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37龍の番**

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 いくら慣らされていたとはいえ初めての交わりだったのに。なのにこんなにも感じるのはつがい同士だからなのか?イスベルクはオレを自分の番だと言ってくれていた。ヒトであるオレには番とは伴侶ぐらいにしか理解できなかった。だが今契りを交わすオレの身体の中を渦巻いているこの感覚は。この快感は。ああ、これが番という事か。
 唯一無二。この蕩けるような快感と身の中に蠢く渇望。イスベルクが欲しくてたまらない。突き上げられるたびにもっと奥へと誘い、精を搾り取ろうと自分の内側が収縮するのがわかる。
 オレはどうしてしまったんだろう。こんなにも貪欲だったのだろうか?イスベルクがオレの中に精を吐き出すほどにオレの中が塗り替えられていく気さえする。


「……ルミエール。大丈夫か?」
 耳元でイスベルクの声がする。結局あれからオレの意識が飛ぶまで何度も繋がったのだ。
「すまない。止まらなかった」
 気まずそうに話すイスベルクの眉はへにょっと垂れ下がっていた。可愛い。オレはやられ過ぎてぽわぽわした頭で足腰がたたない状態。うぎゃあ。恥ずかしい。ちゃぽんと水の音がしてようやく自分が浴槽につかっていることに気づく。オレはイスベルクに抱きかかえられる格好で湯船につかっていた。
「汚れた体は綺麗に洗ったのだが、どこか痛いところなぞはないか?」
 え~?洗ってくれたの?ありがとう……って!全部洗ったって事だよね?これってその、アレとかナニとかも?
「うん。えっと、ごめんよ、世話かけちゃって」
「いや。そんなことはない。それより、腹を壊すらしいから掻きだしたいのだが加減がわからなくてな」
「かきだす?」
「……シーヴルが腹に精液をためすぎると壊すと言っていた」
 うがあ、シーヴル。そんなことまで心配してくれるの?ってか今どこに居るのさ?
「今もいるの?」
「いや、さすがに今はいない。風呂には二人ではいると伝えたのでな」
 ほっと息を吐く。腹に手を当てると確かに少し膨らんでるような気がする。ここにイスベルクの雄がはいってたんだ。そう思うと顔が熱くなる。オレ達って本当に契ったんだな。

「そんな可愛い顔をするな。また欲しくなってしまう」
「バカッ。やりすぎ……」
 ざばっと湯船からオレが立ち上がろうとすると足に力が入らなくてそのまま腰を抱かれた。湯船の淵に手をついてイスベルクに尻を向けた姿勢となる。ひゃあ!
「このまま掻きだすからじっとしていてくれ」
 イスベルクの指がつぷっと後ろから挿いると探るような動きをしだす。まだ中が柔らかいのか違和感はさほどもない。むしろまだ敏感な場所を抉られ喘ぎ声が出てしまう。
「んぁッ……ぁん!……だめ……そこ……ぁあ」
「……ここか?」
 ぐりっと擦られ背中をそらす。
「やぁっ……んああ」
「はっ。その声は腰にクるな……。ったく、自分がこんなに堪えしょうがないとは思わなかった」
「んぁ……まだ、そこ、だめぇ……イスベルク?」

 ズンッ!と背後から挿入されその雄を締め付けてしまう。さんざん慣らされさきほどまで雄の形を咥え込んでいたそこは容易に受け入れてしまった。
「ぁあああっ」
「……くっ。ぁあ凄いぞ。絡みついて俺を離そうとしない」
「やぁ……洗ったのに……」
「また洗えばいい。ここなら汚れてもすぐに洗えるぞ」
 ぐりぐりと擦り付けるようにグラインドさせられるともうダメだった。気持ちいイイ。良すぎてダメになりそうだ。ばちゅんばちゅんとお湯が波立ち喘ぎ声が浴室に響く。一つの淫らな生き物になったように。
「はぁ……おかしく……なる」
「なってしまえ……どうあってもお前はお前だ。俺の前ではお前は何者でもない。俺の半身だ」
 ストンとその言葉が身に落ちた。そうか、オレはオレなのだ。名前がなんであれ今ここに存在してるオレはイスベルクの番であるオレなんだ。俺は立原陽向たちはらひなたで、僕はルミエールで。
だがそのどれもがオレ自身なんだ。分ける必要なぞないのだと。
「ふっくく。俺の番は頼もしいな」
「へ?なに?オレのかんがえてることがわかるの?」
「ああ。繋がっているからな」
「え?じや。オレが、その」
「小説とか転生とかのことか?」
 そんな、なんでもないことのように言うなんて?ぎゅっと後ろから抱きしめられる。二度と離さないというように。
「少しだけ他者よりも情報が多いだけだろう?お前は今ここで生きているのだから、此処がお前の世界であろう?違うのか?」
「違わない」
 そうだ。違わない。その通りだ。イスベルクはいつだってオレが欲しい言葉をくれる。
「ふふ。そしてお前は今、龍のつがいでもある」
「龍の番?」
「そうだ。それに俺の精をその身に受け続けることで俺と同じ時間を生き続ける。もうヒトではない。だが決して後悔はさせないと誓う」
「同じ時間を一緒に?」
「そうだ」
 イスベルクが耳元であまく囁く。もう一人ではないのだと。そうだ、オレ達は一緒に生きていくんだ。
「お前が望むなら子作りも可能だぞ」
「へ?……こ、子づく……りって?」
 その行為はもうしてるじゃん!え?どっちが産むの?やっぱオレかな?ドキドキと鼓動が速くなる。
「ふふ。まずは存分に愛させてくれ」
「んぁ……イスベ……ルク。あいしてる」

 止まっていた動きが緩やかに再開した。明日は一日ベットから動けないだろうなと思いながらも、愛しい番の願いは何度でも受け入れたくなるのだ。


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