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16回復魔法
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移動が北に進むにつれて徐々に肌寒くなってきた。木々の葉の形が違う。尖った形だ。針葉樹だっけ?寒い地方に見られる樹木。いよいよ北の国に近づいてきたんだなと実感する。途中で馬も交代された。足が太いどっしりした軍馬だ。氷の上も走ることが出来るらしい。
氷の国に入る前に北の街に立ち寄る事になる。ここで本格的なオレの防寒服を買い、身支度をするようだ。
「ルミエール。わかっているとは思うが城にはすでに伝えてある」
「はい」
「いろいろ口うるさく言ってくる奴らもいるがお前は気にしなくてもいいからな」
ユージナルが心配そうだ。気にしなくていいわけはないだろうな。なんせ皇太子への貢ぎ物なんだし。でも、貢ぎ物ってなにをしたらいいんだろうか?
「まず、何に気をつけたらいいのか。教えて欲しい」
「ん~。そういわれると困るなあ」
「俺も面倒なことは宰相のグラソンにまかせていたからな」
なるほど。じゃあそのグラソンって人に聞けばいいのか。
「とにかく。気合い入れて衣装を決めようぜ」
「ああ。そちらの方が先だな」
店に入ると毛皮や厚めの防寒着に目がいく。見るからに暖かそうだ。イスベルクは奥で店の人と何やら話し込んでいる。こちらを向いたと思った途端。
「きゃああっ。可愛い子じゃないのぉ!」
めっちゃ距離を詰められ抱きしめられた。しかも凄い筋肉!フリフリのレース姿だけど男の人だよね?
「あわわ……」
ピシピシと音がする。イスベルクかな?
「だめよ!イスベルク様。ここで魔法を使うとアタシの大事な衣装が傷んじゃうじゃない!」
「ルミエールにそれ以上手を出すな!」
イスベルク。タスケテ~。
「何を言っているのよ!近づかなきゃ。サイズが測れないじゃないの!この子に似合う可愛い服を探したいのでしょう?」
「可愛い服……」
「そうよ。アタシの服を着れば今よりももっと可愛く洗練されるわよ!」
「うっ。では仕方がないな。だが引っ付きすぎだ!」
「はいはい。わかっているわよ。もぉ!久しぶりに来たと思ったらこんな可愛い子連れてくるなんて」
「えっと。できれば可愛いよりもカッコいい服だと嬉しいんだけど」
「あら。ちゃんと自分の意見も言えるのね。偉いわ」
「おいおい。キャンベル。その辺にしておいてやれよ。きっとこれから長い付き合いになるぞ」
「あら。そうね!ユージナルったらたまにはいいこと言うわね。お得意様になってちょうだいね?ごめんなさい。アタシはキャンベル。デザイナーよ!お城の服はアタシの作品が多いのよ。実用的な戦闘服から皇后さまの洗練された衣装までなんでも作れるわよ」
「ルミエールです。よろしくお願いします」
その後、寸法を測るたびにきゃあきゃあ騒がれたがイスベルクが俺を抱き込んだので終了となった。
「もういいだろ!」
「あらん。やきもち焼の男は嫌われるわよん。じゃあ、とりあえず既成の服でいくつか見繕うから奥のテーブルでお茶でも飲んでいてねん」
「デザイナーさんって体力居るんだなあ。あんなにもムキムキだなんて……」
「ぎゃははは」
ユージナルが爆笑している。イスベルクは苦笑気味だ。そのキャンベルが衣装をもってやって来た。
「笑い過ぎよ。体力はいるわよ。徹夜で仕上げることなんてしょっちゅうだしね。素敵なデザインが浮かぶと妥協できずにとことんやってしまうのよねえ」
「ルミエール。キャンベルは一時期、俺たちの上官だったのだ」
「ええ?そうだったんですね?」
兵士だったって事?兵士がデザイナーになったの?
「不思議って顔ね。いいわ、教えてあげる。ちょっと失敗して足にけがを負っちゃったのよ。だから戦いごとからは引退したの。それで前から夢だったデザイナーに転職したってわけ!これがまた天職だったのよねえ」
「強かったぞ。引退した時は残念だった」
「あらまあ。そんな風に思っていてくれたなんて嬉しいわ」
キャンベルは可愛らしいスカートをめくり少し引きずり気味の片足を見せてくれた。
「今もときどき痛むのが悔しいんだけど」
ん~。みたところ複雑骨折後の処置が悪かったんじゃないかな?戦の最中じゃすぐに医者に見せられなかったに違いない。これならできるかもしれない。
「よかったら。僕に回復魔法をかけさせてもらえませんか?」
「え?そう?じゃあやって診てくれる?」
「ルミエールは回復魔法も使えるのか?」
「うん。あの国にいた時はいつもイジメられていたからね。自分で治すしかなかったんだ」
大丈夫。オレって傷は治せるんだよ。病気はやっとことがないからわかんないけど。
キャンベルの足を両手で包み込むと少しずつ魔力を流す。ああ、いける。大丈夫だ、これなら。
「ルミエール!」
イスベルクに抱え込まれて目を開くと心配そうな顔を目に映った。しまった、集中しすぎていたらしい。軽くめまいがする。きちんと食事をするようになって少しは体力ついたと思っていたのになあ。
「うそ……歩ける。痛くないわ!今まで何やっても治らなかったのに」
「すごいな!」
ユージナルが驚いている。
「えへへへ」
「ああ。凄いぞ。俺のルミエールは可愛くてたのもしい」
イスベルクも褒めてくれた。ウへへ。オレっておだてられて木に登っちゃうかも。よかった。なにか一つでも役に立てることがあって。
氷の国に入る前に北の街に立ち寄る事になる。ここで本格的なオレの防寒服を買い、身支度をするようだ。
「ルミエール。わかっているとは思うが城にはすでに伝えてある」
「はい」
「いろいろ口うるさく言ってくる奴らもいるがお前は気にしなくてもいいからな」
ユージナルが心配そうだ。気にしなくていいわけはないだろうな。なんせ皇太子への貢ぎ物なんだし。でも、貢ぎ物ってなにをしたらいいんだろうか?
