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2章 竜騎士団編
36.マリッジピアス
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「にぎやかで良いですね」
第一皇太子ユリウス付きの宰相コーネリアスが旅立ち前に訪ねてきてくれた。
「結婚の儀には間に合わなかったのですが、エドガー様のお申し付けのものができあがりましたので持参しました」
「よかった!ギリギリまにあったのか!」
「ええ。ほんっとに無茶ぶりされるんですから!そういうところはユリウス様とそっくりです!」
そういうとコーネリアスは机の上に手のひら大のジュエリーボックスを置いた。
「遅れてすまねえ。アキトがいた世界じゃ結婚指輪ってのがあっただろ?だからそれに似たようなのを送ろうと思ってさ」
エドガーがゆっくりと箱を開けると中にはゴールドのリングピアスが3つ入っていた。
「わあ!綺麗!嬉しいっ!三人お揃いなんだね!すごいよ!ありがとう!!!ぁ……でも僕、耳に穴が開いてないんだ。あけてくれる?」
「おう!まかせとけ!三人一緒にあけようぜ!」
「エド……これは。まさか……」
「さすがだなクロ。見ただけで分かるのか?」
「え?何?どうしたの?」
「は?エドガー様、伴侶様がたに何も教えてらっしゃらなかったのですか?」
コーネリアスが不審げにエドガーを睨んでいる。
「え?あ~そうだな。驚かせたかったんだ」
「アキト様、これは魔法付与が出来る聖石の周りをゴールドでコーティングしたものです」
聖石って言えばこの間クロードの魔術の勉強で教わったやつだ!
「確か高難度の魔法付与の時に用いる聖なる加護のある原石だよね?」
「そのとおりです。しかも見た目はゴールドにって!聖石にコーティングなんて職人たちがどれだけ大変だったか!」
「すまねえって。その職人たちの愚痴を聞きながらも作らせてくれたんだろ?ありがとうよ」
「はぁ。そうですね。これは私とユリウス様からの結婚祝いです」
「へへへ。そう言ってくれると思ってたぜ」
「まったく。それで。お二人の伴侶様にご説明されないのですか?」
エドガーは頭をポリポリかきながら、照れくさそうに話し出した。
「そのさ、えっとアキトは魔女じゃねえか?それで俺は人間でさ。このままだと俺が一番早く寿命がきそうでさ。そのなんだ……。三人一緒に寿命を合わせたいんだが……ダメかな?」
「エド。お前、私の事も考えてくれて??」
「あ~、まあな、クロ、そのことは後でな。俺はさ、アキトと共に生きたい。クロだってそうだろ?それに俺やクロに先に寿命が来たら残ったアキトが悲しむ。魔女は長命だ。それに比べ人間や獣人は短命だ。だからアキトの寿命に俺らを合わせたいんだ」
「エド。ありがとうっ!凄く嬉しい。僕も二人とはずっと一緒に居たいよ。そこまで考えてくれてて本当に嬉しい!!」
「それでさ。そのあれだ。物は用意した。だけど俺には魔法付与できねえんだ」
「……その役目がわたしという事ですね?」
「おお。すまねえなクロ」
「いえ、ここまで用意してくれただけでも感謝です。寿命は私の一番の気がかりでした」
クロードはすでに200歳を超えている。彼は短命な獣人と長命な魔物のミックスだ。だからこそいつ自分の寿命がくるかと恐怖心も抱えていた。
「契約には三人の血が必要です。これは耳に穴をあけるときに一滴ずつもらいましょう。後はエド。本当に良いのですか?寿命が伸びると言うことは……その。親族よりも貴方は長生きしてしまうという意味ですよ」
「あぁ。すでに親父と兄貴らには告げてある。だから王位継承権も放棄したんだ」
「エド。そんな。いいの?王族なのに」
「最初から王家には未練なんてなかったさ。親父や兄貴達は好きだが俺には堅苦しい世界は似合わねえのさ」
「エドガーっ。ありがとう!!!」
アキトはエドガーに抱きついた。クロードもそっとその肩に手を回し3人で肩を組む様に抱き合った。
