26 / 35
第三章 家族とは
5 パパラッチ
しおりを挟む
僕は危機感が薄いのだろうか。だってせっかく受かった大学だから教えてもらえることは存分に学んでみたい。特に今は目標があって、在学中に朝比奈の事業の補佐をやりとげて卒業後は仕事としてお手伝いがしたい。ハジメと結婚しても何か自分が出来る事を見つけてみたかった。ハジメには好きなことをしてもらって僕が稼げるようになれたらいいな。
なんてのんきに考えながら大学の構内を歩いていた。
パシャパシャとカメラのシャッター音がして反射的に振り向く。
「ちょっとすみません。お話よろしいでしょうか?」
突然見ず知らずの中年の男に声をかけられる。よれよれのシャツにくたびれたジーンズ。首からはカメラをさげていた。だれなんだ? こんな人大学に居たっけ?
「あの。どちらさまでしょうか?」
「立花って言います。こういうものでして……」
男が出してきた名刺にはあるゴシップ雑誌の名前が載っていた。
まさかパパラッチなのか?
「貴方と高塚亜紀良さんの関係をお聞きしたいのですが」
うそっ。なんでここが分かったの? 昨日の今日なのに?
「そんなに驚いた顔をされるところを見ると、何か聞かれると悪い事でもされているのですかな? くく。なにやら高津家の株を貴方に譲渡するらしいですね。いやぁ、上手く取り入りましたなぁ」
「はあ? 何を言ってるんですか?」
かぶって株式の株だよね? 何を言っているのかさっぱりわからない。
「またまたあ。とぼけちゃって」
「誰かとお間違えになられてるんじゃないですか? それにどうして僕のところに来られたんですか?」
「昨日のあのイベント会場に僕もいたんですよ。いやあ。とってもかわいらしかったですねえ」
「それはどうも……ぁっ」
しまった。これでは昨日のは僕だと認めてしまったことになる。ニヤリと男が笑う。
「だとしてもどうしてここがわかったのですか?」
「まあね。以前ここの大学の教授が起こした事件を私が担当してましてね。何でも教え子に手を出して解雇され、教授の地位も剥奪されたらしくてねえ」
きっとそれは長谷川の事を言っているのだろう。それをゴシップネタにしたということなのか? あの時、SNSが凄い早さで拡散されたのはこういう事がきっかけだったのか? 僕自身はハジメのところで匿ってもらっていたからそういう記事すら目にしたことはないのだが。
「顔色が青いですよ。 ……その時の被害者リストにあんた載ってたよねえ? ひょっとしてさぁ、あれもあんたの自作自演だったりするの? あの時はさあ。上手く金目のものがもらえなくてワザと教授に不利な発言をして陥れたんじゃないのぉ? 」
男が急に口調を変え、脅すような口ぶりになる。下卑た笑いをする男に嫌悪感がわいた。
「そんなことするはずないじゃないですか!」
「じゃあさ。高塚さんとどこまで進んだ関係なのか詳しく聞かせてもらえるかなあ。一緒に居たんだから知らないでは済まさないよ」
男がにじり寄り僕の肩に手をおいた。
パシンと男の手を誰かがはたいてくれた。でも振り向かずともわかる。ハジメだ。ハジメが助けに来てくれたんだ。
「おい! お前。関係者以外、校内は立ち入り禁止やぞ」
「チッ。いいとこだったのに。オレは諦めませんからね。またね~」
ハジメが連れてきた警備員に男は引きずられるようにして連れて行かれた。
「すぐる大丈夫か?」
「うん。ハジメが来てくれて助かったよ」
「朝比奈が気づいてくれたんや。ただあいつが出て行ったら余計にややこしくなりそうやったから俺を呼んだというわけや」
「そっか。でも大学まで押しかけてくるなんて。びっくりしたよ」
「ああいう奴はそれが仕事やからな。人の秘密を暴いて面白おかしく書きまくる。奴らにはそれが嘘でも本当でもかまわないんや。スクープ記事が駆ければそれでいいんや。儲けになるからな。どうやらすぐるに狙いを定めてきたみたいやな」
「ええ? そうなの? なんで僕?」
「写真が拡散されたせいだろうな。今後はなるべく一人では動かんようにしてくれ。俺か朝比奈と一緒におるようにしてくれ。頼むわ」
「うん。わかった」
ハジメは僕に過保護だ。でも嬉しい。心配してくれるのがわかるから。
校舎に入ると柱の影から朝比奈が声をかけてきた。
「ごめん、すぐる。すぐに助けに行けなくてわるかった」
「ううん。いいよ、ハジメを呼んできてくれてありがとう。ところでさっきの男なんだけど……気になる事を言っていたんだ」
「気になる事?」
「うん。高塚さんが株を譲るとかなんとか……」
「そうか。そんなことまで調べてるんやな。確かに、亜紀良さんはすぐにでも海外で挙式をあげるって息込んで、それに伴い会社の株も俺に譲ると言い出してたな。そうなると大ごとになってくると思ってすぐに断ってん。でもそれは内輪だけの話やったはずや。どこからその情報を入手してきたんやろう」
「あいつ。ほんまにパパラッチなんかな?」
「それはわからないけど。僕の情報はある程度手元にあるみたい」
「なんか他にも言われたんか?」
「あ~。うん。まあ……」
「なんや隠さず言うてくれ」
「僕が長谷川教授の被害者だって知ってるみたい。自分が担当した事件とか言うてた」
「いや、そんなに簡単に被害者のリストなんて手に入らないやろ? カマをかけられたのかもな? それらしき言葉を言うて相手の反応をみる。すぐるは素直やから顔に出てたんかもしらんなあ」
「青い顔してるって言われた」
「あ~そうか」
「あ~仕方ないな」
「しばらくは付きまとわれるかもな」
「うわあ。どうしよう。変装しようかな?」
「どうやって?」
「めがねとか。そうだ、付け髭とかどうかな?」
「鼻の下にちょび髭でもつけるんか?」
「ははは。やめとき。可愛すぎる」
「もぉ! 真剣なんだよ僕!」
「ごめんごめん。そうやな。ウィッグでもつけるか?」
「ウィッグ?」
「かつらの事や。俺、銀髪のかつらつけてたやろ?」
「本物の髪の毛みたいだった」
「色違いで短いのや長いのがあるで。知り合いのメイクさんが持ってるから借りてくるよ」
「ありがとう!」
なんてのんきに考えながら大学の構内を歩いていた。
パシャパシャとカメラのシャッター音がして反射的に振り向く。
「ちょっとすみません。お話よろしいでしょうか?」
突然見ず知らずの中年の男に声をかけられる。よれよれのシャツにくたびれたジーンズ。首からはカメラをさげていた。だれなんだ? こんな人大学に居たっけ?
「あの。どちらさまでしょうか?」
「立花って言います。こういうものでして……」
男が出してきた名刺にはあるゴシップ雑誌の名前が載っていた。
まさかパパラッチなのか?
「貴方と高塚亜紀良さんの関係をお聞きしたいのですが」
うそっ。なんでここが分かったの? 昨日の今日なのに?
「そんなに驚いた顔をされるところを見ると、何か聞かれると悪い事でもされているのですかな? くく。なにやら高津家の株を貴方に譲渡するらしいですね。いやぁ、上手く取り入りましたなぁ」
「はあ? 何を言ってるんですか?」
かぶって株式の株だよね? 何を言っているのかさっぱりわからない。
「またまたあ。とぼけちゃって」
「誰かとお間違えになられてるんじゃないですか? それにどうして僕のところに来られたんですか?」
「昨日のあのイベント会場に僕もいたんですよ。いやあ。とってもかわいらしかったですねえ」
「それはどうも……ぁっ」
しまった。これでは昨日のは僕だと認めてしまったことになる。ニヤリと男が笑う。
「だとしてもどうしてここがわかったのですか?」
「まあね。以前ここの大学の教授が起こした事件を私が担当してましてね。何でも教え子に手を出して解雇され、教授の地位も剥奪されたらしくてねえ」
きっとそれは長谷川の事を言っているのだろう。それをゴシップネタにしたということなのか? あの時、SNSが凄い早さで拡散されたのはこういう事がきっかけだったのか? 僕自身はハジメのところで匿ってもらっていたからそういう記事すら目にしたことはないのだが。
「顔色が青いですよ。 ……その時の被害者リストにあんた載ってたよねえ? ひょっとしてさぁ、あれもあんたの自作自演だったりするの? あの時はさあ。上手く金目のものがもらえなくてワザと教授に不利な発言をして陥れたんじゃないのぉ? 」
男が急に口調を変え、脅すような口ぶりになる。下卑た笑いをする男に嫌悪感がわいた。
「そんなことするはずないじゃないですか!」
「じゃあさ。高塚さんとどこまで進んだ関係なのか詳しく聞かせてもらえるかなあ。一緒に居たんだから知らないでは済まさないよ」
男がにじり寄り僕の肩に手をおいた。
パシンと男の手を誰かがはたいてくれた。でも振り向かずともわかる。ハジメだ。ハジメが助けに来てくれたんだ。
「おい! お前。関係者以外、校内は立ち入り禁止やぞ」
「チッ。いいとこだったのに。オレは諦めませんからね。またね~」
ハジメが連れてきた警備員に男は引きずられるようにして連れて行かれた。
「すぐる大丈夫か?」
「うん。ハジメが来てくれて助かったよ」
「朝比奈が気づいてくれたんや。ただあいつが出て行ったら余計にややこしくなりそうやったから俺を呼んだというわけや」
「そっか。でも大学まで押しかけてくるなんて。びっくりしたよ」
「ああいう奴はそれが仕事やからな。人の秘密を暴いて面白おかしく書きまくる。奴らにはそれが嘘でも本当でもかまわないんや。スクープ記事が駆ければそれでいいんや。儲けになるからな。どうやらすぐるに狙いを定めてきたみたいやな」
「ええ? そうなの? なんで僕?」
「写真が拡散されたせいだろうな。今後はなるべく一人では動かんようにしてくれ。俺か朝比奈と一緒におるようにしてくれ。頼むわ」
「うん。わかった」
ハジメは僕に過保護だ。でも嬉しい。心配してくれるのがわかるから。
校舎に入ると柱の影から朝比奈が声をかけてきた。
「ごめん、すぐる。すぐに助けに行けなくてわるかった」
「ううん。いいよ、ハジメを呼んできてくれてありがとう。ところでさっきの男なんだけど……気になる事を言っていたんだ」
「気になる事?」
「うん。高塚さんが株を譲るとかなんとか……」
「そうか。そんなことまで調べてるんやな。確かに、亜紀良さんはすぐにでも海外で挙式をあげるって息込んで、それに伴い会社の株も俺に譲ると言い出してたな。そうなると大ごとになってくると思ってすぐに断ってん。でもそれは内輪だけの話やったはずや。どこからその情報を入手してきたんやろう」
「あいつ。ほんまにパパラッチなんかな?」
「それはわからないけど。僕の情報はある程度手元にあるみたい」
「なんか他にも言われたんか?」
「あ~。うん。まあ……」
「なんや隠さず言うてくれ」
「僕が長谷川教授の被害者だって知ってるみたい。自分が担当した事件とか言うてた」
「いや、そんなに簡単に被害者のリストなんて手に入らないやろ? カマをかけられたのかもな? それらしき言葉を言うて相手の反応をみる。すぐるは素直やから顔に出てたんかもしらんなあ」
「青い顔してるって言われた」
「あ~そうか」
「あ~仕方ないな」
「しばらくは付きまとわれるかもな」
「うわあ。どうしよう。変装しようかな?」
「どうやって?」
「めがねとか。そうだ、付け髭とかどうかな?」
「鼻の下にちょび髭でもつけるんか?」
「ははは。やめとき。可愛すぎる」
「もぉ! 真剣なんだよ僕!」
「ごめんごめん。そうやな。ウィッグでもつけるか?」
「ウィッグ?」
「かつらの事や。俺、銀髪のかつらつけてたやろ?」
「本物の髪の毛みたいだった」
「色違いで短いのや長いのがあるで。知り合いのメイクさんが持ってるから借りてくるよ」
「ありがとう!」
12
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父と2人でマイホームに暮らす鷹野 楓(たかの かえで)は家事をこなす高校生、ある日再婚話がもちあがり再婚相手とひとつ屋根の下で生活することに、相手の人には年のちかい息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟たちに楓は手を焼きながらも次第に惹かれていく。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる