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第二章 朝比奈と高塚
6拗れた恋に向き合う
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「お~い。朝比奈ったら。どうした? ぼぉっとして」
ハジメが目の前で手をひらひらさせていた。
「え? ああ。悪い。ちょっと昔のこと思い出して」
「心ここにあらずやったで。お前さ。高塚さんとはどうなのよ」
「はぁ? なんで亜紀良さんの話が出るんや?」
「いや。だって、二人はつきあってるんやないの?」
「つきあってるなんて。そんなんじゃ……」
「じゃあ何やの? あの人いつも俺の事怖い目で睨むんやで」
「何って。親権者? 庇護者? 叔父さんかな」
「ふうん。まあ、あの人が朝比奈の事を大事に想ってるんは、わかるから文句は言わへんけど……」
「え? 亜紀良さんが? なんでそんなんわかるんや?」
「どう見たって大事にされてるやんか! これは同じアルファやからっていうんやなくても、はたから見たらわかるぞ」
「そ、そうなんかな」
「朝比奈。相変わらずお前は自分の事には鈍感やな」
「う、うるさいわい。だってあの人はいつも忙しくて俺といる時間なんてほとんどないんや」
「ん~? 逆やないの? 時間がないけど朝比奈に会いたくって顔見に来るとかって感じじゃないの?」
「……そうなんか?」
「うん。俺ならそうするかなって今思ったんやけど」
俺に会う為だけに時間を作ってるのか? あの亜紀良が?
「あのさ、朝比奈って高塚さんの事好きなんじゃないの?」
「お、俺が亜紀良さんを? 好きや。好きや……けど」
「けど、なんやの?」
「亜紀良さんは俺のことどう思ってるんやろ?」
「……知らんわ、そんなん」
「なっ! なんやお前。話し振るだけふっといて。」
「そういうのはさ、本人に聞いたらいいんだよ。直接今度聞いてみたらいいよ」
いつの間にかすぐるが俺らの横に立っていた。
「すぐる~!お帰りぃ。待ってたで~!」
「ただいま。授業が押しちゃって待たせてごめんね。でも朝比奈さんも悩む事あるんだね」
「そりゃあ。俺だって悩み多き青春の日々してるからな」
「ふふ。僕たちまだまだ悩み多いよね~。あ~週末のテストどうしよう~。レポート提出がまだなんだぁ」
「それってメディアの選択科目のか? 俺で教えられることがあれば答えるで。後でメールしといて」
「ほんと? やったあ。あとでメールするね」
「ちぇ。なんだよお前ら、また俺をのけ者にして」
「ははは。ハジメがいじけてやんの」
◇◆◇
亜紀良が俺の事をどう思ってるかなんて考る事自体怖かった。自分は必要とされているのか? とにかく嫌われてはいないはず。可愛がってくれてるんだとは思う。でもそれって恋愛感情なんだろうか? 他の庇護者のように愛でるだけのペットみたいな存在だったらどうしよう。
「いや、どうしようって俺。どうなりたいんだよ」
悔しいがハジメの言う通り、自分の事になると自信がない。俺にとってアキラさんは……。
「れ、恋愛対象なんかな?」
口に出すと恥ずかしい。いやもっと恥ずかしいことはしてるんだが。
「発情期だけのセフレとか? そんなん嫌や! あかん。悪い方ばっかり考えてしまう」
客観的にみると自分はかなり特殊な立場だと言える。普通は庇護者なんかいないし一人で抑制剤を飲んで発情期が終わるまで我慢するのだろう。だがそうなる前に亜紀良の指示に従ってしまった。
「俺、ひょっとして捕らわれたんかな?」
今更ながらすべてが亜紀良の手の内のように思えてきた。
「まさか全部仕組まれた事なんか? いや亜紀良さんならありうる」
「じゅん君帰ってたんか? 連絡くれたら迎えに行ったのに」
亜紀良が笑顔で声をかけてきた。
「だって亜紀良さん帰国したところやん。時差もあるやろうし」
