異世界行ったらボクは魔女!

ゆうきぼし/優輝星

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1章 僕は魔女?

19.熱い想い

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 王と謁見を終えると家臣達に囲まれた。今日のところは顔合わせというところか。皆エドガーに声をかけようと集まってきたようだ。
 心配し帰還を単純によろこぶものやそれとなくどちらに着くのか探りをいれてくるもの。僕は顔と名前を覚えるのに必死だ。
「アキト様は魔女の血統と伺いました。何か魔術が使えるのですか? 」
  僕に声をかけてきたのはユリウス派にいたアランという男だ。屈強そうだが物腰がやわらかく僕にも普通に話しかけてくれる。
「そうですね。治癒魔法が使えます」
「治癒ですか? 魔女なら闇魔法かと思いましたが? 」
 僕の答えに声をかけてきたのはラドゥ派のドリスタンという男。小太りでじゃらじゃらと装飾品や指輪をつけている。趣味が悪いなぁ。
「まだ僕も魔法は使い慣れてなくてよくわからないのです」
「今後他の呪文も取得予定です」
 クロードが代わりに答えてくれた。
「アキトは代替わりしたところなんだ。あまり虐めないでやってくれ」エドガーも僕を庇いにやってきた。
「二人ともありがとう」と礼を言って微笑むと周りからほうっと声が聞こえた。へ? 何皆んなこっち見てるの? 

「おお~。美しいっ! 」
「あ……あの今度お食事でも」
「ぜひ伴侶候補に!! 」

「こらっお前ら! アキトは俺の婚約者だ!! 」エドガーが叫んだ。
「え?! な……何を急に……えど……」
 そんな大勢の前で言わないで。赤面するよ。
「っ!! 今日は皆さまありがとうございました。ではまたお会いしましょう! 」
 クロードが僕らの手を引き広間から足早に連れ出した。

~~~~~~~~~~~~

 僕らは一度エドガーの部屋に戻ってきた。というより、もうこの部屋が僕らの部屋のようになってしまった。一応奥の客間を与えられてはいるがこの部屋にはリビングがあるため集まりやすいのだ。
「クロード連れ出してくれてありがとう」
「いえ……その……私はアキトに伝えなければならない事があるのです」
「もしかして……パートナー契約の事? 」
「……はい」
 クロードはエドガーをじっと見た。
「まさか出て行けなんて言わねえよな! 俺の部屋なんだぜ。それに俺にも関係あるんだろ? 」
「エドガーお願い。少しだけリビングに二人にしてくれる? 」
「……仕方がねえな。少しの間だけ俺は寝室の方に行ってるよ」
「エドガーはアキトの言う事には素直ですね」
「ん…… ありがたいと思ってるよ」

「アキト。もう気づかれてるのでしょう? 」
「うん。……パートナー契約とは伴侶契約なんだね? 」
「そうです。」
「伴侶ってさ配偶者ってこと?! 僕ら結婚しちゃったの? 」
「はい。……私は貴方を騙すようなズルいやり方で契約を結んだのです。……」
「どうして?……騙さなくてもよかったのに!! なんではっきり言ってくれなかったのさ!! 」
「最初の夫になる必要があったからです! エドガーは王族です。彼が望めば嫌とは言えない状況になるでしょう。だからその前にどんな手を使ってでも貴方が欲しかった。長い間ずっと貴方だけを見てきたっ! 」
「クロ?! 」
 いつもの穏やかなクロードじゃない。こんなに感情的になった彼を見たことはない。
 クロードに肩を掴まれ抱き込まれる。いきなりの事にあらがうが強く抱きしめられて身動きが取れない。

「アキト。私には貴方だけなのだ! なのに突然現れた奴に目の前でさらわれるなんてっ! 我慢できない! 魔女は淫蕩だ。この後もっとエドガーのような奴が現れる。わたしはいつか嫉妬にかられて貴方をこの手にかけてしまうかもしれないっ。だから最初の夫になりたかったのだ」
 クロードにこんな部分があったなんて。そんなに僕の事を想ってくれてたの?嬉しい!
 だけど、僕が欲しい言葉はそれじゃないよ。
「クロ……クロード。お前は勘違いをしてるっ! 」
 僕こそクロードに惚れ込んでるのに。契約時に僕以外を抱けない様に呪いをかけてしまうほどに。
「アキト? 」
「クロは僕の欲しい言葉をくれないのか? くれないのなら僕が言ってやる!!」

【お前の事を愛している。一生幸せにするから僕の傍に居ろ!】

「アキト!! 私の伴侶はなんてカッコいいんだっ」
「クロは順番が逆なんだよ!! プロポーズが先だろうが!!!バカ野郎!っ」
「幸せにするっ!一生傍にいる! 私と結婚してください」
「もうしてるじゃん。一人で思い悩むのはもう禁止だからな」
「嫌われるかと思ってました」
「そんなわけないじゃん。僕がクロにメロメロなのは知ってただろ? 」
 僕はクロードに噛みつくようなキスをした。
  

「も~おいい~かい? 」エドガーが拗ねた様子で現れた。
 クロードが睨んでいる。まあ仕方ないかな? エドガーの部屋だしね。
「俺だって愛してるっ! わかってんだろ?! 」
「ごめんよエドガー。ありがとう」
「あ~ぁ! なんで俺はこんなモテる奴が好きになっちまったんだろ!? 」
「僕はモテないよ。クロードとエドガーがおかしいんだよ」
「何言ってんだよ! 俺らだけじゃなく親父まで虜になっちまったじゃねえか」

 あの後、王の足に触らせてもらって少し治癒魔法をかけてきた。
 僕の治癒力については効果があったようで明日からしばらく、王の元へ治癒に通う事になった。
「心配だ! あのクソ親父っ。アキトに色目を使いやがって~」
「いやエドガーあの場ではきっと僕が色目を使ったと思われてると思うよ」
「……どちらも違うと思います。なんらかの別の力が働いてるように見えました」
 クロードの尻尾はいまは僕の腕に絡みついている。尻尾は気持ちの現れというから僕の事がまだ心配なのだろう。嬉しいけどちょっと恥ずかしい。
「それって……僕の内にある魔女のちからのせい? 」
「多分。関りがあるのでしょう。それにマリアと尋ねられてましたね? 」
「うん。祖母ちゃんのことかな? 僕の魔力は祖母ちゃんから譲られたものなんでしょ? 」
「それもありますが、です」
「ん~、だが親父はアキトに会ったことがある様子だったぞ」
「あの時。懐かしい気がしたんだ。凄く会いたかった気がして……」
 王様とキスをしたかったなんて事はエドガーの前では言えないや。 
 クロードに魔女は淫蕩と言われたた時、僕は反論が出来なかった……。

 パートナー契約を結ぶと伴侶になる。伴侶って旦那さん。ん?僕は奥さんって事? この世界では結婚って概念がない。複数婚もOK。それも最初の夫が力を持つんだね。
 クロードは契約があるから僕に嘘はつかないが……肝心なことを言わない。
 聞けば教えてくれるんだろうが何を聞いたらいいのかがわかんないんだよな。

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