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一章バディになるまで
8敵のたくらみ
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フェスティバル当日は晴天となった。収穫祭という名前にふさわしく露店には各地から集められたさまざまな食べ物や冬眠グッズが所狭しと並んでいる。準備は万端のようだ。
「なあ、エアならどうする?」
唐突に質問される。だがこの数日間で少しはウォルフの事がわかってきた。
「敵がどう動くかという事だな? 元より俺なら人が多すぎるこの場所は狙わないな」
「だろ? オレもそう思うんだよ。ここは混乱させるだけで目的は別な場所だ」
「だが、予告状が来た限りは警備を緩めるわけにはいかない」
「そりゃあわかってるけどさあ」
ウォルフの動きが散漫になる。あきらかに心ここにあらずだ。
「仕方がないな。気になる場所があるんだな? 行って来いよ」
「え? いいのか?」
「止めても無駄だろ? そのかわり助けがいるときは俺を呼べ。」
「わかった! 嬉しいぜ!」
「何が嬉しいのだ?」
「オレを信じてくれてるってことがだよ」
ウォルフが去り際にウィンクをして行く。
「なっ。あ、あいつまたキザな事をして」
恥ずかしい。だが口元が緩むのをとめられない。そうだもう認めるしかない。俺は口に出してないだけでもうウォルフのことを……。
団長が開催の挨拶を述べるため壇上にあがった。
同時に爆発音がテント裏で響く。事前に各部所の爆発物の点検は済んでいた。という事は犯人はこの時間帯に爆発物を設置したのだ。まだ遠くには行っていないはず。
団長は獅子族らしくたてがみを揺らしながら大きな口を開け吠えた。その声は地面を揺らし、獣圧で周辺一帯を封鎖した。
「確保!」
「こちらも確保しました!」
「え? これって」
店の準備をしていた獣人やエルフたちが意気揚々と容疑者たちを取り押さえている。その中にはフィンデルもいた。
「君らには言ってなかったが彼らは元秘密部隊のつわもの達だ。なんせ私が主催してるんだからな。ふははははは!」
そうか、団長がやけに落ち着いてると思っていたら周りは皆、味方だったのか。
◇◆◇
「ハリーっ! 大丈夫か?」
オレが到着するとぐったりとハリーは受付の前で横たわっていた。
「うぅ……」
「よかった。生きてる。いいか端っこでじっとしとけ。すぐ応援が来るはずだ」
おかしい。外からの侵入にはハリーが一番対処できるはずなのに。
「ってことはやっぱり中からふいを突かれたのか」
そのために団長をここから引っ張り出したのか。獅子族の獣圧は広範囲を足止めさせるほどの威力がある。本部に居られると自由に犯行を行えないと判断したのだろう。
毎年王国が主催してるイベントに必ず団長は出席している。それを煽るような事をすれば逮捕劇に参戦することはあっても欠席することはまずない。団長の性格を良く知ってる者の犯行に違いない。
やけに隊内が静かだ。もちろん皆フェスティバルの警備に回っているがそれにしても静かすぎる。それに鼻を刺すようなこの匂い。
「くそっ! 鼻が効かねえ!」
完全にオレの進路を絶つつもりか? 隊内本部のところどころに嗅覚を刺激する煙がまかれていた。オレの能力もよく理解されてるってことか。
「できれば巻き込みたくなかったが……」
オレは胸のブローチ型魔法具を押した。会場から離れるときにエアレンディルが手渡してくれたものだ。
『ブローチには俺の魔力を注ぎ込んでいる。通信は出来ないがココを押すと俺のサングラスがお前の居場所を探知する。場所を特定したら押してくれ』なんて澄ました顔で言いながら。
フインデルに頼んでサイバーサングラスと直結する魔道具にしたらしい。へへ。本当にやる事が可愛らしい。オレに内緒で作ってくれてたなんて。
「連絡が遅いぞっ! 待っていたのにっ」
エアレンディルが瞬間移動であっという間にやってきた。
「はやっ……てか心配してくれてたのか?」
「当たり前だろ! ば……バディなんだから」
わお! なんだその強烈に可愛い顔は!
「エアっ? も、もういっぺん言ってくれ!」
「うるさいっ。それよりここは本部じゃないか。まさか犯人の狙いって」
ちぇ。まあいいや。後のお楽しみしておこう。
「そうだ。ここだ。おそらくは脱獄計画。今までの事件は捜査かく乱のための演出だろう。今日はフェス襲撃を隠れ蓑にして本来の目的を達成しようとするはずだ」
「くそっ。やはり大掛かりな作戦だったか!」
「すでに内部に潜んでるはず」
「なんだと? よし、魔防犯認識具と体温感知装置を確認しに行こう」
物陰に隠れていた敵を雷撃で倒しながら進む。エアレンディルの素早い攻撃に惚れ惚れしながらオレ達は奥へ進んで行った。
途中倒れてる職員を数人みつける。爆風にやられたのか? 壁に叩きつけられた者もいるようだ。何かに吹き飛ばされたような形跡があちこちに見られる。
「……まさか。こんな攻撃ができるやつって」
「エア! 地下だ!」
魔防犯認識具には地下に降りる二人連れの姿が映し出されていた。地下にはなにがあるんだ?
