4 / 84
1章 僕は魔女?
1.Witch is me
しおりを挟む
今年も台風の到来によって自然災害の被害は増えていた。
各種イベントはことごとく中止となり、僕のバイトの仕事はいくつものキャンセルがかさんでいた。
「あ~、今月は収入厳しいなあ。」
僕の名前は内泉あきと。
大学を卒業したばかりで現在フリーター真っただ中。貯金を切り崩しては生活費に充てる毎日だ。
「ミャ~オ」足元で黒猫がすり寄ってくる。
「おなかが減ったかい?ごめんよクロ。今日は缶詰じゃないんだ」
冷ごはんにかつおぶしを乗せてやると腹が減っていたのかガツガツと皿の上から平らげていく。
「天気になったらしっかり働いて来月は旨いもん食わせてあげるからな。」
耳の後ろから顎の付け根、喉をしっかりと撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らす。
黒猫のクロは祖母ちゃんの忘れ形見だ。
幼いころに両親を交通事故で亡くしてから、僕は祖母に育てられた。
物知りで明るくユーモアにあふれた祖母を僕は大好きだった。
だがその祖母も去年他界したのだ。
「お前は僕の傍にいつまでも居てくれよな」柔らかい毛並みを撫であげると
「ミャ~ア」と返事を返してくれる。
「ふふふ。居るよって言ってくれてるのかな?」なんて自分勝手な解釈をする。
クロの毛並みは艶やかでいつまでも撫でていたくなる。猫って気まぐれだって言うけれどうちのクロは甘えんぼでいつも僕の傍に寄ってきては僕を守ってくれてる気がするんだ。
玄関をノックする音が聞こえ「アキト居るんだろ?」と江戸川がやってきた。
江戸川は大学の同期で卒業後、彼も就職できずに同じフリーターになった。
「コンビニで弁当買ってきたから一緒に食おうって思ってさ」
薄茶色にやわらかなウェーブがかった髪が濡れている。小雨の中買いに走ってくれたんだろうか。
「いつもありがと! ごめんな。この借りはきっと返すよ」
僕の感謝の言葉に少し照れたように目を細める。
「良いって。気をつかうなよ。俺とお前の仲じゃねえか」
「へへへ」とうれしくって顔がほころんでしまう。友達っていいなって素直に喜んじまう。
江戸川は大学のサークル活動で知り合った。僕は植物学専攻で自分で育てたハーブを食べ物に利用したり石鹸にしたりしてイベント販売などを手伝っていたんだ。
明るくって物怖じしない江戸川は売り子に向いていた。彼が声をかけると皆興味をもって集まってきてくれる。率先力があって頭の回転が速くいつも的確な指示をしてくれた。
背も高く体格もいい江戸川は女子の評判も良かった。瞳は濃紺といった感じで祖父が外国人だったから日本人特有の黒色じゃないらしい。彫の深いハンサムな顔立ちで男の僕から見てもかっこいいなと思う。
ガサゴソとビニール袋から弁当を取り出すとクロが寄ってきた。
「うにゃあっ! 」と江戸川に飛びつき膝の上でビニール袋と格闘をし始める。
「あはは! クロは袋が好きだもんなあ」
「うぉっと! クロすまねえが飯が食えねえよ」
クロと江戸川がじゃれあってるのを見ながら弁当を食っていると携帯の着信音がした。
「はい。もしもし?……そうですか。わかりました。」
「どうした? 」
「明日からのハロウィンイベントの設営、キャンセルになったって」
「あちゃ~! それ俺も申し込んでたんだ」
「そっかぁ。残念だけど仕方ないな。まぁ僕はどちらにせよ行けなかったけど」
「どうしてだ? 今月給料少ない分バイトしたいって言ってなかったか? 」
「そうなんだけどさ……僕いつもハロウィン前は体調崩すんだよ。だから祖母ちゃんにもその時期は薬を飲んで家から出ないようにって小さいときから言い聞かされててさ。だからハロウィンってあんまり良い思い出ないんだ」
特に20歳を超えてから余計にひどくなったような気がする。一度病院で診てもらった方がいいのかもしれないのだがアレルギー科か内科かそれとも精神的なものなのかよくわからない。そうこうしてるうちに行くのが億劫になってしまう。何故だか必要以上に検査などはしたくはなかった。
考えあぐねて急に黙りこくった僕を心配したのか江戸川が聞いてきた。
「それって毎年なのか? 」
「うん。季節の変わり目だからかな? 何かのアレルギーかもしれないしね」
「……どんな感じになるんだよ? 」
「ん~。なんだかぼぅっとして熱っぽくなるんだ。すごく眠くなるし……よくわからない夢もよく見るよ」
江戸川が急に真顔になる。
「それって……その……どんな夢なんだ? 」
「え? よく覚えてない……」
「その……夢を見て何かを思い出すとか……こう何か感じるとか……はないのか?」
「何を感じるの? ……え? 感じるって……エッチな話なのか? 」
なんだかわからないが僕はあまりそういった経験が少ない。
江戸川が言わんとしてるところが理解できなくて戸惑ってしまう。
「ミャアァ! 」とクロが僕たちの間に割り込んできた。
僕たちの気まずい空気を変えようとじゃれつきに来てくれたのかもしない。
(クロはいつも勘がいいね。ありがとう。)
耳のつけねの後ろから顎の横から首のあたり、顔周辺を撫でてやる。
クロは気持ちがいいのか大きく伸びをしてゴロンと僕の膝の上で寝っ転がった。
江戸川には足を向けている。その足先がピーンと伸びて江戸川の膝を蹴るようにしていた。
「わかったよ! クロ怒るなよ。俺が悪かった。別にアキトを困らす気はなかったんだ」
「ごめん。僕は江戸川みたいにいろんな経験がなくってよくわからないんだ」
「いや、だからっ! そういうんじゃなくって……」
慌てて江戸川が僕に近づこうとしてクロに阻まれる。
「フーーーッ!! 」
僕の膝でくつろいでたのを邪魔されたと思ったのか江戸川に対して猫パンチの応酬を繰り出した。
「わ! なんだこいつやる気か? よしっ! こい!! 」
クロと江戸川のパンチの応戦が始まった。
あまりのかわいらしさに僕はいつの間にか笑いだしていた。
「俺さ。最初にお前の名前聞いた時びっくりしたんだ」
「なんだ突然? 何? [内泉あきと]のどこがおかしいのさ 」
「お前が内泉って名乗った時俺の耳には【Witch is me】って聞こえたのさ」
「へ? 何? 英語? 」
「あぁ。【Witch is me】てさ」
各種イベントはことごとく中止となり、僕のバイトの仕事はいくつものキャンセルがかさんでいた。
「あ~、今月は収入厳しいなあ。」
僕の名前は内泉あきと。
大学を卒業したばかりで現在フリーター真っただ中。貯金を切り崩しては生活費に充てる毎日だ。
「ミャ~オ」足元で黒猫がすり寄ってくる。
「おなかが減ったかい?ごめんよクロ。今日は缶詰じゃないんだ」
冷ごはんにかつおぶしを乗せてやると腹が減っていたのかガツガツと皿の上から平らげていく。
「天気になったらしっかり働いて来月は旨いもん食わせてあげるからな。」
耳の後ろから顎の付け根、喉をしっかりと撫でてやるとゴロゴロと喉を鳴らす。
黒猫のクロは祖母ちゃんの忘れ形見だ。
幼いころに両親を交通事故で亡くしてから、僕は祖母に育てられた。
物知りで明るくユーモアにあふれた祖母を僕は大好きだった。
だがその祖母も去年他界したのだ。
「お前は僕の傍にいつまでも居てくれよな」柔らかい毛並みを撫であげると
「ミャ~ア」と返事を返してくれる。
「ふふふ。居るよって言ってくれてるのかな?」なんて自分勝手な解釈をする。
クロの毛並みは艶やかでいつまでも撫でていたくなる。猫って気まぐれだって言うけれどうちのクロは甘えんぼでいつも僕の傍に寄ってきては僕を守ってくれてる気がするんだ。
玄関をノックする音が聞こえ「アキト居るんだろ?」と江戸川がやってきた。
江戸川は大学の同期で卒業後、彼も就職できずに同じフリーターになった。
「コンビニで弁当買ってきたから一緒に食おうって思ってさ」
薄茶色にやわらかなウェーブがかった髪が濡れている。小雨の中買いに走ってくれたんだろうか。
「いつもありがと! ごめんな。この借りはきっと返すよ」
僕の感謝の言葉に少し照れたように目を細める。
「良いって。気をつかうなよ。俺とお前の仲じゃねえか」
「へへへ」とうれしくって顔がほころんでしまう。友達っていいなって素直に喜んじまう。
江戸川は大学のサークル活動で知り合った。僕は植物学専攻で自分で育てたハーブを食べ物に利用したり石鹸にしたりしてイベント販売などを手伝っていたんだ。
明るくって物怖じしない江戸川は売り子に向いていた。彼が声をかけると皆興味をもって集まってきてくれる。率先力があって頭の回転が速くいつも的確な指示をしてくれた。
背も高く体格もいい江戸川は女子の評判も良かった。瞳は濃紺といった感じで祖父が外国人だったから日本人特有の黒色じゃないらしい。彫の深いハンサムな顔立ちで男の僕から見てもかっこいいなと思う。
ガサゴソとビニール袋から弁当を取り出すとクロが寄ってきた。
「うにゃあっ! 」と江戸川に飛びつき膝の上でビニール袋と格闘をし始める。
「あはは! クロは袋が好きだもんなあ」
「うぉっと! クロすまねえが飯が食えねえよ」
クロと江戸川がじゃれあってるのを見ながら弁当を食っていると携帯の着信音がした。
「はい。もしもし?……そうですか。わかりました。」
「どうした? 」
「明日からのハロウィンイベントの設営、キャンセルになったって」
「あちゃ~! それ俺も申し込んでたんだ」
「そっかぁ。残念だけど仕方ないな。まぁ僕はどちらにせよ行けなかったけど」
「どうしてだ? 今月給料少ない分バイトしたいって言ってなかったか? 」
「そうなんだけどさ……僕いつもハロウィン前は体調崩すんだよ。だから祖母ちゃんにもその時期は薬を飲んで家から出ないようにって小さいときから言い聞かされててさ。だからハロウィンってあんまり良い思い出ないんだ」
特に20歳を超えてから余計にひどくなったような気がする。一度病院で診てもらった方がいいのかもしれないのだがアレルギー科か内科かそれとも精神的なものなのかよくわからない。そうこうしてるうちに行くのが億劫になってしまう。何故だか必要以上に検査などはしたくはなかった。
考えあぐねて急に黙りこくった僕を心配したのか江戸川が聞いてきた。
「それって毎年なのか? 」
「うん。季節の変わり目だからかな? 何かのアレルギーかもしれないしね」
「……どんな感じになるんだよ? 」
「ん~。なんだかぼぅっとして熱っぽくなるんだ。すごく眠くなるし……よくわからない夢もよく見るよ」
江戸川が急に真顔になる。
「それって……その……どんな夢なんだ? 」
「え? よく覚えてない……」
「その……夢を見て何かを思い出すとか……こう何か感じるとか……はないのか?」
「何を感じるの? ……え? 感じるって……エッチな話なのか? 」
なんだかわからないが僕はあまりそういった経験が少ない。
江戸川が言わんとしてるところが理解できなくて戸惑ってしまう。
「ミャアァ! 」とクロが僕たちの間に割り込んできた。
僕たちの気まずい空気を変えようとじゃれつきに来てくれたのかもしない。
(クロはいつも勘がいいね。ありがとう。)
耳のつけねの後ろから顎の横から首のあたり、顔周辺を撫でてやる。
クロは気持ちがいいのか大きく伸びをしてゴロンと僕の膝の上で寝っ転がった。
江戸川には足を向けている。その足先がピーンと伸びて江戸川の膝を蹴るようにしていた。
「わかったよ! クロ怒るなよ。俺が悪かった。別にアキトを困らす気はなかったんだ」
「ごめん。僕は江戸川みたいにいろんな経験がなくってよくわからないんだ」
「いや、だからっ! そういうんじゃなくって……」
慌てて江戸川が僕に近づこうとしてクロに阻まれる。
「フーーーッ!! 」
僕の膝でくつろいでたのを邪魔されたと思ったのか江戸川に対して猫パンチの応酬を繰り出した。
「わ! なんだこいつやる気か? よしっ! こい!! 」
クロと江戸川のパンチの応戦が始まった。
あまりのかわいらしさに僕はいつの間にか笑いだしていた。
「俺さ。最初にお前の名前聞いた時びっくりしたんだ」
「なんだ突然? 何? [内泉あきと]のどこがおかしいのさ 」
「お前が内泉って名乗った時俺の耳には【Witch is me】って聞こえたのさ」
「へ? 何? 英語? 」
「あぁ。【Witch is me】てさ」
10
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
ふしだらな母親の娘は、私なのでしょうか?【第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞】
イチモンジ・ルル
恋愛
奪われ続けた少女に届いた未知の熱が、すべてを変える――
「ふしだら」と汚名を着せられた母。
その罪を背負わされ、虐げられてきた少女ノンナ。幼い頃から政略結婚に縛られ、美貌も才能も奪われ、父の愛すら失った彼女。だが、ある日奪われた魔法の力を取り戻し、信じられる仲間と共に立ち上がる。
歪められた世界で、隠された真実を暴き、奪われた人生を新たな未来に変えていく。
――これは、過去の呪縛に立ち向かい、愛と希望を掴み、自らの手で未来を切り開く少女の戦いと成長の物語――
旧タイトル ふしだらと言われた母親の娘は、実は私ではありません
他サイトにも投稿。
2025/2/28 第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞をいただきました
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
遅咲きの番は孤独な獅子の心を甘く溶かす
葉月めいこ
BL
辺境の片田舎にある育った村を離れ、王都へやって来たリトは、これまで知らなかった獣人という存在に魅せられる。
自分の住む国が獣人の国であることも知らなかったほど世情に疎いリト。
獣人には本能で惹き合う番(つがい)という伴侶がいると知る。
番を深く愛する獣人は人族よりもずっと愛情深く優しい存在だ。
国王陛下の生誕祭か近づいた頃、リトは王族獣人は生まれながらにして番が決まっているのだと初めて知った。
しかし二十年前に当時、王太子であった陛下に番が存在する証し〝番紋(つがいもん)〟が現れたと国中にお触れが出されるものの、いまもまだ名乗り出る者がいない。
陛下の番は獣人否定派の血縁ではないかと想像する国民は多い。
そんな中、友好国の王女との婚姻話が持ち上がっており、獣人の番への愛情深さを知る民は誰しも心を曇らせている。
国や国王の存在を身近に感じ始めていたリトはある日、王宮の騎士に追われているとおぼしき人物と出会う。
黄金色の瞳が美しい青年で、ローブで身を隠し姿形ははっきりとわからないものの、優しい黄金色にすっかり魅了されてしまった。
またいつか会えたらと約束してからそわそわとするほどに。
二度の邂逅をしてリトはますます彼に心惹かれるが、自身が国王陛下の番である事実を知ってしまう。
青年への未練、まったく知らない場所に身を置く不安を抱え、リトは王宮を訊ねることとなった。
自分という存在、国が抱える負の部分、国王陛下の孤独を知り、リトは自分の未来を選び取っていく。
スパダリ獅子獣人×雑草根性な純真青年
僕はもう貴方を独りぼっちにはしない。貴方を世界で一番幸せな王様にしてみせる
本編全30話
番外編4話
個人サイトそのほかにも掲載されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる