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第二章:辺境伯は溺愛中
26隠し部屋
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突然私に教育係が付いた。なんでもブルーノが貴族に嫁に出すのなら内面も淑女にならなくてはいけないと王都から呼び寄せてくれたらしい。なんで今頃?お父様は王都と名のつくものなら何でも喜んで受け入れてしまう。
「はじめまして。今日からお世話をさせていただきます」
平凡な顔立ちの女性の教育係を見てうんざりしたわ。もっと洗練された女性が来るかと思ったのに。
「どうしてそんなつまらない顔をされてるのですか?」
「うるさいわね。貴方なんかに私の気持ちが分かるものですか!私は爵位の高い高貴な方に嫁ぐことが決められていたのよ。それなのにどうして?私のような美しくて可愛い女性がどうして……」
「はい!そこまでよ!まず、どうして爵位の高い方に嫁がないといけないのですか?」
「え……だってそれはお父様が」
「そこにお嬢様の。アンジェリカ・ノワールの気持ちは?考えはあるの?」
「わ、私の考えですって?だってお父様は女は余計なことを考えるなと……」
「まあ、女性に向かって女呼ばわりするなんて!そんなの女性蔑視よ!」
「そんなの……お父様は私を道具にしか見てないのよ!どうせ私なんか誰も相手にしてくれないのよっ」
「悲劇の中心になるのはおやめなさい。相手にしてくれないなら見返してやりなさい」
「え?見返す?」
「ええそうよ。いつまでわがまま人形でいるつもりなの?」
「だって……ううう」
涙がぽろぽろこぼれた。どうして?泣いたことなんかなかったのに。
「よしよし。貴女はちゃんと叱られたことがなかったのね」
ちゃんと叱られる?お父様はいつも怒鳴ってばかり。私は怒鳴られるのが嫌で言う事を聞いていただけで。誰かにこんな風に抱きしめられたのは久しぶりだった。私を抱きしめてくれたのは幼いころにお母さまだけだった。
「うぅうう……」
「貴女はとても純粋な子よ。ただ世の中を知らないだけ。だって誰も教えてくれなかったのだから」
「……ぐす……教えてもらったら皆に好きになってもらえる?」
「ええ。私が教えてあげるわ。うふふ。私ね、一度女の子を育ててみたかったの!」
彼女はお母さまのような匂いがした。それになんとなくアルベルト様に似てる気がする。
◇◆◇
「何?隣国から使者が来るだと?」
「はい。朝方こっそりと通達がまいりました」
なるほど、人目につかぬようにブルーノの元に届いたのか。
「そうかそうか。では吾輩の手紙が届いたのじゃな。がははは」
「なんと送られたのですか?」
「くくく。辺境地にて反乱あり。今なら容易く攻めいることが出来ると言った内容だ」
「反乱が起きるのですか?」
ブルーノが驚いたように聞いてくる。本当に起きなくともよいのだ。ただの噂だけで皆動くのだ。噂好きな馬鹿どもばかりだからな。
「そんなものこちらから起こせばよいのだ。ちょっとそれらしく装うだけで相手はそうだと思い込むだろう。噂とはそういうものだ。がははは」
「なるほど。今までもそうやって噂を流していたのですね」
「ふん。信じる者が悪いのじゃ!」
「ノワール様。ただいま戻りましたっす」
王都に行かせたライナスが帰ってきおったか。今回は荷が多いからとマント男もついていきおった。
「おお!ライナスか!今回も品を持ち帰ったか?」
「いえ。今回は人でした。二十人ほど……」
ライナスは疲れたような顔をしてマント男に支えられていた。
「はあ?なんじゃそれは?」
見れば荷馬車に数人。他にも馬に乗った者達がついてきていた。
「とにかく。おいら今回は緊張して疲れたのでこれで帰らせてもらいます」
「ノワール伯爵。お久しぶりです」
「何でも屋ではないか!久しぶりじゃのお。どうした急に?」
「今回は強者を募集していると聞き及びまして直々に連れてまいりました」
「そうであったか。でも、もう人数はかなり……」
「数は多い方が良いでしょう。俺が連れてきたのはかなりの強者ばかりです。これならこの地を反乱できる」
「わわわ、本気でするのではないぞ。マネだ。マネだけをすればいいのだ」
「そうでした。そうでした。しかし相手に本物だと思わせなければ意味はありませんよね?」
「ぐぬぬぬそうであろうか?」
「ええ。当り前でしょう。ところで私がお渡しした品々はどこに隠されてるのですか?」
「吾輩しか知らぬ隠し部屋じゃ。お前に言われた通り。高貴な者しか手に出来ない高額な品であるからな。侍従だけでなく家の者にも誰にも場所は教えてはおらぬ」
「それはそれは。さすがは伯爵様のお屋敷ですね。隠し部屋がおありとは」
