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57)聖獣

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「エルシド様!見つけました!」
 デニスがハロルドを抱えて出てきた。
「よくやったぞ!」

「ハロルド!しっかりして!」
 皇子が半泣きでハロルドにしがみついている。ハロルドの両手両足は禍々しい鎖で拘束されていた。これで神聖力を封印しようとしていたんだな。
「エルシド様。この鎖は切れないんです」
 デニスが困り果てたように言う。なんらかの制限がかかっているのか?普通の剣では切れないのか!
「セイヤ……無事でしたか?」
 弱弱しくハロルドが笑う。しっかりしてくれ。お前を頼りにしているのに!

「これは呪術具か?」
「どうすればいい?どうしたらいい?」
 皇子が泣き出す。やはりまだ幼いな。こんな子供にひどいことさせやがって。

「皇子よ。俺の剣に聖なる祝福をしてくれないか?」
「ど、どうすればいいのかわかんないよ」
「そうか。ブラッドフォード卿の考えがわかりました。セイヤ。その剣を浄化することはできますか?」
「うん。やってみる!」

 皇子が俺の剣に触れると淡く光り、すぐに元に戻った。
「お願いします!」
 ハロルドの言葉と同時に俺は鎖を叩き斬った。やはり聖なるチカラが必要だったか。

「ありがとうございます!そのままその剣をこちらにお渡しください」
 ハロルドが何かを唱えると更に剣が光りだす。淡く光ると剣の色が変わった。
「聖なる祝福を付加いたしました」
 デニスの剣にも同じように付加してもらう。同じように色が変わっていく。銀色に輝くのだ。


「ピィ!ピィー!」
「ユキが逃げろと言ってます!」

 衝撃音と共に神殿が揺らいだ。どうやら魔人が神殿に到着したらしい。

「神官たちはどこです?」
「祭壇の間に集まっていました」
「ではセイヤ。私たちはそちらにいきましょう」

「俺たちは魔人と鬼ごっこと行こうか!」
「はい!」
 俺たちがどこまでやれるかなんてわからない。だがやれるとこまでいってやる。

「イブ。巻き込んで悪かったな」
「なんですかそれ!どうせなら俺について来いって言ってください」
 ああ、本当にこいつは俺好みだ。こんな時だがカッコいいって思っちまった。
「よし。俺について来い!」

 神殿を出ると魔人の人型が崩れて来ていた。所詮は怨念の塊の集合体。ここまで移動するたびに少しづつ瘴気をまき散らしていたのかもしれない。

「ピィ―ピピ、ピィ」
 ユキがイブの肩に舞い降りた。デカくなったが重さは感じられないようだ。
「人の形があるうちに倒した方がいいそうです」
「それは俺も思っていた」

 このまま崩れ落ちて沼ができると魔物が、瘴気になって気化してしまうと魔獣が増えてしまうかもしれない。先ほどまでいた鳥たちも姿を消していた。ユキが避難させたんだな。

「ピィピ。ピピ」
「シドにチカラを貸したいそうです」
「わかった。頼むぞユキ!」

「エルシド様!来ます!」
 デニスの言葉に咄嗟に剣を抜く。魔人が俺を踏みつぶそうと足をあげていた。
「ピィ!」
 俺の太刀に合わせてユキが羽ばたく。剣先が白く光り斬った場所が浄化されていく。

「ぐがぁ……」
 だがすぐに黒い塊が生えてくる。再生したのか?いや違うな。体内に取り込んだ瘴気が形を作っているんだ。その分少し縮んだようにも見える。これを繰り返して行けば弱体化できるか?

 ワオォン!
 鳴き声と共に青い巨体が現れる。ずざぁっと目の前に着地すると見知った男が乗っていた。
「遅いぞ!ユリシーズ!」
「すまん!遅れた!」
「あれはウォルフなの?」


 ユリシーズはデカくなったウォルフに乗っていた。団長を乗せて走れるなんてかなりのパワーがある。成獣化したのか?

「手なずけるのに時間がかかってしまったのだ!」
 ウォルフが魔人の足元をジグザグに走り抜ける。動きが早い。青い稲妻のようだ。

 ぐらりと魔人の身体が揺らぎ、俺たちの上に倒れ込もうとした。すかさずユリシーズが聖剣で魔人に斬りつけた。

 ぐがぁああっ!

 魔人は真っ二つになったがそのまま半分の大きさに左右に分かれた。
「なんだと?双子だったのか!」
「マヌケなこと言うなよ!分裂したんだ」
 これは面倒だ。しかも少しずつ瘴気に戻りつつある。身体の端から泥のような瘴気の塊がぼとぼと落ち始めた。黒い水たまりとなりそこから魔物が湧きだす。

「このままだと瘴気が拡散して被害が大きくなるぞ!」

「お任せください!」

 ハロルドが神官たちと神殿から出て来た。何かを唱えながら神官たちが魔人の方向へ両手を前に出し、手のひらを向ける。キィーンという音と共に見えない壁ができた。

「バリアを張ったのですか?」
「皇子から聞きました。王室で聖なる壁を張ったと。その応用です!」
 魔人の瘴気が見えない壁から出て行かない様にしてくれたということか。そうか、これなら瘴気が拡散することはない。だが、同時に俺たちも隔離されてしまった。

「ユキ!これって斬るのと浄化を同時にすればいいの?」
「ピィ!」
「なるほど。ユリシーズ!斬るタイミングを俺と合わせろ!」

「エルシド様。イブ様は私が!」
 デニスがイブをかばうように魔物に剣を向ける。その役は俺がやりたかったのに。

「ウォォオオン!」
 ウォルフが吠えると魔人の動きが止まる。ウォルフの声は魔人の動きを止めるチカラがあるのか?
「今だ!」
 俺たちの剣が同時に一体の魔人に突き刺さるとユキが羽を広げて羽ばたき、浄化をする。キラキラと辺りに光が舞い消えていった。

 
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みんなの感想(1件)

もくれん
2024.11.11 もくれん

17話まで読みました!

とてもわくわくして読んでます!
シドって、とってもクールで有能そうなのに、頭の中は割と残念なイケメンさんですね……🥹そこが可愛いですが🤭

イブキも可愛い!!勉強熱心で好奇心旺盛で、シドでなくても目が離せませんね🥰

まだ途中ですが、思わず感想書いてみました…
楽しみにしてます!!

ゆうきぼし/優輝星
2024.11.11 ゆうきぼし/優輝星

お読みいただきありがとうございます!こうして感想をいだだくととっても励みにたります。
シドは過去にいろいろあって悪ぶってる残念な色男なんです。
後半にていろいろ明らかになってきますので、よろしければまた引き続きお読みください。
ラストまで頑張ります!💪

解除

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