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1章 僕は魔女?
13.王都へ
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王都に着いた途端に馬車の窓から見る景色がガラッとかわった。まるで田舎から都会に来た感じだ。建物がいきなり近代的になり過ぎる。宇宙ステーションか? と見間違う建物もある。
「あれは保育ステーションだ」
まるで元の世界で流行っていたモンスター育成ゲームの中に出てきた施設みたいだ。卵の管理や状態をみたりする施設で人工孵化装置などが配備されてるという。しかもステーションの周りは警備が凄かった。
「わあ。ここは厳重な警備なんだね」
「大事な子供たちですからね」
クロードが優しく微笑んだ。希少価値の種族の卵は狙われたりするらしい。
そうか。この世界ではどの種族も卵から生まれるんだった。人間も卵で産まれる。不思議だ。
「卵ってどのくらいで孵化するの? 」
「種族によりますね。獣人族は3~4ヶ月。人間族は5~12ヶ月。魔族は魔力量によります。竜族は数年から数十年。100年近いこともあります。」
「へ? 100年って親は子供の成長をみれないの? 」
「寿命のことですか? 竜族は長命なので500年~1000年近く生きますよ。ちなみに獣人族は60~80年。人間族は80~120年。魔族は300~500年ぐらいでしようか?」
つまり、人口比率が多い獣人は短期間で卵が孵化しやすいが短命。逆に長命な竜は卵が孵りにくいのか。
でもそれって……。
「クロードは獣人だよね? 僕より早くいなくなるの? そんなの嫌だよ」
「アキト。……私は今は獣人の姿ですが本当は……」
「アキト、そんなにクロードが心配なのか? 俺とこいつとどちらが好きなんだ? 」
「え? エドガーどうしたの? 急に」
「俺がお前を王宮に連れて行く本当の意味をお前はわかってるのか? 」
エドガーが怒っている? 何故だ? 旅の仲間のお披露目じゃないのか? 襲撃されたから精神的に参ってるのかな? なにか気の利いた言葉でも言えればいいんだけど。どう答えようかと考えあぐねているうちに王宮の門についてしまった。気まずい。どうしよう。
「え・・エドガーさまっ! 」
馬車の外からフォキシーの動揺した声が聞こえる。
「なんだ? フォキシ―……っ! 」
エドガーが馬車の扉を開けた途端に逞しい腕に掴まれて馬車の外へ引きずり出された。
慌てて僕とクロードが馬車から降りると体格の良い美丈夫がエドガーを羽交い絞めにしている。
背が高い。2メートルはあるだろうか? その上筋肉質で服の上からでも体形の良さがうかがえる。肩からなびくマントに黒地に金の細かい刺繍入りのフロックコート。目を引く黄金の長髪に褐色の肌。スカイブルーの瞳。そしてエドガーとよく似た横顔。王族に違いない!
「このっ! 馬鹿者めが!! 父上や私がどれだけ心配したかと思っておるっ! 」
「ぐぉおっ! いでででっ!!! 」
呆気に取られてる僕とクロードに気づいたのか美丈夫がこちらを見た。
「……黒髪に黒い瞳っ?! なんと……美しい」
彼の視線は僕に向けられていた。突然エドガーをポイっと放り出すと僕に手を伸ばしてきた。
そうだった。この世界で黒髪黒目の人間族は珍しいんだったっけ。
クロードが身構える。僕を庇うように前に出た。
「っ! 兄貴っ!アキトに手を出すな!! 」
兄貴というとエドガーのお兄さん? この体形からすると長男のユリウスさまか?
エドガーは腰の剣に手をかけたまま睨みつけていた。
「そこまでです!!! 」
パンッ! と手を叩く音が聞こえたかと思うと几帳面そうな男が立っていた。銀髪で切れ長な瞳。白のフロックコートにマントをひるがえして足早にこちらに近づいてくる。三角耳にふさふさ尻尾。銀狼か?
「ユリウス様! 王宮の入り口で何をされてるのですか?! 兄弟げんかもほどほどになさい! 見れば客人もいらっしゃる。まずは中にお入りくださいませ! 」
「……コーネリアス。……俺は普段はこんなことはしない」
「わかっておりますよ。久しぶりに弟君に会えて嬉しかったのでしょう? さあさ、とりあえず中に入りましょう。君たちも怖がらせて申し訳ありませんでしたね」
丁寧にお辞儀をすると僕たちを王宮内部へと通してくれた。フォキシーはいつの間にか消えていた。
「さあ、こちらへどうぞ」
コーネリアスと呼ばれた男が部屋の前の執事に声をかけた。
「エド! おかえり!! 」
執事が扉を開けると共に美しい男性がアキトに抱きついてきた。
「兄貴、俺はこっちだ! 」
「あれ? えっと……わあ、綺麗な子だねぇ。艶のある黒髪がさらさらしてるよ」
ニコニコと美形が抱きつきながら僕の髪を撫でてくる。ええっと誰?
「だからっ! 俺はこっちだってんだ! 兄貴っアキトから離れろ! 」
2人目の兄貴? っていうならラドゥさんなのかな? めっちゃ美人。肌は透けるように白く背が高い。胸板が思ったよりも厚くて程よい筋肉がついててる。いや、これは抱きつかれたからわかるのであって変なこと考えてるんじゃないよ。
絹のような長い金髪の髪の毛が揺れている。瞳はダークブルーだ。目が大きくって優しい顔立ち。フリルのブラウスに黒のタイトなパンツ。ラフな格好なのに王子様オ-ラが凄いよ。
ぺりって感じでエドガーが僕からラドゥさんを引き離した。
「ははは。ごめんごめん。久しぶりに弟に会えると思うと嬉しくって抱きついちゃったよ」
「だから、俺に抱きつけよ! なんでアキトなんだ? 」
「ん~~~!! 我が弟よ!! よく戻った!! 」
「ふぐっ! 」
ラドゥはそのままエドガーをぎゅうっと抱きしめて頬ずりをしている。
「わ……わかった。わかったから。恥ずかしいよ」
「そうかそうか。また大きくなったな」
この兄弟達の仲の良さは羨ましいかぎりだ。特にエドガーお前愛されてるね。こんなので後継者争いしてるってほんとなのかな?? 嘘であってほしい。
通されたのは執務室のような場所だった。置いてある家具や調度品はどれもシックで見るからに材質がよさそうな作りだった。
執務机の椅子に足を組んでどっかりとユリウスが座っている。真正面の三人掛けソファーにエドガーが座りその隣に僕。僕の隣にクロードが座っている。傍にある一人掛けの椅子にラドゥが座りその後ろに側近が一人立っていた。コーネリアスは紅茶をテーブルに配っていた。執事もするのか?
「私はコーネリアスと申します。ユリウス様付の宰相です」
ではフォキシーが言っていた次男のラドゥに毒を盛ったと噂されてるやつなのか?
