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第二章:辺境伯は溺愛中
11マリッジブルー
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いよいよ卒業間近となった。サムの考えでは卒業と同時に教会に行って式を挙げるつもりだったらしいが、そんなにうまくいく話でなかった。
3日後の卒業式に出席するために各地から生徒の家族が王都へと集まっていた。今、俺たちの前にはサミュエルの父親であるレイノルドがいる。
「サミュエルよ。お前卒業後はすぐに辺境地に行って騎士団誘致のために動き回るのだろう?その間はアルベルトが屋敷を采配しないといけないようになる。学生が卒業したからと言って急に主になれるわけがないだろう。それにお前はここよりも険しい道を選んだのだぞ。アルベルトにも考える猶予を与えるべきだ!」
まったくもって……そのとおりだった。正論過ぎて言葉が見つからない。勢いのまま婚姻しても僕自身どうすればいいのか右も左もわからない。だからと言ってサミュエルに頼り切るのも嫌だ。自分の力で出来ることはしたい。
「父上。俺の意思は変わらない。俺の伴侶はアルだけだ。でも見も知らぬ場所でいきなり領主の伴侶になれというのも酷な事だと理解はした。だから、父上の意見を取り入れて一筆書き込むことにする」
「ほほお。お前も少しは大人になったのだな」
「アルベルトに見合う男になるためだ」
「はははは!言う様になりおったわい」
「はあ?」
まただ、この二人は通じるところがあるのだろう。僕や周辺の者を取り残して勝手に話を進めてしまう。
「いい加減にしてください!婚姻は二人でするものです。僕の意見も聞かずに進めるならなかったことにしていただきますよ!」
僕は踵を返して部屋を飛び出した。
「ま、待て!アル!すまない!つい……」
サミュエルが背後で叫んでるが無視して走って逃げてきた。まったく人をバカにするのもほどがある!僕の話じゃないか。なんだよ。なんで僕に説明してくれないのさ。全速力で走り抜けた。僕は身体の芯は細いが足は速い。すぐには追いつけないだろう。ふん。今頃心配してる事だろう。
「……そうだ。心配してくれてるんだな」
急に頭がさめてくる。ついカッとなって飛び出してしまったが僕の事を考えてくれていたのに。
「だめだなあ。すぐに頭に血が上る。こういうところは母さまに似たのかなあ」
トボトボと寄宿舎の近くまで戻ると子供じみだ自分の行為が恥ずかしくなってくる。
「ああ。公爵様に呆れられたかもしれない」
息子にふさわしくない相手だと思われたらどうしよう。今更ながら身分の違いにとんでもないことをしたと気づく。その場で頭を抱えて座り込んだ。
「もぉどうしよう。僕はなにをやってるんだろう」
「アルベルト?そんなところでどうしたの?」
聞き覚えのある声に驚いて振り返ると母さまがいた。
「え?母さま?どうしてここに?」
「何を言ってるの。卒業式の前に公爵様にご挨拶をしておかないといけないでしょ?だからまずは貴方に会おうと思ってやってきたのよ」
「ぐす……もぉだめかもしれません。僕は離婚されてしまうかもしれない!」
「え?離婚?まだ結婚もしてないじゃないの?」
「うう。どうしよう。サミュエルの事が好きなのに。僕……僕は」
「まあまあ。いい男の子がそんな風に泣くものじゃないのよ。いらっしゃい」
母さまが両手を広げて僕を抱きしめてくれた。久しぶりだ。こんな風に泣きじゃくったのは。
「さあ、それで。サミュエルさんはどうされるの?」
「え?!」
泣きべそをかいてる横でいつの間にかサミュエルがいた。それも凄い気まずそうだ。
「すまない。すぐに追いついたのだが、声をかけるタイミングをなくしてしまって」
「何があったのかは知りませんが、とりあえず今日のところは私がこの子を連れて帰ってもいいかしら?」
「……わかりました。寮には伝えておきます」
サミュエルはそれだけ言って僕を見送った。ごめんよ。だけど今は謝りたくないんだ。
ここの寄宿学校には親族の泊まるスペースもある。サミュエルの父親の公爵家などは王都にも別邸があるのでそちらに居られるが僕のところのような三流の子爵家にはそのような別邸を持つのも難しい。従って母さまたちは親族スペースで今日は泊まるようだった。
「今日は私とコンラッドで来たのよ。明日にはお父様と他の子達も来る予定よ」
部屋に入ると一番上の兄上が驚いて駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?そんなに目が腫れて」
僕って泣きすぎたのか?見てすぐわかるほど目が腫れてるの?
