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1章 僕は魔女?
17.エドガーside
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――――――こんな形で抱いてしまうなんて。
俺とアキトが出会ったのは……
竜の秘宝のカギを握る魔女が現れたとツッツファーレから情報が入り俺はすぐに異世界にとんだ。
こちらについてからは文字や言葉はすぐに理解できた。だが魔法が使えない。
そのかわりこの世界では電脳が発達していた。電子機器を使えば魔法がなくても快適に暮らせるという事も経験した。最初から異世界の事だからある程度は仕方がないと覚悟はしていたが思いのほか充実していた。
難航した魔女探しもある日を境に突然見つけることが出来た。
こちらに来るときにツッツファーレから手渡されていたが魔道具が一気に反応したのだ。
どうやら魔女は代替わりをしているらしく魔力が不安定になっていたのが好機に転じたらしい。
もともと魔道具が指しすべくある大学に目を付けていた。この学生の中に紛れ込んでいるはずと俺は「江戸川」という大学生に扮してイベントごとに顔を出してはそれとなく情報を探っていた。そのうちたまたま一緒になった地味な青年が気になりあれこれ世話を焼いてるうちに目が離せなくなった。
そしてある日その青年の顔を真正面から見たのだ。なんて美しい……。
なぜ今まで顔をはっきり見れてなかったのか。青年には他者から識別できない術がかけられていたようだった。先代の魔女の仕業に違いない。
その時魔道具が反応した。はっきりと魔女はこの青年だと示したのだ。
――――――それがアキトだった。
魔道具が特定できなかったのではなく俺自身が術のせいで判別出来てなかったのだ。何故この青年がずっと気になっていたのかも理解した。心はすでに捕らわれてたのだ。
それからの俺は今までよりも一層アキトにかまうようになった。ほおっておけないのだ。
俺は魔女とはもっと強欲で気が強くてわがままな高飛車な奴だと思い込んでいた。
それなのにアキトはどこかふわふわした感じで頼りないのだ。目を離したらどこかに飛んで行ってしまいそうなほどに。そのくせ曲がったことは許せないという。なんだ? こいつは天使か?
俺は魔女と天使を聞き間違えたのかと思ったほどだ。
どうにかしてアキトを俺の世界に連れて行きたい。だが本当に魔女なのか? 迷いもあった。アキトが魔法を使ったところなど見たことがない。俺はアキトの前では意気地がない男だった。嫌われたくなかったのだ。
大学を卒業したアキトになんだかんだ言ってついて回った。離れたくなかった。
~~~~~~
それなのに……アキトは本当にどこかに飛んでしまったのだ。俺の手から離れるように。
どれだけ俺が焦ったか! まさかの時の為に追跡用魔道具を用意しててよかった。
もうこの際元の世界に戻れなくてもよかった。アキトにもう一度会えるならそれでよかったのだ。
なのに飛ばされたのは俺の元居た世界だった。
まさか、俺以外の誰かに魔女を狙われていたのか? はやる気持ちのまま現地に向かった。
広い草原の森の中の小屋からアキトの反応がする。
「アキト! 俺だ! 江戸川だ! 開けてくれ」懇願にも似た思いで叫んだ。
しばらくして戸があき、アキトの姿が見えた時はホッとした。
すぐさま駆け寄り抱きしめたかったのだが、小屋にはもう一人いた。それも獣人だ!
「ここは異世界ですよ。普通の人間が転送されて来るなんておかしいと思いませんか? 」
やけに馴れ馴れしい。アキトはこいつと仲がいいのか?!