「さて私はそろそろ退散しましょうか。お邪魔のようですからね」
コーネリアスが片眉をあげてほほ笑んだ。
「ありがとうございます。ユリウス様にもよろしくお伝えください」
「じゃあ僕、お針子さんとこに行って耳に穴をあける針を借りてこようか?」
「おう!アキト行ってきてくれるか?じゃあ俺はクロと必要な材料出しておくからな」
アキトが部屋から出るとクロードがエドガーに向き合った。
「エド。このままだとお前に不利になってしまうのではないか?」
「いいんだよ。クロの方が時間がないじゃねえか」
「だが、寿命を延ばしても若さは保てないんだぞっ。一般的な年月とは桁が違う」
通常は獣人と人の寿命を合わせる時に使う契約だが、魔女となると話が違う。
「ん~?俺だけゾンビになっちまうかな?」
「それはわたしも試したことがないのでわからないが」
「でもっ!クロの方がこれ以上無理したら寿命がつきるか制御できなくて魔物になっちまうかもしれねえじゃねえか」
「その時は最初に約束したとおりにしてくれ」
「しかしっ!」
「それがお前をアキトの伴侶として認めるという条件だったじゃないか」
「そうだけどさ……」
「やっぱり!僕に隠し事してたんだね!!」
いつの間にかアキトが扉の前に立っていた。
「へ?お前いつ戻って?」
「アキト?」
「前よりも僕の魔力は上がっててね、目くらましの魔法をかけたんだよ」
「部屋を出ていったように見せかけたという事ですか?!」
「え?そんなこと出来るのか?」
「出来るか試してみたんだけど出来たみたいだね。それに二人も油断してたんでしょ?いつもなら僕の気配ぐらいすぐに感じ取ったはずじゃない?」
「確かに。そのとおりです」
「今から僕らが行くところは実戦も起こりうるところなのでしょう?なのに隠し事はダメだよね?」
ピリッとした空気が流れた。最近のアキトは怒ると鋭いナイフなような怖さがある。
普段のほほん美人なだけに本気で怒った氷のような表情にギャップ差が激しすぎるのだ。
「すまないっ!」
「すみませんでした!」
伴侶二人は同時に謝った。どのみちアキトには嘘がつけない。伴侶として魔法契約を結ぶ時に生涯にわたり嘘はつかないと契約しているからだ。『教えない』と『嘘はつかない』は違うのだ。見つかった時点で嘘をつきとおすことはすでに出来なくなっているのだった。
「それで、このまま寿命を延ばす契約をしたらエドガーはゾンビになっちゃうのか?」
「あ~。えっと、そうなのかな?はは……すみません。わからないです」
「ふうん。それで、クロードがエドガーにした約束ってなんなのさ!まさか魔物になったら成敗してくれ~とかじゃないよね?」
「ぐっ。それは……そのとおりです」
「なんなんだよそれ!!二人とも馬鹿じゃん!!そんなの僕がっ。僕が喜ぶとでも?!」
「アキト。怒らないでくれ」
「うるさい!うるさい!それにクロ!エドを伴侶にするときにこっそり二人で約束してたってのが気に食わない!僕らは三人で伴侶なんじゃないのか?」
「そのとおりです。すみませんでした」
「ごめんっ。ごめんってばよ。もう怒るなよ」
「怒るよ!お前らっ僕の覚悟を舐めてるんじゃねえぞ!!種族が違うってのもわかって伴侶にしたんだ!この先どんな姿になろうと愛し続けるって決めてるんだ!そのために自分も磨くし魔法も高めるんだ!」
「アキト。お前どんどんカッコよくなっちまうな」
「わたしの手の届かないところにいってしまいそうです」
「何言ってんだい!まだ口先だけじゃないか!これから僕は二人にもっとみっともないところも見せちゃうんだよ?!そして足掻いて足搔いて今よりもずっと良い男になるから。だから隠し事なんてしないで!」
アキトの大きな瞳からポロポロと涙がこぼれていく。
「なっ!泣かないでくれ!俺が悪かった!おいクロ!どうしたらいいんだ?」
「アキトっ。もう隠し事はしません!心配させると思って言えなかっただけです!」
「心配させてよ!だって伴侶が心配できなくて誰がするのさ」
「アキトっ!」
クロードはたまらずアキトを抱きしめた。
「あ!てめえ!また先にやりやがったな!俺も!!」
エドガーもアキトをクロードから奪うようにして抱きしめる。
「エドっ……!!」
クロードが片眉を吊り上げて睨む。
「なんだよっ!」
エドガーも抱きしめる腕を強めて睨んだ。
「くるひぃっ!!!」
「わわっ。すまねえアキト!」
「ふっふふふ。」
子供のように自分を取り合う二人の姿に思わずアキトが笑いだす。
「アキト?機嫌はなおりました?」
「アキトもう怒らねえでくれな」
「うん。三人で一番ベストな方法を考えようよ」
「そうですね。明日までに文献でいろいろしらべてみます」
「おう!どうせ移動は馬車だ。その中で寝ちまえばいいから今日は徹夜しようぜ!」
「そうだね、三人で調べた方が早いよ!」
「でもピアスは今つけたいよ。せっかくだもの」
「そうだな。俺達が伴侶だってわかるようにしたほうがいいな」
「ふむ。アキトに虫が寄ってこないようにですね?」
「え?ドラゴン城って虫が多いの?」
「お前……自分の事になると途端にぽよよんになるよな?」
「いいじゃありませんか。伴侶の私達にだけは敏感に感じてくれるんですから」
「まっ。それもそうか。へへへ」
クロードが魔法で作ってくれた氷で冷やしながら三人で順番に耳に穴をあける。最初チクッと痛んだが神聖な儀式のようにも感じた。だって3人の共同作業だもの。
「なぁクロ。血も抜いたんだからこのまま寿命は合わせようぜ。後から追加付与できるんだろ?」
「それでいいのですか?不老の付与はいつになるかわかりませんよ?」
「かまわねえよ。それに魔力を高めることで老化を遅らすことはできるみてえだしな」
「そうなの?ほんとに?もうごまかさないでね?」
「あぁ。本当だぜ。親父なんかもう65歳近い癖に見た目は30代だろ?あれは魔力で老化を抑えてんだよ。」
「ではその時が来たら私がマリッジリングを用意しますのでそれに若さを付与するのはいかがでしょう?」
「それいいな!」
「エドにばかりカッコいいマネさせられません。わたしからも贈らせて下さいな」
「うん!嬉しいよ!!」
お揃いのピアスを耳にはめるとなんだか互いの特別になった気がする。
「お揃いだ!三人一緒だね!!」
「そんなに喜んでくれるのか!」
「当たり前じゃない!マリッジピアスだもん!」
「結婚したっていう証ですね」
「へへへ。用意してよかったぜ!」
「うん!目に見えてわかる証だよ!これ見るたびに二人の事を思い出すよ」
「ああ。コレを見ると俺のものだって気がする」
「わたしのですよ!」
「クロとエドは僕の物。そして僕はふたりの物だよ」
――――――この時、僕はまだ理解してなかったのだ。寿命を合わせる事と死なないというのは別だという事を。
第一皇太子ユリウス付きの宰相コーネリアスが旅立ち前に訪ねてきてくれた。
「結婚の儀には間に合わなかったのですが、エドガー様のお申し付けのものができあがりましたので持参しました」
「よかった!ギリギリまにあったのか!」
「ええ。ほんっとに無茶ぶりされるんですから!そういうところはユリウス様とそっくりです!」
そういうとコーネリアスは机の上に手のひら大のジュエリーボックスを置いた。
「遅れてすまねえ。アキトがいた世界じゃ結婚指輪ってのがあっただろ?だからそれに似たようなのを送ろうと思ってさ」
エドガーがゆっくりと箱を開けると中にはゴールドのリングピアスが3つ入っていた。
「わあ!綺麗!嬉しいっ!三人お揃いなんだね!すごいよ!ありがとう!!!ぁ……でも僕、耳に穴が開いてないんだ。あけてくれる?」
「おう!まかせとけ!三人一緒にあけようぜ!」
「エド……これは。まさか……」
「さすがだなクロ。見ただけで分かるのか?」
「え?何?どうしたの?」
「は?エドガー様、伴侶様がたに何も教えてらっしゃらなかったのですか?」
コーネリアスが不審げにエドガーを睨んでいる。
「え?あ~そうだな。驚かせたかったんだ」
「アキト様、これは魔法付与が出来る聖石の周りをゴールドでコーティングしたものです」
聖石って言えばこの間クロードの魔術の勉強で教わったやつだ!
