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11人間タクシー
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謁見が終わったかと思ったらイスベルクの腕に抱えられたまま部屋を出てそのまま外に連れ出された。王はまだ何か言いたげだった。近衛兵達も追ってきたがするりと避けて城から出てしまった。
凄い! 動きが速い。速すぎる。
「ちょっと待った! 食料買っていかないと!」
ユージナルが止めてくれてオレは朝から何も食べてないことに気づいた。
ぐ~きゅるる。オレのお腹ってタイミング良すぎ。
「ほら。ルミエールだって腹が減っているみたいですってば!」
「ごめんなさい。何も食べてなかったので」
「食べてないだと? 奴ら飯も食わせなかったのか」
おのれ……とつぶやいているからこれは怒ってくれているんだな。
「じゃあ、適当に果物や串肉など見繕ってきますから。先に行っててください」
「ルミエール。俺にしがみつけ」
なにそれ。恥ずかしいよ……あ~なるほど。正面から抱きついた方が走りやすいって事か! オレはイスベルクの首に手を回してしがみついた。足を胴に絡めるとイスベルクがギュッと抱きしめてくれる。追手の姿が後ろの方に見える。追いかけて来ていたのか? イスベルクが手をかざすとその場にパキパキと音を立てて氷の壁ができる。周りいた人々が珍しそうに氷の壁に集まってきている。
「今のうちだ」
凄い凄い。景色が流れて見える。まるでタクシーみたいだ。イスベルクって本当に人間なの? ユージナルもすぐに追いついてきた。旨そうな肉がありましたよなんて話しながら走っている。この二人って超人?
「……エール。ルミエール」
んー、もうちょっと寝ていたい。
「飯食っといた方がいいぞ」
「食べます!」
食べられる時に食べないと。飯抜きにされる……て? なんだ俺寝ぼけていたのか。イスベルクがしっかりと抱き抱えてくれたから腕の中はとても安定していてうとうとと寝てしまっていたようだ。
「あははは。よほど腹が減ってたのだな」
ユージナルが串肉を差し出してくれていた。わーい。肉だ。ちょっと固いけどスパイシーな味。もぐもぐ噛んでいるだけで口の中に味が広がる。これはあれだな。スルメみたいだ。一生懸命噛んでいるとイスベルクが果物を手にとった。オレは今イスベルクの膝の上にいる。小玉スイカみたいな果物だ。目の前でパカっと二つに割る。すげー。素手で割れるんだ。
「この果物は水分が多いから食べておけ」
うんうん。ありがとう。でも今肉で口の中いっぱいだよ。喋れない代わりににっこり笑っとこう。
「……もっと食え。細すぎる」
イスベルクがオレの口元に小さく割った果物を押し込んでくる。
「そうだぞ。もっと太らないと氷の国に着く前に倒れるぞ」
ユージナルはガツガツ食べながら辺りを警戒していた。岩陰にもたれるようにして食事をしているが、ピクニックと呼ぶには周りは砂ばかりで殺風景だ。
「砂漠?」
「おう。しばらくは砂ばかりだ。イスベルク様、抱っこ交代しましようか?」
「いや、いい。ルミエールは俺が抱いて行く」
そうだ、炎の国を出てからずっと抱っこ移動だ。だが、オレの足ではとてもじゃないがこの二人に追いつけない。
「重くない?」
「ああ。軽すぎるぞ。俺の城についたらもっと美味いもの食わしてやるからな」
「そうだぞ。生きて行く上で食事は大事なんだ。沢山食べて大きくなれ」
なんと、氷の国には美味いものがいっぱいあるのか? かき氷とかかな? アイスクリームとかあったらいいなぁ。
「本来なら子供は大切に育てなければならないのだ。それをこんなやせ細らせて」
「本当に。胸くそ悪い奴らだ」
おや。子供ってオレのこと? オレ22歳だけど。いや、それは前世の年齢か。ルミエールとして生きた年齢は確か。
「子供じゃないよ。お……僕は18歳くらい?」
「……俺はてっきり10~12歳かと」
「ああ、俺もですよ」
そうだよな。痩せているしチビだしな。でもまだ成長途中のはずだ。これからオレは体を鍛えるんだ。
「じゃあイスベルク様とそう変わらないのだな」
「かわらない? 二人は何歳なの?」
「俺は23歳。イスベルク様は19歳だ」
うっそ~! イスベルクが19歳? ユージナルが23歳はなんとなくわかるが。イスベルクの威厳がありすぎる。30歳くらいかと思っていたのに。
「イスベルク様はもっと年上だと思っていました」
「俺は12歳から戦場に出ていたからな」
「ええっ!そんなに小さいころから?」
「小さくはなかったぞ。成長が速かったからな」
「そうっすよね~。中身よりも身体のほうが先にデカくなってしまって……」
「チカラも強すぎたからな。戦に出てチカラの使い方を知った。今は制御ができるぞ」
ということは昔はチカラが強すぎて制御できなかったということなの? それは恐ろしい。イスベルク自身が恐ろしかったのだろうなと想像ができる。自分のチカラが暴走したらと思うだけで怖い。オレが守ってやりたい。そうだ。ユージナルくらい強くなってイスベルクを守れるようになろうっと。
「いっぱい食べて鍛えてムキムキになる!」
「ぷははは。そうかそうか。じゃあ沢山食べないとな」
ユージナルががははと笑いながらオレの頭を撫でる。
「そのままでもいいぞ。俺のそばにいればいい」
イスベルクがオレを抱き込む。ありがたいなぁ。オレを保護してご飯までくれるなんて。
「ありがとう。ご飯代ぐらいは一生懸命働くから」
「何を言っている。お前は俺の伴侶だ」
そうだった。オレは貢ぎ物だった。
凄い! 動きが速い。速すぎる。
「ちょっと待った! 食料買っていかないと!」
ユージナルが止めてくれてオレは朝から何も食べてないことに気づいた。
ぐ~きゅるる。オレのお腹ってタイミング良すぎ。
「ほら。ルミエールだって腹が減っているみたいですってば!」
「ごめんなさい。何も食べてなかったので」
「食べてないだと? 奴ら飯も食わせなかったのか」
おのれ……とつぶやいているからこれは怒ってくれているんだな。
「じゃあ、適当に果物や串肉など見繕ってきますから。先に行っててください」
「ルミエール。俺にしがみつけ」
なにそれ。恥ずかしいよ……あ~なるほど。正面から抱きついた方が走りやすいって事か! オレはイスベルクの首に手を回してしがみついた。足を胴に絡めるとイスベルクがギュッと抱きしめてくれる。追手の姿が後ろの方に見える。追いかけて来ていたのか? イスベルクが手をかざすとその場にパキパキと音を立てて氷の壁ができる。周りいた人々が珍しそうに氷の壁に集まってきている。
「今のうちだ」
凄い凄い。景色が流れて見える。まるでタクシーみたいだ。イスベルクって本当に人間なの? ユージナルもすぐに追いついてきた。旨そうな肉がありましたよなんて話しながら走っている。この二人って超人?
「……エール。ルミエール」
んー、もうちょっと寝ていたい。
「飯食っといた方がいいぞ」
「食べます!」
食べられる時に食べないと。飯抜きにされる……て? なんだ俺寝ぼけていたのか。イスベルクがしっかりと抱き抱えてくれたから腕の中はとても安定していてうとうとと寝てしまっていたようだ。
「あははは。よほど腹が減ってたのだな」
ユージナルが串肉を差し出してくれていた。わーい。肉だ。ちょっと固いけどスパイシーな味。もぐもぐ噛んでいるだけで口の中に味が広がる。これはあれだな。スルメみたいだ。一生懸命噛んでいるとイスベルクが果物を手にとった。オレは今イスベルクの膝の上にいる。小玉スイカみたいな果物だ。目の前でパカっと二つに割る。すげー。素手で割れるんだ。
「この果物は水分が多いから食べておけ」
うんうん。ありがとう。でも今肉で口の中いっぱいだよ。喋れない代わりににっこり笑っとこう。
「……もっと食え。細すぎる」
イスベルクがオレの口元に小さく割った果物を押し込んでくる。
「そうだぞ。もっと太らないと氷の国に着く前に倒れるぞ」
ユージナルはガツガツ食べながら辺りを警戒していた。岩陰にもたれるようにして食事をしているが、ピクニックと呼ぶには周りは砂ばかりで殺風景だ。
「砂漠?」
「おう。しばらくは砂ばかりだ。イスベルク様、抱っこ交代しましようか?」
「いや、いい。ルミエールは俺が抱いて行く」
そうだ、炎の国を出てからずっと抱っこ移動だ。だが、オレの足ではとてもじゃないがこの二人に追いつけない。
「重くない?」
「ああ。軽すぎるぞ。俺の城についたらもっと美味いもの食わしてやるからな」
「そうだぞ。生きて行く上で食事は大事なんだ。沢山食べて大きくなれ」
なんと、氷の国には美味いものがいっぱいあるのか? かき氷とかかな? アイスクリームとかあったらいいなぁ。
「本来なら子供は大切に育てなければならないのだ。それをこんなやせ細らせて」
「本当に。胸くそ悪い奴らだ」
おや。子供ってオレのこと? オレ22歳だけど。いや、それは前世の年齢か。ルミエールとして生きた年齢は確か。
「子供じゃないよ。お……僕は18歳くらい?」
「……俺はてっきり10~12歳かと」
「ああ、俺もですよ」
そうだよな。痩せているしチビだしな。でもまだ成長途中のはずだ。これからオレは体を鍛えるんだ。
「じゃあイスベルク様とそう変わらないのだな」
「かわらない? 二人は何歳なの?」
「俺は23歳。イスベルク様は19歳だ」
うっそ~! イスベルクが19歳? ユージナルが23歳はなんとなくわかるが。イスベルクの威厳がありすぎる。30歳くらいかと思っていたのに。
「イスベルク様はもっと年上だと思っていました」
「俺は12歳から戦場に出ていたからな」
「ええっ!そんなに小さいころから?」
「小さくはなかったぞ。成長が速かったからな」
「そうっすよね~。中身よりも身体のほうが先にデカくなってしまって……」
「チカラも強すぎたからな。戦に出てチカラの使い方を知った。今は制御ができるぞ」
ということは昔はチカラが強すぎて制御できなかったということなの? それは恐ろしい。イスベルク自身が恐ろしかったのだろうなと想像ができる。自分のチカラが暴走したらと思うだけで怖い。オレが守ってやりたい。そうだ。ユージナルくらい強くなってイスベルクを守れるようになろうっと。
「いっぱい食べて鍛えてムキムキになる!」
「ぷははは。そうかそうか。じゃあ沢山食べないとな」
ユージナルががははと笑いながらオレの頭を撫でる。
「そのままでもいいぞ。俺のそばにいればいい」
イスベルクがオレを抱き込む。ありがたいなぁ。オレを保護してご飯までくれるなんて。
「ありがとう。ご飯代ぐらいは一生懸命働くから」
「何を言っている。お前は俺の伴侶だ」
そうだった。オレは貢ぎ物だった。
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