18 / 23
美味しい食卓編
6やみつき胡瓜
しおりを挟む
やはり思ってた展開だったようだ。安住は無意識に俺と似たタイプを相手に選んでいたらしい。
「すまないっ。僕は彼らを倉沢の代わりにしていたんだっ。本当に申し訳ないっ。それに今日のことでよくわかったんだ。本物の倉沢に勝るものなんてない! 僕はただ同じ髪色でスーツを着たやつを……」
「以前聞いた時は一夜限りしか相手にしないといってたな」
あいつはどう見てもそんな感じじゃなかったぞ。
「あ……あいつとは……2回……いや3回くらいだったかも」
「ほぉ。お気に入りだったわけだ」
何が一夜限りだっ。安住のバカめ。いや、こんな尋問みたいんじゃなくて。そういうのが聞きたいんじゃなくて。
「ちっちがっ……倉沢と雰囲気が似てる気がしたんだ」
はあ?俺とアイツのどこが似てるって言うんだ?
「俺はあんな陰険か?」
「違う!違うっ。ただの勘違いだ!倉沢はもっと気品があって漢らしくって精悍でそれでいて天使みたいなんだっっ」
「は? 天使?」
「うん。僕にとっては倉沢は手の出せない尊い友人だったんだ」
「……って酔った勢いでヤラレたけど?」
「わわっ!ごめんよっごめんっ!僕が悪いんだ。ごめんよ健吾。嫌いにならないでくれ」
ついに安住がポロポロ泣き出した。しまった。やりすぎた。俺もちょっとしつこかったな。つきあう前の話しだから浮気ではないし。過去の話にくどくど言っても仕方がない。ただ問題は相手がそうでないらしいって事だ。勤め先も名前もわかってしまったのが面倒だ。
「怒ってるわけじゃねえ。だけど、俺はお前しか知らねえんだ。俺は男が好きなんじゃねえ。安住和真が好きなんだぞ。そこをわかってるのか?」
「わかってる。健吾がゲイじゃなかったってのは」
「だったら二度と俺以外を抱くんじゃねえ!」
「うん。誓う。僕には健吾しかいない!」
「その、だから……今夜は、その」
「いや、……しばらくは別で寝る」
「ええっ?」
「……少し頭を冷やさせてくれ」
「わかった。ごめん」
◇◆◇
展示会が終わり、新規先からの商談が増えた。まずは新商品の見本を手に説明して回っている。
「以前と違って規模が大きくなってきた。今までのやり方では回らなくなる。だから流れを見える化するつもりだ」
「はあ? 見える化っすか?」
「ああ。誰がどこまで進行中でその後どう引き継ぐかなど社内のパソコンで随時追えるようにする」
「ひぃ。怖いっす。手を抜けないっすね」
「逆だよ。遅れてるものにはヘルプがつけやすくなるし早まってるものには他でも対応できるようにする。早瀬、お前にはそれらをまとめるリーダーになって欲しい」
「え?!俺がですか?」
「もちろん補助もつける。安住の企画のほうも2~3人決めるそうだ。どうだ?やってみないか?」
「わかりました!やらせてください!」
「ははは。そうと決まれば今日の昼は俺がおごるよ」
「やった!じゃあ俺大学横の定食屋がいいっす」
普段から新商品の共同研究で世話になっている環境大学横には評判のいい定食屋がある。こじんまりした店だが学生向けのリーズナブルさが受けているようだった。
「え?本当にそこでいいのか?」
「そのかわり、スペシャル日替わり定食にします!」
今日はエビフライと生姜焼きにサラダと味噌汁つき。ごはんはお代わり自由だ。
「ぷはっ。一番高いやつだな?よしわかった」
中に入るとカウンターの上に野菜中心の常備菜がたくさん並んでいる
「ここの常備菜はタダなんっすよ。お代わりし放題」
「なに?本当か?」
「ほっほっほ。食材の野菜はわしと学生とで作っとるんですよ」
キッチンには年配のおやじさんが笑っていた。
「大学の中に農園があっていろいろな野菜を作ってましてな、わしはそこの野菜を分けてもらう代わりに学生に安くてうまい料理をだしているというわけですわい」
そうか、それでメニューの中に白ご飯のみって言うのがあるのか?
旨そうな常備菜たちは名前がつけられていて。無限ピーマン、ウマ辛みそキャベツ。スーパー人参しりしりなど。どれも学生たちが命名したそうだ。
「おすすめはやみつき胡瓜っすね」
「ほっほっほ。わしが作るのは男の手料理ばかりでな。誰でも作れるもんじゃよ」
「男の手料理……それって俺でもできますか?」
「簡単じゃよ。まずは食べてみなされ」
早瀬おすすめのやみつき胡瓜をかじってみる。歯ごたえが良いのは新鮮な証だろう。ごま油の香りに塩味が効いていた。
「ビールのつまみによさそうだな」
「でしょ?でしょ?美味いっすよね。やみつきになるくらい食べちゃう胡瓜って意味なんすよ」
「胡瓜をぶつ切りにしてごま油と塩をあえるだけじゃよ」
「え?そんな簡単なんですか?」
「そうじゃ、仕上げに白ごまをパラパラ~っとふれば出来上がりじゃ」
「おお。これなら俺にもできるかも!」
「なんすか?倉沢さんって料理に興味ありましたっけ?」
「俺も安住のために何か料理をしてやりたいんだ」
「ほ~。へ~。ごちそうさまです~」
「こら、茶化すなよ。安住には内緒だぞ」
「ほっほっほ。他にもいくつか簡単なのを教えましょうか?」
「是非!お願いします!!」
「すまないっ。僕は彼らを倉沢の代わりにしていたんだっ。本当に申し訳ないっ。それに今日のことでよくわかったんだ。本物の倉沢に勝るものなんてない! 僕はただ同じ髪色でスーツを着たやつを……」
「以前聞いた時は一夜限りしか相手にしないといってたな」
あいつはどう見てもそんな感じじゃなかったぞ。
「あ……あいつとは……2回……いや3回くらいだったかも」
「ほぉ。お気に入りだったわけだ」
何が一夜限りだっ。安住のバカめ。いや、こんな尋問みたいんじゃなくて。そういうのが聞きたいんじゃなくて。
「ちっちがっ……倉沢と雰囲気が似てる気がしたんだ」
はあ?俺とアイツのどこが似てるって言うんだ?
