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1章 僕は魔女?
休間話 聖なる夜
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この世界には太陽が二つある。
互いに距離をとりながらぐるぐると周り続けている。そのせいか日中はかなり暖かいのだが、夜はその分冷え込む。だが今日は日中から分厚い雲に覆われその太陽が姿を現さなかった。
「寒いねー。こんなに寒いの珍しいね」
「ぁあ。雪がふるんだろうな」
空を見上げながらエドガー眉を寄せる。
「え?ここでも雪が降るの?」
「はい。そうですよ。年に一度、聖なる夜には雪がふるのです」
クロードが寒そうに背中を丸めた。
「わあ!クリスマスみたいなの?」
「まぁ、そんなもんだな。この世界が生まれ変わった日ということでその夜を聖なる夜と言うんだ」
「わぁ。世界が再誕した日。まさにクリスマスみたい!ねーねー、プレゼントとか交換しないの?」
「したいか? 」
「うん!やろうよ! 」
「ふむ。いいですね。夜までに各自で用意するというのはいかがですか?」
「じゃあもうあんまり時間がないね。城下に出てもいい? 」
「それはダメだ。お前は自分がどれほどの価値があるかわかってねえな!」
魔女である僕の力を欲しがる輩が多いとエドガーは神経質すぎる。
でもあながち嘘ではない。僕と身体を交わると魔力が膨大化するらしいのだ。
だから攫われると危惧している。ん~好きでもってるスキルじゃないんだけどな。
「では、こうしましょう。自身で作成したものをプレゼントにするというのは?」
「てづくり品ってことだね? 何にしよう。悩むなあ」
「むむむ。アキトに似合うもの。アキトに。ん~。ん~」
エドガーが頭を抱えている。
「夜までに作れなくてもペナルティはなしということにしときましょうね。大事なのは互いの為に何ができるかを考える事なのでね」
にっこりとクロードがほほ笑む。さすがクロード。大人な対応だなあ。
僕は少し考えた後、得意分野でいこうと厨房へとむかった。
こちらに来てからも暇さえあればハーブ集めは行っていたのだ。
調理長にかけあって肉と野菜をわけてもらい調理をすることを願い出た。
僕が料理をするなんて思わなかった厨房の係の者は皆驚いている。
香草焼きやハーブティー、ポトフなどを作った。手料理も手作り品だよな?
皆ハーブには興味津々で僕のスキルのひとつ。【植物と話す】を使いながら効能を説明し作り方を伝授した。試しに食してもらうと結構評判良くって安心した。これからもたまに作らせてもらうようお願いしてみた。
料理は嫌いじゃないんだ。へへ楽しみだなあ。
夜になってエドガーの部屋でプレゼント交換となった。
「美味い! 俺アキトの手料理初めて食ったぜ~!最高!」
「あぁ。本当に美味しいです。それにアキトは料理が上手いだけでなく効能も考慮の上で作ってくれてるのですよ。今日は寒いから身体を温めてくれる野菜がたくさん入ってましたね」
にこにことクロードはご満悦の表情だ。エドガーは口いっぱいにほおばりながら美味い!美味い!と何度もお代わりをしている。僕で出来る事があってよかった。
「ごちそうさま! じゃあ今度は俺達からだ。俺はそのあんまり手先が器用でなくて一発芸みたいなもんなんだが俺の魔法で作るもんだから‥‥‥手作りって事で許してくれ」
そういうとエドガーは両手に剣を持った。そのまま大きく頭上で剣をクロスさせるとキィンという音と共にいくつかの丸い光がキラキラと現れた。光は剣がぶつかり合う事に現れ色づき数個に分かれて消えていく。
「綺麗っ! 冬の花火みたいだ!」
エドガーはそのまま宙返りをしたり回転したり華麗な剣舞を見せてくれた。
「凄いっ!すごい!カッコいい!!」
「はあ。エドガーにはやられてしまいましたね。そんなに凄いものを見せられてしまうと困りますね」
「クロは何を考えてくれたの?」
「期待しないでくださいよ。降り始めた雪で作ったのです」
そういわれて窓の外に雪が積もっているのに気が付いた。料理に夢中になって外の景色を見る余裕もなかったのだ。
「わあ!本当に雪が降ってる! 」
「ええ。その初雪で作りました」
クロードの手の中には大きな雪の結晶が光っていた。その結晶を机の上でクルリと回すとくるくるくると回りだし六角形の台座になった。台座からは光があふれホログラムのようにアキトとエドガークロードの3人の姿が映し出された。
「僕たちだ! 凄い浮き上がって見えるよ!これは魔法なの?」
「はい。魔法です。ただし雪から作ったので明日の朝には消えてしまいますが」
「今宵一夜の幻のようだね」
「おや?アキトは詩人ですね」
「へへへ。なんとなくね。儚いから余計に尊いよね」
「ありがとう二人とも。これからも三人で毎年プレゼント交換していこうね!」
「おお。わかったぞ。一年あればいろいろ考えれるしな!」
「アキト。ありがとう。毎年三人でって。私はこれからも三人で過ごすことを考えてくれるアキトに感動しました」
「な‥‥‥何言ってるんだよ。当り前じゃないか。これからもずっと3人一緒だよ」
「アキト。愛してます」
「なんだよクロード。抜け駆けはダメだぜ。俺も愛してるアキト」
「僕も愛してるよ」
窓の外では冷たい風が吹雪いている。だけど僕の心は暖かかった。
この先何があろうと二人が居れば何も怖くない。
どこまでも共に歩き続ける。アキトは改めて聖なる夜に誓ったのであった。
互いに距離をとりながらぐるぐると周り続けている。そのせいか日中はかなり暖かいのだが、夜はその分冷え込む。だが今日は日中から分厚い雲に覆われその太陽が姿を現さなかった。
「寒いねー。こんなに寒いの珍しいね」
「ぁあ。雪がふるんだろうな」
空を見上げながらエドガー眉を寄せる。
「え?ここでも雪が降るの?」
「はい。そうですよ。年に一度、聖なる夜には雪がふるのです」
クロードが寒そうに背中を丸めた。
「わあ!クリスマスみたいなの?」
「まぁ、そんなもんだな。この世界が生まれ変わった日ということでその夜を聖なる夜と言うんだ」
「わぁ。世界が再誕した日。まさにクリスマスみたい!ねーねー、プレゼントとか交換しないの?」
「したいか? 」
「うん!やろうよ! 」
「ふむ。いいですね。夜までに各自で用意するというのはいかがですか?」
「じゃあもうあんまり時間がないね。城下に出てもいい? 」
「それはダメだ。お前は自分がどれほどの価値があるかわかってねえな!」
魔女である僕の力を欲しがる輩が多いとエドガーは神経質すぎる。
でもあながち嘘ではない。僕と身体を交わると魔力が膨大化するらしいのだ。
だから攫われると危惧している。ん~好きでもってるスキルじゃないんだけどな。
「では、こうしましょう。自身で作成したものをプレゼントにするというのは?」
「てづくり品ってことだね? 何にしよう。悩むなあ」
「むむむ。アキトに似合うもの。アキトに。ん~。ん~」
エドガーが頭を抱えている。
「夜までに作れなくてもペナルティはなしということにしときましょうね。大事なのは互いの為に何ができるかを考える事なのでね」
にっこりとクロードがほほ笑む。さすがクロード。大人な対応だなあ。
僕は少し考えた後、得意分野でいこうと厨房へとむかった。
こちらに来てからも暇さえあればハーブ集めは行っていたのだ。
調理長にかけあって肉と野菜をわけてもらい調理をすることを願い出た。
僕が料理をするなんて思わなかった厨房の係の者は皆驚いている。
香草焼きやハーブティー、ポトフなどを作った。手料理も手作り品だよな?
皆ハーブには興味津々で僕のスキルのひとつ。【植物と話す】を使いながら効能を説明し作り方を伝授した。試しに食してもらうと結構評判良くって安心した。これからもたまに作らせてもらうようお願いしてみた。
料理は嫌いじゃないんだ。へへ楽しみだなあ。
夜になってエドガーの部屋でプレゼント交換となった。
「美味い! 俺アキトの手料理初めて食ったぜ~!最高!」
「あぁ。本当に美味しいです。それにアキトは料理が上手いだけでなく効能も考慮の上で作ってくれてるのですよ。今日は寒いから身体を温めてくれる野菜がたくさん入ってましたね」
にこにことクロードはご満悦の表情だ。エドガーは口いっぱいにほおばりながら美味い!美味い!と何度もお代わりをしている。僕で出来る事があってよかった。
「ごちそうさま! じゃあ今度は俺達からだ。俺はそのあんまり手先が器用でなくて一発芸みたいなもんなんだが俺の魔法で作るもんだから‥‥‥手作りって事で許してくれ」
そういうとエドガーは両手に剣を持った。そのまま大きく頭上で剣をクロスさせるとキィンという音と共にいくつかの丸い光がキラキラと現れた。光は剣がぶつかり合う事に現れ色づき数個に分かれて消えていく。
「綺麗っ! 冬の花火みたいだ!」
エドガーはそのまま宙返りをしたり回転したり華麗な剣舞を見せてくれた。
「凄いっ!すごい!カッコいい!!」
「はあ。エドガーにはやられてしまいましたね。そんなに凄いものを見せられてしまうと困りますね」
「クロは何を考えてくれたの?」
「期待しないでくださいよ。降り始めた雪で作ったのです」
そういわれて窓の外に雪が積もっているのに気が付いた。料理に夢中になって外の景色を見る余裕もなかったのだ。
「わあ!本当に雪が降ってる! 」
「ええ。その初雪で作りました」
クロードの手の中には大きな雪の結晶が光っていた。その結晶を机の上でクルリと回すとくるくるくると回りだし六角形の台座になった。台座からは光があふれホログラムのようにアキトとエドガークロードの3人の姿が映し出された。
「僕たちだ! 凄い浮き上がって見えるよ!これは魔法なの?」
「はい。魔法です。ただし雪から作ったので明日の朝には消えてしまいますが」
「今宵一夜の幻のようだね」
「おや?アキトは詩人ですね」
「へへへ。なんとなくね。儚いから余計に尊いよね」
「ありがとう二人とも。これからも三人で毎年プレゼント交換していこうね!」
「おお。わかったぞ。一年あればいろいろ考えれるしな!」
「アキト。ありがとう。毎年三人でって。私はこれからも三人で過ごすことを考えてくれるアキトに感動しました」
「な‥‥‥何言ってるんだよ。当り前じゃないか。これからもずっと3人一緒だよ」
「アキト。愛してます」
「なんだよクロード。抜け駆けはダメだぜ。俺も愛してるアキト」
「僕も愛してるよ」
窓の外では冷たい風が吹雪いている。だけど僕の心は暖かかった。
この先何があろうと二人が居れば何も怖くない。
どこまでも共に歩き続ける。アキトは改めて聖なる夜に誓ったのであった。
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