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美味しい食卓編
1参鶏湯
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新規プロジェクトは時代にあった企画だったのか軌道に乗りやすかった。そして今年度わが社は環境に優しい商品を産み出す優良会社として認められたのだ。それに伴い俺たちのいる「企画立案部」は「開発事業部」へと部署名も変更となった。場所もビルのワンフロア全部をもらえるようになり、ありがたい事にかなり人員も増えた。
「最近の倉沢はワーカーホリック気味で心配だよ」
資料を片手に俺に声をかけてきたのは安住和真。俺の伴侶だ。俺は倉沢健吾。俺がこの部署の室長で安住が副室長。公私ともに俺らはパートナーである。
「目の下に隈が出来てる。昨日あれからまた起きだしてたんだろ?」
「安住には隠せないな。うん。書類がまとまらなくってな」
「そういう時は僕も手伝うって言ったじゃないか」
「いや、お前だってその前の日は徹夜だったじゃないか」
「まぁ。そうだけど。でも……」
最近は忙しくてゆっくりと二人の時間を過ごしていない。徹夜や帰宅が深夜にならない時は出来るだけ一緒に布団に入るが、互いに明日に響かない様に寄り添って眠るだけの日が続いている。
「はぁ。これだけ事業が拡大されたんじゃ俺たちだけでは手に余るようになっちまったんだろうな」
「ああ。そうだな。そろそろ責任ある仕事を部下たちに任せても良いのかもしれない」
「今回のプランが終わったら割り当てを考えようか」
「そうしよう! ところで倉沢は夕飯まだなんだろ?」
「うん。でも今日もこの後仕事が残ってて」
「わかってるよ。1時間ぐらいなら良いだろ?近場で美味い料理店を見つけたんだ。行こう」
安住にしては珍しく強引に話を進めてきた。心配げに俺を見つめてくる目は切なく揺れている。まるで断らないでくれと言う風に。忙しさにかまけて俺が食事の代わりに栄養補助食のゼリーやドリンクで済ませていたのがバレてたのかもしれない。
「そうだな。気分転換にたまには外食もいいか」
俺の一言でぱあっと安住が嬉しそうにほほ笑んだ。くせのある栗毛にぱっちりとした二重が大型犬に見えてくる。
「よかった。実は予約してあるんだ」
「なんだ。そうだったのか」
連れて来られた場所は職場から5分ほどの雑居ビル。
「アニョハセヨ~」
奥から聞こえてきたのは韓国語だ。
「安住サンですね。奥の個室にどうぞ」
壁には漢方のサンプル標本が貼ってある。俺にはただの実や木の根っこにしか見えない。その横にカラフルな服を着た人形と小さな石造が置いてある。俺がきょろきょろしてると安住が説明してくれた。
「その人形が着てるのが韓国の民族衣装のチマチョゴリだよ。横の石像はトルハルバン」
「安住はなんでも知ってるんだな」
「以前仕事で韓国の済州島に出張に行ったことがあるんだ」
「へえ。知らなかった。その石像はお守りか? やけに鼻がデカイな」
「うん。それもあるけど……鼻や耳を撫でると子宝に恵まれるって言われてる」
「鼻を……」
そういえば昔から鼻がデカイ男はアレもデカイと言われてたような。ついつい安住の鼻に視線がいってしまう。こいつのが結構な大きさなのは身長や体格に比例するのかと思っていたが、鼻の大きさなのか? 俺の視線の意図することに気づいたのか安住がコホンと咳払いした。
「お待たせしました~」
気まずい雰囲気の中、料理が運ばれてきた。黒い石の器に鶏肉が丸ごと入ってるのが見える。クリスマスの七面鳥みたいだ。
「参鶏湯だよ。あっさりしてて胃に優しいんだ」
「食べやすいデスよ。人参となつめも入ってるので滋養にも良い。疲れてる時は身体にイイデスよ」
「はは。店の人に先に言われてしまったな。最近倉沢が疲れ気味な気がしてね。僕も徹夜が続いてたし一緒に食いたかったんだ」
はにかむ様な笑顔がまぶしい。やっぱり安住は王子様みたいだ。
「ありがとう。気にかけてもらって嬉しいよ」
「当たり前だろ。僕たち伴侶じゃん……」
声が小さくなっていったのは恥ずかしいからだろう。耳が赤くなってるのが見える。ああ可愛いなあ。
「うん。嬉しい。俺の伴侶は気配りが良くできる」
「「いただきます」」
白いスープはほんのり塩味がきいたあっさり味だった。鶏肉は柔らかく、ほろほろと骨から外れる。
「あれ。米が出てきた……?」
スープがゆのような感じだ。胃に優しそうだな。一口食べると体に染み入るような感じだ。自分では気づかないうちに疲れていたのかな。
「うん。鶏肉の中にもち米などを詰めて煮込んであるんだ。コラーゲンも豊富だから女性にも人気があるんだよ」
「薄味かと思ったが食べ続けてくとこれくらいがちょうどいいな」
「うん。ほどよいね。それに朝鮮人参、なつめ、松の実、クコの実、栗、にんにくなどの漢方の食材が入ってるから、疲労回復、血行促進やストレス改善など弱ってる身体を本来の機能に戻してくれるんだ」
「漢方っていうからもっと薬っぽいのかと身構えたが、普通に美味しいし食べやすいぜ。ありがとな。わざわざ近場で探してくれたんだろ?」
「いやぁ。僕も食べたかったんだよ」
安住の口元が上がってる。嬉しそうな表情を見てるとこっちまでニヤけてくる。そういえばこいつのこんな顔を見るのは久しぶりだな。それだけ仕事に追われてるということか。仕事に忙殺されてプライベートの時間まで失くしてしまうところだった。
「ちょうど一時間だったね。ちょっとは気晴らしになった?」
食べ終わるとすぐに社に引き返してきた。この時間帯はエレベーターに乗る人も少ない。二人だけだ。乗った瞬間俺は安住を抱きしめた。
「く、倉沢……」
「もう少し充電させてくれ」
「……うん」
「ごめんな。俺は優柔がきかない。仕事を達成する事に集中するとお前をないがしろにしてしまう。寂しい想いをさせてたんじゃないか?」
「そ、そんなこと……ない」
嘘だな。安住は俺に嘘をつけない。ついてないはずの尻尾や耳が俺には見える気がするからだ。普段は誰にでも愛想よい王子様気質で本音を人に見せないのだが、俺の前では素でいてくれる。そんなところが堪らなく可愛い。
「本当はさ、安住の飯が一緒に食いたいんだ」
「っ! うん。作るよ。何でも言って!」
途端に輝くような笑顔を見せる。でも何言ってんだ。俺が帰れないって事はお前の仕事も忙しいってことじゃないのか?
「今回の企画の最終段階はもう終わったから少しはなんとかなるんだ」
「本当か? あさってなら早くあがれそうだぜ」
「そうか! じゃあ晩御飯何が良い?」
「揚げたてのからあげとか食いたいな」
胃袋って贅沢なもので、あっさり系の次はがっつりしたものが食いたいって思ってしまう。
「わかった。まかしといて!」
嬉しそうな安住の背後で大きな尻尾が揺れてる気がした。
――――――――
安住が攻めです(笑)倉沢はクールな無自覚美人受けです。安住にだけ甘い言葉を吐いてしまうというのを本人は気づいてないです。安住はベットの中では狼になりますw
スパダリ大型犬×仕事人間スパダリ
「最近の倉沢はワーカーホリック気味で心配だよ」
資料を片手に俺に声をかけてきたのは安住和真。俺の伴侶だ。俺は倉沢健吾。俺がこの部署の室長で安住が副室長。公私ともに俺らはパートナーである。
「目の下に隈が出来てる。昨日あれからまた起きだしてたんだろ?」
「安住には隠せないな。うん。書類がまとまらなくってな」
「そういう時は僕も手伝うって言ったじゃないか」
「いや、お前だってその前の日は徹夜だったじゃないか」
「まぁ。そうだけど。でも……」
最近は忙しくてゆっくりと二人の時間を過ごしていない。徹夜や帰宅が深夜にならない時は出来るだけ一緒に布団に入るが、互いに明日に響かない様に寄り添って眠るだけの日が続いている。
「はぁ。これだけ事業が拡大されたんじゃ俺たちだけでは手に余るようになっちまったんだろうな」
「ああ。そうだな。そろそろ責任ある仕事を部下たちに任せても良いのかもしれない」
「今回のプランが終わったら割り当てを考えようか」
「そうしよう! ところで倉沢は夕飯まだなんだろ?」
「うん。でも今日もこの後仕事が残ってて」
「わかってるよ。1時間ぐらいなら良いだろ?近場で美味い料理店を見つけたんだ。行こう」
安住にしては珍しく強引に話を進めてきた。心配げに俺を見つめてくる目は切なく揺れている。まるで断らないでくれと言う風に。忙しさにかまけて俺が食事の代わりに栄養補助食のゼリーやドリンクで済ませていたのがバレてたのかもしれない。
「そうだな。気分転換にたまには外食もいいか」
俺の一言でぱあっと安住が嬉しそうにほほ笑んだ。くせのある栗毛にぱっちりとした二重が大型犬に見えてくる。
「よかった。実は予約してあるんだ」
「なんだ。そうだったのか」
連れて来られた場所は職場から5分ほどの雑居ビル。
「アニョハセヨ~」
奥から聞こえてきたのは韓国語だ。
「安住サンですね。奥の個室にどうぞ」
