異世界行ったらボクは魔女!

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
上 下
15 / 84
1章 僕は魔女?

12.襲撃

しおりを挟む
 朝早くからフォキシーがやってきた。しかしエドガーがいない。どうやら昨日買った装備の一部を返品しにいったらしい。王都に行くなら最上級の装備を王に用意してもらうつもりにしたらしい。出発を少し遅らせることにした。
 宿屋の前には見るからに高級そうな馬車が止まっている。王家御用達って感じだ。昨日は気づかなかったがよく見ると引いてるのは馬じゃないようだ。目が三つあった。左右と正面についている。これで240度視界が見渡せるらしい。ムーという生き物だった。
 先にクロードと二人で馬車に乗り込む。フォキシーは御者だ。手綱さばきが上手いらしい。
「エドガーに悪い事したな。王族なのに昨日から使いっぱしりにしすぎてる」
「ははは。でもそれも王都に着くまでですよ。それより昨日はよく眠れましたか? 」
「あんまり……いつもはクロがいてくれたから。 」
「……可愛い事いわないでください。我慢できなくなります」
 何を我慢するんだ? と聞くよりも早く口をふさがれた。
「ん……っ……」
 濃厚な口づけに翻弄される。魔力が循環してくる。この力が体中を駆け巡るのが快感なんだ。癖になりそうだ。もっとしてほしいと体を摺り寄せる。だがクロードに身体を離されてしまった。
「これ以上は……だめですよ」 
「……そうだね」
 もうすぐエドガーが戻る。わかっていても名残惜しい。最後にちゅっと音を立てて口づけた。

~~~~~~~~~

「悪いな待たせちまった。朝めしもついでに買ってきたんだ」
 エドガーからホットドックを渡された。野菜が沢山挟まっていて美味しい。ブドウによく似た果実も買ってきてくれた。どうやら僕が果物が好きだと思ってるようだ。前から妙に気が利くとは思っていたが本当にマメなやつだ。
「どうだ? 美味いか? 」
 ニコニコと白い歯を見せて笑う。お前本当に良い奴だなあ。僕なんかさっきクロードと隠れてキスしてたのに。ものすごい背徳感を感じる。ごめんよエドガー。
「うん。ありがとう。美味しいよ」
 心の中で謝りながら僕は彼にお礼を言った。
「くぅ~。朝から良いもんみれた。お前の笑顔は最高だよ! 」
 まぶしそうに目を細めながら照れるように笑ってくれた。朝のひかりがまぶしかったのかな? 

 町を離れしばらくすると急に馬車が止まった。
「どうした?! 落ち着け!! 」
 フォクシーが何か叫んでいた。手綱が取れないようだ。ムーが暴れているのか? 馬車の周りに何かが近づいてくる気配がする。
「クロ! エドガー! 囲まれてる! 」
「あぁ。俺にもわかる。これは殺気だ! 」
 なんでいきなり? 盗賊か? 馬車が豪華すぎたから金持ちだと思われたのかな?
「アキト出るなよ! 」
「すぐに戻ります! 」
 エドガーとクロードが馬車から飛び出した。ガキィーンッ! キィンッ! 剣がぶつかり合う音が聞こえる。
 ドスドスドス! なにかが馬車に刺さった音がした。弓矢か?!
「ぎゃっ! 」前方で声がした。御者の位置だ。フォクシーがやられたのか?!
 くそ! 僕はこんなにも非力だなんて。僕にできることはなんだ? 音に集中し神経を研ぎ澄ませた。
「エドガー後ろだ! クロード左だ! 右後方から矢が飛んでくる。後方に弓の達人がいる! 」
 馬車の中から叫ぶことしかできなかった。魔力があるのならこの力を使いたい。


 急に静かになった。襲撃犯たちはみんな逃げてしまったようだ。
「アキト無事か?! 」
 バン!と扉があきエドガーが覗きこんできた。
「あぁ。もう表に出てもいい? 」
「いいぜ! お前凄いな! お前のおかげで戦いがスムーズに進んだぜ! 」
 え?どういうことだ? 何か役に立ったんだろうか?
「ええ。アキトが指示をしてくれたので背後のリーダーを先にやっつけれましたからね」
 どうやら弓矢使いがこの襲撃のリーダー的存在だったらしい。
「そうなの? よかった。少しは役に立てたんだね」

「皆さま無事でよかったです……」
 フォキシーが肩をおさえながらこちらへ歩いてきた。
「大変じゃん! さっきの矢に射抜かれたの? 」
「アキト、治癒魔法をかけてやってくれませんか? 」
「え? どうやって……もしかしておまじないのこと? 」
「はい。貴方のおまじないはこの世界の呪文と同じなのです」
 きっと今の僕は前より魔力が上がってるはず。試してみるしかない!
「フォキシーさん痛かったらごめんね」
 フォキシーの肩に手を当て傷が塞がりますように思いを込める。パアっと光ると傷は塞がっていた。
「おお! これはすごいっ! 」
「成功した? 痛くない? 大丈夫? 」
「ええ!! ほら、この通り! 」
 フォキシーが目の前で肩を動かしぶんぶん腕をふってみせた。よかった。これで少しはみんなの役に立てるかもしれない。僕にもできることがあってよかった。

「しかしただの強盗でしょうかねえ? 」
「フォキシーお前なにか知ってるのか? 」
「……昨日、エドガー様を向かいに行くと王宮に連絡を入れたんですよ」
「何それ? 王宮の誰かがエドガーを狙ってるってこと? 」
「さあそれはわかりませんが、あまりにタイミングが良すぎるのでね。ちょっと気になりましてさぁ」
「くそっ! さっきのやつら捕まえればよかった」
「ふむ。とにかくここから先は警戒したほうがいいようですね。王宮に入っても気を許さないようにしましょう。エドガー、特に貴方の周りは警戒したほうがいいのかもしれません」
「たとえ、兄上であってもという事か」
「そのとおりです」


 再度僕たちは馬車に乗り明るいうちに王都に着こうと道を急いだ。
「エドガー。一つ言っておきます」
 クロードが神妙な顔で話しかけてきた。
「なんだ? 」
「アキトを育てた……魔女は彼に闇魔法を教えませんでした」
「へ? それって」
「そうです。アキトは攻撃魔法が使えません。王都についてもアキトを一人にしてはいけません」
 そうなんだ。知らなかった。僕は攻撃魔法が使えないのか。
「それって教えてもらったらできるようになるの? 」
「それはまだわかりません。属性にもよりますし、何よりあなたはまだ覚醒してないので」
「覚醒って何? 」
「申し訳ありません。私も時が来ればわかるとしか聞いておりませんので」
「それって祖母ちゃんから? 」
 また祖母ちゃんか……。いったい、貴方は僕に何をさせたいの? なんで教えてくれなかったのさ。
 異世界移転させたのも祖母ちゃんなんだろ? 答えが欲しいよ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。

にのまえ
BL
 バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。  オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。  獣人?  ウサギ族?   性別がオメガ?  訳のわからない異世界。  いきなり森に落とされ、さまよった。  はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。  この異世界でオレは。  熊クマ食堂のシンギとマヤ。  調合屋のサロンナばあさん。  公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。  運命の番、フォルテに出会えた。  お読みいただきありがとうございます。  タイトル変更いたしまして。  改稿した物語に変更いたしました。

ふしだらな母親の娘は、私なのでしょうか?【第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞】

イチモンジ・ルル
恋愛
奪われ続けた少女に届いた未知の熱が、すべてを変える―― 「ふしだら」と汚名を着せられた母。 その罪を背負わされ、虐げられてきた少女ノンナ。幼い頃から政略結婚に縛られ、美貌も才能も奪われ、父の愛すら失った彼女。だが、ある日奪われた魔法の力を取り戻し、信じられる仲間と共に立ち上がる。 歪められた世界で、隠された真実を暴き、奪われた人生を新たな未来に変えていく。 ――これは、過去の呪縛に立ち向かい、愛と希望を掴み、自らの手で未来を切り開く少女の戦いと成長の物語―― 旧タイトル ふしだらと言われた母親の娘は、実は私ではありません 他サイトにも投稿。 2025/2/28 第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞をいただきました

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

遅咲きの番は孤独な獅子の心を甘く溶かす

葉月めいこ
BL
辺境の片田舎にある育った村を離れ、王都へやって来たリトは、これまで知らなかった獣人という存在に魅せられる。 自分の住む国が獣人の国であることも知らなかったほど世情に疎いリト。 獣人には本能で惹き合う番(つがい)という伴侶がいると知る。 番を深く愛する獣人は人族よりもずっと愛情深く優しい存在だ。 国王陛下の生誕祭か近づいた頃、リトは王族獣人は生まれながらにして番が決まっているのだと初めて知った。 しかし二十年前に当時、王太子であった陛下に番が存在する証し〝番紋(つがいもん)〟が現れたと国中にお触れが出されるものの、いまもまだ名乗り出る者がいない。 陛下の番は獣人否定派の血縁ではないかと想像する国民は多い。 そんな中、友好国の王女との婚姻話が持ち上がっており、獣人の番への愛情深さを知る民は誰しも心を曇らせている。 国や国王の存在を身近に感じ始めていたリトはある日、王宮の騎士に追われているとおぼしき人物と出会う。 黄金色の瞳が美しい青年で、ローブで身を隠し姿形ははっきりとわからないものの、優しい黄金色にすっかり魅了されてしまった。 またいつか会えたらと約束してからそわそわとするほどに。 二度の邂逅をしてリトはますます彼に心惹かれるが、自身が国王陛下の番である事実を知ってしまう。 青年への未練、まったく知らない場所に身を置く不安を抱え、リトは王宮を訊ねることとなった。 自分という存在、国が抱える負の部分、国王陛下の孤独を知り、リトは自分の未来を選び取っていく。 スパダリ獅子獣人×雑草根性な純真青年 僕はもう貴方を独りぼっちにはしない。貴方を世界で一番幸せな王様にしてみせる 本編全30話 番外編4話 個人サイトそのほかにも掲載されています。

処理中です...