「まず、何に気をつけたらいいのか。教えて欲しい」
「ん~。そういわれると困るなあ」
「俺も面倒なことは宰相のグラソンにまかせていたからな」
なるほど。じゃあそのグラソンって人に聞けばいいのか。
「とにかく。気合い入れて衣装を決めようぜ」
「ああ。そちらの方が先だな」
店に入ると毛皮や厚めの防寒着に目がいく。見るからに暖かそうだ。イスベルクは奥で店の人と何やら話し込んでいる。こちらを向いたと思った途端。
「きゃああっ。可愛い子じゃないのぉ!」
めっちゃ距離を詰められ抱きしめられた。しかも凄い筋肉!フリフリのレース姿だけど男の人だよね?
「あわわ……」
ピシピシと音がする。イスベルクかな?
「だめよ!イスベルク様。ここで魔法を使うとアタシの大事な衣装が傷んじゃうじゃない!」
「ルミエールにそれ以上手を出すな!」
イスベルク。タスケテ~。
「何を言っているのよ!近づかなきゃ。サイズが測れないじゃないの!この子に似合う可愛い服を探したいのでしょう?」
「可愛い服……」
「そうよ。アタシの服を着れば今よりももっと可愛く洗練されるわよ!」
「うっ。では仕方がないな。だが引っ付きすぎだ!」
「はいはい。わかっているわよ。もぉ!久しぶりに来たと思ったらこんな可愛い子連れてくるなんて」
「えっと。できれば可愛いよりもカッコいい服だと嬉しいんだけど」
「あら。ちゃんと自分の意見も言えるのね。偉いわ」
「おいおい。キャンベル。その辺にしておいてやれよ。きっとこれから長い付き合いになるぞ」
「あら。そうね!ユージナルったらたまにはいいこと言うわね。お得意様になってちょうだいね?ごめんなさい。アタシはキャンベル。デザイナーよ!お城の服はアタシの作品が多いのよ。実用的な戦闘服から皇后さまの洗練された衣装までなんでも作れるわよ」
「ルミエールです。よろしくお願いします」
その後、寸法を測るたびにきゃあきゃあ騒がれたがイスベルクが俺を抱き込んだので終了となった。
「もういいだろ!」
「あらん。やきもち焼の男は嫌われるわよん。じゃあ、とりあえず既成の服でいくつか見繕うから奥のテーブルでお茶でも飲んでいてねん」
「デザイナーさんって体力居るんだなあ。あんなにもムキムキだなんて……」
「ぎゃははは」
ユージナルが爆笑している。イスベルクは苦笑気味だ。そのキャンベルが衣装をもってやって来た。
「笑い過ぎよ。体力はいるわよ。徹夜で仕上げることなんてしょっちゅうだしね。素敵なデザインが浮かぶと妥協できずにとことんやってしまうのよねえ」
「ルミエール。キャンベルは一時期、俺たちの上官だったのだ」
「ええ?そうだったんですね?」
兵士だったって事?兵士がデザイナーになったの?
「不思議って顔ね。いいわ、教えてあげる。ちょっと失敗して足にけがを負っちゃったのよ。だから戦いごとからは引退したの。それで前から夢だったデザイナーに転職したってわけ!これがまた天職だったのよねえ」
「強かったぞ。引退した時は残念だった」
「あらまあ。そんな風に思っていてくれたなんて嬉しいわ」
キャンベルは可愛らしいスカートをめくり少し引きずり気味の片足を見せてくれた。
「今もときどき痛むのが悔しいんだけど」
ん~。みたところ複雑骨折後の処置が悪かったんじゃないかな?戦の最中じゃすぐに医者に見せられなかったに違いない。これならできるかもしれない。
「よかったら。僕に回復魔法をかけさせてもらえませんか?」
「え?そう?じゃあやって診てくれる?」
「ルミエールは回復魔法も使えるのか?」
「うん。あの国にいた時はいつもイジメられていたからね。自分で治すしかなかったんだ」
大丈夫。オレって傷は治せるんだよ。病気はやっとことがないからわかんないけど。
キャンベルの足を両手で包み込むと少しずつ魔力を流す。ああ、いける。大丈夫だ、これなら。
「ルミエール!」
イスベルクに抱え込まれて目を開くと心配そうな顔を目に映った。しまった、集中しすぎていたらしい。軽くめまいがする。きちんと食事をするようになって少しは体力ついたと思っていたのになあ。
「うそ……歩ける。痛くないわ!今まで何やっても治らなかったのに」
「すごいな!」
ユージナルが驚いている。
「えへへへ」
「ああ。凄いぞ。俺のルミエールは可愛くてたのもしい」
イスベルクも褒めてくれた。ウへへ。オレっておだてられて木に登っちゃうかも。よかった。なにか一つでも役に立てることがあって。
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