異世界行ったらボクは魔女！

１章 僕は魔女？

22．＊力の剣＊

 　次の日。重臣たちへ招集がかかった。皆昨日に今日で何があったのかとざわざわとしている。
　今日はラドゥについてオスマンも来ていた。
　昨日の宝物庫の件からオスマンはアキトが怪しいとラドゥには進言している。きっと今日はアキトは王に寄り添ってこの場に現れるはずと睨みをきかせていた。

　しかし広間に現れたのはエドガーだけだった。それもきっちりと正装をし、王家の人間として胸をはって前を見つめている。何かの決心をしたような真剣な表情である。
　そしてさらに驚くべきは王の前にはカーテンがなかった。動かない石化した足を皆の前にさらけ出し広間の皆の顔を見渡している。王の横にはユリウスとラドゥが立っている。

「皆のものよく聞け。これからドラゴン騎士団はエドガーの配下とする！」
　王が良く通るバリトンで広間にいる皆に告げた。
　エドガーが口元を一文字に引き締めた。突然の事に臣下達はざわめいた。

「お待ちください！！　」
　案の定、ラドゥ側の配下から声がかかった。
「エドガー様は今まで旅に出てらして王宮にも近寄らず、また王族としての務めもされなかったではありませんか！　それなのにこの国の重要なポストであるドラゴン騎士団を明け渡すなどと……」
「そうですとも！！」
　今度はユリウス側の配下から声が上がった。
「ドラゴン騎士団を制する者はこの国を制すというではありませんか！　そんな重要な地位を何も弟気味にわたさなくともいいのではないですか？　」

「お前ら王命に背く気なのか？！　」
　ユリウスのドスの利いた声が響いた。続いて王が低音のバリトンで静かに話し始める。
「お前たちは勘違いをしておる。選んだのはわしではない。エドガーはすでに幼い日にドラゴンから言い渡されていたのだ。次はお前が引き継ぐのだと。」
　ユリウスもラドゥも弟を誇らしそうに見つめていた。

「ではエドガーへの譲渡の儀式に移る」
　王は懐から小さな刀を差し出した。それは柄に竜の模様が彫ってある小型の剣だった。
　鞘の部分は竜の牙で出来ているらしい。
　王はエドガーを手招きしその手に短剣を握らせながら呪文をつむいでいく。

【いにしえに引き継がれる力と永遠の縁。我は約束によって繋がれたる絆を息子エドガーにゆずる】

【幾久いくひさしく絆を紡いでまいりまする】エドガーが答えると王の手元にあった剣はエドガーの手元にうつった。

「エドガーすまない。お前に重荷を担がせてしまう事になるな」
　王が周りに聞こえない様に小声で囁いた。
「覚悟はできてる。それに重荷じゃねえさ。俺が望んだんだ」
　
～～～～～～～～～

　あの後、魔女からアキトが宝物庫に飛ばされそこでハートを見つけた。オスマンがその場にいたことを告げられた。エドガーもクロードもなぜオスマンがそこにいたのか探りたがったがそれをするとアキトの立場が悪くなる。下手すれば宝物庫荒らしともみなされるだろう。オスマンの件は保留となった。

　アキトが竜の文字を読めたことについては
「『そりゃ多分、あたしが竜と魔女のハーフだからじゃないのか？』」
　あっけらかんと魔女が言い放った。それも黒をまとった黒竜だという。
「『アキトの髪と目の色はそのせいだろう。あたしは赤髪だったからね』」
「それはマリー様……ブラッディ・マリーがよく申しておりました。あの方は貴方に憧れてたのですよ。勇気があって愛に満ちて自分と同じ赤髪で。だからこそアキトを守ろうとした」
「『ふっ。ありがたいね。何人もの思いの上に生まれた命ってのは尊いものだ』」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　バアン！！勢いよく扉があくとエドガーが駆け込んできた。
「アキトは大丈夫か？！　」
「静かに入ってこないか！　今は落ち着いている」クロードが叱る。
「す……すまない」
「『はぁ……そんなにあたしを抱きたかったのかい？……』」
　かなりの熱がアキトの体内で巡ってるようでアキトの中の魔女も苦しそうだ。
「『力の剣は受け継いできたのかい？　ならば鞘を抜いてごらん』」
　エドガーが先ほど譲渡されたのが【力の剣】だったのだ。本当は昨日のうちに欲しかったのだが、そこは王族。儀式失くして譲渡はできなかった。
　力の剣はドラゴン騎士団の所有の証として家臣達には認識させていた。誰もこれが勇者の剣とは気づいてはいない。代々直径の王族に引き継がれるとしか知らされていないからだ。
　本当は勇者の血統でなければ保有することが出来ない品であった。