「じゅん君。なんか僕に言いたいことでもあるの?」
「……なんでわかんの?」
「はは。いまのはカマかけたんだよ。なんか思いつめてるような表情やし。いつもやったら笑顔で駆け寄ってくるのに。今日は警戒してるように見えるからね」
「はぁ。まいったな。そこまで俺はわかりやすいのか」
「いや、僕だけかも。じゅん君の事はなんでもわかっておきたいからね」
「あのさ。……亜紀良さんは俺の事どう思ってるの?」
「好きだよ」
「その好きって俺の好きとは違う気がする」
「なんでそう思うの?」
「だって、本当に好きだったら、庇護者に俺の事を頼んだりしないだろ?」
「どうして急にそんな事言うん? なんかあったの?」
「急にじゃないよ。ずっと思ってた。庇護者の方々って皆いろんな業界の実力者ばかりやん? そんな人らが俺の事を構ってくれるのってなんか見返りがあるんやないのかなって」
「例えば、発情期の君の相手をするとかか?」
なんでそんなに淡々と話すんだろう。違うって言って欲しいのに。
「はじめからそのつもりやったんか?」
「だったらどうする?彼らが嫌いか?」
「皆良い人や!嫌いやない。嫌いやないけどそうじゃないやろ!」
「君が本気で抱かれたいのは僕だけやろ?」
「……なんでそんなに自信満々なんや」
「じゅん君のことを誰よりも想ってるのは僕だからや」
「あほ!そうやったらなんで他の男に俺を抱かせるんや」
「抱いてはいないやろ? 彼らがもう勃たないことは調べ済や」
「なっ……い、いやいや。それでも俺の身体を触りまくったで」
「触られたかったでしょ?」
「ぐ……それは、発情期やったから」
「うん。だから彼らには役に立ってもらった」
役に立ってもらったって? だが亜紀良のことやそれだけではないやろう。
「あんたほんとに腹が立つな! それであんたは彼らと何か取引したんやろ?」
「さすがだね。じゅん君は頭が良い」
「あんた最低や!俺の身体を対価にしたんか!」
「当たり前やん。僕の可愛いじゅん君をタダで触らせるはずないやんか」
「俺の気持ちは?そこに俺の気持ちはないやろ?俺は……」
「っ! ……ごめん。そう……やな。自分勝手やったか。僕はあかんな。つい、損得を優先に考えてしまう。僕はじゅん君に快適に暮らしてほしかっただけやねん。僕がおらんでも苦しまへんように。できれば将来の糧になるように。そうやって先々の事まで考えて先手を打ってしもた」
「俺がそれで離れて行ってしまうとは思わんかったんか?」
「思わんかったよ。じゅん君は僕の番やから」
「へ? 何言うてんの?」
「何って最初会った時にわかれへんかった? まだ発情期前やのに僕とキスしてあんなに淫らになってたやんか」
ハジメが目の前で手をひらひらさせていた。
「え? ああ。悪い。ちょっと昔のこと思い出して」
「心ここにあらずやったで。お前さ。高塚さんとはどうなのよ」
「はぁ? なんで亜紀良さんの話が出るんや?」
「いや。だって、二人はつきあってるんやないの?」
「つきあってるなんて。そんなんじゃ……」
「じゃあ何やの? あの人いつも俺の事怖い目で睨むんやで」
「何って。親権者? 庇護者? 叔父さんかな」
「ふうん。まあ、あの人が朝比奈の事を大事に想ってるんは、わかるから文句は言わへんけど……」
「え? 亜紀良さんが? なんでそんなんわかるんや?」
「どう見たって大事にされてるやんか! これは同じアルファやからっていうんやなくても、はたから見たらわかるぞ」
「そ、そうなんかな」
「朝比奈。相変わらずお前は自分の事には鈍感やな」
「う、うるさいわい。だってあの人はいつも忙しくて俺といる時間なんてほとんどないんや」
「ん~? 逆やないの? 時間がないけど朝比奈に会いたくって顔見に来るとかって感じじゃないの?」
「……そうなんか?」
「うん。俺ならそうするかなって今思ったんやけど」
俺に会う為だけに時間を作ってるのか? あの亜紀良が?
