28 / 41
27欲しい人材Sideグラソン
しおりを挟む
なんでこうなった?挙式は出来るだけ引き伸ばすつもりだった。婚姻だけでも今すぐしてしまうだと?ふざけるな順番が違うとユージナルに怒鳴ると皇帝陛下のご命令だと言うのだ。陛下の命令には背くわけにはいかない。仕方なく証人にたった。やはり占いの通りなのか?
イスベルク様が城に戻られる前に占い師のミコトが現れ吉凶が間違っていたと言い出していたのを思いだす。
「どうも最近年齢のせいか読み間違えてしまって。南は凶でございました。イスベルク様が凶を連れて戻られます。アレはこの国に最凶をもたらすでしょう」
「なんともいい加減なことを!お前の占いのせいでイスベルク様がここを離れられたというのに!今更そのような話ができると思っているのか!」
どうせ炎の国の王子なぞすぐにこの国を出て行くと思っていた。城の侍従達も暴力的なわがままな末王子がやってくるのではと警戒していたのではなかったのか?いまや素直で物怖じしないルミエールに毒気を抜かれたようになっているという。
一番呆れかえったのは晩餐会の最中に。それも食事中に。倒れる様に眠ってしまっていたことだ。いくら長旅で疲れていたにしてもありえないだろう?皇帝陛下や側近の重臣たちが居るのだぞ。緊張こそすれ寝てしまうなどと。何たる失態。これが皇太子の伴侶候補だと?そしてそれを咎めることもなくイスベルク様はご自分の膝にのせてしまった。膝にだと?どうされてしまったのだ?あれだけ威厳に満ちたお方が?そんな蕩けるような顔をして。溺愛されてるのですか?そんなか細い少年を?
イスベルク様は仕事以外に興味がなかったはずなのに。何かと時間を見つけてはルミエールの元へと向かわれるようになった。
「ルミエールはいるか?」
「はい。お部屋で休んでおられます」
侍従が音もなく現れて返事をする。昼寝をしているのか?呑気なものだな。私がこんなに走り回っているのに。きっと甘やかされて育ってきたのだろう。
すぅすぅと寝息を立てて眠るルミエールの髪をかきあげ頬ずりをするイスベルク様。なんだか見てはいけないものをみたような倒錯した気分になる。
「……イスベルク?」
「ああ。起きたのか?」
「来てくれたの?僕に何か用事?」
「いや、その。食事を……そうだ、食事に誘おうと思ってきたのだ」
「食事? もうそんな時間なの?そういえばお腹減ったかも」
「そうだ。体調はどうだ?良くないのなら一緒にここで食事をしないか?」
「本当?今日は一緒にランチができるの?」
なんだと?昼の会食はどうなる?予定されている議題はいくつかあるのだぞ。寄り道をするというからついてきたらこのざまだ。まったく。
「軽くにしておいてください。会食はお茶だけにいたしますので」
すぐさま侍従たちによって食事の用意がされた。小さな椅子にイスベルク様が狭そうに座っている。この部屋はルミエールに合わせて椅子は小さめサイズのなのか。
「ふふ」
「どうした?」
「今度イスベルク用の椅子も用意してもらっておくね」
「ルミエールは細いからな」
「もぉ。細いって言わないで。食事をもらえなかったからだよ。今はちゃんと毎日食べてるから元気だよ」
……食事がもらえないとは?炎の国はそんなに貧しかったのか?いやそんなはずはない。仮にも王子だろ?
「グラソンも一緒に食べよう」
「いえ。私は……」
「お腹が減ってないなら果物だけでもどうぞ」
「では少しだけ」
くそ。こういう気遣いができるから嫌いになれない。思いやりがある子だとは思う。
数日観察してみたがルミエールは見た目にあわせて幼めの口調を使っているが中身は違うような気がする。外見は天使か妖精のようだが中身はもっとはっきりした意思を持っている。時々ハッとするような意見を言ったり大人びた表情をするのだ。聞き分けも良いが思慮深そうな一面も持っている。油断してはいけないと感じさせる何かがあるのは王子としての品格なのか?元来持って生まれたものなのだろうか?
「そういえば私はまだルミエール様の炎魔法を見せていただいたことはありませんがどのような威力なのでしょうか?」
チカラの具合を知っておかなければ。すぐに対処ができなくなるからな。
「グラソン。食事中だぞ」
「いいよ。他の人にも聞かれるから。僕は炎属性とは相性が悪いんだ。ろうそくの炎しか出せないから」
え?ろうそく?炎の国の王子なのに?
「あまりに火炎量が少ないために祖国ではろうそく王子と呼ばれていたんだ。だから僕は本当はイスベルクにはふさわしくないのかもしれないけど……」
「そんなことはない!俺は魔法ができる出来ないで婚姻を決めたわけではない。ルミエールが良いんだ」
「ありがとうイスベルク」
なんだこの甘い空気は。イスベルク様は本気なのか?本当に本気で?
ルミエールが手のひらを上に向けるとろうそくの炎がぽっと浮かぶ。小さいがやわらかな炎だ。ぽっぽっぽっといくつか円を描くように出すとくるくると頭上でまわっている。小さな炎が踊っているようにみえる。
「はい。これでおしまい。ごめんね。このくらいの炎しかだせなくて」
「ルミエールの得意魔法は治癒だ。キャンベルの足を一瞬で治したぞ」
「なんですと!治癒ですか?」
なんと治癒ができるのか!これは使えるかも。戦時で一番困ったのは救護だ。回復魔法士が少なかったからだ。うむ。これは欲しい人材となってしまった。認めたくないが居てくれると助かる。ううむ。
イスベルク様が城に戻られる前に占い師のミコトが現れ吉凶が間違っていたと言い出していたのを思いだす。
「どうも最近年齢のせいか読み間違えてしまって。南は凶でございました。イスベルク様が凶を連れて戻られます。アレはこの国に最凶をもたらすでしょう」
「なんともいい加減なことを!お前の占いのせいでイスベルク様がここを離れられたというのに!今更そのような話ができると思っているのか!」
どうせ炎の国の王子なぞすぐにこの国を出て行くと思っていた。城の侍従達も暴力的なわがままな末王子がやってくるのではと警戒していたのではなかったのか?いまや素直で物怖じしないルミエールに毒気を抜かれたようになっているという。
一番呆れかえったのは晩餐会の最中に。それも食事中に。倒れる様に眠ってしまっていたことだ。いくら長旅で疲れていたにしてもありえないだろう?皇帝陛下や側近の重臣たちが居るのだぞ。緊張こそすれ寝てしまうなどと。何たる失態。これが皇太子の伴侶候補だと?そしてそれを咎めることもなくイスベルク様はご自分の膝にのせてしまった。膝にだと?どうされてしまったのだ?あれだけ威厳に満ちたお方が?そんな蕩けるような顔をして。溺愛されてるのですか?そんなか細い少年を?
イスベルク様は仕事以外に興味がなかったはずなのに。何かと時間を見つけてはルミエールの元へと向かわれるようになった。
「ルミエールはいるか?」
「はい。お部屋で休んでおられます」
侍従が音もなく現れて返事をする。昼寝をしているのか?呑気なものだな。私がこんなに走り回っているのに。きっと甘やかされて育ってきたのだろう。
すぅすぅと寝息を立てて眠るルミエールの髪をかきあげ頬ずりをするイスベルク様。なんだか見てはいけないものをみたような倒錯した気分になる。
「……イスベルク?」
「ああ。起きたのか?」
「来てくれたの?僕に何か用事?」
「いや、その。食事を……そうだ、食事に誘おうと思ってきたのだ」
「食事? もうそんな時間なの?そういえばお腹減ったかも」
「そうだ。体調はどうだ?良くないのなら一緒にここで食事をしないか?」
「本当?今日は一緒にランチができるの?」
なんだと?昼の会食はどうなる?予定されている議題はいくつかあるのだぞ。寄り道をするというからついてきたらこのざまだ。まったく。
「軽くにしておいてください。会食はお茶だけにいたしますので」
すぐさま侍従たちによって食事の用意がされた。小さな椅子にイスベルク様が狭そうに座っている。この部屋はルミエールに合わせて椅子は小さめサイズのなのか。
「ふふ」
「どうした?」
「今度イスベルク用の椅子も用意してもらっておくね」
「ルミエールは細いからな」
「もぉ。細いって言わないで。食事をもらえなかったからだよ。今はちゃんと毎日食べてるから元気だよ」
……食事がもらえないとは?炎の国はそんなに貧しかったのか?いやそんなはずはない。仮にも王子だろ?