「俺がユリウスだ。弟が世話になってるらしいな。すまない」
金髪の美丈夫が第一皇太子のユリウスで間違いないんだな。でもなんだ? 案外良いお兄ちゃんなのかもしれないじゃんか。武闘派と聞いたけどエドガーと一緒で筋肉バカっぽいのかな? 清廉潔白っていうのも見た限りそんな印象はないし……そのイメージはコーネリアスのせいかもしれないなあ。
「はじめまして。私はラドゥ・ヴラド・ポーツラフ。エドが迷惑をかけてるんじゃない? 」
「いいえ。エドガーにはいつもお世話になっています。はじめまして。内泉あきとです。隣にいるのはクロードといいます。僕たちはこれからエドガーの旅の仲間になるつもりなんです」
「おや? いい子じゃないか。隣の男前さんも素敵だね。……それにしても【Witch is me】とはな……。」
「それっ。ラドゥ兄貴も気づいた? すごいだろ? 名は体を表すってこういう事だよな」
エドガー前も同じこと言っていたな。僕の姓の内泉がWitch is meに聞こえるって。だから自己紹介するときに『僕は魔女のアキトだよ』って言ってるのと同じだよって。
「そうでしたか。貴方がアキトさん……。エドガー殿フォキシーから連絡が届いておりましたが、貴方の口からこれまでの経緯をいただけますか? 」
コーネリアスは紅茶を配り終わるとそのままユリウスの背後に立つ。
エドガーおずおずと話し出した。
「……まず。その……長らく兄貴達に連絡もせずに済まなかったと思ってるよ」
「思ってはいたのか? 」
「そりゃあ……でも何の成果もなくってさ。報告なんぞできなかったんだ」
「生きてるかどうかだけでもできたはずだろうが? 」
「ユリウス様。兄弟げんかはほどほどにしていただけないかと私は言ったはずです。まずはエドガー様の話を聞いてみましょうか? 」
コーネリアスの口調が冷たい。ユリウスの顔色が青くなった気がした。だがこれでさっき何故険悪なムードだったのかが分かった。そりゃあ何年も連絡のない弟がいきなり帰ってきたら兄としては怒るだろうなあ。
「俺さ軽い考えで親父の呪いを解くには竜の秘宝あればいいんじゃないかと思ってここを飛び出したんだけど」
なんとエドガーは家出に近い形でこの王宮をでたらしい。そりゃ心配するよ。おそらく何でも屋のツッツファーレが足取りを伝えたりしてたんだろう。
「もっと気楽に考えてたんだ。腕を上げるために冒険者として魔物退治とかしてたからさ。いくつかダンジョンまわったら竜の秘宝もすぐに手に入るって思い込んでた。でも実際にはそんなに甘いもんじゃなかった。謎解きが必要だったんだ。それも封印を解くには3つの品が必要ってのであきらめかけた時にツッツファーレから情報もらってたさ。異世界に飛んだんだ。」
「こちらから異世界には一つの時代に一人しか飛べないのもご存じでしたか? そのために貴方の探索はできなかった」
コーネリアスが静かに話す。だがその話し方に怒気が含まれていて怖い。
「わ……悪かったよ。でもそこでアキトを見つけることが出来たんだ! 彼は魔女の末裔なんだ。だからこれで一歩先に進むことが出来る! 」
エドガーが顔をあげてユリウスに目を合わせた。
「俺、親父……父上が呪われて兄貴たちが後継者って事で苦しんでるのを見て何かしたかったんだ! でも俺って兄貴たちと違って何の取柄もないし、出来る事って言ったらこの身体と腕で動き回ることぐらいしか……だから迷惑かけて悪かった。俺ずっと何でもできる兄貴が羨ましかったんだ。出来の悪い弟でごめんよ」
「……何を言う。俺はお前のその行動力と自由さが羨ましいと思ってるのに」
「エド、私たちのせいでそんな風に思わせていたなんて申し訳ない……」
「……今まで心配かけてごめん」
うわ~。なんだよ。良い兄弟じゃん! お互いの事気にかけてたんじゃん! もう僕こういうドラマっぽいのに弱いんだよなあ。なんか感動して泣けてきちゃった。
「何を泣いてらっしゃるんですか? 」
コーネリアスが突然泣き出した僕に声をかけてきた。
「すみません。アキトはきっと兄弟仲がいいのに感動したのです。彼は一人っ子なので。ご両親も早くに亡くされて彼の身内はもういらっしゃらないのです」
「うん。クロードありがとう。でも僕には君がいてくれるから大丈夫だよ」
「アキトは濁りがないのだな……そんなのでよく生きてこれたな」
「ユリウス! その言い方は失礼です。その……アキトさんは純粋なかたなのですね」
「ふふふ。コーネリアス。私はアキトが気に入りました」
「だめだぞ! 兄貴達、アキトは俺のだ」
「いや、エドガー僕は僕自身のものだよ? 」
「あははははっ! 俺も気にいったぞ! 」
ユリウスが爆笑しだした。この人が後継者争いのために悪いことをする人には思えない。やはり何か裏がありそうだな。
「どうやらお二人の悪い癖が出だしたようですね。ユリウス様もラドゥ様もまったく。可愛い子を見るとすぐこれなんだから……。話を戻しましょうか。さきほど竜の秘宝をみつけるために勇者と魔女と賢者の封印を解く品と言いましたね? 」
コーネリアスが腕組みをしながらエドガーに問いかける。
「ああそうだ。うちが勇者の子孫でその資格を持ってるのは知ってるだろ?それに魔女のアキト。あと賢者を見つければ謎解きができるんじゃないか? 」
「魔女の卵は生まれにくいと聞きますよ。すでに絶命種族に近いはずですがアキトさん貴方は本当に魔女なのですか? 」
コーネリアスは疑ってる素振りを見せてきた。アキトは急に話を振られて戸惑う。
「え? そうなの? 魔女って生まれにくいものなの? 」
僕はクロードを振り返る。クロードは眉間にしわを寄せていたが僕の問いかけに答えてくれた。
「……確かにそう言われてます。そのためアキトを育てた魔女はこの世界から彼を遠ざけました。卵だった彼を異世界に飛ばしたのです。……正確には魔女の卵は産まれるが この世界では孵化しにくいのです」
「ええ? 僕って卵から生まれたの? じゃあ僕はこっちの世界で生まれたの? 」
まただ。僕の知らないことが多すぎる。なんだこの感覚。僕自身の事なのに。
「君は自分の事をよくわかってないみたいだね? 」
コーネリアスがあきれた口調で聞く。だって本当の事だ。僕は魔女がどういうものかもわからない。
「アキトは箱入りなのです。彼を育てたブラッデイ・マリーは最後まで彼を大事に育てすぎたので」
「ブラッディ・マリーですか?! あの強大な魔力をもってたという」
祖母ちゃんって有名人だったんだ? 知らなかった。じゃあ僕の身体に流れ込んできている魔力って祖母ちゃんの魔力? 日に日に大きくなってくるんだけど僕の魔力も強くなるのか? 僕の身体は持つんだろうか?
「面白い! 箱入りの魔女なんて聞いたことがないぞ! 」
「兄貴っ!! アキトはだめだからな! 」
「もうっユリウス様。エドガー殿をからかうのはいい加減になさいませ!! 」
「あれは保育ステーションだ」
まるで元の世界で流行っていたモンスター育成ゲームの中に出てきた施設みたいだ。卵の管理や状態をみたりする施設で人工孵化装置などが配備されてるという。しかもステーションの周りは警備が凄かった。
「わあ。ここは厳重な警備なんだね」
「大事な子供たちですからね」
クロードが優しく微笑んだ。希少価値の種族の卵は狙われたりするらしい。
そうか。この世界ではどの種族も卵から生まれるんだった。人間も卵で産まれる。不思議だ。
「卵ってどのくらいで孵化するの? 」
「種族によりますね。獣人族は3~4ヶ月。人間族は5~12ヶ月。魔族は魔力量によります。竜族は数年から数十年。100年近いこともあります。」
「へ? 100年って親は子供の成長をみれないの? 」
「寿命のことですか? 竜族は長命なので500年~1000年近く生きますよ。ちなみに獣人族は60~80年。人間族は80~120年。魔族は300~500年ぐらいでしようか?」
つまり、人口比率が多い獣人は短期間で卵が孵化しやすいが短命。逆に長命な竜は卵が孵りにくいのか。
でもそれって……。
「クロードは獣人だよね? 僕より早くいなくなるの? そんなの嫌だよ」
「アキト。……私は今は獣人の姿ですが本当は……」
「アキト、そんなにクロードが心配なのか? 俺とこいつとどちらが好きなんだ? 」
「え? エドガーどうしたの? 急に」
「俺がお前を王宮に連れて行く本当の意味をお前はわかってるのか? 」
エドガーが怒っている? 何故だ? 旅の仲間のお披露目じゃないのか? 襲撃されたから精神的に参ってるのかな? なにか気の利いた言葉でも言えればいいんだけど。どう答えようかと考えあぐねているうちに王宮の門についてしまった。気まずい。どうしよう。
「え・・エドガーさまっ! 」
馬車の外からフォキシーの動揺した声が聞こえる。
「なんだ? フォキシ―……っ! 」
エドガーが馬車の扉を開けた途端に逞しい腕に掴まれて馬車の外へ引きずり出された。
慌てて僕とクロードが馬車から降りると体格の良い美丈夫がエドガーを羽交い絞めにしている。
背が高い。2メートルはあるだろうか? その上筋肉質で服の上からでも体形の良さがうかがえる。肩からなびくマントに黒地に金の細かい刺繍入りのフロックコート。目を引く黄金の長髪に褐色の肌。スカイブルーの瞳。そしてエドガーとよく似た横顔。王族に違いない!
「このっ! 馬鹿者めが!! 父上や私がどれだけ心配したかと思っておるっ! 」
「ぐぉおっ! いでででっ!!! 」
呆気に取られてる僕とクロードに気づいたのか美丈夫がこちらを見た。
「……黒髪に黒い瞳っ?! なんと……美しい」
彼の視線は僕に向けられていた。突然エドガーをポイっと放り出すと僕に手を伸ばしてきた。
そうだった。この世界で黒髪黒目の人間族は珍しいんだったっけ。
クロードが身構える。僕を庇うように前に出た。
「っ! 兄貴っ!アキトに手を出すな!! 」
兄貴というとエドガーのお兄さん? この体形からすると長男のユリウスさまか?
エドガーは腰の剣に手をかけたまま睨みつけていた。
「そこまでです!!! 」
パンッ! と手を叩く音が聞こえたかと思うと几帳面そうな男が立っていた。銀髪で切れ長な瞳。白のフロックコートにマントをひるがえして足早にこちらに近づいてくる。三角耳にふさふさ尻尾。銀狼か?
「ユリウス様! 王宮の入り口で何をされてるのですか?! 兄弟げんかもほどほどになさい! 見れば客人もいらっしゃる。まずは中にお入りくださいませ! 」
「……コーネリアス。……俺は普段はこんなことはしない」
「わかっておりますよ。久しぶりに弟君に会えて嬉しかったのでしょう? さあさ、とりあえず中に入りましょう。君たちも怖がらせて申し訳ありませんでしたね」
丁寧にお辞儀をすると僕たちを王宮内部へと通してくれた。フォキシーはいつの間にか消えていた。
「さあ、こちらへどうぞ」
コーネリアスと呼ばれた男が部屋の前の執事に声をかけた。
「エド! おかえり!! 」
執事が扉を開けると共に美しい男性がアキトに抱きついてきた。
「兄貴、俺はこっちだ! 」
「あれ? えっと……わあ、綺麗な子だねぇ。艶のある黒髪がさらさらしてるよ」
ニコニコと美形が抱きつきながら僕の髪を撫でてくる。ええっと誰?
「だからっ! 俺はこっちだってんだ! 兄貴っアキトから離れろ! 」
2人目の兄貴? っていうならラドゥさんなのかな? めっちゃ美人。肌は透けるように白く背が高い。胸板が思ったよりも厚くて程よい筋肉がついててる。いや、これは抱きつかれたからわかるのであって変なこと考えてるんじゃないよ。
絹のような長い金髪の髪の毛が揺れている。瞳はダークブルーだ。目が大きくって優しい顔立ち。フリルのブラウスに黒のタイトなパンツ。ラフな格好なのに王子様オ-ラが凄いよ。
ぺりって感じでエドガーが僕からラドゥさんを引き離した。
「ははは。ごめんごめん。久しぶりに弟に会えると思うと嬉しくって抱きついちゃったよ」
「だから、俺に抱きつけよ! なんでアキトなんだ? 」
「ん~~~!! 我が弟よ!! よく戻った!! 」
「ふぐっ! 」
ラドゥはそのままエドガーをぎゅうっと抱きしめて頬ずりをしている。
「わ……わかった。わかったから。恥ずかしいよ」
「そうかそうか。また大きくなったな」
この兄弟達の仲の良さは羨ましいかぎりだ。特にエドガーお前愛されてるね。こんなので後継者争いしてるってほんとなのかな?? 嘘であってほしい。
通されたのは執務室のような場所だった。置いてある家具や調度品はどれもシックで見るからに材質がよさそうな作りだった。
執務机の椅子に足を組んでどっかりとユリウスが座っている。真正面の三人掛けソファーにエドガーが座りその隣に僕。僕の隣にクロードが座っている。傍にある一人掛けの椅子にラドゥが座りその後ろに側近が一人立っていた。コーネリアスは紅茶をテーブルに配っていた。執事もするのか?
「私はコーネリアスと申します。ユリウス様付の宰相です」
ではフォキシーが言っていた次男のラドゥに毒を盛ったと噂されてるやつなのか?
「俺がユリウスだ。弟が世話になってるらしいな。すまない」
金髪の美丈夫が第一皇太子のユリウスで間違いないんだな。でもなんだ? 案外良いお兄ちゃんなのかもしれないじゃんか。武闘派と聞いたけどエドガーと一緒で筋肉バカっぽいのかな? 清廉潔白っていうのも見た限りそんな印象はないし……そのイメージはコーネリアスのせいかもしれないなあ。
「はじめまして。私はラドゥ・ヴラド・ポーツラフ。エドが迷惑をかけてるんじゃない? 」
「いいえ。エドガーにはいつもお世話になっています。はじめまして。内泉あきとです。隣にいるのはクロードといいます。僕たちはこれからエドガーの旅の仲間になるつもりなんです」
「おや? いい子じゃないか。隣の男前さんも素敵だね。……それにしても【Witch is me】とはな……。」
「それっ。ラドゥ兄貴も気づいた? すごいだろ? 名は体を表すってこういう事だよな」
エドガー前も同じこと言っていたな。僕の姓の内泉がWitch is meに聞こえるって。だから自己紹介するときに『僕は魔女のアキトだよ』って言ってるのと同じだよって。
「そうでしたか。貴方がアキトさん……。エドガー殿フォキシーから連絡が届いておりましたが、貴方の口からこれまでの経緯をいただけますか? 」
コーネリアスは紅茶を配り終わるとそのままユリウスの背後に立つ。
エドガーおずおずと話し出した。
「……まず。その……長らく兄貴達に連絡もせずに済まなかったと思ってるよ」
「思ってはいたのか? 」
「そりゃあ……でも何の成果もなくってさ。報告なんぞできなかったんだ」
「生きてるかどうかだけでもできたはずだろうが? 」
「ユリウス様。兄弟げんかはほどほどにしていただけないかと私は言ったはずです。まずはエドガー様の話を聞いてみましょうか? 」
コーネリアスの口調が冷たい。ユリウスの顔色が青くなった気がした。だがこれでさっき何故険悪なムードだったのかが分かった。そりゃあ何年も連絡のない弟がいきなり帰ってきたら兄としては怒るだろうなあ。
「俺さ軽い考えで親父の呪いを解くには竜の秘宝あればいいんじゃないかと思ってここを飛び出したんだけど」
なんとエドガーは家出に近い形でこの王宮をでたらしい。そりゃ心配するよ。おそらく何でも屋のツッツファーレが足取りを伝えたりしてたんだろう。
「もっと気楽に考えてたんだ。腕を上げるために冒険者として魔物退治とかしてたからさ。いくつかダンジョンまわったら竜の秘宝もすぐに手に入るって思い込んでた。でも実際にはそんなに甘いもんじゃなかった。謎解きが必要だったんだ。それも封印を解くには3つの品が必要ってのであきらめかけた時にツッツファーレから情報もらってたさ。異世界に飛んだんだ。」
「こちらから異世界には一つの時代に一人しか飛べないのもご存じでしたか? そのために貴方の探索はできなかった」
コーネリアスが静かに話す。だがその話し方に怒気が含まれていて怖い。
「わ……悪かったよ。でもそこでアキトを見つけることが出来たんだ! 彼は魔女の末裔なんだ。だからこれで一歩先に進むことが出来る! 」
エドガーが顔をあげてユリウスに目を合わせた。
「俺、親父……父上が呪われて兄貴たちが後継者って事で苦しんでるのを見て何かしたかったんだ! でも俺って兄貴たちと違って何の取柄もないし、出来る事って言ったらこの身体と腕で動き回ることぐらいしか……だから迷惑かけて悪かった。俺ずっと何でもできる兄貴が羨ましかったんだ。出来の悪い弟でごめんよ」
「……何を言う。俺はお前のその行動力と自由さが羨ましいと思ってるのに」
「エド、私たちのせいでそんな風に思わせていたなんて申し訳ない……」
「……今まで心配かけてごめん」
うわ~。なんだよ。良い兄弟じゃん! お互いの事気にかけてたんじゃん! もう僕こういうドラマっぽいのに弱いんだよなあ。なんか感動して泣けてきちゃった。
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コーネリアスが突然泣き出した僕に声をかけてきた。
「すみません。アキトはきっと兄弟仲がいいのに感動したのです。彼は一人っ子なので。ご両親も早くに亡くされて彼の身内はもういらっしゃらないのです」
「うん。クロードありがとう。でも僕には君がいてくれるから大丈夫だよ」
「アキトは濁りがないのだな……そんなのでよく生きてこれたな」
「ユリウス! その言い方は失礼です。その……アキトさんは純粋なかたなのですね」
「ふふふ。コーネリアス。私はアキトが気に入りました」
「だめだぞ! 兄貴達、アキトは俺のだ」
「いや、エドガー僕は僕自身のものだよ? 」
「あははははっ! 俺も気にいったぞ! 」
ユリウスが爆笑しだした。この人が後継者争いのために悪いことをする人には思えない。やはり何か裏がありそうだな。
「どうやらお二人の悪い癖が出だしたようですね。ユリウス様もラドゥ様もまったく。可愛い子を見るとすぐこれなんだから……。話を戻しましょうか。さきほど竜の秘宝をみつけるために勇者と魔女と賢者の封印を解く品と言いましたね? 」
コーネリアスが腕組みをしながらエドガーに問いかける。
「ああそうだ。うちが勇者の子孫でその資格を持ってるのは知ってるだろ?それに魔女のアキト。あと賢者を見つければ謎解きができるんじゃないか? 」
「魔女の卵は生まれにくいと聞きますよ。すでに絶命種族に近いはずですがアキトさん貴方は本当に魔女なのですか? 」
コーネリアスは疑ってる素振りを見せてきた。アキトは急に話を振られて戸惑う。
「え? そうなの? 魔女って生まれにくいものなの? 」
僕はクロードを振り返る。クロードは眉間にしわを寄せていたが僕の問いかけに答えてくれた。
「……確かにそう言われてます。そのためアキトを育てた魔女はこの世界から彼を遠ざけました。卵だった彼を異世界に飛ばしたのです。……正確には魔女の卵は産まれるが この世界では孵化しにくいのです」
「ええ? 僕って卵から生まれたの? じゃあ僕はこっちの世界で生まれたの? 」
まただ。僕の知らないことが多すぎる。なんだこの感覚。僕自身の事なのに。
「君は自分の事をよくわかってないみたいだね? 」
コーネリアスがあきれた口調で聞く。だって本当の事だ。僕は魔女がどういうものかもわからない。
「アキトは箱入りなのです。彼を育てたブラッデイ・マリーは最後まで彼を大事に育てすぎたので」
「ブラッディ・マリーですか?! あの強大な魔力をもってたという」
祖母ちゃんって有名人だったんだ? 知らなかった。じゃあ僕の身体に流れ込んできている魔力って祖母ちゃんの魔力? 日に日に大きくなってくるんだけど僕の魔力も強くなるのか? 僕の身体は持つんだろうか?
「面白い! 箱入りの魔女なんて聞いたことがないぞ! 」
「兄貴っ!! アキトはだめだからな! 」
「もうっユリウス様。エドガー殿をからかうのはいい加減になさいませ!! 」
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「「お楽しみに!」」
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