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第一章 ハジメとすぐる
4長谷川の誘惑
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小さい頃から内気で人とのコミュニケーションをとるのが下手だった。一人で自分の世界に入るの好きだった。そのほうが誰かに期待したり迷惑をかけることがなかったからだ。
僕はなにをやっているのだろう。誰かに期待するから辛い目にあうんじゃないのか。やっぱり僕は友人などつくらず一人の世界に籠っていた方がいいんじゃないだろうか。誰も僕など相手にしない。僕なんて誰も……。思考がぼんやりとしていく。
どのくらい時間が過ぎたのだろうか。なんだか頭がくらくらする。そういえばさきほどからいい匂いがするのだ。でもハジメの匂いとは違う。なのに身体の芯が反応するのはなぜだ? それにやけに喉が渇く。
「さあ。これをお飲み。気分が良くなるよ」
反射的にごくりと飲み干して違和感を感じた。
「ごほっ……なんですか? 水?」
コップには透明の液体が入っていた。だが甘ったるい味だ。ぼんやりとした頭の片隅で警告音が鳴る。ここから離れなければと。
「ここは……どこですか?」
気持ちが混乱したまま僕はどこかに連れてこられた。
自分がいま横たわっているのは柔らかい生地の上だ。病院のベット? いや、違う。病院なら消毒液の匂いや看護士さんがいるはず。外はまだ明るいはずなのに薄暗い天井にピンク色の照明が異様に見える。
「ふふふ。いい子だね。僕はねえ。どうせなら互いに気持ちよくなりたいんだ」
(この声! 長谷川教授だ!)
目の前にいる影にしっかりと焦点を合わすと長谷川がニヤニヤと笑っていた。
首を回して周辺を見るとどうやらホテルの一室らしい。
「驚いたよ。君はオメガだったんだね。くくく。いやあ、今回は当たりだったなあ」
「……何を……言ってるんですか?」
身体が徐々に熱くなる。変なものを飲まされたに違いない。
なんてことだ。あれだけハジメに警戒しろと言われてたのに。
「君が僕にしなだれかかってきたんだよ。アルファの僕のモノがほしかったんじゃないのかい? 甘いにおいがするよ。発情期が近いんだね」
長谷川はアルファだったのか。ではもしかしたらこの匂いは? フェロモンなのか? アルファの強いフェロモンを発して僕を惑わしているのか?
長谷川が首筋やわきの下の匂いを嗅いでくる。変態じみてる!
「やめて……くださいっ」
身をよじろうとするが身体に力が入らない。それどころか頭は嫌がってるのに身体は触られることを受け入れようとしてくる。
「くく。ああ君って本当に新鮮でいいねえ。ちょっとくらい抵抗してくれたほうが僕も興奮するってもんだ。ようくわかってるじゃないか。何人の男を咥え込んだんだい?」
「なっ? なんて卑猥なことをいうんですか!」
だが、身体はその言葉に更に興奮したように熱をもつ。
【自分の意思に関係なく体が求めてしまうんや】
朝比奈の言葉が頭の中でぐるぐるとまわりはじめる。
まさか、僕は本当にオメガなのか?
「君は特待生らしいね。成績優秀者は学費の免除がある。ただそれは毎年査定があるんだよ。成績が落ちたら免除は打ち切られるのは知っているよね?」
長谷川が脅しのような言葉をかけてくる。
「だが、僕にまかせとけばいい。悪いようにはしないから。そのかわりわかってるよね? ギブアンドテイクと行こうじゃないか?」
長谷川がベロリと首筋を舐めてきた。
「はっ。匂いが濃厚になってきたね。いいねっ。はぁはぁ。楽しもう!」
長谷川が僕の上に馬乗りになって服を脱ぎ始めた。
「ひっ! やだ……は……ハジメ!」
「あん? ……難波のことか? あいつがまとわりついてたせいで君を誘うのが遅れてしまったんだよ。忌々しいやつめ。いっそのこと首の後ろを噛んであげようか? そうすればもう君は僕しか求められなくなる。僕のコレクションのひとつにくわえてあげるよ」
首を噛む? そうだ聞いたことがある。オメガをアルファが嚙む行為。噛まれたオメガは番となり、その相手としか交われなくなるという。だがアルファは違う。何人も番が持てると聞いた。
全身に恐怖が走る。こんなやつが一生に一度の相手なんて。
「嫌だ! 嫌だ! ハジメ! ハジメ! 助けてっ!」
「この変態! 俺のすぐるになにさらしとんじゃあ!」
急に体が軽くなると同時に数発の打撃音が聞こえる。
「ハジメ……?」
重い身体を起こしてみると肩で苦しそうに息をしてるハジメがいた。
「すぐる。だ……大丈夫……か?」
「ハジメ? よかった。怖かったんだ……ハジメ?」
ふう、ふうと息を荒くしたハジメが近づいてくる。いつもと様子が違う。ぶわぁっと、ハジメからいい匂いがあふれ出してくるのがわかる。
「え? なに……」
それにリンクするように自分の身体からも濃厚な匂いが出てる事に気づいた。
「はぁ。やばい……すぐる……俺から……にげろ」
言葉とは裏腹にハジメはすぐるに襲い掛かり唇を奪った。
「んん……はぁ……」
甘い。甘くて蕩けるような口づけが思考力を奪っていく。気持ちいい。このまま何も考えずに身体を開いてしまいたい……。
しかしすぐに激しい衝撃音がして思考が戻ってきた。ハジメが急に動かなくなり、僕の周りは水浸しで陶器の破片が散らばっていた。
「呆けてないでしっかりせんか! はよ太腿だすんや!」
そこには朝比奈がいた。片手に持った注射型抑制剤を僕の太腿に突き刺している。
「っ……朝比奈さん?……すみません」
「ふぅ。意識が戻ったか? どうなる事かと思ったわ。ハジメはラット状態やし、長谷川は伸びてるし。俺はオメガ用の抑制剤しか持ってへんからな。ハジメには花瓶でおねんねしてもろたわ」
「助かりま……し……た……」
「あ! ちょっとまだ寝たらあかんって……おい! 俺一人でこの状況どうするんや」
ほっとした僕の耳に朝比奈の声が遠くなっていった。
僕はなにをやっているのだろう。誰かに期待するから辛い目にあうんじゃないのか。やっぱり僕は友人などつくらず一人の世界に籠っていた方がいいんじゃないだろうか。誰も僕など相手にしない。僕なんて誰も……。思考がぼんやりとしていく。
どのくらい時間が過ぎたのだろうか。なんだか頭がくらくらする。そういえばさきほどからいい匂いがするのだ。でもハジメの匂いとは違う。なのに身体の芯が反応するのはなぜだ? それにやけに喉が渇く。
「さあ。これをお飲み。気分が良くなるよ」
反射的にごくりと飲み干して違和感を感じた。
「ごほっ……なんですか? 水?」
コップには透明の液体が入っていた。だが甘ったるい味だ。ぼんやりとした頭の片隅で警告音が鳴る。ここから離れなければと。
「ここは……どこですか?」
気持ちが混乱したまま僕はどこかに連れてこられた。
自分がいま横たわっているのは柔らかい生地の上だ。病院のベット? いや、違う。病院なら消毒液の匂いや看護士さんがいるはず。外はまだ明るいはずなのに薄暗い天井にピンク色の照明が異様に見える。
「ふふふ。いい子だね。僕はねえ。どうせなら互いに気持ちよくなりたいんだ」
(この声! 長谷川教授だ!)
目の前にいる影にしっかりと焦点を合わすと長谷川がニヤニヤと笑っていた。
首を回して周辺を見るとどうやらホテルの一室らしい。
「驚いたよ。君はオメガだったんだね。くくく。いやあ、今回は当たりだったなあ」
「……何を……言ってるんですか?」
身体が徐々に熱くなる。変なものを飲まされたに違いない。
なんてことだ。あれだけハジメに警戒しろと言われてたのに。
「君が僕にしなだれかかってきたんだよ。アルファの僕のモノがほしかったんじゃないのかい? 甘いにおいがするよ。発情期が近いんだね」
長谷川はアルファだったのか。ではもしかしたらこの匂いは? フェロモンなのか? アルファの強いフェロモンを発して僕を惑わしているのか?
長谷川が首筋やわきの下の匂いを嗅いでくる。変態じみてる!
「やめて……くださいっ」
身をよじろうとするが身体に力が入らない。それどころか頭は嫌がってるのに身体は触られることを受け入れようとしてくる。
「くく。ああ君って本当に新鮮でいいねえ。ちょっとくらい抵抗してくれたほうが僕も興奮するってもんだ。ようくわかってるじゃないか。何人の男を咥え込んだんだい?」
「なっ? なんて卑猥なことをいうんですか!」
だが、身体はその言葉に更に興奮したように熱をもつ。
【自分の意思に関係なく体が求めてしまうんや】
朝比奈の言葉が頭の中でぐるぐるとまわりはじめる。
まさか、僕は本当にオメガなのか?
「君は特待生らしいね。成績優秀者は学費の免除がある。ただそれは毎年査定があるんだよ。成績が落ちたら免除は打ち切られるのは知っているよね?」
長谷川が脅しのような言葉をかけてくる。
「だが、僕にまかせとけばいい。悪いようにはしないから。そのかわりわかってるよね? ギブアンドテイクと行こうじゃないか?」
長谷川がベロリと首筋を舐めてきた。
「はっ。匂いが濃厚になってきたね。いいねっ。はぁはぁ。楽しもう!」
長谷川が僕の上に馬乗りになって服を脱ぎ始めた。
「ひっ! やだ……は……ハジメ!」
「あん? ……難波のことか? あいつがまとわりついてたせいで君を誘うのが遅れてしまったんだよ。忌々しいやつめ。いっそのこと首の後ろを噛んであげようか? そうすればもう君は僕しか求められなくなる。僕のコレクションのひとつにくわえてあげるよ」
首を噛む? そうだ聞いたことがある。オメガをアルファが嚙む行為。噛まれたオメガは番となり、その相手としか交われなくなるという。だがアルファは違う。何人も番が持てると聞いた。
全身に恐怖が走る。こんなやつが一生に一度の相手なんて。
「嫌だ! 嫌だ! ハジメ! ハジメ! 助けてっ!」
「この変態! 俺のすぐるになにさらしとんじゃあ!」
急に体が軽くなると同時に数発の打撃音が聞こえる。
「ハジメ……?」
重い身体を起こしてみると肩で苦しそうに息をしてるハジメがいた。
「すぐる。だ……大丈夫……か?」
「ハジメ? よかった。怖かったんだ……ハジメ?」
ふう、ふうと息を荒くしたハジメが近づいてくる。いつもと様子が違う。ぶわぁっと、ハジメからいい匂いがあふれ出してくるのがわかる。
「え? なに……」
それにリンクするように自分の身体からも濃厚な匂いが出てる事に気づいた。
「はぁ。やばい……すぐる……俺から……にげろ」
言葉とは裏腹にハジメはすぐるに襲い掛かり唇を奪った。
「んん……はぁ……」
甘い。甘くて蕩けるような口づけが思考力を奪っていく。気持ちいい。このまま何も考えずに身体を開いてしまいたい……。
しかしすぐに激しい衝撃音がして思考が戻ってきた。ハジメが急に動かなくなり、僕の周りは水浸しで陶器の破片が散らばっていた。
「呆けてないでしっかりせんか! はよ太腿だすんや!」
そこには朝比奈がいた。片手に持った注射型抑制剤を僕の太腿に突き刺している。
「っ……朝比奈さん?……すみません」
「ふぅ。意識が戻ったか? どうなる事かと思ったわ。ハジメはラット状態やし、長谷川は伸びてるし。俺はオメガ用の抑制剤しか持ってへんからな。ハジメには花瓶でおねんねしてもろたわ」
「助かりま……し……た……」
「あ! ちょっとまだ寝たらあかんって……おい! 俺一人でこの状況どうするんや」
ほっとした僕の耳に朝比奈の声が遠くなっていった。
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