「グラソンも一緒に食べよう」
「いえ。私は……」
「お腹が減ってないなら果物だけでもどうぞ」
「では少しだけ」
くそ。こういう気遣いができるから嫌いになれない。思いやりがある子だとは思う。
数日観察してみたがルミエールは見た目にあわせて幼めの口調を使っているが中身は違うような気がする。外見は天使か妖精のようだが中身はもっとはっきりした意思を持っている。時々ハッとするような意見を言ったり大人びた表情をするのだ。聞き分けも良いが思慮深そうな一面も持っている。油断してはいけないと感じさせる何かがあるのは王子としての品格なのか?元来持って生まれたものなのだろうか?
「そういえば私はまだルミエール様の炎魔法を見せていただいたことはありませんがどのような威力なのでしょうか?」
チカラの具合を知っておかなければ。すぐに対処ができなくなるからな。
「グラソン。食事中だぞ」
「いいよ。他の人にも聞かれるから。僕は炎属性とは相性が悪いんだ。ろうそくの炎しか出せないから」
え?ろうそく?炎の国の王子なのに?
「あまりに火炎量が少ないために祖国ではろうそく王子と呼ばれていたんだ。だから僕は本当はイスベルクにはふさわしくないのかもしれないけど……」
「そんなことはない!俺は魔法ができる出来ないで婚姻を決めたわけではない。ルミエールが良いんだ」
「ありがとうイスベルク」
なんだこの甘い空気は。イスベルク様は本気なのか?本当に本気で?
ルミエールが手のひらを上に向けるとろうそくの炎がぽっと浮かぶ。小さいがやわらかな炎だ。ぽっぽっぽっといくつか円を描くように出すとくるくると頭上でまわっている。小さな炎が踊っているようにみえる。
「はい。これでおしまい。ごめんね。このくらいの炎しかだせなくて」
「ルミエールの得意魔法は治癒だ。キャンベルの足を一瞬で治したぞ」
「なんですと!治癒ですか?」
なんと治癒ができるのか!これは使えるかも。戦時で一番困ったのは救護だ。回復魔法士が少なかったからだ。うむ。これは欲しい人材となってしまった。認めたくないが居てくれると助かる。ううむ。
23
お気に入りに追加
208
あなたにおすすめの小説

【本編完結】異世界で政略結婚したオレ?!
カヨワイさつき
BL
美少女の中身は32歳の元オトコ。
魔法と剣、そして魔物がいる世界で
年の差12歳の政略結婚?!
ある日突然目を覚ましたら前世の記憶が……。
冷酷非道と噂される王子との婚約、そして結婚。
人形のような美少女?になったオレの物語。
オレは何のために生まれたのだろうか?
もう一人のとある人物は……。
2022年3月9日の夕方、本編完結
番外編追加完結。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。

ゲームの世界はどこいった?
水場奨
BL
小さな時から夢に見る、ゲームという世界。
そこで僕はあっという間に消される悪役だったはずなのに、気がついたらちゃんと大人になっていた。
あれ?ゲームの世界、どこいった?
ムーン様でも公開しています
【完結】お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
第12回BL大賞奨励賞いただきました!ありがとうございます。僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して、公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…我慢の限界で田舎の領地から家出をして来た。もう戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが我らが坊ちゃま…ジュリアス様だ!坊ちゃまと初めて会った時、不思議な感覚を覚えた。そして突然閃く「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけにジュリアス様が主人公だ!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。だけど何で?全然シナリオ通りじゃないんですけど?
お気に入り&いいね&感想をいただけると嬉しいです!孤独な作業なので(笑)励みになります。
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
愛しの妻は黒の魔王!?
ごいち
BL
「グレウスよ、我が弟を妻として娶るがいい」
――ある日、平民出身の近衛騎士グレウスは皇帝に呼び出されて、皇弟オルガを妻とするよう命じられる。
皇弟オルガはゾッとするような美貌の持ち主で、貴族の間では『黒の魔王』と怖れられている人物だ。
身分違いの政略結婚に絶望したグレウスだが、いざ結婚してみるとオルガは見事なデレ寄りのツンデレで、しかもその正体は…。
魔法の国アスファロスで、熊のようなマッチョ騎士とツンデレな『魔王』がイチャイチャしたり無双したりするお話です。
表紙は豚子さん(https://twitter.com/M_buibui)に描いていただきました。ありがとうございます!
11/28番外編2本と、終話『なべて世は事もなし』に挿絵をいただいております! ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる