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28ミコトの誤算
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「くそっ。思い通りに行かないっ」
元から占いが得意だったわけではない。当たるときは当たるが、当たらないときは本当に当たらない。ただ、ここに潜り込むには占い師の方が都合がよかっただけだ。
この北の大地は元々は玄武が納めていた。それをアイスドラゴンに奪われたのだ。玄武の一族は昔から吉凶を占うのを得意なものが多かった。子孫達もそのチカラを受け継いでいる。今は各地に散らばってしまったけど。皆は新天地へ向かうと言ってここを離れてしまった。だがわらわは過去の栄光を忘れることなんて出来はしなかった。必ずこの地をまた玄武の里へと戻して見せる。そう願い続けて何十年がたっただろうか。だがやっとその願いが叶うところまで来ているのだ。なのに。
「何故最後の詰めが上手くいかないのだ?」
城に近い北の街に一角に住居を構えた。ここは商人がよく来る商いの街だ。氷の国でとれる鉱石の管理は城が行うためその窓口として作られた街でもある。
占いでアイスドラゴンの番は北東の山沿いの村にいると出た。ならばとそのあたりにミスリルの鉱山があると占いが出たと言って噂を流せばいい。当たるも八卦。当たらずも八卦。自分はただ噂話をしただけ。そこで戦がおころうが知ったことではない。運よく本当に番はいたようだ。それも戦でひどいケガをし体内の魔力が上手く機能しない体になったと。笑いが込み上げてきた。ほんの些細な仕返し。その程度に思っていた。
そして時を待った。番は身ごもり男子を出産し体調を崩していると聞き喜んだ。だがアイスドラゴンのチカラは強大で攻め入ることはできない。
更に時を待ち、番が二人目を出産し寝たきりになったと聞き喜び勇んだ。城にも占い好きな者は多い。わらわは偵察のため、この国の吉凶を占いましょうぞと宰相に声をかけた。半信半疑でわらわに占いをさせた宰相に感謝を。
そこでこのままでは氷の国は衰退するであろうと滅びの言葉を告げてみた。宰相は憤慨したが、黙って頭を抱えていた。わかっておったのじゃろう。ドラゴンは番に執着する生き物だ。それが動けないときたらこの城から離れることは出来ないだろうことを。意気揚々と帰宅した後、すぐに呼び出された。
何事かと思い城に向かうと第一子を占えと言う。12歳の子を戦場に出すと言うのだ。占いもせずに喜んで吉だと答えた。幼い子を戦に出すなんてよほど逼迫してるに違いない。滅んでしまえと呪いながら。すぐに各地にアイスドラゴンのチカラが弱っている。今ならミスリルが手に入るぞと噂を流しまくった。
だがいつまでたっても敗戦の話は聞かない。なぜなら第一子は見事に全滅させて戦に勝利していたのだ。それにいきなり大人に成長していた。なんだこいつは?これがアイスドラゴンの血か!こんなことがあってたまるか!次々に商人たちを手玉に取り、占いをすると言いながらある事ないことを吹き込み戦を起こすように手を回した。どいつもこいつもミスリルの原石をみせるだけでその気になった。その場で身に着けさせ魔法を使わすだけでその効果に目を瞠ったのだ。
そんな事を続けているうちに手元のミスリルも残り少なくなってしまった。これ以上手放すと占い自体ができなくなってしまう。占いにはミスリルが必要なのだ。しばらく大人しくしていると周りは終戦になったと喜んでいる。
ある日、城から宰相の使いがきた。こいつは何かあるたびにわらわに占いを頼むことが増えていた。ふふふ。これまでの占いがわらわの思い付きだと知ったらどう思うだろうか。すると今度は第一子の吉凶を占えという。
久しぶりにと本気で占ってみた。答えは吉。国名まではっきりと見えたので気分良く帰宅した。占い先の国が炎の国だったからだ。あんな常夏の国。真冬の育ちの者が行くなんて気がおかしいとしか思えない。もし行くのなら戻ってこれないだろうと思いながら。
だから第一子が城を抜け出したと聞いた時は喜んで大笑いしたのに。無事に帰ってくるなんて。しかも番を連れて。これは新たに火種をまかなければ……。今度こそ。破滅に追いやって見せるのじゃ。
元から占いが得意だったわけではない。当たるときは当たるが、当たらないときは本当に当たらない。ただ、ここに潜り込むには占い師の方が都合がよかっただけだ。
この北の大地は元々は玄武が納めていた。それをアイスドラゴンに奪われたのだ。玄武の一族は昔から吉凶を占うのを得意なものが多かった。子孫達もそのチカラを受け継いでいる。今は各地に散らばってしまったけど。皆は新天地へ向かうと言ってここを離れてしまった。だがわらわは過去の栄光を忘れることなんて出来はしなかった。必ずこの地をまた玄武の里へと戻して見せる。そう願い続けて何十年がたっただろうか。だがやっとその願いが叶うところまで来ているのだ。なのに。
「何故最後の詰めが上手くいかないのだ?」
城に近い北の街に一角に住居を構えた。ここは商人がよく来る商いの街だ。氷の国でとれる鉱石の管理は城が行うためその窓口として作られた街でもある。
占いでアイスドラゴンの番は北東の山沿いの村にいると出た。ならばとそのあたりにミスリルの鉱山があると占いが出たと言って噂を流せばいい。当たるも八卦。当たらずも八卦。自分はただ噂話をしただけ。そこで戦がおころうが知ったことではない。運よく本当に番はいたようだ。それも戦でひどいケガをし体内の魔力が上手く機能しない体になったと。笑いが込み上げてきた。ほんの些細な仕返し。その程度に思っていた。
そして時を待った。番は身ごもり男子を出産し体調を崩していると聞き喜んだ。だがアイスドラゴンのチカラは強大で攻め入ることはできない。
更に時を待ち、番が二人目を出産し寝たきりになったと聞き喜び勇んだ。城にも占い好きな者は多い。わらわは偵察のため、この国の吉凶を占いましょうぞと宰相に声をかけた。半信半疑でわらわに占いをさせた宰相に感謝を。
そこでこのままでは氷の国は衰退するであろうと滅びの言葉を告げてみた。宰相は憤慨したが、黙って頭を抱えていた。わかっておったのじゃろう。ドラゴンは番に執着する生き物だ。それが動けないときたらこの城から離れることは出来ないだろうことを。意気揚々と帰宅した後、すぐに呼び出された。
何事かと思い城に向かうと第一子を占えと言う。12歳の子を戦場に出すと言うのだ。占いもせずに喜んで吉だと答えた。幼い子を戦に出すなんてよほど逼迫してるに違いない。滅んでしまえと呪いながら。すぐに各地にアイスドラゴンのチカラが弱っている。今ならミスリルが手に入るぞと噂を流しまくった。
だがいつまでたっても敗戦の話は聞かない。なぜなら第一子は見事に全滅させて戦に勝利していたのだ。それにいきなり大人に成長していた。なんだこいつは?これがアイスドラゴンの血か!こんなことがあってたまるか!次々に商人たちを手玉に取り、占いをすると言いながらある事ないことを吹き込み戦を起こすように手を回した。どいつもこいつもミスリルの原石をみせるだけでその気になった。その場で身に着けさせ魔法を使わすだけでその効果に目を瞠ったのだ。
そんな事を続けているうちに手元のミスリルも残り少なくなってしまった。これ以上手放すと占い自体ができなくなってしまう。占いにはミスリルが必要なのだ。しばらく大人しくしていると周りは終戦になったと喜んでいる。
ある日、城から宰相の使いがきた。こいつは何かあるたびにわらわに占いを頼むことが増えていた。ふふふ。これまでの占いがわらわの思い付きだと知ったらどう思うだろうか。すると今度は第一子の吉凶を占えという。
久しぶりにと本気で占ってみた。答えは吉。国名まではっきりと見えたので気分良く帰宅した。占い先の国が炎の国だったからだ。あんな常夏の国。真冬の育ちの者が行くなんて気がおかしいとしか思えない。もし行くのなら戻ってこれないだろうと思いながら。
だから第一子が城を抜け出したと聞いた時は喜んで大笑いしたのに。無事に帰ってくるなんて。しかも番を連れて。これは新たに火種をまかなければ……。今度こそ。破滅に追いやって見せるのじゃ。
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