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番外編
番外編 竜達の宴06
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しばらくしてホワイトはアンバーの補佐となった。いづれ隊長となる為の仕事を覚えるためだ。
最初こそ、団員達に遠巻きにされていたが、ホワイトの自画自賛が口だけではない事を知ると少しずつ彼に尊敬の念を抱くものも出てきた。
アンバーはとにかく面倒見がよかった。困っている隊員がいるとすぐに気づいて相談に乗ろうとするし自分に出来ることはないかと気を配る。ホワイトが皆んなと早く馴染むようにと彼が人知れず自主練をしていた事や鍛錬場を壊して反省した事を隊員たちにこっそり説いて回ったのもアンバーだった。
そんなある日、魔物が人里近くで暴れていると、調査に行くことになった。
近隣をアンバー隊たちと偵察にでかけたことはあっても実践に関わるような調査は初めてだった。
「ホワイトさん、くれぐれも一人で突撃しないでくださいね。それはアンバーさんだけで充分なんで、どうか僕らと共にいてください」
「わかった。だがわたしは修行の為に東の森へ何度か分け入ったこともある。少しぐらいの魔物ならこのわたしの魔法でも‥‥‥。いや、やはり隊を率いるということは団体行動に慣れなければなるまいな。皆の忠告を守るとしよう。ありがとう、わたしは隊長格というにはまだまだ未熟で知らないことも多い。これからもどんどん意見を言ってくれ。皆の意見はわたしを成長させ今よりももっと素敵にさせるはずっ!」
里の外れに古びた屋敷があった。以前は貴族が住んでいたのだろう。そこから瘴気と異臭がする。
「これは間違いないだろうね」
周辺の木が枯れている。魔物がいるに違いなかった。それも一匹や二匹じゃない。
「群れを成してる可能性がある。皆気をつけろ! 周囲に警戒して待機だ」
そう言って先頭を切って突っ込んでいくのはアンバーだ。
「アンバー? 待てっ。いくらなんでも危険すぎるっ」
土竜は力は強いが動きが俊敏ではない。もちろん土の中なら同化して動ける分有利だが、屋敷の中ではどう考えてもそうとは思えない。こういう時の為に鼻が利く獣人の隊員達がいるのではないのか? 疑問に思い振り返ると隊員達も苦笑している。
「‥‥‥いつもの事なのですよ。現場のアンバー隊長は何故か向こう見ずで死に急いでるようで俺らも心配なんです」
いやな予感がする。ホワイトは隊員達が止めるのを振り切ってアンバーの後を追った。
すぐさまアンバーが動けなくなってる場面に出くわす。
体中に何かどろどろしたモノがくっついた状態でいた。スライムだ! それも毒を持ったタイプだ。
半透明の身体の中にどす黒い液体が透けて見える。これを相手に吹き付けて動きを止める奴らだ。
ホワイトは咄嗟に自分の身体の周りに風の壁を作った。ヒュンヒュンと鳴る風音にアンバーが振り返る。
「ホワイト? 何故来た? こいつらは‥‥‥」
アンバーの身体は腐食され色が変わりつつあった。
「何言ってるんだ! 毒に侵されてるじゃないか! すぐに撤退しろ!」
スライムたちは狙いをホワイトに変えたように飛びかかってきた。
「ホワイト危ないっ!!」
アンバーが叫ぶと同時にホワイトは部屋の奥へと移動した。
(おそらくこの奥がキッチン)
スライム達が後を追ってきてるのを確認しキッチン奥へとおびき寄せる。
このタイプの魔物は炎でなければ退治できないはず。自分やアンバーの得意分野ではない。
ならば炎がある場所へ誘い出せばいい。キッチンには火をおこせる誘火剤や着火石がある。
スライム達は身体を寄せ合って一つに合体しホワイトを飲み込もうと襲い掛かってきた。
「この時を待っていた!」
傍にあった誘火剤をぶちまけて着火石で火を放つとみるみる燃え盛り蒸発していく。
「ホワイト? どこだ? 無事か?」
探しにやってきたアンバーを抱きかかえるとホワイトは窓から外へひらりと飛び出した。
「アンバー。言いたいことが山ほどあるからあとで付き合ってくれ」
「……わかった」
隊員達が駆け寄ってくる。
「隊長! ご無事でしたか?」
「ホワイトさん凄いっ。隊長を横抱きにして窓から飛び降りるなんて!」
「アンバーの治療を先に。残った者は飛び火を防ぐために結界の周りに土石を。わたしは魔物を全滅させる」
ホワイトは言うが早いか突風を起こし火を煽り、屋敷を丸ごと全焼させてしまった。
ドラゴン城に戻り治療をうけたアンバーはしばらく動けなくなった。
毒が思いのほか強かったせいだ。
報告を終えたホワイトがアンバーの元を訪れたのは数日後であった。
「どうだい様子は?」
「ああ。もう大丈夫だ。心配かけたな」
「‥‥‥本気でそう思ってるの? 何が大丈夫なのさっ。なんであんな戦い方をするんだ? アンバーだってあのタイプは炎でないと倒せないとわかってただろう? 命を粗末にするな!」
「あの魔物は里の周辺に出没して人を襲っていたらしい。だから群れを成すほど増えていたんだ。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない」
「そのために自分を犠牲にしようとしてたのか? どうせ自分に張り付いたスライムごと火だるまにでもなる気だったんだろう?」
「そうだ。わざと暴れて俺に攻撃を仕向ける様にし、最終的に俺ごと燃やす気だった。だからお前が考えたように俺も最後はキッチンへ行くつもりだったんだ」
だからすぐにキッチンへ来たんだな。
「わたしが風の防壁を作れることは知っていただろう? なぜ連携を取ろうとしなかったのだ?」
「‥‥‥お前を危険な目に会わせたくなかった。俺はもう何もなくしたくないんだ」
「少しはわたしのことを大事に想ってくれてるのか?」
「もちろんだとも。小さなころから知ってるお前の事は可愛いと思っているよ」
「可愛いだけか? カッコよくはないのか? アンバーにはわたしはどう見えているのだ? わたしはアンバーが好きだ。伴侶になって幸せにしたいと思っているのだ!」
ホワイトが真っ赤になって告白する。
「‥‥‥ホワイト。お前は美しい。努力家だし判断力もある。見た目に反して力もあるし俊敏だ。お前が動くだけでみんなの視線を集める。だからお前の気持ちはありがたい。だが俺は幸せになってはいけないんだ」
「何がいけないんだ? わたしにわかるように答えてくれ」
「俺は‥‥‥幸せになってはダメなんだ。俺は昔、暴走して多くの人や獣人の命を奪ってしまった。たくさんの命を叩き潰した俺はその分沢山の命を救わなければいけないんだ」
「なにそれ? 自分が罪を犯したと思っているの? わたしが怒っているってわかって言ってるのか?! 要するに罰して欲しいんだね? ならばわたしが罰してあげるよ。君を愛して愛してがんじがらめにしてあげる。そして君に痛みを与えるのもわたしだけだ」
「は? ホワイトお前、まさか俺を抱きたいのか?」
最初こそ、団員達に遠巻きにされていたが、ホワイトの自画自賛が口だけではない事を知ると少しずつ彼に尊敬の念を抱くものも出てきた。
アンバーはとにかく面倒見がよかった。困っている隊員がいるとすぐに気づいて相談に乗ろうとするし自分に出来ることはないかと気を配る。ホワイトが皆んなと早く馴染むようにと彼が人知れず自主練をしていた事や鍛錬場を壊して反省した事を隊員たちにこっそり説いて回ったのもアンバーだった。
そんなある日、魔物が人里近くで暴れていると、調査に行くことになった。
近隣をアンバー隊たちと偵察にでかけたことはあっても実践に関わるような調査は初めてだった。
「ホワイトさん、くれぐれも一人で突撃しないでくださいね。それはアンバーさんだけで充分なんで、どうか僕らと共にいてください」
「わかった。だがわたしは修行の為に東の森へ何度か分け入ったこともある。少しぐらいの魔物ならこのわたしの魔法でも‥‥‥。いや、やはり隊を率いるということは団体行動に慣れなければなるまいな。皆の忠告を守るとしよう。ありがとう、わたしは隊長格というにはまだまだ未熟で知らないことも多い。これからもどんどん意見を言ってくれ。皆の意見はわたしを成長させ今よりももっと素敵にさせるはずっ!」
里の外れに古びた屋敷があった。以前は貴族が住んでいたのだろう。そこから瘴気と異臭がする。
「これは間違いないだろうね」
周辺の木が枯れている。魔物がいるに違いなかった。それも一匹や二匹じゃない。
「群れを成してる可能性がある。皆気をつけろ! 周囲に警戒して待機だ」
そう言って先頭を切って突っ込んでいくのはアンバーだ。
「アンバー? 待てっ。いくらなんでも危険すぎるっ」
土竜は力は強いが動きが俊敏ではない。もちろん土の中なら同化して動ける分有利だが、屋敷の中ではどう考えてもそうとは思えない。こういう時の為に鼻が利く獣人の隊員達がいるのではないのか? 疑問に思い振り返ると隊員達も苦笑している。
「‥‥‥いつもの事なのですよ。現場のアンバー隊長は何故か向こう見ずで死に急いでるようで俺らも心配なんです」
いやな予感がする。ホワイトは隊員達が止めるのを振り切ってアンバーの後を追った。
すぐさまアンバーが動けなくなってる場面に出くわす。
体中に何かどろどろしたモノがくっついた状態でいた。スライムだ! それも毒を持ったタイプだ。
半透明の身体の中にどす黒い液体が透けて見える。これを相手に吹き付けて動きを止める奴らだ。
ホワイトは咄嗟に自分の身体の周りに風の壁を作った。ヒュンヒュンと鳴る風音にアンバーが振り返る。
「ホワイト? 何故来た? こいつらは‥‥‥」
アンバーの身体は腐食され色が変わりつつあった。
「何言ってるんだ! 毒に侵されてるじゃないか! すぐに撤退しろ!」
スライムたちは狙いをホワイトに変えたように飛びかかってきた。
「ホワイト危ないっ!!」
アンバーが叫ぶと同時にホワイトは部屋の奥へと移動した。
(おそらくこの奥がキッチン)
スライム達が後を追ってきてるのを確認しキッチン奥へとおびき寄せる。
このタイプの魔物は炎でなければ退治できないはず。自分やアンバーの得意分野ではない。
ならば炎がある場所へ誘い出せばいい。キッチンには火をおこせる誘火剤や着火石がある。
スライム達は身体を寄せ合って一つに合体しホワイトを飲み込もうと襲い掛かってきた。
「この時を待っていた!」
傍にあった誘火剤をぶちまけて着火石で火を放つとみるみる燃え盛り蒸発していく。
「ホワイト? どこだ? 無事か?」
探しにやってきたアンバーを抱きかかえるとホワイトは窓から外へひらりと飛び出した。
「アンバー。言いたいことが山ほどあるからあとで付き合ってくれ」
「……わかった」
隊員達が駆け寄ってくる。
「隊長! ご無事でしたか?」
「ホワイトさん凄いっ。隊長を横抱きにして窓から飛び降りるなんて!」
「アンバーの治療を先に。残った者は飛び火を防ぐために結界の周りに土石を。わたしは魔物を全滅させる」
ホワイトは言うが早いか突風を起こし火を煽り、屋敷を丸ごと全焼させてしまった。
ドラゴン城に戻り治療をうけたアンバーはしばらく動けなくなった。
毒が思いのほか強かったせいだ。
報告を終えたホワイトがアンバーの元を訪れたのは数日後であった。
「どうだい様子は?」
「ああ。もう大丈夫だ。心配かけたな」
「‥‥‥本気でそう思ってるの? 何が大丈夫なのさっ。なんであんな戦い方をするんだ? アンバーだってあのタイプは炎でないと倒せないとわかってただろう? 命を粗末にするな!」
「あの魔物は里の周辺に出没して人を襲っていたらしい。だから群れを成すほど増えていたんだ。これ以上犠牲者を出すわけにはいかない」
「そのために自分を犠牲にしようとしてたのか? どうせ自分に張り付いたスライムごと火だるまにでもなる気だったんだろう?」
「そうだ。わざと暴れて俺に攻撃を仕向ける様にし、最終的に俺ごと燃やす気だった。だからお前が考えたように俺も最後はキッチンへ行くつもりだったんだ」
だからすぐにキッチンへ来たんだな。
「わたしが風の防壁を作れることは知っていただろう? なぜ連携を取ろうとしなかったのだ?」
「‥‥‥お前を危険な目に会わせたくなかった。俺はもう何もなくしたくないんだ」
「少しはわたしのことを大事に想ってくれてるのか?」
「もちろんだとも。小さなころから知ってるお前の事は可愛いと思っているよ」
「可愛いだけか? カッコよくはないのか? アンバーにはわたしはどう見えているのだ? わたしはアンバーが好きだ。伴侶になって幸せにしたいと思っているのだ!」
ホワイトが真っ赤になって告白する。
「‥‥‥ホワイト。お前は美しい。努力家だし判断力もある。見た目に反して力もあるし俊敏だ。お前が動くだけでみんなの視線を集める。だからお前の気持ちはありがたい。だが俺は幸せになってはいけないんだ」
「何がいけないんだ? わたしにわかるように答えてくれ」
「俺は‥‥‥幸せになってはダメなんだ。俺は昔、暴走して多くの人や獣人の命を奪ってしまった。たくさんの命を叩き潰した俺はその分沢山の命を救わなければいけないんだ」
「なにそれ? 自分が罪を犯したと思っているの? わたしが怒っているってわかって言ってるのか?! 要するに罰して欲しいんだね? ならばわたしが罰してあげるよ。君を愛して愛してがんじがらめにしてあげる。そして君に痛みを与えるのもわたしだけだ」
「は? ホワイトお前、まさか俺を抱きたいのか?」
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