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2俺って転生者?
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頭がガンガンする。ここはどこだっけ? 俺は立原陽向。おかしいな。本屋に行った帰りにコンビニに立ち寄って大好きなシュークリームを買って……それから。それから? なんだっけ?
寝心地の良いふかふかのベットに俺は寝ていた。色鮮やかな壁紙。どこかのホテルだろうか? 傍に南国の植物が置かれている。どこかに旅行に来てたっけ?どこに?あれれ?
「見慣れた場所じゃない」
そうだ。こんなきれいな部屋じゃなくてもっと簡素で……ヒヒーンって? あれ? 混乱する頭を振りすぎたのか痛みがひどくなる。頭を押さえようとしてあげた片手に目をやると細い指先が見えた。
誰の手だ? 女の人みたいな手だな。グーパー。グーパーと動かしてみる。
「げっ? これって俺の手なのか?」
うっそぉ。やたらと細い手首。
「やせすぎじゃないの? メシ食ってないの?」
おかしいな。俺は剣道も空手も上級者のはずなんだがな。もっとごつごつした手だったのに。こりゃ夢かな。男性的な手じゃないってなると……まさかと思い、恐る恐る股間に手を当ててホッとする。
「よかった。ついてた。男のまんまだった」
女性になったわけじゃないんだな? まあ夢ならちょっとぐらい女体を体験しても。いやいややっぱり男がいいな。ついでに胸も触ってみた。うんうん。男の身体だな。
「でもガリガリだな。骨ばってる」
目の端に見える髪は色が薄くて傷んだくせ毛だ。
ベッドを降りてふらふらと部屋の入口にある鏡の前に立つ。
頭に包帯を巻いたくすんだピンクっぽい色の髪。痩せた外国人がこちらを見ていた。
「あ、どうも。こんにちは……って俺かいぃいい?」
うっそーーん。鏡の中の人物は俺だった。
ん~? 前髪が長すぎてよく前が見えない。わざと顔を隠してたのか? 前髪を包帯の中に入れ込むように横分けにした。
ふむふむ。おめめぱっちり。俺って可愛い顔してるじゃん? 顔色悪いけど。
しかし着ている服がボロボロだ。ひでぇな。裾なんか焼け焦げがある。また燃やされたんだな……また?
「ぐっ……頭が……」
立っていられなくなりその場にしゃがみこむ。俺は……。そうだ俺はコンビニの帰りに交通事故にあって……。これって前世の記憶なのか? 同時にこの世界で生きてきたルミエールとしての記憶が呼び覚まされる。なんだこれ? 俺は頭を打って忘れていた前世を思い出したのか?
虐げられた記憶。母との別れ。魔力スキル……。いろんな情報が頭の中にあふれ出して整理ができない。
「大丈夫か?」
声がする方に顔をあげると寝室の入り口が開いていて、軍服を着た銀髪男性と目が合った。まったく気づかなかった。わあ、俺ったらこんなところに座り込んでて恥ずかしい。
「ぁ。頭が痛くて……」
「……そうか。あの高さの階段から落ちたのだからな」
見てる。俺の顔をじっと見てる。そっか。前髪が長かったから顔をよく見てなかったのかな?
「おや、起きたのですか? ……可愛い子だったんですね」
後から部屋に入ってきたのは階段に落ちる前に氷の壁を作っていた護衛さんだ。この人は強い。身体もデカイし白髪でツンツンした短髪だ。触ったら痛そうだな。
「医者には見せたのだがもう少し寝てた方が良い」
「……はい」
俺の返事を聞くか聞かないかくらいの速さで抱き上げられベッドまで連れて来られた。触られた途端に身体がビクッとしたのはごめんよ。怯えてるわけじゃないんだが、どうも条件反射らしい。よほどこの身体で叩かれてたり暴力を受けてたんだろうな。触られることに慣れてないみたいだ。
「俺はイスベルクだ。隣にいるのはユージナル」
銀髪の人がイスベルクっていうのか。護衛の人がユージナルだな。よし、覚えたぞ。
「ルミエールです」
お言葉に甘えてふかふかベッドに寝かせてもらう。むふふ。柔らかいベッドは久しぶり。馬小屋で馬たちと一緒にわらで眠るのも好きだったけどさ。でも仮にも第五王子なのにこの待遇はヒドイ。今更ながらどうしてルミエールがこれまで卑屈だったのかがわからない。前世を思い出してから俺は人格が変わってしまったのだろう。
前世の俺は読書と格闘技が好きな普通の大学生だった。愛読書は幻想奇談シリーズ。オムニバス形式でファンタジー的な不思議な話がいっぱい詰まってるんだ。事故にあったあの日。俺はもしこのまま生まれ変われるならこの本のような世界にと願ったんだったな……。
んん? 銀髪のイスベルクとユージナル。炎の国。これってまさか!
