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2章 竜騎士団編
55.王都の結界
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この回は残忍な描写があります。
~~~~~~
城内に居た兵士のほとんどは武装している。
僕達は見つからないように移動していた。幸いにして誰も子犬や子猫には見向きもしない。
何がどうなっているんだろう?第一皇太子のユリウスとユリウス付きの宰相であるコーネリアスは王宮内にいるはずなのに気配がない。二人はどうしているのだろう?
僕らが王都をたってまだ2~3月もたってないはず。
この短期間でこんなことになってしまうなんて??
いや、僕らがいた時からもう計画済だったのだろうか?
『ううっ、なんだこの匂いっ?鼻が曲がりそうだ』
城門に近づくにつれ異臭が漂ってくる。
先に気づいたのはエドガーだ。犬の方が嗅覚がすぐれているのか?偶然か?
『うわっ。凄いっ。なんだろ?何かが腐ったみたいな匂い』
『エドっ!アキト!それ以上行ってはなりません!』
黒猫のクロの静止で僕らはとどまった。
『クロ?どうした?何かわかったのか?』
『結界が張られています!』
城門からは出ることも入る事も出来ない結界が張られているらしい。
『なんで?この城から出ることも入る事もできないの?』
城下街の周辺を偵察したかったのに。これじゃあ外に出られない。
都の人たちに聞いて回りたかったのに。民は本当に王都に不満を持っているのか?
『おいっ、塔に登ってみようぜ!』
『見張り台のあるところ?』
『わかりました。行きましょう』
王宮の二階は前の王が改造した跡が沢山残っている。
後から聞いたが本来はこの2階と竜騎士団の城へと通じる常設の移転通路が存在していたらしい。
それを壊してしまうなんてよほど竜を恐れていたのだろうか?
見張り台には兵士が二人いた。だがどちらもその目は空中を凝視していた。
『何故空を見上げてるんだ?……まさか。こいつらが見張ってるのって』
『そうですね。竜の飛来を警戒しているようですね』
『ますますおかしいよ!竜は皆を守っているのに』
兵士の目を盗むようにして塔の上まで登る。
僕は手足が短いのでクロに首根っこをくわえて運んでもらった。
『……っ!なんてこった!』
『これはっ……』
『え?っ……なに?』
塔の上からは結界が張ってあるのが見えた。ちょうど城の東西南北にあたる箇所に何かが地面に突き刺してありそこから結界が浮かび上がって見えた。
何かを媒介にしてる?この結界は強力な呪詛が使われてる。だとしたら媒介になるものはかなりの魔力を発するモノでないといけないはず。
僕は子猫のせいか二人よりも見える範囲が狭い。でも目を凝らすと媒介であろうモノがぴくっと動いたのが分かった。生きているのか?まさかこれって?!
『……く……クロあれって……獣人だよね?』
『さようですね……ひどいことをするっ』
なんてことだ!仮死状態にして串刺しにしてあるんだ?!殺してしまったら魔力を引き出すことはできない。だがあの状態ではそれも時間の問題じゃないか?!誰がこんなことを?!
『アキト……反対側を……』
エドガーの声が怒りに震えている。言われた方角を見ると、串ざしの先に銀髪が揺れていた。あれは……
――――――コーネリアス!!!!
『た……助けないと!!!』
僕はジタバタしたがクロがくわえているので僕の手足は空を切るばかりだ。
『アキト、エドも勝手に動いてはいけませんよ!対策を考えましょう』
『……わかってるさ。この身体じゃ戦えねえっ』
『あの結界は、じきに壊れます。コーネリアス様以外の三人はそれほど魔力は強くありません』
『じゃあなんであんなにひどいことを!?』
僕には理解が出来ないっ。術のためにこんなことをするなんて!
『あの三人は見たことがねえ。実行犯なら見せしめのため……なのか?』
『おそらくはそうでしょう。王政に反旗をひるがえせばこうなるぞという』
『そんな?コーネリアスさんが反乱分子だって言うの?』
『それはありえねえはずだ。アイツはユリウス兄貴と恋仲だったからな』
『ええ?!そうなの??いや、それならなおの事どうして??』
『落ち着きましょうっ!おそらく結界が壊れても命には別条はありません!』
やはり、誰かと話をするべきだ。人型に戻ろうという僕をクロードが止めた。
まだ危険すぎるという。
『とにかく侍従の控室に行ってみましょう。彼らなら城の詳細を知っているはず』
『うん……城で働いてる皆に会いたい』
侍従室の前は普段どうり忙しそうだった。
クロがそっと子猫の僕を侍従室の扉の前に置いた。
珍しく扉が少し開いていて僕はそっと覗いてみた。
「……にしてもまだ僕は信じられないよ。コーネリアス様が反乱分子だったなんて」
「しっ!声が大きいよ。それはみんな思っているさ」
若い侍従たちの声が聞こえる。
「僕は以前、あのドリスタンに怒鳴られた時にユリウス様に助けていただいたんだ」
「コーネリアス様とユリウス様はよく侍従の僕たちにも声をかけてくれてたものね」
「うん。お二人は伴侶になるはずだったんだって」
「可哀そうだよね。ユリウス様は今幽閉されているしツライよね」
「だめだよっ。それは言っちゃだめだって言われてるだろう?」
「誰だ?!」
……しまった。見つかっちゃった。つい前のめりになりすぎた。
「みゃぁ」
僕は思わず声をだしてしまった。
「え?子猫っ!!」
「なになに?わあ!ミルクあげようよ!!」
ミルク?ちょうど喉が渇いてたんだ!でもいいのかな?僕一人飲んでも。
エドとクロは手分けして庭師の控室と調理室に行ってしまった。
ん~と首をコテンと傾けるとくぅ~っといううめき声が聞こえた。
「かわいい~~~~っ!」
~~~~~~
城内に居た兵士のほとんどは武装している。
僕達は見つからないように移動していた。幸いにして誰も子犬や子猫には見向きもしない。
何がどうなっているんだろう?第一皇太子のユリウスとユリウス付きの宰相であるコーネリアスは王宮内にいるはずなのに気配がない。二人はどうしているのだろう?