「確か高難度の魔法付与の時に用いる聖なる加護のある原石だよね?」
「そのとおりです。しかも見た目はゴールドにって!聖石にコーティングなんて職人たちがどれだけ大変だったか!」
「すまねえって。その職人たちの愚痴を聞きながらも作らせてくれたんだろ?ありがとうよ」
「はぁ。そうですね。これは私とユリウス様からの結婚祝いです」
「へへへ。そう言ってくれると思ってたぜ」
「まったく。それで。お二人の伴侶様にご説明されないのですか?」
エドガーは頭をポリポリかきながら、照れくさそうに話し出した。
「そのさ、えっとアキトは魔女じゃねえか?それで俺は人間でさ。このままだと俺が一番早く寿命がきそうでさ。そのなんだ……。三人一緒に寿命を合わせたいんだが……ダメかな?」
「エド。お前、私の事も考えてくれて??」
「あ~、まあな、クロ、そのことは後でな。俺はさ、アキトと共に生きたい。クロだってそうだろ?それに俺やクロに先に寿命が来たら残ったアキトが悲しむ。魔女は長命だ。それに比べ人間や獣人は短命だ。だからアキトの寿命に俺らを合わせたいんだ」
「エド。ありがとうっ!凄く嬉しい。僕も二人とはずっと一緒に居たいよ。そこまで考えてくれてて本当に嬉しい!!」
「それでさ。そのあれだ。物は用意した。だけど俺には魔法付与できねえんだ」
「……その役目がわたしという事ですね?」
「おお。すまねえなクロ」
「いえ、ここまで用意してくれただけでも感謝です。寿命は私の一番の気がかりでした」
クロードはすでに200歳を超えている。彼は短命な獣人と長命な魔物のミックスだ。だからこそいつ自分の寿命がくるかと恐怖心も抱えていた。
「契約には三人の血が必要です。これは耳に穴をあけるときに一滴ずつもらいましょう。後はエド。本当に良いのですか?寿命が伸びると言うことは……その。親族よりも貴方は長生きしてしまうという意味ですよ」
「あぁ。すでに親父と兄貴らには告げてある。だから王位継承権も放棄したんだ」
「エド。そんな。いいの?王族なのに」
「最初から王家には未練なんてなかったさ。親父や兄貴達は好きだが俺には堅苦しい世界は似合わねえのさ」
「エドガーっ。ありがとう!!!」
アキトはエドガーに抱きついた。クロードもそっとその肩に手を回し3人で肩を組む様に抱き合った。
「さて私はそろそろ退散しましょうか。お邪魔のようですからね」
コーネリアスが片眉をあげてほほ笑んだ。
「ありがとうございます。ユリウス様にもよろしくお伝えください」
「じゃあ僕、お針子さんとこに行って耳に穴をあける針を借りてこようか?」
「おう!アキト行ってきてくれるか?じゃあ俺はクロと必要な材料出しておくからな」
アキトが部屋から出るとクロードがエドガーに向き合った。
「エド。このままだとお前に不利になってしまうのではないか?」
「いいんだよ。クロの方が時間がないじゃねえか」
「だが、寿命を延ばしても若さは保てないんだぞっ。一般的な年月とは桁が違う」
通常は獣人と人の寿命を合わせる時に使う契約だが、魔女となると話が違う。
「ん~?俺だけゾンビになっちまうかな?」
「それはわたしも試したことがないのでわからないが」
「でもっ!クロの方がこれ以上無理したら寿命がつきるか制御できなくて魔物になっちまうかもしれねえじゃねえか」
「その時は最初に約束したとおりにしてくれ」
「しかしっ!」
「それがお前をアキトの伴侶として認めるという条件だったじゃないか」
「そうだけどさ……」
「やっぱり!僕に隠し事してたんだね!!」
いつの間にかアキトが扉の前に立っていた。
「へ?お前いつ戻って?」
「アキト?」
「前よりも僕の魔力は上がっててね、目くらましの魔法をかけたんだよ」
「部屋を出ていったように見せかけたという事ですか?!」
「え?そんなこと出来るのか?」
「出来るか試してみたんだけど出来たみたいだね。それに二人も油断してたんでしょ?いつもなら僕の気配ぐらいすぐに感じ取ったはずじゃない?」
「確かに。そのとおりです」
「今から僕らが行くところは実戦も起こりうるところなのでしょう?なのに隠し事はダメだよね?」
ピリッとした空気が流れた。最近のアキトは怒ると鋭いナイフなような怖さがある。
普段のほほん美人なだけに本気で怒った氷のような表情にギャップ差が激しすぎるのだ。
「すまないっ!」
「すみませんでした!」
伴侶二人は同時に謝った。どのみちアキトには嘘がつけない。伴侶として魔法契約を結ぶ時に生涯にわたり嘘はつかないと契約しているからだ。『教えない』と『嘘はつかない』は違うのだ。見つかった時点で嘘をつきとおすことはすでに出来なくなっているのだった。