「あのさ、朝比奈って高塚さんの事好きなんじゃないの?」
「お、俺が亜紀良さんを? 好きや。好きや……けど」
「けど、なんやの?」
「亜紀良さんは俺のことどう思ってるんやろ?」
「……知らんわ、そんなん」
「なっ! なんやお前。話し振るだけふっといて。」
「そういうのはさ、本人に聞いたらいいんだよ。直接今度聞いてみたらいいよ」
いつの間にかすぐるが俺らの横に立っていた。
「すぐる~!お帰りぃ。待ってたで~!」
「ただいま。授業が押しちゃって待たせてごめんね。でも朝比奈さんも悩む事あるんだね」
「そりゃあ。俺だって悩み多き青春の日々してるからな」
「ふふ。僕たちまだまだ悩み多いよね~。あ~週末のテストどうしよう~。レポート提出がまだなんだぁ」
「それってメディアの選択科目のか? 俺で教えられることがあれば答えるで。後でメールしといて」
「ほんと? やったあ。あとでメールするね」
「ちぇ。なんだよお前ら、また俺をのけ者にして」
「ははは。ハジメがいじけてやんの」
◇◆◇
亜紀良が俺の事をどう思ってるかなんて考る事自体怖かった。自分は必要とされているのか? とにかく嫌われてはいないはず。可愛がってくれてるんだとは思う。でもそれって恋愛感情なんだろうか? 他の庇護者のように愛でるだけのペットみたいな存在だったらどうしよう。
「いや、どうしようって俺。どうなりたいんだよ」
悔しいがハジメの言う通り、自分の事になると自信がない。俺にとってアキラさんは……。
「れ、恋愛対象なんかな?」
口に出すと恥ずかしい。いやもっと恥ずかしいことはしてるんだが。
「発情期だけのセフレとか? そんなん嫌や! あかん。悪い方ばっかり考えてしまう」
客観的にみると自分はかなり特殊な立場だと言える。普通は庇護者なんかいないし一人で抑制剤を飲んで発情期が終わるまで我慢するのだろう。だがそうなる前に亜紀良の指示に従ってしまった。
「俺、ひょっとして捕らわれたんかな?」
今更ながらすべてが亜紀良の手の内のように思えてきた。
「まさか全部仕組まれた事なんか? いや亜紀良さんならありうる」
「じゅん君帰ってたんか? 連絡くれたら迎えに行ったのに」
亜紀良が笑顔で声をかけてきた。
「だって亜紀良さん帰国したところやん。時差もあるやろうし」
「じゅん君。なんか僕に言いたいことでもあるの?」
「……なんでわかんの?」
「はは。いまのはカマかけたんだよ。なんか思いつめてるような表情やし。いつもやったら笑顔で駆け寄ってくるのに。今日は警戒してるように見えるからね」
「はぁ。まいったな。そこまで俺はわかりやすいのか」
「いや、僕だけかも。じゅん君の事はなんでもわかっておきたいからね」
「あのさ。……亜紀良さんは俺の事どう思ってるの?」
「好きだよ」
「その好きって俺の好きとは違う気がする」
「なんでそう思うの?」
「だって、本当に好きだったら、庇護者に俺の事を頼んだりしないだろ?」
「どうして急にそんな事言うん? なんかあったの?」
「急にじゃないよ。ずっと思ってた。庇護者の方々って皆いろんな業界の実力者ばかりやん? そんな人らが俺の事を構ってくれるのってなんか見返りがあるんやないのかなって」
「例えば、発情期の君の相手をするとかか?」
なんでそんなに淡々と話すんだろう。違うって言って欲しいのに。
「はじめからそのつもりやったんか?」
「だったらどうする?彼らが嫌いか?」
「皆良い人や!嫌いやない。嫌いやないけどそうじゃないやろ!」
「君が本気で抱かれたいのは僕だけやろ?」
「……なんでそんなに自信満々なんや」
「じゅん君のことを誰よりも想ってるのは僕だからや」
「あほ!そうやったらなんで他の男に俺を抱かせるんや」
「抱いてはいないやろ? 彼らがもう勃たないことは調べ済や」
「なっ……い、いやいや。それでも俺の身体を触りまくったで」
「触られたかったでしょ?」
「ぐ……それは、発情期やったから」
「うん。だから彼らには役に立ってもらった」
役に立ってもらったって? だが亜紀良のことやそれだけではないやろう。
「あんたほんとに腹が立つな! それであんたは彼らと何か取引したんやろ?」
「さすがだね。じゅん君は頭が良い」
「あんた最低や!俺の身体を対価にしたんか!」
「当たり前やん。僕の可愛いじゅん君をタダで触らせるはずないやんか」
「俺の気持ちは?そこに俺の気持ちはないやろ?俺は……」
「っ! ……ごめん。そう……やな。自分勝手やったか。僕はあかんな。つい、損得を優先に考えてしまう。僕はじゅん君に快適に暮らしてほしかっただけやねん。僕がおらんでも苦しまへんように。できれば将来の糧になるように。そうやって先々の事まで考えて先手を打ってしもた」
「俺がそれで離れて行ってしまうとは思わんかったんか?」
「思わんかったよ。じゅん君は僕の番やから」
「へ? 何言うてんの?」
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