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1章 僕は魔女?
29.動き出した闇
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「くそっ!思ったよりも速い展開になってしまった」
(こんなことならすぐにでも襲ってしまえばよかった。)
ジャラジャラと装飾品の音を立てて小太りの男が一人王宮の中を足早に進んでいた。
ラドゥ派の側近の一人。貴族のドリスタンだ。
(くそっ。内乱に便乗し王位を我が物にするはずが、こんなことになるとは!)
第三皇太子のエドガーが戻ってからというもの、城下は活気があふれお祭りムードだ。それも魔女であるアキトを伴侶に娶ったからだった。
まさか1か月たらずで伴侶の儀式を行うとは思っていなかったのだ。
(淫乱魔女め!王まで誘惑したのか! )
ドリスタンはアキトと身体を交わしたから魔力が増大し王が歩けるようになったと思い込んでいた。
(魔女が本当に癒しの力なぞ持っておるはずがない!)
「しかし、婚礼の儀の時のアキトの美しさには見惚れたわい。是非とも欲しい。そしてわし以外のものとは交われないよう薬づけの身体にしてやろうではないか。くくく‥‥‥」
一人不敵な笑いをしながらドリスタンは侍従室の前までやってきた。
「おい!オスマンはいるか?! あやつを呼んで来い!」
叫びながら扉を開けるとそこには第一皇太子のユリウスがいた。
「ひっ!!」
「…‥‥なんだお前は? なぜそんなに偉そうにココにきたのだ?」
「い‥‥‥いえ。ユリウス様がいらっしゃるとは思いもせず‥‥‥」
「はぁ? 俺がいなければ侍従たちに偉そうにするのか? お前は何様だ?」
「そんな。侍従などただの召使ではありませんか。貴族のわしのほうが‥‥‥」
「馬鹿かお前は? 侍従たちが居るから俺達の身の回りの世話をしてもらえるのだぞ。そんな考えだから腐った貴族が増えるのだな?」
(くっそ~。この野郎っ! わしが王位を奪ってしまえばこんなやつ!)
「ラドゥは何故お前みたいなやつを身近に置いているのだろうな?」
「それは…‥‥わしの血筋がいいからでございます」
「ふん。お前の血筋など関係ないわ。とにかく、オスマンに会いたいなら自分で探せ」
「は‥‥‥はははっそうですな。では失礼いたします」
ドリスタンは渋々部屋から出て行った。
(ユリウスめっ。必ず失脚させてやるわいっ!)
「胡散臭い奴だ。気に入らぬっ!」
ユリウスが不機嫌にしていると侍従の一人が頭を下げてきた。
「ユリウス様私達を庇って頂きありがとうございます!」
「あぁ。よい。こちらこそお前達に余計な気をつかわせたな。俺も最近まで気づかなかったのだ。公務ばかりを優先していてこの国の格差やゆがみをきちんと見ていなかった。気づいたのはエドガーとアキトのおかげさ」
「え?エドガー様とアキト様ですか?」
「そうだ。お前達が日々奮闘してる事も二人に聞いて初めて気づいた。不甲斐ない王族ですまないな」
「いいえっ!!滅相もございません!」
ユリウスは公務の合間をぬって侍従長の元にツッツファーレからの王位継承問題に関する容疑者についての報告を聞きに来ていたのだ。普段は執務室にて報告をうけるのだが、たまには自分の目と耳で動いてみようと今日は立ち寄ってみたのであった。
「ユリウスさま。こんなところにいらしたのですね?何かあったのでしょうか?」
宰相のコーネリアスが駆け寄ってきた。
「いや、たいしたことではない。」
近くにいた侍従たちが今あったことをコーネリアスに報告してきた。
「やはり、ユリウス様はあまり出歩かれないほうが良いと思われます」
「なんだ?俺に指図するのか? 」
「貴方が動くと目立ちすぎるのですよ!!」
「あ~。‥‥‥それは少し自覚している」
ユリウスは2メートル超えの高身長に筋肉質な体型だ。遠くからでも認識できる。
隠密行動などには程遠い。存在感がありすぎるのだ。
「まぁ、わざとこうして探りを入れているというアピールにはいいのですがね」
「ははは。わざとか。そうだな、俺が動き出すことで誰か焦りだすやもしれん」
「危険なことはしないでくださいね!」
「わかっているさ。コーネリアス。お前に嫌われるのはツライ」
ユリウスが軽く片目をつぶってみせた。
「もう!こんなところで!」
「さてそろそろ公務に戻るとしようか」
ユリウスがコーネリアスの肩を抱くとコーネリアスの銀色の尻尾が大きく揺れている。
――――――その後ろ姿をラドゥが一人たたずんで見ていた。
そのころオスマンは厨房に居た。誰かが毒を盛らないか監視をするためだ。
(二度とラドゥ様に毒は盛らせたりしない!)