「がははは。そうじゃろう!」
「まさかと思いますが使ってはいないでしょうね?」
「もちろん。吾輩は野蛮なことはする気はない。力を誇示するために必要なだけだ」
「そうなのですね。しかしあれらは手入れが必要なのですよ。いざというときに使えないのでは価値が下がってしまいます」
「何?価値が下がるのか?それは大変だ!高額だったのだからな」
「幸いにもここに居る者は普段から使い慣れておりますので手入れができます。どうかその場所に連れて行ってはもらえないでしょうか?」
「そうか。では仕方ないな……」
はあ。なんだ手入れが必要なら前もって言ってくれておればよいものを。あれだけ資金をかけて手に入れた品なのだから価格が下がるのはよくない。
「お前達。吾輩の部屋をくれぐれも汚さないでくれよ」
吾輩の後をぞろぞろと男たちがついてくる。侍従たちも驚いているではないか。目立ちすぎじゃわい。
「はあ。これはなあ。人に知られず隠しておくから隠し部屋と言ってな……」
「つべこべ言わずに早く教えろ」
男たちの一人が偉そうな口を利く。
「なんだと!吾輩に向かって何を言う」
「伯爵。この者達は平民出のため口の利き方を知らないのです。しかし腕は確かですよ」
「う~む。そうなのか」
吾輩はいつものようにベット脇の奥にあるレバーを引くと戸棚の一部がカタンと動き、そこに手を入れ左右に棚を動かすと壁一面が動き出し、奥にもう一つ部屋が見え出す。そこには数々の貴金属と武器や弾薬が積まれていた。
「くくく。まあまあの数だな。王都のやつもまさか直接この地に運び込まれてるとは思うまい」
何でも屋が満足げに言いながら荷をほどき始める。
「丁寧にしてくれよ。傷はつけないでくれ」
「どれもほとんど開けてねえじゃねえか」
「こっちのは新品だぞ!」
ああ。せっかく綺麗な吾輩の部屋がわら屑や木くずで汚れ始めたではないか。
その時ガチャリと部屋の戸が開いた。誰かが吾輩の部屋に入ろうとしたのだ。
「ん?お前はアンジェリカの教育係ではないか?」
平凡な顔立ちをした彼女がぺこりと頭を下げると吾輩の部屋から出て行こうとする。
「なんじゃ吾輩の部屋で何か用事があったのか?」
「いえ。まだこの屋敷に慣れませんので部屋を間違えてしまって……」
「待て!この光景をみられたからにはここから出すことは出来ねえ」
男の一人が叫ぶ。
はっ。そうだ。こんな武器や弾薬でいっぱいの部屋を見られたら変な噂をたてられるかもしれん。それはマズイぞ。いや、元から噂を立てるためにやっているのだから見られてもいいのか?どうなのだ?わからなくなってきた。
「はじめまして。今日からお世話をさせていただきます」
平凡な顔立ちの女性の教育係を見てうんざりしたわ。もっと洗練された女性が来るかと思ったのに。
「どうしてそんなつまらない顔をされてるのですか?」
「うるさいわね。貴方なんかに私の気持ちが分かるものですか!私は爵位の高い高貴な方に嫁ぐことが決められていたのよ。それなのにどうして?私のような美しくて可愛い女性がどうして……」
「はい!そこまでよ!まず、どうして爵位の高い方に嫁がないといけないのですか?」
「え……だってそれはお父様が」
「そこにお嬢様の。アンジェリカ・ノワールの気持ちは?考えはあるの?」
「わ、私の考えですって?だってお父様は女は余計なことを考えるなと……」
「まあ、女性に向かって女呼ばわりするなんて!そんなの女性蔑視よ!」
「そんなの……お父様は私を道具にしか見てないのよ!どうせ私なんか誰も相手にしてくれないのよっ」
「悲劇の中心になるのはおやめなさい。相手にしてくれないなら見返してやりなさい」
「え?見返す?」
「ええそうよ。いつまでわがまま人形でいるつもりなの?」
「だって……ううう」
涙がぽろぽろこぼれた。どうして?泣いたことなんかなかったのに。
「よしよし。貴女はちゃんと叱られたことがなかったのね」
ちゃんと叱られる?お父様はいつも怒鳴ってばかり。私は怒鳴られるのが嫌で言う事を聞いていただけで。誰かにこんな風に抱きしめられたのは久しぶりだった。私を抱きしめてくれたのは幼いころにお母さまだけだった。
「うぅうう……」
「貴女はとても純粋な子よ。ただ世の中を知らないだけ。だって誰も教えてくれなかったのだから」
「……ぐす……教えてもらったら皆に好きになってもらえる?」
「ええ。私が教えてあげるわ。うふふ。私ね、一度女の子を育ててみたかったの!」
彼女はお母さまのような匂いがした。それになんとなくアルベルト様に似てる気がする。
◇◆◇
「何?隣国から使者が来るだと?」
「はい。朝方こっそりと通達がまいりました」
なるほど、人目につかぬようにブルーノの元に届いたのか。
「そうかそうか。では吾輩の手紙が届いたのじゃな。がははは」