「それも全部説明したい。だからアキトと話をさせてくれ」
俺は必死だった。ここで突き放されたらもうどうしたらわからないほど俺はアキトにのめり込んでいた。
「クロ。いいよ。僕も話しがしたい」
獣人が体をひいたので小屋の中に入ることが出来た。
「アキト。大丈夫か? 」近寄ろうとするのをそいつが静止する。
「それ以上アキト様に近づかないで下さい」
「さっきからお前はなんなんだ? 」
「彼はクロだよ」
「クロ? あの黒猫か!? 」
なんてことだ。こいつは……きっとここの住人だったに違いない。ではもうかなり前からアキトの傍にいたというのか?俺よりもずっと前から守っていたのか??いや……ひょっとして俺の事を勘づいてこいつがアキトを連れてきたんじゃないだろうか?
「お前がアキトをさらったんだろう?!! 」
「何を言いがかりをっ! 貴方こそどうやってここに来たんですか!! 」
くそっ。俺はまだ自分の事も何もアキトに言えてないというのに。腹が立つ。殴りかかろうとした時。
「いい加減にしろ……お前ら僕に説明する気はないのか? 」
アキトから今まで聞いたことがない程の冷たい声が響いた。
無表情なのにぞっとするほどの恐ろしさを感じた。美人ほど怒らせたら怖いことを思い知った。
素直に謝った後、竜の秘宝をさがして魔女を探していた事を打ち明けた。
その後疲れていたアキトをクロードは眠らせる。なんと手際がよい。
アキトは自分が眠らされたことも気づいてなかっただろう。
クロードは俺に自分は魔女ブラッディ・マリーと共に異世界に渡りアキトを育てていたと言った。
くそっ。こいつはそんな以前からアキトの傍にいたのか。
しかも魔女マリーはアキトに魔女以外の道も残していたという。
この後一緒に行動を共にしてもいいが、あくまでも将来の選択肢はアキト自身に決めさせろと進言してきた。もとよりアキトの人生はアキトのものだ。俺はアキトが嫌がるなら魔女にならなくてもいいと思う。
ただ、一緒に居られる口実が欲しいんだ。俺の事を好きにさせる時間が欲しい。
この笑顔をずっと傍で観ていたいんだ。
俺は自分が王族だと知られるのが怖かった。アキトのことだから身分がどうだとか考えて離れて行ってしまいそうだったからだ。変にこういうところは頭が固いというか気をつかいすぎるところがある。
だから一緒に俺についてきてくれると言ってくれた時はとてもうれしかった。
……町に宿をとったあたりからクロードとアキトの仲が今まで以上に親密だとは感じていた。
それは長年一緒にいたせいなのか? それとも二人は……。
たとえ二人が心を通じあっていたとしても俺はアキトが好きだ。
馬車が襲撃をされたとき、俺はアキトの力を知った。なんと治癒魔法の使い手だった。
アキトの魔力は治癒力だったのだ。どおりで俺が目にすることがなかった。
闇属性を教わってないからアキトは攻撃魔法が使えないとクロードに聞かされた。闇の力の使えない魔女っているのか? とにかく攻撃魔法が使えないなら俺が守るしかない。
そうだ。俺はアキトを守るため傍に居ればいいのだ。
久しぶりに戻った王宮は不穏な空気に包まれていた。兄貴達からの歓迎&説教には参ったが顔を見てホッとしたからよかった。毒関連やら継承者関連やらとにかく明日からしばらく兄貴達の周りを調べることにしよう。
