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1章 僕は魔女?
32.*闇を打ち砕け*
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*R15ぐらい?でしょうか。
不快な表現と少しばかり暴力シーンありです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なんだかクラクラする。頭に霞がかかったようだ。ここはどこだっけ?
よろけて後ろに倒れかかる前に背後にいるクロードに抱きかかえられた。
「大丈夫ですか?」
声を掛けられた反動で彼の首に腕を回し抱きついた。
「クロ、身体が熱いんだ。お願い、熱をとって」
「……」
無言のままクロードは動かない。
「おいっ。せっかく魔女が可愛くおねだりしてるんだ服を脱がせてやれ」
「貴方って人は! 最初からわたしも巻き込むつもりだったのですね?」
「口封じには共犯になるのが一番だからな。ぐへへ」
「熱い……。クロ。身体の奥が熱いんだ……」
「……わかりました。楽にしてさしあげましょう」
シャツのボタンを外され上着を脱がされ直に肌を触られると腰が疼いた。
「はぁっん……」
鼻から抜けるように甘い声が出た。口づけがしたくてクロードの頬に手を当てた。
顔が見たくて目を合わせるとエメラルドの瞳がギラついている。
「綺麗な瞳……。前も思ったんだ。とても綺麗なエメラルドだなって」
アキトの声を聴いて彼は大きく目を見開いた。
耳たぶの痛みが先ほどより強くなる。ジンジンとした痛みが意識を引き戻させる。
この目をどこでみたんだろう?……そう以前宝物庫で……確かこの目は……。
「……オ……オスマン? 」
【 バリンッッ!!】と音がして目の前の景色や人物がひび割れ砕け散った。
見渡すと知らない場所で薄暗く甘ったるい香が焚かれていた。
「ちっ!術が破られたのか! 」
ベットの上にいるのはエドガーではなく太った男。確かラドゥ派の側近のドリスタンだ。
「ここは?……どこだ?」
「ぐふふ。もう遅いっ!」
ドリスタンが言うよりも早く彼の手から銀の輪っかが現れ、瞬時にアキトの手足を拘束した。
「うわっ! なんだよこれ!!」
ベットの上に倒れ込むとドリスタンが覆いかぶさってくる。
「おお。思ったとおり滑らかな白い肌だわい。」
上半身をまさぐられ悪寒が走った。コイツに触られるだけで気持ち悪いっ。
「ぐふふ。ピンク色の乳首じゃな。わしに舐めてほしいのだろう?」
べろりと舐められ鳥肌がたった。
「やめろ!! 気持ちが悪い!!」
縛られた足をばたつかせ、思いっきりドリスタンを蹴り倒した。
「なぜ? 魔女は淫乱で誰もいいのではないのか?」
オスマンが唖然として聞く。
「馬鹿にするな! 僕はエドガーとクロード以外に抱かれる気はない! 」
凛とした透き通る声が響く。
「魔女は王家を惑わす元凶なはず……」
「僕にはその王家の血が混じっているのにか?」
「!!……では、貴方はなるべくして王族になられた方だったのか?」
そんな!?アキトは王家の血を引いているのか?ではラドゥ様と似ていると感じたのは親族だから?いや相手は魔女だ。信じてもいいのだろうか?私はどうすれば?
「このっ!わしを舐めやがってぇ!!!」
ベットから蹴倒されたドリスタンがアキトの黒髪を掴みベットへ引きずり戻した。
「痛いっ! やめろ!」
「魔女風情が! 高貴な血筋のわしのいう事が聞けんのか!!」
ドリスタンは呪文を唱えアキトを拘束してる輪っかを分裂させ鎖に変化させた。鎖は伸びアキトの左足と手首を拘束しなおす。
「このっ!わしを足蹴にしおって!!」
ドリスタンはアキトの頬を平手で殴るとオスマンが口を挟んだ。
「やめろっ! いくらなんでもやりすぎです! 」
「うるさい! オスマンっお前の家族がどうなってもいいのか!!!」
「うっ……それはっ」
「ぐふふ。お前は黙ってわしがこいつを犯してるところを見るんだ。コレでお前も共犯だ!」
「くっ……卑劣な……」
「さあ、もう一度こいつにお前の力で幻覚を見せろ!」
「無理です! これ以上はできません」
「くそ!役立たずめ!まあ良いわ。無理やりヤるのも酔狂よのぉ」
ドリスタンはそのままアキトの上に跨った。
「やめろ! いやだ! いやだー!!!!」
下卑た笑いをしながらドリスタンはアキトの身体を弄り始めた。
~~~~~~~~~~
「どこだ? 場内は来賓が多い。人目につかずに連れ込める場所って?」
エドガーとクロードは来賓客に声を掛けられなかなか先に進めなかった。
段々とクロードからは闇のオーラが漂ってくる。
「だぁからぁ! その力を制限しろってんだ!アキトの傍にいたいんだろうが!」
「わかっている!わかっているが我慢ができぬ!」
「お前が魔物になっちまったらアキトといられねえんだぞ!」
エドガーが睨みながら小声でクロードに囁く。
「……っ! わかってますよ」
クロードは深呼吸を繰り返すと大きく息を吐いた。
「冷静になりたいのですが、手掛かりが……あれは?」
クロードの視線の先に白いふわふわしたものが映った。
「白い蝶? なんだ?ありゃ?」
「この気配は?! エドガー!あの蝶を追いましょう!」
白い蝶はときおり消えそうになりながら城内の中庭を抜け庭外れの温室の中へと入って行った。
「こんな場所に温室なんてあったんだ?」
むせかえるような花の香が充満している。どこかで見たような植物もあった。
「これは以前エドガーの部屋に置かれていた催淫や麻痺作用のある植物では?」
「なるべく息をせず進もう」
クロードが風の魔法を使い体の周りに風圧の壁を作って進んでいく。
「なんだこういうの作れるんじゃねえか」
「これは吸い込まないように一時しのぎだ。相手に触れるときに魔法は切れる」
白い蝶が点滅しながら奥へと消えて行った。
「隠し部屋ですか?! 」
「ちくしょう! 手が込んでやがる。こりゃあ昨日今日作られたんじゃねえな」
「アキトが居る!」
「クロードわかるのか?!」
「あぁ。直前に自我を護る魔法をかけました。自分の魔法の痕跡くらいわかります」
「自我を? なんだそれ?」
「微量な闇魔法をずっと感じていました。表に現れないならそれは精神魔法ではないかと思って」
ある動きやきっかけで催眠状態に陥るタイプの術や幻影魔法は精神に介入する。
術者の負担も大きいがかけたられたものの負担も大きい。
目覚めるきっかけになるようにわざと耳たぶを噛み痛みを与えたのだった。
何もない壁に白い蝶が浮かんでは消える。
「ここか! ぶち壊すか?」
「いや、魔力を流そう! 一気に片を付ける!」
クロードとエドガーは壁に手をあて魔力を流した。すると目の前の壁が消え、隠し部屋が現れる。
白い蝶は手前のソファーの上に横たわるバレットの手の中に消えた。
2人が奥のベットに視線を合わせた途端、殺気が部屋中を渦巻いた。
オスマンとドリスタンは動けなくなった。少しでも動くと切り刻まれる予感がしたからだ。
「……アキトに何をしている?」
低く地を這うようなエドガーの声が聞こえる。
ドリスタンはまさに今挿入する寸前の状態で止まっていた。
「ぶ……無礼者めが!わしは王家の血を引く高貴な者であるぞ!」
ドリスタンは振り向けず、そのままの状態で声を張り上げた。
「……もう一度言う。お前はアキトに何をしている?」
黒い重苦しい殺気がドリスタンにまとわりつく。
近づくとベットの上でアキトが意識を失っていた。片頬が大きく腫れている。
「きっさまあああああ!!」
先に動いたのはクロードであった。
あっという間にドリスタンは手足を切り裂かれた姿となった。
「うっぎゃああっわしの手が!足が!」
「待て! コイツを殺すな! 余罪があるはずだ!」
エドガーが叫ぶと、チッとクロードは舌打ちをして肉片に治癒呪文を施す。
ドリスタンは元の姿になるが、クロードは再度切り刻み、治癒呪文、切り刻みを交互に気が済むまで繰り返した。
エドガーはアキトの傍に寄り、その身体を抱き起こす。
「アキトっ。おい!しっかりしろ!」
「ぁあ……。いや……嫌だ!」
「おい!俺だ!エドガーだ!!」
「エド?……本物?なのか?」
「あぁ。俺だ。本物だ。遅れて悪かった。」