「今日は久しぶりに三人で寝ようと思ってね」
母さまが片目をつぶってみせた。素敵だ。余計なことは言わないで居てくれるのが嬉しい。
「それで、何があったのか僕にも教えてくれないか?」
コンラッド兄上が心配そうに聞いてくる。母さまがいれてくれたホットココアを飲みながら僕はぽつりと話し始めた。あったかい飲み物は気持ちを落ち着かせてくれる。
「不安なんだと思う。サムの事は好きで一緒に居たい。離れたくないけど、新しい生活に馴染めるのか。僕が領地経営なんてのを手伝えるのか。ちょっと怖くなっちゃって……だから余計に腹が立って飛び出したんだと思う」
「マリッジブルーだったのね」
「「はあ?」」
僕と兄上は互いに顔を見合わせた。
「何それ?」
「ふふ。マリッジブルーってね。結婚直前になって急に不安になったり、気持ちが沈んでしまったりすることを言うのよ。婚姻するんだと自覚し始めると、家庭を築くことへの責任や不安や迷いが現れちゃって、本当にこのまま伴侶になって良いのかと精神的に落ち込んでしまったりするものなのよ」
「そ、そうなのか。僕はマリッジブルーなの?」
「不安に思ってる事をぶちまけてしまいましょう!さあなんでも言ってちょうだい」
「何が不安なのかもわからないよ」
「そうね。じゃあ婚姻後どうしたいかなど聞かせてちょうだいな」
「辺境地についたら屋敷の者達の統率をとって領地経営に励もうかと……」
「はい。それね。上から目線じゃないの?」
「ええ?そ、そうなの?」
「そうよ。まずは新参者です~。教えて下さ~いでしょ?貴族だからっていきなり統率なんてとれるはずないでしょ?徐々にでいいのよ。いきなりなんでも出来たら逆に怖いわよ!」
「そうなの?屋敷の者達にばかにされたりしない?」
「されるかもしれないわね。でもいいじゃないの。出来るようになってから見返してやればいいのよ。だめなのは出来ないのに偉そうにしたり出来るフリをすることよ。汗水たらして頑張ったらいいのよ」
「でも、辺境伯って偉いんでしょ?」
「偉いって位が高いってことでしょ?エラそうにするのが偉いってことじゃないんじゃないの?」
母さまは凄い。僕は目からうろこがポロポロとこぼれ落ちた。
「あのね。新しい場所や誰かと一緒に生活をしていくって慣れるまでは不安はつきものなのよ。でも、それでもアルベルトはサミュエルと一緒にいたいの?」
「…………うん。居たいと思う」
「ふふふ。そうなのね。彼の為なら頑張れそう?」
「うん。頑張れそう……だとは思う」
「そう、じゃあ今の不安に思う気持ちをきちんとサミュエルとも話し合うべきね」
「そっか。そうだね」
それまで黙って聞いていた兄上が口を開いた。
「僕はアルベルトを無条件で応援するよ。どこにいてもお前は可愛い僕の弟だ。何かあったらすぐに言っておいで。でもまあアルなら大丈夫さ。だって家族の中で一番母上に似てるからね」
「まあ。何よその言い方!」
「いやあ、母上には誰もかなわないからね」
「あはは。違いないね」
「私からひとつだけ貴方に言えることは……嫌になったらいつでも帰ってらっしゃい!貴方は私の可愛い息子だもの!誰にも何も言わせないわ!」
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「父上。俺の意思は変わらない。俺の伴侶はアルだけだ。でも見も知らぬ場所でいきなり領主の伴侶になれというのも酷な事だと理解はした。だから、父上の意見を取り入れて一筆書き込むことにする」
「ほほお。お前も少しは大人になったのだな」
「アルベルトに見合う男になるためだ」
「はははは!言う様になりおったわい」
「はあ?」
まただ、この二人は通じるところがあるのだろう。僕や周辺の者を取り残して勝手に話を進めてしまう。
「いい加減にしてください!婚姻は二人でするものです。僕の意見も聞かずに進めるならなかったことにしていただきますよ!」
僕は踵を返して部屋を飛び出した。
「ま、待て!アル!すまない!つい……」
サミュエルが背後で叫んでるが無視して走って逃げてきた。まったく人をバカにするのもほどがある!僕の話じゃないか。なんだよ。なんで僕に説明してくれないのさ。全速力で走り抜けた。僕は身体の芯は細いが足は速い。すぐには追いつけないだろう。ふん。今頃心配してる事だろう。
「……そうだ。心配してくれてるんだな」
急に頭がさめてくる。ついカッとなって飛び出してしまったが僕の事を考えてくれていたのに。
「だめだなあ。すぐに頭に血が上る。こういうところは母さまに似たのかなあ」
トボトボと寄宿舎の近くまで戻ると子供じみだ自分の行為が恥ずかしくなってくる。
「ああ。公爵様に呆れられたかもしれない」
息子にふさわしくない相手だと思われたらどうしよう。今更ながら身分の違いにとんでもないことをしたと気づく。その場で頭を抱えて座り込んだ。
「もぉどうしよう。僕はなにをやってるんだろう」
「アルベルト?そんなところでどうしたの?」
聞き覚えのある声に驚いて振り返ると母さまがいた。
「え?母さま?どうしてここに?」
「何を言ってるの。卒業式の前に公爵様にご挨拶をしておかないといけないでしょ?だからまずは貴方に会おうと思ってやってきたのよ」
「ぐす……もぉだめかもしれません。僕は離婚されてしまうかもしれない!」
「え?離婚?まだ結婚もしてないじゃないの?」
「うう。どうしよう。サミュエルの事が好きなのに。僕……僕は」
「まあまあ。いい男の子がそんな風に泣くものじゃないのよ。いらっしゃい」
母さまが両手を広げて僕を抱きしめてくれた。久しぶりだ。こんな風に泣きじゃくったのは。
「さあ、それで。サミュエルさんはどうされるの?」
「え?!」
泣きべそをかいてる横でいつの間にかサミュエルがいた。それも凄い気まずそうだ。
「すまない。すぐに追いついたのだが、声をかけるタイミングをなくしてしまって」
「何があったのかは知りませんが、とりあえず今日のところは私がこの子を連れて帰ってもいいかしら?」
「……わかりました。寮には伝えておきます」
サミュエルはそれだけ言って僕を見送った。ごめんよ。だけど今は謝りたくないんだ。
ここの寄宿学校には親族の泊まるスペースもある。サミュエルの父親の公爵家などは王都にも別邸があるのでそちらに居られるが僕のところのような三流の子爵家にはそのような別邸を持つのも難しい。従って母さまたちは親族スペースで今日は泊まるようだった。
「今日は私とコンラッドで来たのよ。明日にはお父様と他の子達も来る予定よ」
部屋に入ると一番上の兄上が驚いて駆け寄ってきた。
「どうしたんだ?そんなに目が腫れて」
僕って泣きすぎたのか?見てすぐわかるほど目が腫れてるの?
「今日は久しぶりに三人で寝ようと思ってね」
母さまが片目をつぶってみせた。素敵だ。余計なことは言わないで居てくれるのが嬉しい。
「それで、何があったのか僕にも教えてくれないか?」
コンラッド兄上が心配そうに聞いてくる。母さまがいれてくれたホットココアを飲みながら僕はぽつりと話し始めた。あったかい飲み物は気持ちを落ち着かせてくれる。
「不安なんだと思う。サムの事は好きで一緒に居たい。離れたくないけど、新しい生活に馴染めるのか。僕が領地経営なんてのを手伝えるのか。ちょっと怖くなっちゃって……だから余計に腹が立って飛び出したんだと思う」
「マリッジブルーだったのね」
「「はあ?」」
僕と兄上は互いに顔を見合わせた。
「何それ?」
「ふふ。マリッジブルーってね。結婚直前になって急に不安になったり、気持ちが沈んでしまったりすることを言うのよ。婚姻するんだと自覚し始めると、家庭を築くことへの責任や不安や迷いが現れちゃって、本当にこのまま伴侶になって良いのかと精神的に落ち込んでしまったりするものなのよ」
「そ、そうなのか。僕はマリッジブルーなの?」
「不安に思ってる事をぶちまけてしまいましょう!さあなんでも言ってちょうだい」
「何が不安なのかもわからないよ」
「そうね。じゃあ婚姻後どうしたいかなど聞かせてちょうだいな」
「辺境地についたら屋敷の者達の統率をとって領地経営に励もうかと……」
「はい。それね。上から目線じゃないの?」
「ええ?そ、そうなの?」
「そうよ。まずは新参者です~。教えて下さ~いでしょ?貴族だからっていきなり統率なんてとれるはずないでしょ?徐々にでいいのよ。いきなりなんでも出来たら逆に怖いわよ!」
「そうなの?屋敷の者達にばかにされたりしない?」
「されるかもしれないわね。でもいいじゃないの。出来るようになってから見返してやればいいのよ。だめなのは出来ないのに偉そうにしたり出来るフリをすることよ。汗水たらして頑張ったらいいのよ」
「でも、辺境伯って偉いんでしょ?」
「偉いって位が高いってことでしょ?エラそうにするのが偉いってことじゃないんじゃないの?」
母さまは凄い。僕は目からうろこがポロポロとこぼれ落ちた。
「あのね。新しい場所や誰かと一緒に生活をしていくって慣れるまでは不安はつきものなのよ。でも、それでもアルベルトはサミュエルと一緒にいたいの?」
「…………うん。居たいと思う」
「ふふふ。そうなのね。彼の為なら頑張れそう?」
「うん。頑張れそう……だとは思う」
「そう、じゃあ今の不安に思う気持ちをきちんとサミュエルとも話し合うべきね」
「そっか。そうだね」
それまで黙って聞いていた兄上が口を開いた。
「僕はアルベルトを無条件で応援するよ。どこにいてもお前は可愛い僕の弟だ。何かあったらすぐに言っておいで。でもまあアルなら大丈夫さ。だって家族の中で一番母上に似てるからね」
「まあ。何よその言い方!」
「いやあ、母上には誰もかなわないからね」
「あはは。違いないね」
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