「なんと送られたのですか?」
「くくく。辺境地にて反乱あり。今なら容易く攻めいることが出来ると言った内容だ」
「反乱が起きるのですか?」
ブルーノが驚いたように聞いてくる。本当に起きなくともよいのだ。ただの噂だけで皆動くのだ。噂好きな馬鹿どもばかりだからな。
「そんなものこちらから起こせばよいのだ。ちょっとそれらしく装うだけで相手はそうだと思い込むだろう。噂とはそういうものだ。がははは」
「なるほど。今までもそうやって噂を流していたのですね」
「ふん。信じる者が悪いのじゃ!」
「ノワール様。ただいま戻りましたっす」
王都に行かせたライナスが帰ってきおったか。今回は荷が多いからとマント男もついていきおった。
「おお!ライナスか!今回も品を持ち帰ったか?」
「いえ。今回は人でした。二十人ほど……」
ライナスは疲れたような顔をしてマント男に支えられていた。
「はあ?なんじゃそれは?」
見れば荷馬車に数人。他にも馬に乗った者達がついてきていた。
「とにかく。おいら今回は緊張して疲れたのでこれで帰らせてもらいます」
「ノワール伯爵。お久しぶりです」
「何でも屋ではないか!久しぶりじゃのお。どうした急に?」
「今回は強者を募集していると聞き及びまして直々に連れてまいりました」
「そうであったか。でも、もう人数はかなり……」
「数は多い方が良いでしょう。俺が連れてきたのはかなりの強者ばかりです。これならこの地を反乱できる」
「わわわ、本気でするのではないぞ。マネだ。マネだけをすればいいのだ」
「そうでした。そうでした。しかし相手に本物だと思わせなければ意味はありませんよね?」
「ぐぬぬぬそうであろうか?」
「ええ。当り前でしょう。ところで私がお渡しした品々はどこに隠されてるのですか?」
「吾輩しか知らぬ隠し部屋じゃ。お前に言われた通り。高貴な者しか手に出来ない高額な品であるからな。侍従だけでなく家の者にも誰にも場所は教えてはおらぬ」
「それはそれは。さすがは伯爵様のお屋敷ですね。隠し部屋がおありとは」
「がははは。そうじゃろう!」
「まさかと思いますが使ってはいないでしょうね?」
「もちろん。吾輩は野蛮なことはする気はない。力を誇示するために必要なだけだ」
「そうなのですね。しかしあれらは手入れが必要なのですよ。いざというときに使えないのでは価値が下がってしまいます」
「何?価値が下がるのか?それは大変だ!高額だったのだからな」
「幸いにもここに居る者は普段から使い慣れておりますので手入れができます。どうかその場所に連れて行ってはもらえないでしょうか?」
「そうか。では仕方ないな……」
はあ。なんだ手入れが必要なら前もって言ってくれておればよいものを。あれだけ資金をかけて手に入れた品なのだから価格が下がるのはよくない。
「お前達。吾輩の部屋をくれぐれも汚さないでくれよ」
吾輩の後をぞろぞろと男たちがついてくる。侍従たちも驚いているではないか。目立ちすぎじゃわい。
「はあ。これはなあ。人に知られず隠しておくから隠し部屋と言ってな……」
「つべこべ言わずに早く教えろ」
男たちの一人が偉そうな口を利く。
「なんだと!吾輩に向かって何を言う」
「伯爵。この者達は平民出のため口の利き方を知らないのです。しかし腕は確かですよ」
「う~む。そうなのか」
吾輩はいつものようにベット脇の奥にあるレバーを引くと戸棚の一部がカタンと動き、そこに手を入れ左右に棚を動かすと壁一面が動き出し、奥にもう一つ部屋が見え出す。そこには数々の貴金属と武器や弾薬が積まれていた。
「くくく。まあまあの数だな。王都のやつもまさか直接この地に運び込まれてるとは思うまい」
何でも屋が満足げに言いながら荷をほどき始める。
「丁寧にしてくれよ。傷はつけないでくれ」
「どれもほとんど開けてねえじゃねえか」
「こっちのは新品だぞ!」
ああ。せっかく綺麗な吾輩の部屋がわら屑や木くずで汚れ始めたではないか。
その時ガチャリと部屋の戸が開いた。誰かが吾輩の部屋に入ろうとしたのだ。
「ん?お前はアンジェリカの教育係ではないか?」
平凡な顔立ちをした彼女がぺこりと頭を下げると吾輩の部屋から出て行こうとする。
「なんじゃ吾輩の部屋で何か用事があったのか?」
「いえ。まだこの屋敷に慣れませんので部屋を間違えてしまって……」
「待て!この光景をみられたからにはここから出すことは出来ねえ」
男の一人が叫ぶ。
はっ。そうだ。こんな武器や弾薬でいっぱいの部屋を見られたら変な噂をたてられるかもしれん。それはマズイぞ。いや、元から噂を立てるためにやっているのだから見られてもいいのか?どうなのだ?わからなくなってきた。
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