寝心地の良いふかふかのベットに俺は寝ていた。色鮮やかな壁紙。どこかのホテルだろうか? 傍に南国の植物が置かれている。どこかに旅行に来てたっけ?どこに?あれれ?
「見慣れた場所じゃない」
そうだ。こんなきれいな部屋じゃなくてもっと簡素で……ヒヒーンって? あれ? 混乱する頭を振りすぎたのか痛みがひどくなる。頭を押さえようとしてあげた片手に目をやると細い指先が見えた。
誰の手だ? 女の人みたいな手だな。グーパー。グーパーと動かしてみる。
「げっ? これって俺の手なのか?」
うっそぉ。やたらと細い手首。
「やせすぎじゃないの? メシ食ってないの?」
おかしいな。俺は剣道も空手も上級者のはずなんだがな。もっとごつごつした手だったのに。こりゃ夢かな。男性的な手じゃないってなると……まさかと思い、恐る恐る股間に手を当ててホッとする。
「よかった。ついてた。男のまんまだった」
女性になったわけじゃないんだな? まあ夢ならちょっとぐらい女体を体験しても。いやいややっぱり男がいいな。ついでに胸も触ってみた。うんうん。男の身体だな。
「でもガリガリだな。骨ばってる」
目の端に見える髪は色が薄くて傷んだくせ毛だ。
ベッドを降りてふらふらと部屋の入口にある鏡の前に立つ。
頭に包帯を巻いたくすんだピンクっぽい色の髪。痩せた外国人がこちらを見ていた。
「あ、どうも。こんにちは……って俺かいぃいい?」
うっそーーん。鏡の中の人物は俺だった。
ん~? 前髪が長すぎてよく前が見えない。わざと顔を隠してたのか? 前髪を包帯の中に入れ込むように横分けにした。
ふむふむ。おめめぱっちり。俺って可愛い顔してるじゃん? 顔色悪いけど。
しかし着ている服がボロボロだ。ひでぇな。裾なんか焼け焦げがある。また燃やされたんだな……また?
「ぐっ……頭が……」
立っていられなくなりその場にしゃがみこむ。俺は……。そうだ俺はコンビニの帰りに交通事故にあって……。これって前世の記憶なのか? 同時にこの世界で生きてきたルミエールとしての記憶が呼び覚まされる。なんだこれ? 俺は頭を打って忘れていた前世を思い出したのか?
虐げられた記憶。母との別れ。魔力スキル……。いろんな情報が頭の中にあふれ出して整理ができない。
「大丈夫か?」
声がする方に顔をあげると寝室の入り口が開いていて、軍服を着た銀髪男性と目が合った。まったく気づかなかった。わあ、俺ったらこんなところに座り込んでて恥ずかしい。
「ぁ。頭が痛くて……」
「……そうか。あの高さの階段から落ちたのだからな」
見てる。俺の顔をじっと見てる。そっか。前髪が長かったから顔をよく見てなかったのかな?
「おや、起きたのですか? ……可愛い子だったんですね」
後から部屋に入ってきたのは階段に落ちる前に氷の壁を作っていた護衛さんだ。この人は強い。身体もデカイし白髪でツンツンした短髪だ。触ったら痛そうだな。
「医者には見せたのだがもう少し寝てた方が良い」
「……はい」
俺の返事を聞くか聞かないかくらいの速さで抱き上げられベッドまで連れて来られた。触られた途端に身体がビクッとしたのはごめんよ。怯えてるわけじゃないんだが、どうも条件反射らしい。よほどこの身体で叩かれてたり暴力を受けてたんだろうな。触られることに慣れてないみたいだ。
「俺はイスベルクだ。隣にいるのはユージナル」
銀髪の人がイスベルクっていうのか。護衛の人がユージナルだな。よし、覚えたぞ。
「ルミエールです」
お言葉に甘えてふかふかベッドに寝かせてもらう。むふふ。柔らかいベッドは久しぶり。馬小屋で馬たちと一緒にわらで眠るのも好きだったけどさ。でも仮にも第五王子なのにこの待遇はヒドイ。今更ながらどうしてルミエールがこれまで卑屈だったのかがわからない。前世を思い出してから俺は人格が変わってしまったのだろう。
前世の俺は読書と格闘技が好きな普通の大学生だった。愛読書は幻想奇談シリーズ。オムニバス形式でファンタジー的な不思議な話がいっぱい詰まってるんだ。事故にあったあの日。俺はもしこのまま生まれ変われるならこの本のような世界にと願ったんだったな……。
んん? 銀髪のイスベルクとユージナル。炎の国。これってまさか!
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