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4城の戦力
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イスベルクが俺の目じりの涙を指でぬぐってくれた。彼は小説幻想奇談シリーズの中で「氷の国の冷酷な皇太子」として登場する。もっと怖い人物かと思っていたのに。表情はそんなに動かないんだけど俺に対する仕草が優しい気がする。そりゃこんなにボロボロだったら同情するかなぁ。
それにしても綺麗に整った顔してるよなぁ。銀髪がきらきらしてるし。ユージナルの白いツンツン髪ともまた違う。
炎の国は太陽を称賛してる国だ。だから陽の下で焼けた褐色の肌の持ち主が美しいと称えられる。髪の色も炎のように濃い赤色が好ましいと思うようだ。炎属性の魔力の強い者はチカラを使うと炎のように髪が燃え上がる者もいる。だがそんな価値観を超えてくるほどにイスベルクは力強くて美しいと思う。そう思うのは俺の感覚が前世の感覚に近くなってしまったせいだろうか?
今はルミエールとしてよりも陽向としての感情や性格の方が強く出ている。もともと俺は幼少時病弱で周りからもいじめられていた。それを克服するために身体を鍛えていたんだ。誰かの役に立ちたい。頼りにされるようになりたかったんだ。でも今の外見はルミエールなんだよな。そしてルミエールとして生きていたという感覚もある。ただ、なんだかうまく言葉に出来ないけれど。俺が考えて行動にでたことはルミエールとして処理される。おめめぱっちりの外見と中身にギャップがあるってこと。
もう俺は陽向でもなくルミエールの中のオレとなったのだ。まあ難しく考えても仕方ないからやれるだけのことはやっていこう。とにかく前に進まなきゃ。
「悪いが俺たちはこの国に来たのは始めてでわからないことが多い。ルミエールの知ってるかぎりでいいから教えてくれないか」
ユージナルは気の良いヤツなんだろうな。オレだったらこんなに正直に初めて会ったやつに聞けるだろうか?
「そうだ。まずは相手を知らないと倒せないからな」
イスベルクの言葉にあ~そっちでしたかと腑に落ちた。まぁそうだよね。この国ってよく言えばおおらかだけどいきなり大勢で囲んだり騒いだりは客人に対する態度じゃないよね。
「まず最初に城の警備が緩すぎる気がしたがそれは俺らをナメていたからか?」
うっわ。尋ねかたが物騒じゃありませんか? 直接的過ぎて、はいって言えないじゃん。
「イスベルク様。その聞き方は答えづらいでしょ。普段の警備はどうなっているかわかるか?」
ありがとユージナル。そのまま緩衝材としていてくれるとありがたい。
「この城に居る者は炎魔法が使えるものばかりで。敵が乱入しても王様が憤怒の炎ですぐに焼き尽くしてしまうので別名魔王の城と呼ばれてて……その中に入ると蟻地獄のように抜け出せないと言われてるみたい?」
オレはルミエールの記憶の中からわかる事を必死に探り出して答えた。
「そうか。だから警備が緩くても良いと思ってやがるんだな」
「ふっふっふ。面白い。抜け出してやろうじゃないか」
「ですよね。俺らから見れば隙だからけですからね」
おっと怖いよ。なんだか二人ともめっちゃ悪い顔になってるよ? でもその顔もカッコいいな。うん。
「戦力を教えろ」
「一番は王様。使えない炎魔法はない。気まぐれで力がすべて。次は第二王子のアグニ。戦闘狂で王様に似ていると言われています。暇さえあればあればあちらこちらに闘いに出ているのでチカラのほどは知らないです。今も戦に出ていてこの城にはいません」
アグニが一番やっかいだ。争いを好み、和平交渉よりも、競争や武力で決着を付けようとする。 気質も荒々しく思慮が足りない。チカラでなんでもねじ伏せられると思い込んでいる。まあ俗にいう筋肉バカだね。こいつがいなくてよかった。もしいたらきっとイスベルクに決闘を申し込んでいただろう。戦う理由なんてなんでもいいんだ。強い者と戦ってみたいタイプだ。難癖付けて自分が勝つまでこの城に縛り付けていただろう。
前世のオレもそうだったなぁ。ちょっと格闘技ができるからって自分のチカラに過信してしまっていた。プライドだけ高くなちゃってたんだな。今ならわかるのになぁ。まあ今ここにいない第二王子はほっておこう。
「第一王子とやらは先ほど会った。あれは筋肉はあるが闘い向きではない」
「ええ。観賞用ですね」
ぷぷ。観賞用って。その通りだ。上手いこと言うなあ。へえ。いつ会ったのだろう? でも凄い。ひとめでわかるなんて。この二人はオレが思ってるよりも強いのかもしれない。へへへ。オレって凄い人達とお知り合いになれたのかも。嬉しいな。もっと仲良くなってトレーニング方法とか指導してもらおうっと。
「3番目と4番目はやんちゃでわがままです」
もうあの二人の説明はこれでいいだろう。だいたい客人が来るって言うから正装とかしてたんじゃないの? なのに暴れまくってケガ迄させそうになるって問題外だと思う。
「よし。なんとなくわかったぞ」
「ああ。わかりやすい説明だった」
「ありがとうございます。へへ」
「次はルミエールの事を教えてくれないか?」
えっと。どこまで説明すりゃあいいんだろうか。とりあえず「ルミエール」の話でいいんだよな?
それにしても綺麗に整った顔してるよなぁ。銀髪がきらきらしてるし。ユージナルの白いツンツン髪ともまた違う。
炎の国は太陽を称賛してる国だ。だから陽の下で焼けた褐色の肌の持ち主が美しいと称えられる。髪の色も炎のように濃い赤色が好ましいと思うようだ。炎属性の魔力の強い者はチカラを使うと炎のように髪が燃え上がる者もいる。だがそんな価値観を超えてくるほどにイスベルクは力強くて美しいと思う。そう思うのは俺の感覚が前世の感覚に近くなってしまったせいだろうか?
今はルミエールとしてよりも陽向としての感情や性格の方が強く出ている。もともと俺は幼少時病弱で周りからもいじめられていた。それを克服するために身体を鍛えていたんだ。誰かの役に立ちたい。頼りにされるようになりたかったんだ。でも今の外見はルミエールなんだよな。そしてルミエールとして生きていたという感覚もある。ただ、なんだかうまく言葉に出来ないけれど。俺が考えて行動にでたことはルミエールとして処理される。おめめぱっちりの外見と中身にギャップがあるってこと。
もう俺は陽向でもなくルミエールの中のオレとなったのだ。まあ難しく考えても仕方ないからやれるだけのことはやっていこう。とにかく前に進まなきゃ。
「悪いが俺たちはこの国に来たのは始めてでわからないことが多い。ルミエールの知ってるかぎりでいいから教えてくれないか」
ユージナルは気の良いヤツなんだろうな。オレだったらこんなに正直に初めて会ったやつに聞けるだろうか?
「そうだ。まずは相手を知らないと倒せないからな」
イスベルクの言葉にあ~そっちでしたかと腑に落ちた。まぁそうだよね。この国ってよく言えばおおらかだけどいきなり大勢で囲んだり騒いだりは客人に対する態度じゃないよね。
「まず最初に城の警備が緩すぎる気がしたがそれは俺らをナメていたからか?」
うっわ。尋ねかたが物騒じゃありませんか? 直接的過ぎて、はいって言えないじゃん。
「イスベルク様。その聞き方は答えづらいでしょ。普段の警備はどうなっているかわかるか?」
ありがとユージナル。そのまま緩衝材としていてくれるとありがたい。
「この城に居る者は炎魔法が使えるものばかりで。敵が乱入しても王様が憤怒の炎ですぐに焼き尽くしてしまうので別名魔王の城と呼ばれてて……その中に入ると蟻地獄のように抜け出せないと言われてるみたい?」
オレはルミエールの記憶の中からわかる事を必死に探り出して答えた。
「そうか。だから警備が緩くても良いと思ってやがるんだな」
「ふっふっふ。面白い。抜け出してやろうじゃないか」
「ですよね。俺らから見れば隙だからけですからね」
おっと怖いよ。なんだか二人ともめっちゃ悪い顔になってるよ? でもその顔もカッコいいな。うん。
「戦力を教えろ」
「一番は王様。使えない炎魔法はない。気まぐれで力がすべて。次は第二王子のアグニ。戦闘狂で王様に似ていると言われています。暇さえあればあればあちらこちらに闘いに出ているのでチカラのほどは知らないです。今も戦に出ていてこの城にはいません」
アグニが一番やっかいだ。争いを好み、和平交渉よりも、競争や武力で決着を付けようとする。 気質も荒々しく思慮が足りない。チカラでなんでもねじ伏せられると思い込んでいる。まあ俗にいう筋肉バカだね。こいつがいなくてよかった。もしいたらきっとイスベルクに決闘を申し込んでいただろう。戦う理由なんてなんでもいいんだ。強い者と戦ってみたいタイプだ。難癖付けて自分が勝つまでこの城に縛り付けていただろう。
前世のオレもそうだったなぁ。ちょっと格闘技ができるからって自分のチカラに過信してしまっていた。プライドだけ高くなちゃってたんだな。今ならわかるのになぁ。まあ今ここにいない第二王子はほっておこう。
「第一王子とやらは先ほど会った。あれは筋肉はあるが闘い向きではない」
「ええ。観賞用ですね」
ぷぷ。観賞用って。その通りだ。上手いこと言うなあ。へえ。いつ会ったのだろう? でも凄い。ひとめでわかるなんて。この二人はオレが思ってるよりも強いのかもしれない。へへへ。オレって凄い人達とお知り合いになれたのかも。嬉しいな。もっと仲良くなってトレーニング方法とか指導してもらおうっと。
「3番目と4番目はやんちゃでわがままです」
もうあの二人の説明はこれでいいだろう。だいたい客人が来るって言うから正装とかしてたんじゃないの? なのに暴れまくってケガ迄させそうになるって問題外だと思う。
「よし。なんとなくわかったぞ」
「ああ。わかりやすい説明だった」
「ありがとうございます。へへ」
「次はルミエールの事を教えてくれないか?」
えっと。どこまで説明すりゃあいいんだろうか。とりあえず「ルミエール」の話でいいんだよな?
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