アキトの震えは収まらず、視線は揺れたままだった。すぐさまクロードが飛んできた。
「アキト!アキト。わたしのアキト!」
「クロ! クロなの?」
「はい。貴方のクロードです」
金色の瞳で覗き込まれてやっとアキトはホッとした表情を見せる。
クロードはアキトをぎゅうぎゅう抱きしめると口づける。
「熱がありますね。私の体液を媒体としてください」
ちゅくちゅくと舌をからめクロードがアキトへ唾液を渡していく。
魔力の相性の良いクロードの体液を媒体としてアキトは自らの活性化した魔力を取り込んでいく。
「治癒をご自身にかけてください。私の治癒は形ばかりなので」
「うん。わかった」
アキトは自分の片頬に手を当て治癒を流す。あっという間に腫れが引く。
「あぁ。腫れが引きましたね。身体を清めに戻りましょうね」
「うん。気持ちが悪いんだ。吐き気がするほど……」
ぼんやりとした表情でアキトは目を閉じた。
「お部屋にもどりましょうね」
オスマンは茫然とその場に突っ立っていた。
恐ろしさと自分がしたことの罪の大きさにただただ佇んでいた。
そんなオスマンをクロードは一瞥し一言告げた。
「今は殺さない……」
その一言でオスマンは我に返り大量の冷や汗を流した。
ドリスタンは床に転がっていた。クロードに治癒をかけられたがその姿はつぎはぎだらけだった。まるでフランケンシュタインのようだ。人の形ではあるが切り刻まれた感覚が残っているのか恐怖で顔がゆがみ声も出せない様子だった。
「……クロードお前、俺の分までやっちまったな。俺のこの怒りをどうするんだよ!」
「すみませんエドガー、我を忘れました。先にアキトを連れて帰ります。」
「はぁ~。いいよ。連れて帰ってくれ。ついでに途中で警備の奴らに声をかけてここに来るようにしてくれ」
「了解しました。なるべく早めにお戻りくださいね」
「あぁ。わかったよ。ここを叩き壊して燃やしてから戻る」
「それはいい案ですね」
クロードはにっこりと冷酷に笑うとその部屋を後にした。
不快な表現と少しばかり暴力シーンありです。
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なんだかクラクラする。頭に霞がかかったようだ。ここはどこだっけ?
よろけて後ろに倒れかかる前に背後にいるクロードに抱きかかえられた。
「大丈夫ですか?」
声を掛けられた反動で彼の首に腕を回し抱きついた。
「クロ、身体が熱いんだ。お願い、熱をとって」
「……」
無言のままクロードは動かない。
「おいっ。せっかく魔女が可愛くおねだりしてるんだ服を脱がせてやれ」
「貴方って人は! 最初からわたしも巻き込むつもりだったのですね?」
「口封じには共犯になるのが一番だからな。ぐへへ」
「熱い……。クロ。身体の奥が熱いんだ……」
「……わかりました。楽にしてさしあげましょう」
シャツのボタンを外され上着を脱がされ直に肌を触られると腰が疼いた。
「はぁっん……」
鼻から抜けるように甘い声が出た。口づけがしたくてクロードの頬に手を当てた。
顔が見たくて目を合わせるとエメラルドの瞳がギラついている。
「綺麗な瞳……。前も思ったんだ。とても綺麗なエメラルドだなって」
アキトの声を聴いて彼は大きく目を見開いた。
耳たぶの痛みが先ほどより強くなる。ジンジンとした痛みが意識を引き戻させる。
この目をどこでみたんだろう?……そう以前宝物庫で……確かこの目は……。
「……オ……オスマン? 」
【 バリンッッ!!】と音がして目の前の景色や人物がひび割れ砕け散った。
見渡すと知らない場所で薄暗く甘ったるい香が焚かれていた。
「ちっ!術が破られたのか! 」
ベットの上にいるのはエドガーではなく太った男。確かラドゥ派の側近のドリスタンだ。
「ここは?……どこだ?」
「ぐふふ。もう遅いっ!」
ドリスタンが言うよりも早く彼の手から銀の輪っかが現れ、瞬時にアキトの手足を拘束した。
「うわっ! なんだよこれ!!」
ベットの上に倒れ込むとドリスタンが覆いかぶさってくる。
「おお。思ったとおり滑らかな白い肌だわい。」
上半身をまさぐられ悪寒が走った。コイツに触られるだけで気持ち悪いっ。
「ぐふふ。ピンク色の乳首じゃな。わしに舐めてほしいのだろう?」
べろりと舐められ鳥肌がたった。
「やめろ!! 気持ちが悪い!!」
縛られた足をばたつかせ、思いっきりドリスタンを蹴り倒した。
「なぜ? 魔女は淫乱で誰もいいのではないのか?」
オスマンが唖然として聞く。
「馬鹿にするな! 僕はエドガーとクロード以外に抱かれる気はない! 」
凛とした透き通る声が響く。
「魔女は王家を惑わす元凶なはず……」
「僕にはその王家の血が混じっているのにか?」
「!!……では、貴方はなるべくして王族になられた方だったのか?」
そんな!?アキトは王家の血を引いているのか?ではラドゥ様と似ていると感じたのは親族だから?いや相手は魔女だ。信じてもいいのだろうか?私はどうすれば?