　エドガーは小さな剣を鞘から抜く。切っ先を見つめると２度３度と瞬きをする。
　保有者が王からエドガーに変わった。剣と呼応できるようになったはずだ。
「『……マリア。遅くなってすまなかった』」
「『ジーク……その子に礼を言っておくんだよ』」
　力の剣を鞘に納めるとエドガーの中のジークが答えた。
「『ああ。まだ少しぎこちないが動ける。」』」
　ジークベルトは初代の王であり勇者だ。そしてその最後の思念は力の剣の中に宿っている。
　所持者が変わったことでエドガーの身体にジークの思念が入り込んでいった。

「『ジーク。身体が熱いよ……この子はいつもこんなのを耐えてるのかい？　可哀そうなことをした』」
　アキトの中の魔女が苦し気につぶやく。
「『そうだな。もっと小さなときにこの腕に抱いて可愛がってやりたかった』」
　エドガーの中のジークが答える。
「お二人の分以上にわたしがアキトを愛します」
　クロードが割り込む様に答えるとアキトの身体をやさしく撫でまわし始めた。
「大丈夫ですよ。準備が出来しだい貴方の熱をとって差し上げますからね」
　アキトの身体がピクリと動いた。
「『おやまぁ……喜んでるよ。この子はあんたの事をよほど信頼してるんだろうね』」
　クロードが嬉しそうにほほ笑む。


　アキトにエドガーが口づける。だが中身は魔女と勇者だ。
「アキト聞こえてますか？　わたしはココに居ます。このまま身を任せてもいいのですよ。安心してください」なだめるようにクロードが耳元で囁く。だが表には出てこない。魔女の力が強いのか多すぎる魔力に酔っているのか。
「『聞こえているさ。返事ができないだけ。愛してやってくれ』」

　３人でベットの上に横たわる。
　口づけながらエドガーの手がアキトの上着を脱がし始める。
　クロードがズボンのベルトに手をかけ静かに下ろしていった。
　エドガーがうなじを舐め上げながらあいた手でアキトの胸の頂をつまむ。
　クロードが背後にまわり双丘つかみながら後蕾を刺激し始めた。
「『……っ……んっ……この身体は……敏感なんだな……』」
　アキトの中の魔女が喘ぎだす。
「『マリア……今は何も考えるな。お前を愛したい』」
　エドガーの中のジークがアキトの雄を握り込んだ。
「『はぁっ。……ん……んっ』」
　クロードが後蕾に舌を差し込んで抜き差しする。ぴちゃぴちゃと濡れた音が響いてきた。
「『ぁあっ……もっ……挿れて……』」
「だめだっ。まだだ。アキトの身体に痛みを与えるのは許さない。充分にほぐさないと」
「『この子を本当に愛してくれてるんだな。ありがとう』」
　苦笑しながらもエドガーの手は休まずアキトの雄を扱く。

　アキトの身体が快感に翻弄される度にクロードが指が２本、３本が増やされていく。
「『……っ……あぁ……』……っ。クロ……ぁ」
「アキト？大丈夫か？わたしも居ますよ。感じていてください」
　クロードがエドガーに視線で合図をし、二人の位置が左右に変わった。
「『マリア。愛してる。この気持ちを受け取ってくれ』」
　エドガーが側臥位からゆっくりと挿入してきた。
「『はっ……ジーク……ぁあ』」
　律動が早くなりアキトの喘ぎ声が徐々に大きくなる・
「『あ‥…んんっ……はぁんっ……あぁあっ……』」
　クロードはアキトの前にまわりその雄を口に含んだ。舌で転がしながらアキトの弱いところを攻めていく。
「『あぁっ……ジーク……』……っクロっ……もっ……出ちゃう」
「愛してますよ。アキト」
「『愛してる。この先もずっと。また出会えてよかった』」
「『愛してる。もう離れはしない」』」


　アキトは快感の渦の中でマリアとジークの声を想いを聴いていた。
　『あたしはこの人の子供が欲しかった。この人の笑顔、勇敢さ、あたしを見る瞳。そのすべてが好きだった。愛する人の卵を孕んだ時は嬉しくて嬉しくて涙がでた。』
　『わたしはマリアが愛しかった。その優しさ、可憐さ、凛とした表情すべてが愛しかった。卵殻を手にした時の興奮と喜び、卵を孕んだと聞いた時の感動を忘れはしない』
　『愛してる。またひとつになれて嬉しい』
　『愛してる。身も心も繋がれて幸せだ』
　『愛してる。愛してる。お前は望まれて授かった子なのだよ』
　『愛してる。愛してる。お前は愛し合った二人の結晶なのだよ』


　アキトの目からは涙があふれていた。自分は愛されてたのだと。
　両親については考える事すらやめていた。実在しないのだから考えても仕方がないと。
　でも本当は知りたかった。自分が何故生まれたのか？両親はどんな人だったのか？
　自分は存在してもよかったのか……。
　今日初めてお前は愛されていたのだよ。存在してもいいんだよと言われた気がしたのだ。
　

　――――――ありがとうよ。最後のあたしのわがままを聞いてくれて。
　――――――幸せにおなり。お前は好きな生き方を見つければいいんだよ。