僕らが王都をたってまだ2~3月もたってないはず。
この短期間でこんなことになってしまうなんて??
いや、僕らがいた時からもう計画済だったのだろうか?
『ううっ、なんだこの匂いっ?鼻が曲がりそうだ』
城門に近づくにつれ異臭が漂ってくる。
先に気づいたのはエドガーだ。犬の方が嗅覚がすぐれているのか?偶然か?
『うわっ。凄いっ。なんだろ?何かが腐ったみたいな匂い』
『エドっ!アキト!それ以上行ってはなりません!』
黒猫のクロの静止で僕らはとどまった。
『クロ?どうした?何かわかったのか?』
『結界が張られています!』
城門からは出ることも入る事も出来ない結界が張られているらしい。
『なんで?この城から出ることも入る事もできないの?』
城下街の周辺を偵察したかったのに。これじゃあ外に出られない。
都の人たちに聞いて回りたかったのに。民は本当に王都に不満を持っているのか?
『おいっ、塔に登ってみようぜ!』
『見張り台のあるところ?』
『わかりました。行きましょう』
王宮の二階は前の王が改造した跡が沢山残っている。
後から聞いたが本来はこの2階と竜騎士団の城へと通じる常設の移転通路が存在していたらしい。
それを壊してしまうなんてよほど竜を恐れていたのだろうか?
見張り台には兵士が二人いた。だがどちらもその目は空中を凝視していた。
『何故空を見上げてるんだ?……まさか。こいつらが見張ってるのって』
『そうですね。竜の飛来を警戒しているようですね』
『ますますおかしいよ!竜は皆を守っているのに』
兵士の目を盗むようにして塔の上まで登る。
僕は手足が短いのでクロに首根っこをくわえて運んでもらった。
『……っ!なんてこった!』
『これはっ……』
『え?っ……なに?』
塔の上からは結界が張ってあるのが見えた。ちょうど城の東西南北にあたる箇所に何かが地面に突き刺してありそこから結界が浮かび上がって見えた。
何かを媒介にしてる?この結界は強力な呪詛が使われてる。だとしたら媒介になるものはかなりの魔力を発するモノでないといけないはず。
僕は子猫のせいか二人よりも見える範囲が狭い。でも目を凝らすと媒介であろうモノがぴくっと動いたのが分かった。生きているのか?まさかこれって?!
『……く……クロあれって……獣人だよね?』
『さようですね……ひどいことをするっ』
なんてことだ!仮死状態にして串刺しにしてあるんだ?!殺してしまったら魔力を引き出すことはできない。だがあの状態ではそれも時間の問題じゃないか?!誰がこんなことを?!
『アキト……反対側を……』
エドガーの声が怒りに震えている。言われた方角を見ると、串ざしの先に銀髪が揺れていた。あれは……
――――――コーネリアス!!!!
『た……助けないと!!!』
僕はジタバタしたがクロがくわえているので僕の手足は空を切るばかりだ。
『アキト、エドも勝手に動いてはいけませんよ!対策を考えましょう』
『……わかってるさ。この身体じゃ戦えねえっ』
『あの結界は、じきに壊れます。コーネリアス様以外の三人はそれほど魔力は強くありません』
『じゃあなんであんなにひどいことを!?』
僕には理解が出来ないっ。術のためにこんなことをするなんて!
『あの三人は見たことがねえ。実行犯なら見せしめのため……なのか?』
『おそらくはそうでしょう。王政に反旗をひるがえせばこうなるぞという』
『そんな?コーネリアスさんが反乱分子だって言うの?』
『それはありえねえはずだ。アイツはユリウス兄貴と恋仲だったからな』
『ええ?!そうなの??いや、それならなおの事どうして??』
『落ち着きましょうっ!おそらく結界が壊れても命には別条はありません!』
やはり、誰かと話をするべきだ。人型に戻ろうという僕をクロードが止めた。
まだ危険すぎるという。
『とにかく侍従の控室に行ってみましょう。彼らなら城の詳細を知っているはず』
『うん……城で働いてる皆に会いたい』
侍従室の前は普段どうり忙しそうだった。
クロがそっと子猫の僕を侍従室の扉の前に置いた。
珍しく扉が少し開いていて僕はそっと覗いてみた。
「……にしてもまだ僕は信じられないよ。コーネリアス様が反乱分子だったなんて」
「しっ!声が大きいよ。それはみんな思っているさ」
若い侍従たちの声が聞こえる。
「僕は以前、あのドリスタンに怒鳴られた時にユリウス様に助けていただいたんだ」
「コーネリアス様とユリウス様はよく侍従の僕たちにも声をかけてくれてたものね」
「うん。お二人は伴侶になるはずだったんだって」
「可哀そうだよね。ユリウス様は今幽閉されているしツライよね」
「だめだよっ。それは言っちゃだめだって言われてるだろう?」
「誰だ?!」
……しまった。見つかっちゃった。つい前のめりになりすぎた。
「みゃぁ」
僕は思わず声をだしてしまった。
「え?子猫っ!!」
「なになに?わあ!ミルクあげようよ!!」
ミルク?ちょうど喉が渇いてたんだ!でもいいのかな?僕一人飲んでも。
エドとクロは手分けして庭師の控室と調理室に行ってしまった。
ん~と首をコテンと傾けるとくぅ~っといううめき声が聞こえた。
「かわいい~~~~っ!」
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