「オスマン! ここに居たのか! 探したぞ!!」
どかどかと厨房に入ってきたドリスタンがオスマンの腕を掴んだ。
触られた途端に嫌悪感が走り、オスマンは思わず眉間にしわを寄せた。
「なんじゃその顔は! わしに逆らうつもりじゃなかろうな?」
「‥‥‥いいえ。とんでもありません」
「ふん! まぁよいわ。それよりもお前のその力をまたわしに貸すのじゃ」
ぐへへへと卑しく笑う横でオスマンはため息をついた。
「では、場所を変えましょう。詳しくお聞かせください」
「アキトを誘惑しわしの虜にするのじゃ!どうだ? お前なら簡単だろう?」
「‥‥‥はぁ?‥‥‥」
こいつは何を勘違いしているのだろう? アキトが本気でこの男に惚れるとでも思っているのだろうか?
オスマンは呆れてものも言えなかった。
「まさかお前、わしへの恩を忘れたわけではあるまいな? お前の祖父や兄弟の面倒を見ているのはわしの財力だという事を。お前のような貧乏なものでもこのわしの尽力によってココに居られるという事をな」
「忘れてはおりません。貴方様のおかげで私はココにこうしておられるのですから」
オスマンの祖父は病弱で高額な治癒代がかかる。そのほとんどをドリスタンが肩代わりしていた。
元々オスマンには何事にも素早く頭を働かせて物事に対応する能力が高かった。その才覚を第二皇太子のラドゥに見初められ彼の側で働くこととなったのだ。ドリスタンはそれに付け込んでオスマンに紹介させ自分もラドゥの側近へと上り詰めた。
ラドゥは美しく聡明で純粋な人間であった。オスマンは彼に惹かれているがドリスタンの悪事に加担している自分は汚れていると思い悩んでいる。そこへまた無理難題を持ち掛けてきたのだ。
「次の満月の晩、わしは王宮に泊まる事にしよう。その時にアキトをベットに誘い出せ」
「‥‥‥無茶です」
「な! 何を言う!魔女など淫乱な生き物じゃ。何人でも男を咥え込むわ」
‥‥‥果たしてそうだろうか? 確かに祖父からは魔女は悪い、王を堕落させたと言い聞かされてきたが、アキトは自分が思っていた魔女とは違う気がする。
「むむむ?ひょっとしてお前もうすでにアキトと交わったのか?」
「何故そうなるのですか?‥‥‥はぁ。最近のドリスタン様は少しおかしい気がしますが?」
「なんじゃと?わしのどこがおかしいのだ?」
「その‥‥‥以前はもう少し自粛されていたかと?」
「自粛だと?まさか!時が来るのを待っていたのじゃ。アキトの魔力をわしの手にすれば何も怖くはないわ!」
「アキトの魔力に目がくらんだのですか?」
やはりアキトはこの国に災害を持たらす元凶なのだろうか?
「ドリスタン様、アキトは今や王族なのです。わたしなどが手を出せる相手では‥‥‥」
「お前のその目を使えばいいであろう? 人を操れるその目をな」
「っ!‥‥‥何度も申してる通り、この力はわたしの生命力を使います」
「だから、少しの間で良いと申しておるではないか。わしが挿入するまでのな」
ぐふふふとドリスタンは笑った。
(こんなことならすぐにでも襲ってしまえばよかった。)
ジャラジャラと装飾品の音を立てて小太りの男が一人王宮の中を足早に進んでいた。
ラドゥ派の側近の一人。貴族のドリスタンだ。
(くそっ。内乱に便乗し王位を我が物にするはずが、こんなことになるとは!)
第三皇太子のエドガーが戻ってからというもの、城下は活気があふれお祭りムードだ。それも魔女であるアキトを伴侶に娶ったからだった。
まさか1か月たらずで伴侶の儀式を行うとは思っていなかったのだ。
(淫乱魔女め!王まで誘惑したのか! )
ドリスタンはアキトと身体を交わしたから魔力が増大し王が歩けるようになったと思い込んでいた。
(魔女が本当に癒しの力なぞ持っておるはずがない!)
「しかし、婚礼の儀の時のアキトの美しさには見惚れたわい。是非とも欲しい。そしてわし以外のものとは交われないよう薬づけの身体にしてやろうではないか。くくく‥‥‥」
一人不敵な笑いをしながらドリスタンは侍従室の前までやってきた。
「おい!オスマンはいるか?! あやつを呼んで来い!」
叫びながら扉を開けるとそこには第一皇太子のユリウスがいた。
「ひっ!!」
「…‥‥なんだお前は? なぜそんなに偉そうにココにきたのだ?」
「い‥‥‥いえ。ユリウス様がいらっしゃるとは思いもせず‥‥‥」
「はぁ? 俺がいなければ侍従たちに偉そうにするのか? お前は何様だ?」
「そんな。侍従などただの召使ではありませんか。貴族のわしのほうが‥‥‥」
「馬鹿かお前は? 侍従たちが居るから俺達の身の回りの世話をしてもらえるのだぞ。そんな考えだから腐った貴族が増えるのだな?」
(くっそ~。この野郎っ! わしが王位を奪ってしまえばこんなやつ!)
「ラドゥは何故お前みたいなやつを身近に置いているのだろうな?」
「それは…‥‥わしの血筋がいいからでございます」
「ふん。お前の血筋など関係ないわ。とにかく、オスマンに会いたいなら自分で探せ」
「は‥‥‥はははっそうですな。では失礼いたします」
ドリスタンは渋々部屋から出て行った。
(ユリウスめっ。必ず失脚させてやるわいっ!)
「胡散臭い奴だ。気に入らぬっ!」
ユリウスが不機嫌にしていると侍従の一人が頭を下げてきた。
「ユリウス様私達を庇って頂きありがとうございます!」
「あぁ。よい。こちらこそお前達に余計な気をつかわせたな。俺も最近まで気づかなかったのだ。公務ばかりを優先していてこの国の格差やゆがみをきちんと見ていなかった。気づいたのはエドガーとアキトのおかげさ」
「え?エドガー様とアキト様ですか?」
「そうだ。お前達が日々奮闘してる事も二人に聞いて初めて気づいた。不甲斐ない王族ですまないな」
「いいえっ!!滅相もございません!」
ユリウスは公務の合間をぬって侍従長の元にツッツファーレからの王位継承問題に関する容疑者についての報告を聞きに来ていたのだ。普段は執務室にて報告をうけるのだが、たまには自分の目と耳で動いてみようと今日は立ち寄ってみたのであった。
「ユリウスさま。こんなところにいらしたのですね?何かあったのでしょうか?」
宰相のコーネリアスが駆け寄ってきた。
「いや、たいしたことではない。」
近くにいた侍従たちが今あったことをコーネリアスに報告してきた。
「やはり、ユリウス様はあまり出歩かれないほうが良いと思われます」
「なんだ?俺に指図するのか? 」
「貴方が動くと目立ちすぎるのですよ!!」
「あ~。‥‥‥それは少し自覚している」
ユリウスは2メートル超えの高身長に筋肉質な体型だ。遠くからでも認識できる。
隠密行動などには程遠い。存在感がありすぎるのだ。
「まぁ、わざとこうして探りを入れているというアピールにはいいのですがね」
「ははは。わざとか。そうだな、俺が動き出すことで誰か焦りだすやもしれん」
「危険なことはしないでくださいね!」
「わかっているさ。コーネリアス。お前に嫌われるのはツライ」
ユリウスが軽く片目をつぶってみせた。
「もう!こんなところで!」
「さてそろそろ公務に戻るとしようか」
ユリウスがコーネリアスの肩を抱くとコーネリアスの銀色の尻尾が大きく揺れている。
――――――その後ろ姿をラドゥが一人たたずんで見ていた。
そのころオスマンは厨房に居た。誰かが毒を盛らないか監視をするためだ。
(二度とラドゥ様に毒は盛らせたりしない!)