壁には漢方のサンプル標本が貼ってある。俺にはただの実や木の根っこにしか見えない。その横にカラフルな服を着た人形と小さな石造が置いてある。俺がきょろきょろしてると安住が説明してくれた。
「その人形が着てるのが韓国の民族衣装のチマチョゴリだよ。横の石像はトルハルバン」
「安住はなんでも知ってるんだな」
「以前仕事で韓国の済州島に出張に行ったことがあるんだ」
「へえ。知らなかった。その石像はお守りか? やけに鼻がデカイな」
「うん。それもあるけど……鼻や耳を撫でると子宝に恵まれるって言われてる」
「鼻を……」
そういえば昔から鼻がデカイ男はアレもデカイと言われてたような。ついつい安住の鼻に視線がいってしまう。こいつのが結構な大きさなのは身長や体格に比例するのかと思っていたが、鼻の大きさなのか? 俺の視線の意図することに気づいたのか安住がコホンと咳払いした。
「お待たせしました~」
気まずい雰囲気の中、料理が運ばれてきた。黒い石の器に鶏肉が丸ごと入ってるのが見える。クリスマスの七面鳥みたいだ。
「参鶏湯だよ。あっさりしてて胃に優しいんだ」
「食べやすいデスよ。人参となつめも入ってるので滋養にも良い。疲れてる時は身体にイイデスよ」
「はは。店の人に先に言われてしまったな。最近倉沢が疲れ気味な気がしてね。僕も徹夜が続いてたし一緒に食いたかったんだ」
はにかむ様な笑顔がまぶしい。やっぱり安住は王子様みたいだ。
「ありがとう。気にかけてもらって嬉しいよ」
「当たり前だろ。僕たち伴侶じゃん……」
声が小さくなっていったのは恥ずかしいからだろう。耳が赤くなってるのが見える。ああ可愛いなあ。
「うん。嬉しい。俺の伴侶は気配りが良くできる」
「「いただきます」」
白いスープはほんのり塩味がきいたあっさり味だった。鶏肉は柔らかく、ほろほろと骨から外れる。
「あれ。米が出てきた……?」
スープがゆのような感じだ。胃に優しそうだな。一口食べると体に染み入るような感じだ。自分では気づかないうちに疲れていたのかな。
「うん。鶏肉の中にもち米などを詰めて煮込んであるんだ。コラーゲンも豊富だから女性にも人気があるんだよ」
「薄味かと思ったが食べ続けてくとこれくらいがちょうどいいな」
「うん。ほどよいね。それに朝鮮人参、なつめ、松の実、クコの実、栗、にんにくなどの漢方の食材が入ってるから、疲労回復、血行促進やストレス改善など弱ってる身体を本来の機能に戻してくれるんだ」
「漢方っていうからもっと薬っぽいのかと身構えたが、普通に美味しいし食べやすいぜ。ありがとな。わざわざ近場で探してくれたんだろ?」
「いやぁ。僕も食べたかったんだよ」
安住の口元が上がってる。嬉しそうな表情を見てるとこっちまでニヤけてくる。そういえばこいつのこんな顔を見るのは久しぶりだな。それだけ仕事に追われてるということか。仕事に忙殺されてプライベートの時間まで失くしてしまうところだった。
「ちょうど一時間だったね。ちょっとは気晴らしになった?」
食べ終わるとすぐに社に引き返してきた。この時間帯はエレベーターに乗る人も少ない。二人だけだ。乗った瞬間俺は安住を抱きしめた。
「く、倉沢……」
「もう少し充電させてくれ」
「……うん」
「ごめんな。俺は優柔がきかない。仕事を達成する事に集中するとお前をないがしろにしてしまう。寂しい想いをさせてたんじゃないか?」
「そ、そんなこと……ない」
嘘だな。安住は俺に嘘をつけない。ついてないはずの尻尾や耳が俺には見える気がするからだ。普段は誰にでも愛想よい王子様気質で本音を人に見せないのだが、俺の前では素でいてくれる。そんなところが堪らなく可愛い。
「本当はさ、安住の飯が一緒に食いたいんだ」
「っ! うん。作るよ。何でも言って!」
途端に輝くような笑顔を見せる。でも何言ってんだ。俺が帰れないって事はお前の仕事も忙しいってことじゃないのか?
「今回の企画の最終段階はもう終わったから少しはなんとかなるんだ」
「本当か? あさってなら早くあがれそうだぜ」
「そうか! じゃあ晩御飯何が良い?」
「揚げたてのからあげとか食いたいな」
胃袋って贅沢なもので、あっさり系の次はがっつりしたものが食いたいって思ってしまう。
「わかった。まかしといて!」
嬉しそうな安住の背後で大きな尻尾が揺れてる気がした。
――――――――
安住が攻めです(笑)倉沢はクールな無自覚美人受けです。安住にだけ甘い言葉を吐いてしまうというのを本人は気づいてないです。安住はベットの中では狼になりますw
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