「俺はあんな陰険か?」
「違う!違うっ。ただの勘違いだ!倉沢はもっと気品があって漢らしくって精悍でそれでいて天使みたいなんだっっ」
「は? 天使?」
「うん。僕にとっては倉沢は手の出せない尊い友人だったんだ」
「……って酔った勢いでヤラレたけど?」
「わわっ!ごめんよっごめんっ!僕が悪いんだ。ごめんよ健吾。嫌いにならないでくれ」
ついに安住がポロポロ泣き出した。しまった。やりすぎた。俺もちょっとしつこかったな。つきあう前の話しだから浮気ではないし。過去の話にくどくど言っても仕方がない。ただ問題は相手がそうでないらしいって事だ。勤め先も名前もわかってしまったのが面倒だ。
「怒ってるわけじゃねえ。だけど、俺はお前しか知らねえんだ。俺は男が好きなんじゃねえ。安住和真が好きなんだぞ。そこをわかってるのか?」
「わかってる。健吾がゲイじゃなかったってのは」
「だったら二度と俺以外を抱くんじゃねえ!」
「うん。誓う。僕には健吾しかいない!」
「その、だから……今夜は、その」
「いや、……しばらくは別で寝る」
「ええっ?」
「……少し頭を冷やさせてくれ」
「わかった。ごめん」
◇◆◇
展示会が終わり、新規先からの商談が増えた。まずは新商品の見本を手に説明して回っている。
「以前と違って規模が大きくなってきた。今までのやり方では回らなくなる。だから流れを見える化するつもりだ」
「はあ? 見える化っすか?」
「ああ。誰がどこまで進行中でその後どう引き継ぐかなど社内のパソコンで随時追えるようにする」
「ひぃ。怖いっす。手を抜けないっすね」
「逆だよ。遅れてるものにはヘルプがつけやすくなるし早まってるものには他でも対応できるようにする。早瀬、お前にはそれらをまとめるリーダーになって欲しい」
「え?!俺がですか?」
「もちろん補助もつける。安住の企画のほうも2~3人決めるそうだ。どうだ?やってみないか?」
「わかりました!やらせてください!」
「ははは。そうと決まれば今日の昼は俺がおごるよ」
「やった!じゃあ俺大学横の定食屋がいいっす」
普段から新商品の共同研究で世話になっている環境大学横には評判のいい定食屋がある。こじんまりした店だが学生向けのリーズナブルさが受けているようだった。
「え?本当にそこでいいのか?」
「そのかわり、スペシャル日替わり定食にします!」
今日はエビフライと生姜焼きにサラダと味噌汁つき。ごはんはお代わり自由だ。
「ぷはっ。一番高いやつだな?よしわかった」
中に入るとカウンターの上に野菜中心の常備菜がたくさん並んでいる
「ここの常備菜はタダなんっすよ。お代わりし放題」
「なに?本当か?」
「ほっほっほ。食材の野菜はわしと学生とで作っとるんですよ」
キッチンには年配のおやじさんが笑っていた。
「大学の中に農園があっていろいろな野菜を作ってましてな、わしはそこの野菜を分けてもらう代わりに学生に安くてうまい料理をだしているというわけですわい」
そうか、それでメニューの中に白ご飯のみって言うのがあるのか?
旨そうな常備菜たちは名前がつけられていて。無限ピーマン、ウマ辛みそキャベツ。スーパー人参しりしりなど。どれも学生たちが命名したそうだ。
「おすすめはやみつき胡瓜っすね」
「ほっほっほ。わしが作るのは男の手料理ばかりでな。誰でも作れるもんじゃよ」
「男の手料理……それって俺でもできますか?」
「簡単じゃよ。まずは食べてみなされ」
早瀬おすすめのやみつき胡瓜をかじってみる。歯ごたえが良いのは新鮮な証だろう。ごま油の香りに塩味が効いていた。
「ビールのつまみによさそうだな」
「でしょ?でしょ?美味いっすよね。やみつきになるくらい食べちゃう胡瓜って意味なんすよ」
「胡瓜をぶつ切りにしてごま油と塩をあえるだけじゃよ」
「え?そんな簡単なんですか?」
「そうじゃ、仕上げに白ごまをパラパラ~っとふれば出来上がりじゃ」
「おお。これなら俺にもできるかも!」
「なんすか?倉沢さんって料理に興味ありましたっけ?」
「俺も安住のために何か料理をしてやりたいんだ」
「ほ~。へ~。ごちそうさまです~」
「こら、茶化すなよ。安住には内緒だぞ」
「ほっほっほ。他にもいくつか簡単なのを教えましょうか?」
「是非!お願いします!!」
12
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
年上の恋人は優しい上司
木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。
仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。
基本は受け視点(一人称)です。
一日一花BL企画 参加作品も含まれています。
表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!!
完結済みにいたしました。
6月13日、同人誌を発売しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる