりあえず医師を呼びます。すぐに業務に復帰されたいでしょうが検査をうけるまでは此処にいてください」
「むむ。仕方ないな。さすがに俺でも今の状態では迷惑をかけるだけだとわかるからな」
「はい。イイ子にしておいてください。会社にも電話してきますね」
「……柊。おまえずっと俺についててくれたんだな?」
「はい。お世話させていただきました」
「そうか。お世話か。……すまなかったな」
「え? 社長が俺に礼をいうなんて!」
「あん? 俺だって礼ぐらい言うさ……なんだその顔は!」
しまった。ニヤけていたらしい。だって嬉しいじゃないか。社長が俺に礼を言うなんて今までなかったんだから。
「へへ。嬉しいんですよ」
「ぐ……。いいから早く電話してこいっ!」
ああ。もう俺は重症かもしれない。社長が可愛く見えて仕方がない。あれは社長だ。慎太郎じゃない。わかってはいる。でも照れた顔をごまかす仕草は慎太郎だ。いや、社長が慎太郎だから当たり前なのか。くそっ。もうどっちがどっちだとか言い訳にしかならない。とにかく俺は社長に惚れてると自覚した。
医師の診察が終わる頃、柳本が駆け付けた。
「社長は? 記憶が戻られたのか?」
「はい。今はベッドで横になっておられます」
「あの社長が? ベッドで大人しくしてると言うのか?」
柳本の言い方がやたらと刺々しい。俺の中で警戒音がなる。
「ええ。少し頭痛がするようです」
「まだ体調が戻ってないのだな。私の事はなにかおっしゃっていたか?」
「いえ。何も聞いてはおりませんが」
「おや、お二人ともお揃いでしたか。回復は順調のようですよ。今は当日の記憶があいまいなところもあるようですが、一過性だったのでしょう。すぐに思い出せるはずです。でも少し休まれたら念のためMRIだけは撮られることをお勧めします」
医師がほっとした表情で告げてくる。俺は喜んだが柳本は顔面蒼白だ。
「ありがとうございました。先生にはいろいろと無理を言ってしまって」
「いやいや。桐生くんとは長い付き合いなんだ。互いに不景気な時代を乗り越えてきたんでね。彼は会社を守るために頑張りすぎてる。威嚇しないとテリトリーに敵がはいりこんでくるからね。君なら彼を支えてあげられると僕は思うよ」
俺だけに聞こえるように言うとウィンクして医師が去って行った。
「なんだか人生の先輩って感じ。俺もあんな風になりたいなあ」
部屋に戻ると柳本がコーヒーを入れていた。
「柊くんにはいろいろと面倒をかけたしまあ一服しててよ。仕事で社長にしかわからないところがあってね。今日はそれを聞き出すつもりさ。それさえあれば何となるからね」
「そうでしたか」
「上手にコーヒーがいれられたか心配なんで私の前で飲んでくれないかな」
「わかりました」
部屋の奥で声がする。
「社長。柳本です。業務のことでお伺いしたいことがあって参りました」
「おう。はいれ」
「お元気そうでなによりです」
「おまえは嫌みを言いに来たのか?」
「まさか。めっそうもない! ですがまだ本調子ではなさそうですね」
「悔しいがまだ立ち上がれなくてな」
「そうでしたか。……それでその。あの日の事は何か思い出されましたか?」
「それはおまえが俺を花瓶で殴り倒したことか?」
「なっ! 覚えてたのか!」
「おまえの顔を見て思い出したのさ」
「くそ忌々しい。だがあんたとも今日で終わりだ」
「なんだと!」
「ずっとあんたにこき使われてきたんだ! 少しぐらい会社の金に手をつけたっていいじゃないか!」
バン! と音をたてて俺が扉を開けると柳本がナイフを振りかざす姿が目に入った。瞬間俺はカッとなり柳本への憎悪でいっぱいになる。
「慎太郎に手を出すな!」
迷わず俺はナイフを蹴り飛ばし一発殴ると後ろ手に柳本を押さえ込んだ。
「な、なんで動けるんだ? 眠剤を飲んだはずだろう!」
「あんなめちゃくちゃ怪しいコーヒーを飲むはずがないだろ!」
俺は柳本に飲めと言われたカップを最初に慎太郎のために入れていたコーヒーと即座にいれ変えたのだ。備え付けのホテルのカップが同じ柄だったから柳本にはわからなかったようだ。
「どうせ俺を後で犯人に仕立てようとしてたんでしよ?」
「なんでわかるんだ!」
「わかるよ。柳本さんは馬鹿正直な人だから」
「うっうるさい」
あの日、俺は社長に帳簿の確認を願い出ていた。明細に不明点を感じたからだ。社長は営業を優先していた為に経理は全て柳本に任せていたらしい。その資金の一部を柳本が着服していたのだ。
「あいつがこんなに長く俺の傍にいたのは金のためだったのか」
落胆した社長の姿に胸が締め付けられる。
「もっと俺を……社員に仕事をまかせてください。なんでもかんでも一人で抱え込まないで、俺たちは失敗もするが成長もします! 全てを一人に任せるのではなく分担して風通しのいい職場にしましょう」
「……柊。おまえ俺の経営にケチをつけるとはいい度胸だな」
「あ~。ですよねえ」
やっぱり無理か。社長には社長のやり方があるんだろうな……。
「っと。以前の俺なら足蹴にしてたがな。少しずつ善処しよう」
「え? 本当ですか? 俺の意見に耳を貸してくださるんですか?」
「まぁ。その。おまえにはいろいろと世話になったから」
「世話というか。俺にとっては至福の時間でした。もちろんその間の出来事は誰にも言う気はありませんし俺の中の宝物です」
「……至福って。仕事と思ってやってたのではないという事か?」
「へ? もしかして……覚えてらっしゃる?……とか?」
「…………ノア」
「! 慎太郎っ! 本当に? 覚えてるのか?」
「思い出したんだよ。柳本に襲われそうになったときにおまえ俺のことを【慎太郎】って呼んだだろ? その時に突然思い出したんだよ」
「そっか。覚えててくれたんだ。よかった。それだけでも嬉しいです」
「コホン。俺は公私混同するタイプではない。だが、これからはプライベートも充実させていきたいとは思っている」
「はい。いいですね。休日もとってくださいね」
「うむ。その……。いや、だから。今度の休みは暇か?」
「え? それってその……デートの誘いですか?」
「こ、こういうのはあまりしたことがないんだ。察してくれ」
「はい! 暇です。仕事抜きで一緒にいてもいいですか?」
「……そうしてくれるとありがたい」
「ふふふ。俺今が一番幸せかも」
「ばか。これから俺がもっと幸せにしてやる」
「っ! マジっすか。はい。よろしくお願いします!」
俺はこの後、大人の色気満載の慎太郎に翻弄されていくことになるのであった。
駅の改札を出て自宅のマンションに着くまでに溜息を何回ついたかわからない。すでにあたりは夜の静寂に包まれていて街路樹に点在する街頭ぐらいしか灯りもない。
「社長って本当に容赦がないよなあ。今月休めたのっていつだっけな。ヤバい。俺って働きづめじゃん」
口に出すだけで重い気持ちになってくる。突然の辞令で秘書兼ボディガードに任命されてからというものほとんど休みがないのだ。別に恋人がいるわけでもないし、趣味は体を鍛えることなので自宅でも出来るのだが、たまには息抜きが欲しい。癒しが足らないのだろうか?
「犬でも飼おうかな」
だが終電過ぎのこんな時間にペットショップもあいていないだろう。それに世話出来る飼い主が傍に居ないと寂しい思いをさせるだけかもしれない。
俺は柊望空二十五歳。自分で言うのもなんだが入社三年目の若手ホープと呼ばれている。いい仕事をするにはやはり健康的な身体が必要だと暇があれば鍛えていた。なんて本当は格闘技が好きなだけなのだが。ある日ベンチプレスをあげていたら社長に声をかけられたのが運のつき。通っていたジムがたまたま社長と一緒だったのだ。
「お前、なかなか鍛え上げてるじゃないか」
その翌日に辞令が降りて、俺は秘書兼ボディガードに抜擢にされてしまった。ワンマン経営の社長は仕事はできるが物言いがキツイ人で逆恨みをされやすいらしい。周りからは出世コースと言われたが社長の人使いの荒さには慣れるまで大変だった。
まあ秘書は俺の他にもう一人柳本やなぎもとさんがいてくれてるからなんとかなってはいる。柳本さんは入社二十五年のベテラン秘書で社長の信頼の厚い人だった。それに最近は補佐として佐々木と竹内という総務の子が手伝ってくれるようになった。
社長の桐生慎太郎は彫の深い顔立ちの美丈夫で勢力的に活動するタイプだった。ただ辛辣な口調で相手をえぐるところがあり、秘書や側近がすぐにやめてしまうらしい。俺は社長の容姿が好きだ。物心ついた時から女性よりも男性に惹かれた。恋愛対象は同性である。
社長は仕事に情熱をかける姿勢も好ましく今も俺の隣で仕事の電話をしている。移動中の車の中でも社長が休んでるところはみたことがない。書類に目をとおしてるか電話対応に追われている。まさに24時間働き魔だ。だが真摯に仕事に向かう姿勢は悪くない。案件によっては即回答が必要な時も多い。そこに迷いや対応が悪ければ、辛辣になるのは仕方がないと思う。
「おい! 昼の予定にもう一件ねじ込め!」
「またですか? ちょっと待ってください。夜の予定を確認します!」
すぐにノートパソコンを開ける。スケジュールの変更など日常茶飯事なので俺もそろそろ慣れてきた。
「昼食を一緒にとるということで調整ができそうです。場所はいつもの和食の店でいいですよね?」
「うむ。先方に場所を知らせておけ」
「はい!」
すぐさま俺は予約をとり先方にメールを飛ばす。
「よし。今期はこの調子で行けば前年度を50%は超えるぞ」
確かにこのままの勢いで契約を取り続けると軽く超えるだろう。だが、そのかわり無茶なやり方をしてるのもわかってきた。
「はい。しかし、少しは休みを取っていただかないと社長のお身体が心配です」
「大丈夫だ。身体を鍛えるためにジムにも通ってるんだ」
「では定期の健康診断だけは欠かさないで下さいね」
ジム通いで筋肉をつけることはできても疲労を回復できるわけではない。
「……あいつらに負けるわけにはいかないんだよ」
社長が小声でぼそっと呟いた。おそらくは独り言だろう。俺は気づかないそぶりで会議資料を確認するふりをした。
社長の生家の桐生家は代々引継がれてきた資産家だ。そのせいか親族同士の確執や財産争いも絶えないようだ。気を抜くと実績が伴わない企業を親族企業が合併という名で吸収して乗っ取りも企ててくるらしい。身内程恐ろしいものはないらしい。俺の知らない水面下でいろいろとあるのだろう。
その日はスムーズに取引を終えることが出来、久しぶりに早めに帰れそうな雰囲気だった。帰りにペットショップに寄れるかもしれない。俺はいそいそと飲んでいたコーヒーカップを給湯室に片付けに行った。
しかしその直後に社長室から何かが割れる音がして、柳本さんの声が聞こえた。
「柊くん! 社長が……」
「どうしたんですか!」
俺が駆け付けると社長がうつ伏せに倒れていた。頭部に陶器の破片がついており、部屋の入り口に飾ってあった花瓶がなくなっていた。
「いきなり社長が倒れて傍にあった花瓶にぶつかったんだ」
柳本さんが青い顔をしてオロオロする。どうやら頭を直撃したようだ。社長は苦しそうに眉間にしわを寄せ唸っていた。
「救急車を呼ばないと……」
「だ……ダメだ! 呼ぶな! 俺が倒れたと知ったら……あいつらに弱みを見せるわけには……いか……ないんだ……頼む」
必死に俺に訴えかける社長に思わず頷く。だって俺に頼むなんてこの人らしくない。いつもふんぞり返って偉そうにしているのに。
「……わかりました。急ぎ主治医の先生を呼びましょう」
俺はすぐにかかりつけの医師に連絡をし長椅子に社長を寝かせた。
柳本さんがギクシャクした動きになり顔面が青を通り越して白くなっている。
「……社長は頭を打ってもまだお元気なんだな」
何かひっかるような言い方だが今はそれより社長の体調が心配だ。
「柳本さん。社長はきっと日頃の過労が元で倒れられたんでしょう。数日休養を取れるように調整しましょうよ!」
俺の言葉にはっとした柳本さんは明日からのスケジュールの穴埋め調整をしだした。
「そ、そうだね。仕事を回すことを考えなければ」
ほどなくして医師が駆けつけ、別室で社長の診察を始める。
「どうですか? 社長の容体は?」
「それが。どうやら困ったことになって。お二人ともこちらへ来てください」
かなりの重症かと思いきや、社長は長椅子に座り込んで戸惑いながらこちらを見ていた。
「社長? お加減はいかがですか?」
柳本さんが震える声で問いかける。すると社長が不思議そうに尋ねてきた。
「えっと。あなたは誰ですか? ここはどこなんでしょう?」
―――― 社長は記憶をなくしていた。
◇◆◇
「柊さん。本当に僕は社長なんてやってたんでしょうか?」
トレーナー姿の社長は実年齢よりも若く見える。普段スーツ姿しか見たことがないので新鮮だ。ソファーとクッションにうずもれるように座っていると学生っぽい。
「ええ。いつも威厳があって仕事人間な方でしたよ」
「本当に僕のことですか? 威厳とか社長とかっていまだに信じられないです」
あれから柳本さんと相談し社長は急な海外との取引で海外出張ということにした。普段から過密スケジュールや予定変更には皆、慣れていたので誰も驚かない。それよりも社長がいない間の仕事の割り振りをどうするかのほうが問題だった。
医師の話によると社長は頭に衝撃を受けた反動で記憶が後退してしまったようだ。
「外傷のショックだけではないようです。解離性健忘も考えられます。解離性健忘とは精神的なストレスなどの積み重ねで引き起こされる記憶障害です。記憶に空白期間がみられ、その長さは数分から数十年にも及ぶ場合があります。ストレスを軽減、または取り除くことができれば改善することも可能かと。一過性のものでしたら数日で記憶は元に戻るかもしれません。今は様子を観察して一人にしない様にした方が良いでしょう」
医師の助言もあり、俺はひとまず社長の傍につくこととなった。会社では俺は社長に同行して海外に行ったことになっている。社内の事は柳本さんと連携をとりながら仕事はリモートワークでこなしている。
俺と社長は海外出張という名目で休みを取っているため、自宅には戻らず懇意にしているホテルに部屋を取った。コンドミニアム形式でキッチンとリビングが付いているファミリールームという部屋だ。ここならゆっくりできるだろう。
「社長は今どのあたりの記憶をお持ちなのですか?」
「ん~。僕からしたら目が覚めたら別の世界に転移されたって感じなのでどのあたりの記憶と言われても返事に困ります。覚えているのは誕生日パーティーをディスコでしてもらってたってことぐらいでしょうかね?」
「ディスコですか?」
「ええ。ワンレン、ボディコンの女の子と悪友たちと飲んで騒いで目が覚めたらこの世界に転移されちゃったって感覚。電話も僕の家はまだダイヤル式でしたし、その四角いゲームウォッチみたいなのがスマホっていう携帯式電話っていうのも信じられません」
「はぁ……。すみません。一応俺は経済学科だったので経済の歴史は習ったんですが、恐らくそれはバブル時代の話しだと思います」
「バブルですか? バブル。なんか聞いたことがあるような」
「何か思い出せそうですか? たぶん三十年程前の昭和後半だと思うんですが」
「ええ? 三十年前? そんなに時間がたってるんですか? うそだ……」
「嘘ではないです。社長は今混乱されてるだけですよ」
「いやだ! うそだと言ってください。僕はまだ数日前まで十代だったんです。社長なんて呼ばないで!」
突然泣き出した社長に俺はどうしていいかわからなかった。見た目と違って中身はまだ二十歳になったばかりの大学生相手にどう接したらいいものか。
「ごめんっ。俺、自分勝手だったかもしれない。そうだよな。外見はどうであれ中身はまだ学生なんだよな? だったら俺と年齢も近いし俺のことは望空のあって呼んでくれていいよ」
「ノア? 柊さんノアって言うの? だったら僕のことも慎太郎って呼んでよ」
「いや、それは……。わかった。記憶が戻るまで慎太郎って呼ぶよ」
「ありがとう」
慎太郎は可愛かった。外見はイケおじなのに言う事やる事が十代前半っぽい。俺のために朝ご飯を作ろうとして焦がしてしまったり、ちょっとした反応にすぐに真っ赤になる。そして何より俺を見つめる瞳がキラキラとしていた。まるで飼い主を待つ子犬のようじゃないか。
「ヤバい。これは想定外だ」
社長のルックスで中身は純粋なBOYなんてドストライクしかないじゃないか。いや待て。相手は今の記憶がないんだぞ。手を出していいはずがない。
「ノアどうしたの? 百面相なんかして。せっかくのしょうゆ顔が台無しだよ」
俺は釣り目の一重だ。慎太郎はそんな俺を見て切れ長の瞳のしょうゆ顔だと言う。自分の顔はこってりしたソース顔で嫌いらしい。すっきりした顔が好みだという。ん? 好みってどういう意味だ?
「ねえ。もう今日の仕事は終わり?」
「あと少し。このメールを本社に送ったら急ぎの仕事は終わるよ。ちょっと気になる案件があってね」
慎太郎はキーボードを打つ俺の手を物珍しそうに見ると手品みたいだと笑う。デジタル機器に触れるのが当たり前の令和の時代にしたら打てないほうが不思議だ。情報は新聞や紙媒体よりもSNSやネットが主流である。
「本当? じゃあちょっと遊んでよ」
「ははは。わかったよ。ちょっと待っときな」
数日たつと少しずつ慎太郎は俺に懐いてきた。一緒に生活を始めたせいかリラックスをした表情を見せてくれるようになったのだ。それは俺が初めて見る社長の笑顔だった。
「……それでね。ランバダって踊りが流行っててさ」
「ランバダ? なんだそれ?」
「知らないの? じゃあ教えてあげるよ。スマホで曲を検索してみて」
慎太郎が俺の手を取り、曲に合わせて踊り始める。なんて官能的な踊りなんだ! 腰をくねらせ体にまとわりつくようなダンスに俺の体温が一気に上昇した。ヤバいヤバいぞ! 相手は社長だ。落ち着け俺! いや、でも今は慎太郎だし……。
「わっ!」
「危ないっ」
動揺した俺の足が慎太郎の足を引っかけてしまった。倒れかけた慎太郎を抱き寄せるとギュッとしがみつかれ心拍数が上がる。程よく引き締まった筋肉質な身体。息がかかる程の至近距離で熱く見つめられてめまいがした。
「ノア……」
「しぃっ。俺を誘ったな。悪い子だ」
唇が重なると同時に慎太郎の腕に力が入る。必死にしがみついてきて俺の口づけにこたえようとする。そのつたない舌使いに初々しさを感じてしまう。まいったな。深みに嵌りそうだ。社長の顔は元からタイプだ。しかも今は俺だけを求めてくれている。
「……ノア。嬉しい。僕、誰にも言えなかったけど男の人が好きなんだ」
切羽詰まったような声に切なくなる。きっとそれは社長が隠してきた言葉なのだろう。同性愛者に対していまだに差別的な視線でみられることもある。企業のリーダー的な存在の社長が声を大にして言えなかったことなのだろう。きっとそれはストレス要因のひとつだ。
「俺もだよ」
「本当に? 信じてもいいの? 僕はおかしくはないの?」
「おかしい? 人を好きになる事におかしいなんてないよ」
「ノア。ありがとう! 僕はきっと誰かにそう言って欲しかったんだよ」
慎太郎は何度もありがとうと俺の胸で泣く。俺は堪らずその唇を奪う様に口づけた。
翌朝、慎太郎を起こしに行くと昨日と様子が違っていた。
「どうした? 悪い夢でも見たのか?」
「あ? ああ。ちょっと思い出したんだ」
「え? どんなことだい? 聞いてもいいか?」
「そうだな。いいよ。ノアには聞いて欲しいかも。バブルが弾けて俺の実家が倒産したんだ」
「ええ? 倒産? でも今会社はあるじゃないか」
「それは俺が必死になって立て直したからなんだ。保有していた株や土地が一気に暴落してたった三日で借金まみれになった。気落ちした両親は心労がたたって亡くなったのさ。そのあと俺は祖父に引き取られワンマン精神を叩き込まれたんだ。何があっても這い上がれ。まわりは皆敵だと思えってね」
いつの間にか慎太郎の口調が変わっていた。僕と言っていたのが俺に変わっている。
「俺が祖父の遺産を引き継ぐと親戚中が目の色を変えたようになった。あいつらは昭和の景気が良かった時代を忘れられないんだ。金は湧いてくるものだと思っているところがある。今もこの会社を狙ってやがる」
慎太郎は祖父の言葉によって強迫観念にしばられている気もする。だが確かに社長が莫大な遺産で親類と揉めたと言う話は以前に聞いたことはあった。このまま慎太郎の言葉を全部信じていいのか。それよりもこれこそが最大のストレス要因なのではないのか。
「そうだったのか。だからいつもあんなに一生懸命仕事をしてたんだな」
「ふふ。そうか。ノアの目には俺がそんな風に映ってるのか」
「いつだって慎太郎はパワフルで仕事に情熱を注いでいて俺はそれを隣で見てワクワクしてたんだ」
「ワクワク? 俺は嫌われてなかったのか?」
「どうして? 嫌う要素がどこにもないじゃないか。もっと社員にも頼って欲しい。それに俺のことを信じてよ。自分ひとりで抱え込まないでいて欲しい」
「信じる?」
「そうだよ。俺はもっと慎太郎の役に立ちたい。この会社でやっていきたい。だから苦しい時は言って欲しいし嬉しい時は共に笑いたいんだ」
俺の言葉に慎太郎の顔が真っ赤に染まる。耳まで赤く染まったのを見て可愛いと思ってしまう。ああ。ヤバい。これってかなりハマってるよな。
「ノアは俺の事を……いや、いい」
「好きだよ」
「え! ほ……本気か? 俺が社長だって気を使ってないか?」
「元から社長の顔はタイプだったんだ。でも仕事は仕事。公私混同はしないよ」
「ノア。お前ってやつは……」
慎太郎の目が潤んでる。参ったな。そんな顔するなんて俺に食ってくれと言ってるのと同じだ。慎太郎が触れようとした手を俺は避けた。
「俺は今理性と戦ってる。近づいたらヤバいって」
「ヤバいってどういう意味なんだ?」
「今公私混同はしないって言い切ったのに肉欲に負けて抱きたくなるってこと」
「……理性と戦わなくてもいい。し……シたいよ」
「いいのか? もっとよく考えろよ!」
「いい。それに俺の元の記憶が戻ったら、今のこの記憶がなくなってしまうかもしれないじゃないか」
それは医者に言われていたことだ。元の記憶が戻れば今こうして過ごしてる方の記憶がなくなる可能性も高いと。
「だったら余計に……」
「違う。記憶がなくなっても体で覚えていたいんだ」
目の前で社長の顔が妖艶にほほ笑む。なけなしの理性なんて崩れ飛んだ。
「ああ。なんて事を言うんだ。慎太郎は俺のガードを全部砕いてしまうんだな」
「ノアが欲しい」
「もうっ。どうなっても知らないぞ!」
俺はなんて弱い人間なんだ。目の前にいる慎太郎が欲しくて仕方がない。
「これが夢じゃなく現実なんだって俺の体に刻み込んでくれ」
慎太郎が上着を脱いで俺に抱きついてくる。
「慎太郎っ!」
呆気なく俺は陥落した。そのまま押し倒すと割れた腹筋に手のひらを這わせ、下半身を弄ると慎太郎の口から熱い吐息がこぼれる。気をよくした俺はどんどんエスカレートした行動に移してしまう。頭の隅ではダメだとわかっているのに止めることが出来ない。
「俺の手で感じてくれてるんだな」
「ぁ……ノア……っ……はっ」
吐息混じりに名前を呼ばれると下半身に熱がこもる。俺の手と舌がこの人を喜ばしているんだと思うと更に興奮した。
「やっ……まって……ぁあ、そんなとこ……」
前を口で刺激しながら後蕾の周辺をゆっくりと指で刺激してやるとビクンっと腰が跳ねる。ゆっくりと指を一本突き進めるとその狭さにここを使ったことがないのではという確信に至る。これはやはり、この状態の慎太郎に無理強いするのは本意ではない。
「慎太郎。顔が見たい」
俺は慎太郎を抱き起こし対面座位の体位にする。
「やっ……ノアとシたいっ」
「うん。わかってるよ。挿れる以外にこういう方法もあるんだ」
慎太郎の雄のデカさに躊躇するも俺のと一緒に握り込んで擦りあげていく。
「んあ……何これ……自分でするのと違う……」
「慎太郎。舌をだして」
俺は口づけをしながら擦り上げるスピードを速めて行った。
「んっ……んふっ……んんんっ……ぷはっ。ノアっノアっ!」
「くっ……うっ……」
息を整えながらもヤッてしまった少しの罪悪感と慎太郎への愛しさと可愛さで俺の心の中はぐちゃぐちゃだった。だが慎太郎の嬉しそうな顔を見るともうどうでも良くなってしまう。その夜は二人で抱き合って眠った。
朝目覚めると俺は慎太郎に抱き込まれていた。ちょっと苦しいけど充足感で満たされる。まだ早いしもう少し寝かせておこうと先に着替えてキッチンに立つ。少し濃いめのコーヒーとトーストを用意する。慎太郎の好きな朝食だ。
「おい! 誰かいないのか!」
慎太郎の声にあわてて寝室に行くと苦しそうに頭をかかえていた。
「大丈夫か!」
「その声は柊か?」
―――― この口調。これは社長だ ――――
「はい。柊です。頭が傷みますか?」
「あ、ああ。少し。何があったんだ?」
「はい。実は……」
俺はできるだけ冷静に順序を追って説明した。社長は俺と過ごした時間の記憶をなくしてるようだった。話せば話すほどもう昨日までの二人の関係じゃないんだと実感する。俺はもう社長の事を慎太郎と呼ぶことは出来ないのだろう。虚しさが募るが必死に顔に出さない様にした。。
「そうか。ははっ。おまえの言うとおりきちんと定期検診に行くべきだったか」
「社長。とりあえず医師を呼びます。すぐに業務に復帰されたいでしょうが検査をうけるまでは此処にいてください」
「むむ。仕方ないな。さすがに俺でも今の状態では迷惑をかけるだけだとわかるからな」
「はい。イイ子にしておいてください。会社にも電話してきますね」
「……柊。おまえずっと俺についててくれたんだな?」
「はい。お世話させていただきました」
「そうか。お世話か。……すまなかったな」
「え? 社長が俺に礼をいうなんて!」
「あん? 俺だって礼ぐらい言うさ……なんだその顔は!」
しまった。ニヤけていたらしい。だって嬉しいじゃないか。社長が俺に礼を言うなんて今までなかったんだから。
「へへ。嬉しいんですよ」
「ぐ……。いいから早く電話してこいっ!」
ああ。もう俺は重症かもしれない。社長が可愛く見えて仕方がない。あれは社長だ。慎太郎じゃない。わかってはいる。でも照れた顔をごまかす仕草は慎太郎だ。いや、社長が慎太郎だから当たり前なのか。くそっ。もうどっちがどっちだとか言い訳にしかならない。とにかく俺は社長に惚れてると自覚した。
医師の診察が終わる頃、柳本が駆け付けた。
「社長は? 記憶が戻られたのか?」
「はい。今はベッドで横になっておられます」
「あの社長が? ベッドで大人しくしてると言うのか?」
柳本の言い方がやたらと刺々しい。俺の中で警戒音がなる。
「ええ。少し頭痛がするようです」
「まだ体調が戻ってないのだな。私の事はなにかおっしゃっていたか?」
「いえ。何も聞いてはおりませんが」
「おや、お二人ともお揃いでしたか。回復は順調のようですよ。今は当日の記憶があいまいなところもあるようですが、一過性だったのでしょう。すぐに思い出せるはずです。でも少し休まれたら念のためMRIだけは撮られることをお勧めします」
医師がほっとした表情で告げてくる。俺は喜んだが柳本は顔面蒼白だ。
「ありがとうございました。先生にはいろいろと無理を言ってしまって」
「いやいや。桐生くんとは長い付き合いなんだ。互いに不景気な時代を乗り越えてきたんでね。彼は会社を守るために頑張りすぎてる。威嚇しないとテリトリーに敵がはいりこんでくるからね。君なら彼を支えてあげられると僕は思うよ」
俺だけに聞こえるように言うとウィンクして医師が去って行った。
「なんだか人生の先輩って感じ。俺もあんな風になりたいなあ」
部屋に戻ると柳本がコーヒーを入れていた。
「柊くんにはいろいろと面倒をかけたしまあ一服しててよ。仕事で社長にしかわからないところがあってね。今日はそれを聞き出すつもりさ。それさえあれば何となるからね」
「そうでしたか」
「上手にコーヒーがいれられたか心配なんで私の前で飲んでくれないかな」
「わかりました」
部屋の奥で声がする。
「社長。柳本です。業務のことでお伺いしたいことがあって参りました」
「おう。はいれ」
「お元気そうでなによりです」
「おまえは嫌みを言いに来たのか?」
「まさか。めっそうもない! ですがまだ本調子ではなさそうですね」
「悔しいがまだ立ち上がれなくてな」
「そうでしたか。……それでその。あの日の事は何か思い出されましたか?」
「それはおまえが俺を花瓶で殴り倒したことか?」
「なっ! 覚えてたのか!」
「おまえの顔を見て思い出したのさ」
「くそ忌々しい。だがあんたとも今日で終わりだ」
「なんだと!」
「ずっとあんたにこき使われてきたんだ! 少しぐらい会社の金に手をつけたっていいじゃないか!」
バン! と音をたてて俺が扉を開けると柳本がナイフを振りかざす姿が目に入った。瞬間俺はカッとなり柳本への憎悪でいっぱいになる。
「慎太郎に手を出すな!」
迷わず俺はナイフを蹴り飛ばし一発殴ると後ろ手に柳本を押さえ込んだ。
「な、なんで動けるんだ? 眠剤を飲んだはずだろう!」
「あんなめちゃくちゃ怪しいコーヒーを飲むはずがないだろ!」
俺は柳本に飲めと言われたカップを最初に慎太郎のために入れていたコーヒーと即座にいれ変えたのだ。備え付けのホテルのカップが同じ柄だったから柳本にはわからなかったようだ。
「どうせ俺を後で犯人に仕立てようとしてたんでしよ?」
「なんでわかるんだ!」
「わかるよ。柳本さんは馬鹿正直な人だから」
「うっうるさい」
あの日、俺は社長に帳簿の確認を願い出ていた。明細に不明点を感じたからだ。社長は営業を優先していた為に経理は全て柳本に任せていたらしい。その資金の一部を柳本が着服していたのだ。
「あいつがこんなに長く俺の傍にいたのは金のためだったのか」
落胆した社長の姿に胸が締め付けられる。
「もっと俺を……社員に仕事をまかせてください。なんでもかんでも一人で抱え込まないで、俺たちは失敗もするが成長もします! 全てを一人に任せるのではなく分担して風通しのいい職場にしましょう」
「……柊。おまえ俺の経営にケチをつけるとはいい度胸だな」
「あ~。ですよねえ」
やっぱり無理か。社長には社長のやり方があるんだろうな……。
「っと。以前の俺なら足蹴にしてたがな。少しずつ善処しよう」
「え? 本当ですか? 俺の意見に耳を貸してくださるんですか?」
「まぁ。その。おまえにはいろいろと世話になったから」
「世話というか。俺にとっては至福の時間でした。もちろんその間の出来事は誰にも言う気はありませんし俺の中の宝物です」
「……至福って。仕事と思ってやってたのではないという事か?」
「へ? もしかして……覚えてらっしゃる?……とか?」
「…………ノア」
「! 慎太郎っ! 本当に? 覚えてるのか?」
「思い出したんだよ。柳本に襲われそうになったときにおまえ俺のことを【慎太郎】って呼んだだろ? その時に突然思い出したんだよ」
「そっか。覚えててくれたんだ。よかった。それだけでも嬉しいです」
「コホン。俺は公私混同するタイプではない。だが、これからはプライベートも充実させていきたいとは思っている」
「はい。いいですね。休日もとってくださいね」
「うむ。その……。いや、だから。今度の休みは暇か?」
「え? それってその……デートの誘いですか?」
「こ、こういうのはあまりしたことがないんだ。察してくれ」
「はい! 暇です。仕事抜きで一緒にいてもいいですか?」
「……そうしてくれるとありがたい」
「ふふふ。俺今が一番幸せかも」
「ばか。これから俺がもっと幸せにしてやる」
「っ! マジっすか。はい。よろしくお願いします!」
俺はこの後、大人の色気満載の慎太郎に翻弄されていくことになるのであった。
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