「地下では凶悪犯達が冬眠結界によって眠りについているんだ」
「なんだと? ヤバい! きっとテーマパークで捕まえた奴は解除係だ」
「結界を解除する気か? 全員を眠りから覚ますつもりなのか? 時間がない。ウォルフ。俺に抱きつけ」
「え? こんなところで? いいのか?」
「バカ! 一緒に移動するためだ!」
オレは真っ赤になったエアレンディルに抱きついた。可愛いな。
「なあ、エアならどうする?」
唐突に質問される。だがこの数日間で少しはウォルフの事がわかってきた。
「敵がどう動くかという事だな? 元より俺なら人が多すぎるこの場所は狙わないな」
「だろ? オレもそう思うんだよ。ここは混乱させるだけで目的は別な場所だ」
「だが、予告状が来た限りは警備を緩めるわけにはいかない」
「そりゃあわかってるけどさあ」
ウォルフの動きが散漫になる。あきらかに心ここにあらずだ。
「仕方がないな。気になる場所があるんだな? 行って来いよ」
「え? いいのか?」
「止めても無駄だろ? そのかわり助けがいるときは俺を呼べ。」
「わかった! 嬉しいぜ!」
「何が嬉しいのだ?」
「オレを信じてくれてるってことがだよ」
ウォルフが去り際にウィンクをして行く。
「なっ。あ、あいつまたキザな事をして」
恥ずかしい。だが口元が緩むのをとめられない。そうだもう認めるしかない。俺は口に出してないだけでもうウォルフのことを……。
団長が開催の挨拶を述べるため壇上にあがった。
同時に爆発音がテント裏で響く。事前に各部所の爆発物の点検は済んでいた。という事は犯人はこの時間帯に爆発物を設置したのだ。まだ遠くには行っていないはず。
団長は獅子族らしくたてがみを揺らしながら大きな口を開け吠えた。その声は地面を揺らし、獣圧で周辺一帯を封鎖した。
「確保!」
「こちらも確保しました!」
「え? これって」
店の準備をしていた獣人やエルフたちが意気揚々と容疑者たちを取り押さえている。その中にはフィンデルもいた。
「君らには言ってなかったが彼らは元秘密部隊のつわもの達だ。なんせ私が主催してるんだからな。ふははははは!」
そうか、団長がやけに落ち着いてると思っていたら周りは皆、味方だったのか。
◇◆◇
「ハリーっ! 大丈夫か?」
オレが到着するとぐったりとハリーは受付の前で横たわっていた。
「うぅ……」
「よかった。生きてる。いいか端っこでじっとしとけ。すぐ応援が来るはずだ」
おかしい。外からの侵入にはハリーが一番対処できるはずなのに。
「ってことはやっぱり中からふいを突かれたのか」
そのために団長をここから引っ張り出したのか。獅子族の獣圧は広範囲を足止めさせるほどの威力がある。本部に居られると自由に犯行を行えないと判断したのだろう。
毎年王国が主催してるイベントに必ず団長は出席している。それを煽るような事をすれば逮捕劇に参戦することはあっても欠席することはまずない。団長の性格を良く知ってる者の犯行に違いない。
やけに隊内が静かだ。もちろん皆フェスティバルの警備に回っているがそれにしても静かすぎる。それに鼻を刺すようなこの匂い。
「くそっ! 鼻が効かねえ!」
完全にオレの進路を絶つつもりか? 隊内本部のところどころに嗅覚を刺激する煙がまかれていた。オレの能力もよく理解されてるってことか。
「できれば巻き込みたくなかったが……」
オレは胸のブローチ型魔法具を押した。会場から離れるときにエアレンディルが手渡してくれたものだ。
『ブローチには俺の魔力を注ぎ込んでいる。通信は出来ないがココを押すと俺のサングラスがお前の居場所を探知する。場所を特定したら押してくれ』なんて澄ました顔で言いながら。
フインデルに頼んでサイバーサングラスと直結する魔道具にしたらしい。へへ。本当にやる事が可愛らしい。オレに内緒で作ってくれてたなんて。
「連絡が遅いぞっ! 待っていたのにっ」
エアレンディルが瞬間移動であっという間にやってきた。
「はやっ……てか心配してくれてたのか?」
「当たり前だろ! ば……バディなんだから」
わお! なんだその強烈に可愛い顔は!
「エアっ? も、もういっぺん言ってくれ!」
「うるさいっ。それよりここは本部じゃないか。まさか犯人の狙いって」
ちぇ。まあいいや。後のお楽しみしておこう。
「そうだ。ここだ。おそらくは脱獄計画。今までの事件は捜査かく乱のための演出だろう。今日はフェス襲撃を隠れ蓑にして本来の目的を達成しようとするはずだ」
「くそっ。やはり大掛かりな作戦だったか!」
「すでに内部に潜んでるはず」
「なんだと? よし、魔防犯認識具と体温感知装置を確認しに行こう」
物陰に隠れていた敵を雷撃で倒しながら進む。エアレンディルの素早い攻撃に惚れ惚れしながらオレ達は奥へ進んで行った。
途中倒れてる職員を数人みつける。爆風にやられたのか? 壁に叩きつけられた者もいるようだ。何かに吹き飛ばされたような形跡があちこちに見られる。
「……まさか。こんな攻撃ができるやつって」
「エア! 地下だ!」
魔防犯認識具には地下に降りる二人連れの姿が映し出されていた。地下にはなにがあるんだ?
「地下では凶悪犯達が冬眠結界によって眠りについているんだ」
「なんだと? ヤバい! きっとテーマパークで捕まえた奴は解除係だ」
「結界を解除する気か? 全員を眠りから覚ますつもりなのか? 時間がない。ウォルフ。俺に抱きつけ」
「え? こんなところで? いいのか?」
「バカ! 一緒に移動するためだ!」
オレは真っ赤になったエアレンディルに抱きついた。可愛いな。
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