「このっ!わしを舐めやがってぇ!!!」
ベットから蹴倒されたドリスタンがアキトの黒髪を掴みベットへ引きずり戻した。
「痛いっ! やめろ!」
「魔女風情が! 高貴な血筋のわしのいう事が聞けんのか!!」
ドリスタンは呪文を唱えアキトを拘束してる輪っかを分裂させ鎖に変化させた。鎖は伸びアキトの左足と手首を拘束しなおす。
「このっ!わしを足蹴にしおって!!」
ドリスタンはアキトの頬を平手で殴るとオスマンが口を挟んだ。
「やめろっ! いくらなんでもやりすぎです! 」
「うるさい! オスマンっお前の家族がどうなってもいいのか!!!」
「うっ……それはっ」
「ぐふふ。お前は黙ってわしがこいつを犯してるところを見るんだ。コレでお前も共犯だ!」
「くっ……卑劣な……」
「さあ、もう一度こいつにお前の力で幻覚を見せろ!」
「無理です! これ以上はできません」
「くそ!役立たずめ!まあ良いわ。無理やりヤるのも酔狂よのぉ」
ドリスタンはそのままアキトの上に跨った。
「やめろ! いやだ! いやだー!!!!」
下卑た笑いをしながらドリスタンはアキトの身体を弄り始めた。
~~~~~~~~~~
「どこだ? 場内は来賓が多い。人目につかずに連れ込める場所って?」
エドガーとクロードは来賓客に声を掛けられなかなか先に進めなかった。
段々とクロードからは闇のオーラが漂ってくる。
「だぁからぁ! その力を制限しろってんだ!アキトの傍にいたいんだろうが!」
「わかっている!わかっているが我慢ができぬ!」
「お前が魔物になっちまったらアキトといられねえんだぞ!」
エドガーが睨みながら小声でクロードに囁く。
「……っ! わかってますよ」
クロードは深呼吸を繰り返すと大きく息を吐いた。
「冷静になりたいのですが、手掛かりが……あれは?」
クロードの視線の先に白いふわふわしたものが映った。
「白い蝶? なんだ?ありゃ?」
「この気配は?! エドガー!あの蝶を追いましょう!」
白い蝶はときおり消えそうになりながら城内の中庭を抜け庭外れの温室の中へと入って行った。
「こんな場所に温室なんてあったんだ?」
むせかえるような花の香が充満している。どこかで見たような植物もあった。
「これは以前エドガーの部屋に置かれていた催淫や麻痺作用のある植物では?」
「なるべく息をせず進もう」
クロードが風の魔法を使い体の周りに風圧の壁を作って進んでいく。
「なんだこういうの作れるんじゃねえか」
「これは吸い込まないように一時しのぎだ。相手に触れるときに魔法は切れる」
白い蝶が点滅しながら奥へと消えて行った。
「隠し部屋ですか?! 」
「ちくしょう! 手が込んでやがる。こりゃあ昨日今日作られたんじゃねえな」
「アキトが居る!」
「クロードわかるのか?!」
「あぁ。直前に自我を護る魔法をかけました。自分の魔法の痕跡くらいわかります」
「自我を? なんだそれ?」
「微量な闇魔法をずっと感じていました。表に現れないならそれは精神魔法ではないかと思って」
ある動きやきっかけで催眠状態に陥るタイプの術や幻影魔法は精神に介入する。
術者の負担も大きいがかけたられたものの負担も大きい。
目覚めるきっかけになるようにわざと耳たぶを噛み痛みを与えたのだった。
何もない壁に白い蝶が浮かんでは消える。
「ここか! ぶち壊すか?」
「いや、魔力を流そう! 一気に片を付ける!」
クロードとエドガーは壁に手をあて魔力を流した。すると目の前の壁が消え、隠し部屋が現れる。
白い蝶は手前のソファーの上に横たわるバレットの手の中に消えた。
2人が奥のベットに視線を合わせた途端、殺気が部屋中を渦巻いた。
オスマンとドリスタンは動けなくなった。少しでも動くと切り刻まれる予感がしたからだ。
「……アキトに何をしている?」
低く地を這うようなエドガーの声が聞こえる。
ドリスタンはまさに今挿入する寸前の状態で止まっていた。
「ぶ……無礼者めが!わしは王家の血を引く高貴な者であるぞ!」
ドリスタンは振り向けず、そのままの状態で声を張り上げた。
「……もう一度言う。お前はアキトに何をしている?」
黒い重苦しい殺気がドリスタンにまとわりつく。
近づくとベットの上でアキトが意識を失っていた。片頬が大きく腫れている。
「きっさまあああああ!!」
先に動いたのはクロードであった。
あっという間にドリスタンは手足を切り裂かれた姿となった。
「うっぎゃああっわしの手が!足が!」
「待て! コイツを殺すな! 余罪があるはずだ!」
エドガーが叫ぶと、チッとクロードは舌打ちをして肉片に治癒呪文を施す。
ドリスタンは元の姿になるが、クロードは再度切り刻み、治癒呪文、切り刻みを交互に気が済むまで繰り返した。
エドガーはアキトの傍に寄り、その身体を抱き起こす。
「アキトっ。おい!しっかりしろ!」
「ぁあ……。いや……嫌だ!」
「おい!俺だ!エドガーだ!!」
「エド?……本物?なのか?」
「あぁ。俺だ。本物だ。遅れて悪かった。」
アキトの震えは収まらず、視線は揺れたままだった。すぐさまクロードが飛んできた。
「アキト!アキト。わたしのアキト!」
「クロ! クロなの?」
「はい。貴方のクロードです」
金色の瞳で覗き込まれてやっとアキトはホッとした表情を見せる。
クロードはアキトをぎゅうぎゅう抱きしめると口づける。
「熱がありますね。私の体液を媒体としてください」
ちゅくちゅくと舌をからめクロードがアキトへ唾液を渡していく。
魔力の相性の良いクロードの体液を媒体としてアキトは自らの活性化した魔力を取り込んでいく。
「治癒をご自身にかけてください。私の治癒は形ばかりなので」
「うん。わかった」
アキトは自分の片頬に手を当て治癒を流す。あっという間に腫れが引く。
「あぁ。腫れが引きましたね。身体を清めに戻りましょうね」
「うん。気持ちが悪いんだ。吐き気がするほど……」
ぼんやりとした表情でアキトは目を閉じた。
「お部屋にもどりましょうね」
オスマンは茫然とその場に突っ立っていた。
恐ろしさと自分がしたことの罪の大きさにただただ佇んでいた。
そんなオスマンをクロードは一瞥し一言告げた。
「今は殺さない……」
その一言でオスマンは我に返り大量の冷や汗を流した。
ドリスタンは床に転がっていた。クロードに治癒をかけられたがその姿はつぎはぎだらけだった。まるでフランケンシュタインのようだ。人の形ではあるが切り刻まれた感覚が残っているのか恐怖で顔がゆがみ声も出せない様子だった。
「……クロードお前、俺の分までやっちまったな。俺のこの怒りをどうするんだよ!」
「すみませんエドガー、我を忘れました。先にアキトを連れて帰ります。」
「はぁ~。いいよ。連れて帰ってくれ。ついでに途中で警備の奴らに声をかけてここに来るようにしてくれ」
「了解しました。なるべく早めにお戻りくださいね」
「あぁ。わかったよ。ここを叩き壊して燃やしてから戻る」
「それはいい案ですね」
クロードはにっこりと冷酷に笑うとその部屋を後にした。
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