みんなで食事をと勧めてくる兄貴らを今日は疲れてるからと断って俺の部屋に食事を運ばせた。疲れてるだろうアキトにこれ以上気をつかわせたくなかったのだ。俺自身堅苦しいのは嫌いだ。
一応毒に気を付けようとアキトが食事に浄化魔法を唱えてから俺らは食事を始めた。
でも……こんなことになるなんて。
確かに自分の部屋に入った途端、緑が多いなとは思った。しかし数年部屋を開けていたのだし、内部の掃除などはメイド達がしていたので季節ごとに花や植物を入れ替えるのだろうくらいにしか思わなかった。
異変はまずクロードの身に起こった。突然腰が抜けたように膝から倒れたのだ。どうみても立ち上がれる様子ではなく、また図体のデカい体格なのでソファには寝かせられず寝室に運び込んだ。
アキトが言うには観葉植物が原因らしい。どうやら猫科の獣人が酩酊したり麻痺したりする植物があるらしい。俺は言われるままベランダにそれらを運んだ。アキトはなんと次々に植物に語り掛けている。植物の言葉がわかるというのだ。これもアキトの魔力のひとつだった。
しかしそれで俺の部屋や寝室に置いてある植物のほとんどが性的な興奮をもたらす物や幻覚をみせる香りを放つ類のものとわかった。慌ててそれらもベランダにうつす。運ぶ途中植物に近づきすぎて少し花粉を吸っちまったみたいだ。なんだか俺もドキドキしてきたヤバい。
アキトも顔が赤いし様子が変だ。
急にクロードが「エドガー。お前魔力量は高いほうだと前に言っていたな? 」と聞いてきた。
「ああ。ある程度の術は使える……何に使うんだ? 」
「……アキトに使ってやってくれないか? わたしは今下半身がマヒしている」
「へ? なんだ? どういう意味だ? 」
俺は初めてここでアキトがまだ魔女として覚醒してないと知った。
そのためアキトの中では魔力が活性化してもその身体に馴染まず暴走する。馴染ますためには魔力の相性がいい相手の体液を取り込まないといけない。それもアキトは俺にそれを感じてくれているという。
そうか! 俺が最初からアキトに惹かれていたのは魔力の相性が良いせいだったのかもしれない。
そんな相手は一生に一度出会えればいいぐらいの確率だ。ならば俺とアキトは運命の相手だったのだ。
でもアキトはクロードを愛しているのか? クロードも運命の相手なのか?
この世界は複数婚が認められている。別に一夫一婦制ではない。俺にも可能性はあるはずだ。
だけど……。
「エドガー。今も言ったようにアキトは貴方にも惹かれているんです」クロードが諭してくる。
「……それは嬉しい。でもお前らの様子を見る限りでは苦しいよ」
「エドガー。戸惑っているのはアキトのほうです。私は最初から貴方と共に彼の伴侶になろうと考えてましたよ。どうか私も込みで受け入れてやってはもらえないだろうか? 」
つまり、クロード込でアキトを愛せよというのか!? どうしようか迷う。
苦しむアキトを俺は見捨てられなかった。いやそうではない。口づけただけでその甘美な味に嵌ったのだ。なんでこんなに甘いんだ? それより俺はアキトに触れている! もうそれだけで興奮した。
一瞬クロードを見た。
「お前はアキトの事だけを考えろ。私の麻痺が消えるまでまだ時間がかかりそうだ。頼む」
「わかった。クロード。俺はこのチャンスを逃すわけにはいかないんだと悟ったよ」
「ああ。お前はそういう奴だ」
「バレてたか……」
「ああ。とっくの昔にな」
そうだ。この機会を逃したら俺はいつアキトを抱けるかなんてわからないじゃないか!
アキトの身体は極上のスイーツみたいだった。どこをとっても甘い。
それに精を放つと同時に自分の中にも魔力がみなぎってくる感覚が得られる。俺は少しは経験はあった。童貞ではないがこんなに感じる相手はいなかった。アキトは最高だ。
その後俺と回復したクロードでかわるがわるアキトを愛した。クロードはアキトにこの上もなく優しい、俺に見せる表情とは全く違う。交代しろと迫ってきたときの鬼気迫る顔などアキトには決してみせないのだろうな。
明け方近くアキトが意識を手放すとクロードが俺に確認をしに来た。
「アキトとパートナー契約を契る気はあるのか? 」
「もちろんだ。それを俺に聞くという事はお前はもう結んだんだな? 」
「……そうだ。選択権は私にもある」
「ならばあえて言おう。俺をパートナーに加えてくれ」
「私との条件をのんでくれるなら認めてもかまわない」
「……」
くそっ! やっぱりこいつには策士の才能がある……。
俺とアキトが出会ったのは……
竜の秘宝のカギを握る魔女が現れたとツッツファーレから情報が入り俺はすぐに異世界にとんだ。
こちらについてからは文字や言葉はすぐに理解できた。だが魔法が使えない。
そのかわりこの世界では電脳が発達していた。電子機器を使えば魔法がなくても快適に暮らせるという事も経験した。最初から異世界の事だからある程度は仕方がないと覚悟はしていたが思いのほか充実していた。
難航した魔女探しもある日を境に突然見つけることが出来た。
こちらに来るときにツッツファーレから手渡されていたが魔道具が一気に反応したのだ。
どうやら魔女は代替わりをしているらしく魔力が不安定になっていたのが好機に転じたらしい。
もともと魔道具が指しすべくある大学に目を付けていた。この学生の中に紛れ込んでいるはずと俺は「江戸川」という大学生に扮してイベントごとに顔を出してはそれとなく情報を探っていた。そのうちたまたま一緒になった地味な青年が気になりあれこれ世話を焼いてるうちに目が離せなくなった。
そしてある日その青年の顔を真正面から見たのだ。なんて美しい……。
なぜ今まで顔をはっきり見れてなかったのか。青年には他者から識別できない術がかけられていたようだった。先代の魔女の仕業に違いない。
その時魔道具が反応した。はっきりと魔女はこの青年だと示したのだ。
――――――それがアキトだった。
魔道具が特定できなかったのではなく俺自身が術のせいで判別出来てなかったのだ。何故この青年がずっと気になっていたのかも理解した。心はすでに捕らわれてたのだ。
それからの俺は今までよりも一層アキトにかまうようになった。ほおっておけないのだ。
俺は魔女とはもっと強欲で気が強くてわがままな高飛車な奴だと思い込んでいた。
それなのにアキトはどこかふわふわした感じで頼りないのだ。目を離したらどこかに飛んで行ってしまいそうなほどに。そのくせ曲がったことは許せないという。なんだ? こいつは天使か?
俺は魔女と天使を聞き間違えたのかと思ったほどだ。
どうにかしてアキトを俺の世界に連れて行きたい。だが本当に魔女なのか? 迷いもあった。アキトが魔法を使ったところなど見たことがない。俺はアキトの前では意気地がない男だった。嫌われたくなかったのだ。
大学を卒業したアキトになんだかんだ言ってついて回った。離れたくなかった。
~~~~~~
それなのに……アキトは本当にどこかに飛んでしまったのだ。俺の手から離れるように。
どれだけ俺が焦ったか! まさかの時の為に追跡用魔道具を用意しててよかった。
もうこの際元の世界に戻れなくてもよかった。アキトにもう一度会えるならそれでよかったのだ。
なのに飛ばされたのは俺の元居た世界だった。
まさか、俺以外の誰かに魔女を狙われていたのか? はやる気持ちのまま現地に向かった。
広い草原の森の中の小屋からアキトの反応がする。
「アキト! 俺だ! 江戸川だ! 開けてくれ」懇願にも似た思いで叫んだ。
しばらくして戸があき、アキトの姿が見えた時はホッとした。
すぐさま駆け寄り抱きしめたかったのだが、小屋にはもう一人いた。それも獣人だ!
「ここは異世界ですよ。普通の人間が転送されて来るなんておかしいと思いませんか? 」
やけに馴れ馴れしい。アキトはこいつと仲がいいのか?!