「オスマン! ここに居たのか! 探したぞ!!」
どかどかと厨房に入ってきたドリスタンがオスマンの腕を掴んだ。
触られた途端に嫌悪感が走り、オスマンは思わず眉間にしわを寄せた。
「なんじゃその顔は! わしに逆らうつもりじゃなかろうな?」
「‥‥‥いいえ。とんでもありません」
「ふん! まぁよいわ。それよりもお前のその力をまたわしに貸すのじゃ」
ぐへへへと卑しく笑う横でオスマンはため息をついた。
「では、場所を変えましょう。詳しくお聞かせください」
「アキトを誘惑しわしの虜にするのじゃ!どうだ? お前なら簡単だろう?」
「‥‥‥はぁ?‥‥‥」
こいつは何を勘違いしているのだろう? アキトが本気でこの男に惚れるとでも思っているのだろうか?
オスマンは呆れてものも言えなかった。
「まさかお前、わしへの恩を忘れたわけではあるまいな? お前の祖父や兄弟の面倒を見ているのはわしの財力だという事を。お前のような貧乏なものでもこのわしの尽力によってココに居られるという事をな」
「忘れてはおりません。貴方様のおかげで私はココにこうしておられるのですから」
オスマンの祖父は病弱で高額な治癒代がかかる。そのほとんどをドリスタンが肩代わりしていた。
元々オスマンには何事にも素早く頭を働かせて物事に対応する能力が高かった。その才覚を第二皇太子のラドゥに見初められ彼の側で働くこととなったのだ。ドリスタンはそれに付け込んでオスマンに紹介させ自分もラドゥの側近へと上り詰めた。
ラドゥは美しく聡明で純粋な人間であった。オスマンは彼に惹かれているがドリスタンの悪事に加担している自分は汚れていると思い悩んでいる。そこへまた無理難題を持ち掛けてきたのだ。
「次の満月の晩、わしは王宮に泊まる事にしよう。その時にアキトをベットに誘い出せ」
「‥‥‥無茶です」
「な! 何を言う!魔女など淫乱な生き物じゃ。何人でも男を咥え込むわ」
‥‥‥果たしてそうだろうか? 確かに祖父からは魔女は悪い、王を堕落させたと言い聞かされてきたが、アキトは自分が思っていた魔女とは違う気がする。
「むむむ?ひょっとしてお前もうすでにアキトと交わったのか?」
「何故そうなるのですか?‥‥‥はぁ。最近のドリスタン様は少しおかしい気がしますが?」
「なんじゃと?わしのどこがおかしいのだ?」
「その‥‥‥以前はもう少し自粛されていたかと?」
「自粛だと?まさか!時が来るのを待っていたのじゃ。アキトの魔力をわしの手にすれば何も怖くはないわ!」
「アキトの魔力に目がくらんだのですか?」
やはりアキトはこの国に災害を持たらす元凶なのだろうか?
「ドリスタン様、アキトは今や王族なのです。わたしなどが手を出せる相手では‥‥‥」
「お前のその目を使えばいいであろう? 人を操れるその目をな」
「っ!‥‥‥何度も申してる通り、この力はわたしの生命力を使います」
「だから、少しの間で良いと申しておるではないか。わしが挿入するまでのな」
ぐふふふとドリスタンは笑った。
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