異世界行ったらボクは魔女!

ゆうきぼし/優輝星

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2章 竜騎士団編

38.竜の城(ドラゴン城)

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「ミャアーオ!」
「ク……クロ?クロだよね?」
「ンミャア~ッ」
「クロ!どうしたの?急に元の姿に戻っちゃったの?」
 いや、正確には僕がこちらに移転される前の姿だ。クロードは僕を守り育てるためにずっと黒猫の姿でそばにいてくれたのだ。こちらに移転されて初めて獣人の姿を現してくれてた。
「ミャミャッツ」
 黒猫のクロはジャンプしてアキトに飛びついた。抱きしめた途端、飼い猫に会えてうれしいという気持ちのほうが勝ってしまった。
「クロ!あぁクロだ。この毛並み。この抱き心地」
 モシャモシャと耳の後ろから喉にむけて揉みほぐすとゴロゴロと喉を鳴らす。
 久しぶりに会えた飼い猫にアキトは嬉しくって思いっきりモフりまくった。

「あ~アキト。おい。そのくらいにしとけ」
 エドガーに声をかけられてハッとする。そうだ、これはクロードだった。モフられ過ぎたクロ猫は腕の中でとろけていた。

 傍に追いついたバレットがあわあわしながら近づいてきた。
「いきなりクロード様がこのようなお姿になられたのです!」
 後方にいたバレットの目にはクロードが猫になった瞬間が映ったらしい。
 そうだった。黒猫のクロはクロードなんだ。どうして急に猫に戻ってしまったんだろう。不思議に思っていると前方からばらばらと人が集まってきた。そのうちの1人が駆け寄ってくる。

「お早いお着きで。出迎えが間に合いませんで申し訳ありません」
 ゼイゼイと息をからして年配の騎士が頭を下げる。
「私はこちらで騎士達の教育係を務めておりますマイヤー・ロッテンと申します。以後お見知りおき下さい」
「いや、こちらもきちんと時間を伝えてなかったのが悪かった。気にしないでくれ」
 エドガーが営業スマイルで答える。

 遠巻きに騎士達が様子を伺っている。
「こらっ!貴様ら!ご挨拶せぬか!」
「へいへ~い。お初にお目にかかります。私めはレッドと申します。以後よろしゅうに!」
 ゆるやかなウェーブの赤髪を揺らして筋肉隆々の男が近寄ってきた。
 芝居がかったように右手を胸にあておじきをする。
「これでいいのかい?」とマイヤーを睨む。
「ぶっ無礼者!もっとちゃんと挨拶せぬか!皇太子さまだぞ!」
 マイヤーが赤い顔をして怒鳴る。
「ふぁっはは!いいなそういうの。俺はエドガーだ。もう堅苦しいのは抜きだ。普通にしゃべってくれ」
「へぇ。あんた王族っぽくないんだな」
「こっ!こら!なんという口の聞きかた!」
 マイヤーは今度は青い顔になったが、エドガーはニヤニヤしていた。
「あぁ!よく言われるさ。王族ったって人間さ。上も下もありゃしないんだ。あるのは愛と勇気と冒険だ!」
 レッドが目を見張るとニヤリと笑った。
「面白い!正直に言おう。俺はなんでユリウスじゃねえんだと思ってたが、あんたも面白そうだ!」
「そうか、兄貴のがいいか。まぁ。親父にそっくりだしな」
「あぁそうだ。ユリウスはドラクルにそっくりだったからな。皆んな気に入ってたんだよ」
「そんなに親父はみんなに人気があったのか」

 エドガーとレッド。2人のやりとりを見てた騎士達がわらわらと集まってきた。
「レッド隊長!隊ごとにまとめでご挨拶をされてはいかがでしようか?」
「おうっそのほうが手っ取り早いな!よし!中庭に集めろ!」

「ん?お前は?」レッドがエドガーの後ろに居たアキトに気づく。
「僕はアキトと言います。よろしくお願いします。」
 アキトの胸から黒猫のクロが顔をだしている。
「お前……ま……じょ?」レッドは眼を大きく瞬いた。
「アキトは俺の伴侶だ!」
 エドガーがアキトの肩を抱き寄せた。
「……そうか」とだけ言いレッドは口を閉じた。

 先に荷物を置きに行きましょうとマイヤーに勧められ、僕らは城の奥へと案内された。
 先日まで居た王宮よりもこちらのほうが洗練されてる気がする。
 それはきっと城中に刻まれている竜のレリーフや竜の旗や竜の壁画の数々のせいかもしれない。
「凄い。中のデザインも全部竜なんだね。本当に竜の城って感じだ」
「そうだな。昔からこの城は竜の為に建てられた城だって言われてたんだ」
 エドガーが言いながら天井に目をやると大きなシャンゼリアが飾られていた。
「竜はキラキラしたものや美しいものが好きなのですよ」
 マイヤーが話し出した。
「この城は竜好みに作られております。この世界を守ってくれた竜に感謝をして建てられたと聞いております」
 荷ほどきをバレットに任せて僕らは中庭に急いだ。
 竜騎士団はいくつかの隊に分かれていて、それぞれ隊長がその隊を束ねている。その隊長を束ねるのが団長の役目というわけだ。
 現在はレッド、コバルト、アンバー、ホワイトの4つの隊がある。
 中庭に出ると隊員達が隙のない整列を見せていた。
 それだけで統制のとれた関係だというのがわかる。

「敬礼!休め!」
 指揮官らしく男が声をかけると、ザツ!と言う音と共に、団員達は一斉に腕を後ろにまわし、背筋を伸ばした。
 足は歩幅に開いた状態だ。
「体育大会みたいだ」
 アキトは学生の時に体育祭で整列の練習を何度もやらされたのを思い出した。
「なにのほほんしてるんだ。あの中にはいるんだろ?」
  エドガーに言われてハッとする。そうだ!そうだった。僕大丈夫かな?!

「新しく騎士団長になられたエドガー・ヴラド・ポーツラフ皇太子様だ!」
 マイヤーが大声で言い放つ。
 皆視線だけはこちらに向けたままで無言だ。発言が許されてないのだろうか?
「エドガーだ。これからよろしく頼む。俺は無駄話は嫌いだ。言いたい事は言うし、わからない事は聞く。だから皆も普通に話しかけてくれ!以上!」
 団員達の顔が一瞬綻んだように見えた。
「えっと僕はアキトと言います。エドガーの伴侶です。こちらには身体を鍛えてもらいたく、しばらく練習生として参加させていただきます。よろしくお願いします!!」
 微妙な空気が感じられる。あれ?やっぱり僕みたいなヒョロヒョロが何しにきたと思われてるんだろうな。
「おっと!俺はアキトを愛している。アキトを馬鹿にしたり、手をを出したヤツはただじゃおかねえ!それだけは覚えておいてくれ!」
 ひえ!エドガー、恥ずかしいよ。

「プツ!クックックッ!」
 横で見ていた指揮官らしい男が笑い出した。あれ?この人見たことある?
「いや、すみません。私は副団長のアランといいます。お二人には、団……王様と謁見された時にお会いしました」
 ああ!そうだ。確かユリウス派にいた人だ。副団長だったのか!
「今は、アンバー隊とホワイト隊は偵察に出てるのでここには半分の人数しかおりません。また戻り次第ご挨拶させてください」
 表面上はにこやかにしているが、その目は品定めをしてる目だった。
 敵意はないようだが、いきなり信用しろというのも難しいんだろうな。

 この後、レッド隊とコバルト隊が挨拶をした。
 レッド隊の隊長は先ほど会ったレッドだった。緩やかなウェーブに燃えるような赤髪。鍛えられた肉体は服の上からでもわかる。
 コバルト隊の隊長は濃紺の髪と鋭い目つきで精悍な顔立ち。寡黙そうな様子で物静かな印象だった。彼はコバルトと名乗った。
 ん?隊長の名前が隊の名称だったのか。ちなみに隊長格は得意魔法があり、レッドが炎。コバルトが水。ホワイトが氷。アンバーは土だそうだ。

「では、明日から訓練には俺も参加する。よろしく頼む!」
「よし!解散っ!」
 副団長のアランの一言で皆一斉に解散となる。
「エドガー様、ここでの一日の日課と規律についてご説明をさせていただきます」 
 マイヤーとアランにはさまれてエドガーは忙しそうだ。

 解散後、じっと自分を見る男の冷たい視線に気づいた。濃紺な髪。あれはコバルト?だっけ?

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