「それで、このまま寿命を延ばす契約をしたらエドガーはゾンビになっちゃうのか?」
「あ~。えっと、そうなのかな?はは……すみません。わからないです」
「ふうん。それで、クロードがエドガーにした約束ってなんなのさ!まさか魔物になったら成敗してくれ~とかじゃないよね?」
「ぐっ。それは……そのとおりです」
「なんなんだよそれ!!二人とも馬鹿じゃん!!そんなの僕がっ。僕が喜ぶとでも?!」
「アキト。怒らないでくれ」
「うるさい!うるさい!それにクロ!エドを伴侶にするときにこっそり二人で約束してたってのが気に食わない!僕らは三人で伴侶なんじゃないのか?」
「そのとおりです。すみませんでした」
「ごめんっ。ごめんってばよ。もう怒るなよ」
「怒るよ!お前らっ僕の覚悟を舐めてるんじゃねえぞ!!種族が違うってのもわかって伴侶にしたんだ!この先どんな姿になろうと愛し続けるって決めてるんだ!そのために自分も磨くし魔法も高めるんだ!」
「アキト。お前どんどんカッコよくなっちまうな」
「わたしの手の届かないところにいってしまいそうです」
「何言ってんだい!まだ口先だけじゃないか!これから僕は二人にもっとみっともないところも見せちゃうんだよ?!そして足掻いて足搔いて今よりもずっと良い男になるから。だから隠し事なんてしないで!」
アキトの大きな瞳からポロポロと涙がこぼれていく。
「なっ!泣かないでくれ!俺が悪かった!おいクロ!どうしたらいいんだ?」
「アキトっ。もう隠し事はしません!心配させると思って言えなかっただけです!」
「心配させてよ!だって伴侶が心配できなくて誰がするのさ」
「アキトっ!」
クロードはたまらずアキトを抱きしめた。
「あ!てめえ!また先にやりやがったな!俺も!!」
エドガーもアキトをクロードから奪うようにして抱きしめる。
「エドっ……!!」
クロードが片眉を吊り上げて睨む。
「なんだよっ!」
エドガーも抱きしめる腕を強めて睨んだ。
「くるひぃっ!!!」
「わわっ。すまねえアキト!」
「ふっふふふ。」
子供のように自分を取り合う二人の姿に思わずアキトが笑いだす。
「アキト?機嫌はなおりました?」
「アキトもう怒らねえでくれな」
「うん。三人で一番ベストな方法を考えようよ」
「そうですね。明日までに文献でいろいろしらべてみます」
「おう!どうせ移動は馬車だ。その中で寝ちまえばいいから今日は徹夜しようぜ!」
「そうだね、三人で調べた方が早いよ!」
「でもピアスは今つけたいよ。せっかくだもの」
「そうだな。俺達が伴侶だってわかるようにしたほうがいいな」
「ふむ。アキトに虫が寄ってこないようにですね?」
「え?ドラゴン城って虫が多いの?」
「お前……自分の事になると途端にぽよよんになるよな?」
「いいじゃありませんか。伴侶の私達にだけは敏感に感じてくれるんですから」
「まっ。それもそうか。へへへ」
クロードが魔法で作ってくれた氷で冷やしながら三人で順番に耳に穴をあける。最初チクッと痛んだが神聖な儀式のようにも感じた。だって3人の共同作業だもの。
「なぁクロ。血も抜いたんだからこのまま寿命は合わせようぜ。後から追加付与できるんだろ?」
「それでいいのですか?不老の付与はいつになるかわかりませんよ?」
「かまわねえよ。それに魔力を高めることで老化を遅らすことはできるみてえだしな」
「そうなの?ほんとに?もうごまかさないでね?」
「あぁ。本当だぜ。親父なんかもう65歳近い癖に見た目は30代だろ?あれは魔力で老化を抑えてんだよ。」
「ではその時が来たら私がマリッジリングを用意しますのでそれに若さを付与するのはいかがでしょう?」
「それいいな!」
「エドにばかりカッコいいマネさせられません。わたしからも贈らせて下さいな」
「うん!嬉しいよ!!」
お揃いのピアスを耳にはめるとなんだか互いの特別になった気がする。
「お揃いだ!三人一緒だね!!」
「そんなに喜んでくれるのか!」
「当たり前じゃない!マリッジピアスだもん!」
「結婚したっていう証ですね」
「へへへ。用意してよかったぜ!」
「うん!目に見えてわかる証だよ!これ見るたびに二人の事を思い出すよ」
「ああ。コレを見ると俺のものだって気がする」
「わたしのですよ!」
「クロとエドは僕の物。そして僕はふたりの物だよ」
――――――この時、僕はまだ理解してなかったのだ。寿命を合わせる事と死なないというのは別だという事を。
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