異世界行ったらボクは魔女!

ゆうきぼし/優輝星

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2章 竜騎士団編

50.もう一つの選択

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「はあ?じゃあその神龍(シェンロン)ってのは僕の身体を狙ってるというの?」
『今はタイミング待ちってところだろうな?もともと受精卵のまま数百年も保管されてる事自体が不自然だったんだよ』
 それは僕自身も疑問に思ってはいた。この世界で卵は産まれるが愛情を注がなければ腐卵して朽ち堕ちていくと聞いていたから。なぜ自分だけ卵のまま長い年月を眠っていたのか不思議だったのだ。
『皮肉にもその間は神龍(シェンロン)に守られていたんだろう。次の苗床として。しかるべきタイミングで孵化するように仕組まれていた。だからあの日、あの時お前を攫ったんだよ』

「ばあちゃんは全部わかってたというの?」
『見れていたよ。それだけの力を持って生まれてしまった。魔女の卵が孵化しないのは神龍(シェンロン)のせいだ。より強い魔力をもった贄となる魔女を作りたかったためにかなりの魔力量が高くないと孵化しないようにされている。魔女の数が減ったのはそのせいさ。お前はおそらく最後の魔女だよ』

 だから魔女なんて本当にいたのかってみんなに言われたんだな。

『アキトが今いるそっちの世界は神龍(シェンロン)が作った世界だからね。そこで生まれてしまった者はアイツの影響をどうしても受けちゃうんだよ。だから干渉されない異世界に連れって行ったのさ。そしてこのドラゴン城は唯一神龍(シェンロン)が干渉できない場所なんだよ』
「え?だって神龍(シェンロン)は竜たちの目を通して見てるって」
『そうだよ。ここは竜たちが集う場所。ゆえに神龍(シェンロン)が干渉しすぎると竜たちに悪影響が出る。だからここにこの部屋を隠したんだ。竜たちに見つからない様に絶えず部屋を移動させてね』

「なんでそこまでしたの?僕をどうしたいの」
『神龍(シェンロン)の思いどうりにさせないためさ。おそらく、また世界の破滅を引き起こすきっかけが起ころうとしているんだ。あいつはこの世界をまた作り直そうとするだろう。それじゃあだめなんだよ。根本的な事を変えないといけない。』
「根本的な事ってそれは何なの?」
『憎しみ、妬み、負の感情が魔物を生む。悲しみの連鎖をたち、救済してやらないといけない。神竜(シェンロン)には感情がないんだ。竜たちの目を使って世界を見ているが気持ちまでは共有できていない。だからまた同じことが繰り返される』

 目の前に居る黒猫は尻尾を緩やかに振りながら話し続ける。姿かたちはクロなのに聞こえる声はマリーだ。懐かしいが切ない。僕は胸に湧いた疑問を投げつけた。
「そこまでわかってるならどうしてもっと、せめてばあちゃんが生きてる時に教えてくれなかったんだよっ!?」
『アキト。本当はね、こんなこと教えたくなかった。お前をこっちに連れてきたくなかったんだ。わたしはお前の闇の力の部分を取り除いちまった。だから魔女になりたくなければならなくてもいいんだよ。お前は闇の攻撃魔法は使えない。でもね、魔物を浄化できる力をもっているんだよ』
「僕は、何より愛する人を守りたいと思う。そのためになら魔女にだって騎士にだってなんだってなれる!」
『アキト。成長したんだね。わたしが見てきたのは予知だが、未来は変えられると思っているのさ。そろそろ時間だ。今からこの子にアイテムを渡すからお前はそちらで受け取りな。愛しているよ』
 話し終わると黒猫のクロが扉からぴょんとアキトの腕に飛び戻った。クロは何かを咥えていた。
「クロ!大丈夫?……って何これ?おもっ」
 クロが口元に咥えてたのはチェーンだった。引っぱると部屋からジャラジャラと音をたててこちらに何かが届いた。見るとチェーンの先に剣と一冊の本がくくり付けられていた。
 
 バタン! クロがこちらに移動すると共に扉がしまり部屋は消えてしまった。

「……」
 クロが僕の足元に寄り添ってきた。
 尻尾が僕の足に絡み、獣人に戻る。
「……アキト。わたしは?」
 唖然とした顔でまるで何かあったのか?という表情だった。
「クロ。今僕と話したことは覚えてる?」
 クロードは首を横にふり、眉間にしわを寄せたまま困った顔をして答えた。
「残念ながら。わたしは何かしでかしたのでしようか?」

「 すまないね。マリーのせいだよ」
 ダレンが口を挟んだ。
「マリーはクロードさんとの契約時に付加魔法を加えていたようだ。あの部屋に入ればアキトはマリーの声を聞けるように」
「そんなの嬉しくない!聞くなら直接生きてるうちに聞きたかった!!」
「アキト」
 クロードの手が僕を抱き寄せる。背中を優しく撫でられると泣きそうになる。
「僕、ばあちゃんが好きだったんだ」
「アキト。すまない。君にすべて押し付けてしまった。……マリーを慕ってくれてありがとう。アレも喜んでるはずだ」
 ダレンはそう言うと一礼して部屋から出ていった。

 クロードの膝にのせられ抱き締められてるとその暖かさがしみてくる。
「別に怒ってるわけじやないんだ。少し残念なだけ」
 そうだ、僕はきっと拗ねてるんだ。
 なんで直接言ってくれなかったんだと拗ねている。今更何を言っても仕方ないのに。
 クロードがふいにキスをしてきた。
 なだめるように額に。目じりに。頬に。鼻に。そして唇に。
 尖った心が少しずつ溶かされていく。
「心配かけてごめん。クロ。もう大丈夫だよ。いろいろあって少し動揺しただけ」
「強がってませんか?ずっとこのままでもわたしは嬉しいのですが?」 
 にこにこと笑顔で見つめてくる。この金色の瞳が僕は好きだ。
「ダメだよ。これ以上甘やかされたら僕はダメ人間になりそうだ」
「ふふふ。そしたらわたしは徹底的にかまってもっともっと甘やかしますよ」 

「あぁ~!ダメだって!よし!現実をみよう!さっきばあちゃんにもらったものを確認しよう!」
もらった剣は軽くアキトの手にすぐに馴染んだ。細めの剣で片手でふるとヒュンッといい音がした。
「軽いし動きやすい」
「ふむ。このままでは相手にダメージは与えにくいですが魔法付与しやすい加工をされています」
 クロードはそのまま、強化魔法、防御魔法、毒無効化などつけれるだけの魔法付与を施す。
「ふむ。さすがですね、これだけ付与してもまだ耐えれる剣とは」

 使ってみないとアキトには剣の凄さはわからないがクロードが言うからにはそうなのだろう。
「これは魔法書だよね?」
 チェーンを外しパラパラとめくってみると契約魔法と使役の仕方が載っていた。
 本来魔女は黒猫や蝙蝠など使役にかしづかれていたものらしい。
 本の後半は内容が違った。
 ところどころラインがひかれており、可愛らしいネコの付箋がはってある。
「あれ?この付箋、僕が大学受験のときに使ってたやつだ」
 マリーはイタズラ好きでよくアキトの鞄の中にびっくりするようなオモチャやプレゼントをまぎれこましていた。
「失くしたと思ってたらばあちゃんが使ってたんだな」
 ネコの付箋は愛くるしい表情が飼い猫のクロに似ているとお気に入りで使っていた。ばあちゃんらしいや。口元を緩ませて書いてある文字を読んだ。

 アキトがもし別の人生を歩みたいと思ったら迷わず使いなさい。

 ラインが引いてある箇所に目を走らせるとそこには人以外のものに変態する魔法が載っていた。

 え?これって?。。。
 もし、僕が人でなければ今ならあの部屋から帰れるってこと??


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