「それも全部説明したい。だからアキトと話をさせてくれ」
俺は必死だった。ここで突き放されたらもうどうしたらわからないほど俺はアキトにのめり込んでいた。
「クロ。いいよ。僕も話しがしたい」
獣人が体をひいたので小屋の中に入ることが出来た。
「アキト。大丈夫か? 」近寄ろうとするのをそいつが静止する。
「それ以上アキト様に近づかないで下さい」
「さっきからお前はなんなんだ? 」
「彼はクロだよ」
「クロ? あの黒猫か!? 」
なんてことだ。こいつは……きっとここの住人だったに違いない。ではもうかなり前からアキトの傍にいたというのか?俺よりもずっと前から守っていたのか??いや……ひょっとして俺の事を勘づいてこいつがアキトを連れてきたんじゃないだろうか?
「お前がアキトをさらったんだろう?!! 」
「何を言いがかりをっ! 貴方こそどうやってここに来たんですか!! 」
くそっ。俺はまだ自分の事も何もアキトに言えてないというのに。腹が立つ。殴りかかろうとした時。
「いい加減にしろ……お前ら僕に説明する気はないのか? 」
アキトから今まで聞いたことがない程の冷たい声が響いた。
無表情なのにぞっとするほどの恐ろしさを感じた。美人ほど怒らせたら怖いことを思い知った。
素直に謝った後、竜の秘宝をさがして魔女を探していた事を打ち明けた。
その後疲れていたアキトをクロードは眠らせる。なんと手際がよい。
アキトは自分が眠らされたことも気づいてなかっただろう。
クロードは俺に自分は魔女ブラッディ・マリーと共に異世界に渡りアキトを育てていたと言った。
くそっ。こいつはそんな以前からアキトの傍にいたのか。
しかも魔女マリーはアキトに魔女以外の道も残していたという。
この後一緒に行動を共にしてもいいが、あくまでも将来の選択肢はアキト自身に決めさせろと進言してきた。もとよりアキトの人生はアキトのものだ。俺はアキトが嫌がるなら魔女にならなくてもいいと思う。
ただ、一緒に居られる口実が欲しいんだ。俺の事を好きにさせる時間が欲しい。
この笑顔をずっと傍で観ていたいんだ。
俺は自分が王族だと知られるのが怖かった。アキトのことだから身分がどうだとか考えて離れて行ってしまいそうだったからだ。変にこういうところは頭が固いというか気をつかいすぎるところがある。
だから一緒に俺についてきてくれると言ってくれた時はとてもうれしかった。
……町に宿をとったあたりからクロードとアキトの仲が今まで以上に親密だとは感じていた。
それは長年一緒にいたせいなのか? それとも二人は……。
たとえ二人が心を通じあっていたとしても俺はアキトが好きだ。
馬車が襲撃をされたとき、俺はアキトの力を知った。なんと治癒魔法の使い手だった。
アキトの魔力は治癒力だったのだ。どおりで俺が目にすることがなかった。
闇属性を教わってないからアキトは攻撃魔法が使えないとクロードに聞かされた。闇の力の使えない魔女っているのか? とにかく攻撃魔法が使えないなら俺が守るしかない。
そうだ。俺はアキトを守るため傍に居ればいいのだ。
久しぶりに戻った王宮は不穏な空気に包まれていた。兄貴達からの歓迎&説教には参ったが顔を見てホッとしたからよかった。毒関連やら継承者関連やらとにかく明日からしばらく兄貴達の周りを調べることにしよう。
みんなで食事をと勧めてくる兄貴らを今日は疲れてるからと断って俺の部屋に食事を運ばせた。疲れてるだろうアキトにこれ以上気をつかわせたくなかったのだ。俺自身堅苦しいのは嫌いだ。
一応毒に気を付けようとアキトが食事に浄化魔法を唱えてから俺らは食事を始めた。
でも……こんなことになるなんて。
確かに自分の部屋に入った途端、緑が多いなとは思った。しかし数年部屋を開けていたのだし、内部の掃除などはメイド達がしていたので季節ごとに花や植物を入れ替えるのだろうくらいにしか思わなかった。
異変はまずクロードの身に起こった。突然腰が抜けたように膝から倒れたのだ。どうみても立ち上がれる様子ではなく、また図体のデカい体格なのでソファには寝かせられず寝室に運び込んだ。
アキトが言うには観葉植物が原因らしい。どうやら猫科の獣人が酩酊したり麻痺したりする植物があるらしい。俺は言われるままベランダにそれらを運んだ。アキトはなんと次々に植物に語り掛けている。植物の言葉がわかるというのだ。これもアキトの魔力のひとつだった。
しかしそれで俺の部屋や寝室に置いてある植物のほとんどが性的な興奮をもたらす物や幻覚をみせる香りを放つ類のものとわかった。慌ててそれらもベランダにうつす。運ぶ途中植物に近づきすぎて少し花粉を吸っちまったみたいだ。なんだか俺もドキドキしてきたヤバい。
アキトも顔が赤いし様子が変だ。
急にクロードが「エドガー。お前魔力量は高いほうだと前に言っていたな? 」と聞いてきた。
「ああ。ある程度の術は使える……何に使うんだ? 」
「……アキトに使ってやってくれないか? わたしは今下半身がマヒしている」
「へ? なんだ? どういう意味だ? 」
俺は初めてここでアキトがまだ魔女として覚醒してないと知った。
そのためアキトの中では魔力が活性化してもその身体に馴染まず暴走する。馴染ますためには魔力の相性がいい相手の体液を取り込まないといけない。それもアキトは俺にそれを感じてくれているという。
そうか! 俺が最初からアキトに惹かれていたのは魔力の相性が良いせいだったのかもしれない。
そんな相手は一生に一度出会えればいいぐらいの確率だ。ならば俺とアキトは運命の相手だったのだ。
でもアキトはクロードを愛しているのか? クロードも運命の相手なのか?
この世界は複数婚が認められている。別に一夫一婦制ではない。俺にも可能性はあるはずだ。
だけど……。
「エドガー。今も言ったようにアキトは貴方にも惹かれているんです」クロードが諭してくる。
「……それは嬉しい。でもお前らの様子を見る限りでは苦しいよ」
「エドガー。戸惑っているのはアキトのほうです。私は最初から貴方と共に彼の伴侶になろうと考えてましたよ。どうか私も込みで受け入れてやってはもらえないだろうか? 」
つまり、クロード込でアキトを愛せよというのか!? どうしようか迷う。
苦しむアキトを俺は見捨てられなかった。いやそうではない。口づけただけでその甘美な味に嵌ったのだ。なんでこんなに甘いんだ? それより俺はアキトに触れている! もうそれだけで興奮した。
一瞬クロードを見た。
「お前はアキトの事だけを考えろ。私の麻痺が消えるまでまだ時間がかかりそうだ。頼む」
「わかった。クロード。俺はこのチャンスを逃すわけにはいかないんだと悟ったよ」
「ああ。お前はそういう奴だ」
「バレてたか……」
「ああ。とっくの昔にな」
そうだ。この機会を逃したら俺はいつアキトを抱けるかなんてわからないじゃないか!
アキトの身体は極上のスイーツみたいだった。どこをとっても甘い。
それに精を放つと同時に自分の中にも魔力がみなぎってくる感覚が得られる。俺は少しは経験はあった。童貞ではないがこんなに感じる相手はいなかった。アキトは最高だ。
その後俺と回復したクロードでかわるがわるアキトを愛した。クロードはアキトにこの上もなく優しい、俺に見せる表情とは全く違う。交代しろと迫ってきたときの鬼気迫る顔などアキトには決してみせないのだろうな。
明け方近くアキトが意識を手放すとクロードが俺に確認をしに来た。
「アキトとパートナー契約を契る気はあるのか? 」
「もちろんだ。それを俺に聞くという事はお前はもう結んだんだな? 」
「……そうだ。選択権は私にもある」
「ならばあえて言おう。俺をパートナーに加えてくれ」
「私との条件をのんでくれるなら認めてもかまわない」
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